東京永和法律事務所

東京永和法律事務所

今回は「東京永和法律事務所」をご紹介いたします。
同事務所の4人の弁護士の先生方、升永英俊氏(同事務所の代表で25期)、江口雄一郎氏(51 期)、上山浩氏(53期)、荒井裕樹氏(53期)の各氏が貴重なお時間を割いて応対してくださいました(なお、升永氏と上山氏は弁理士の登録もされています)。升永氏からは、同事務所に関するお話ばかりでなく、現在の司法制度の問題点、これからの国家はどうあらねばならないか等のスケールの大きいお話もお聞きしました。他の三氏からは、同事務所の特長、これまで主にどのような業務に携わってこられたのか、なぜこの事務所をお選びになったのか、受験生や修習生へのメッセージ等をお聞きしました。

事務所の概要

1 事務所の所在地
港区虎ノ門4―3―13秀和神谷町ビル6階


2 事務所の歴史とメンバー数 
1991年(平成3年)に設立された新しい事務所です。現在、弁護士数12名(そのうち女性弁護士数2名)、スタッフ数は8名だそうです。


3 業務内容と事務所の特長
企業法務・海外関係の法務を中心とするいわゆる「渉外法律事務所」です。しかし、一般的渉外法律事務所とは、以下のように、いくつかの点で異なると上山氏は強調されました。

・まず、渉外事務所の大半は「予防法務」が中心ですが、この事務所では訴訟のウエイトが極めて大きくなっているそうです(この事務所は、「青色LED特許侵害事件」「キューピー人形著作権事件」「サブリース契約上の保証賃料減額請求事件」等の社会的にも大変注目された事件で画期的な勝訴判決を次々と得てきました)。

・次に、升永氏は先例や権威にとらわれない発想の持ち主で、「うちの事務所は新しい、正義にかなった判例を創るんだ」というのが升永氏の口癖だそうです。そのために、この事務所では、議論の相手が新人だからといって、先輩弁護士が自分の意見を押し付けるようなことはなく、各人の意見が合理的である限り、その独創性・自主性が尊重されるそうです。

・また、「少数精鋭主義」を貫いているそうです。合併等により、大規模化を目指すのが現下の渉外事務所の趨勢ですが、それには追随しないということです。訴訟を複数人で担当すると、人間の心理として、自分の担当分野以外は力を抜きたくなります。しかし、訴訟でそのようなことをすると、致命傷になりかねません。しかし、この事務所では、実力がある限り、期や年齢に関係なく、各人が一つの事件について責任を委ねられているそうです。勿論、代表の升永氏がすべての事件に目を通され、適切なアドバイスをしてくださるそうですが、あくまで中心は任された各人で、事件の勝ち負けは、チームとしてではなく、個人としての担当弁護士の勝ち負けになります。権限が与えられるかわりに責任も負わされることになります。それゆえにこそ、この事務所の先生方は、それぞれの事件に「自分の事件」として、プロとしてのプライドをかけて全力をかけて取り組むようになります。

・さらに、前述したように、この事務所は代表的な訴訟で多数の実績を築いてきましたので、「勝利のノウハウ」があるそうです。

弁護士の方々のお話

1 升永氏……
日本は江戸時代から「官僚国家」でした。明治に入り、世襲制と階級性をなくし、四民平等にしたうえで新たな「官僚国家」を創りました。しかし、「知らしむべからず、よらしむべし」という江戸時代の農民支配と同じような状況は今も続いています。官僚制の弊害が端的に現れたのが「軍」であると指摘したのは司馬遼太郎氏です。これからの日本は、「憲法」と「正義」を価値基準の中心に置いた「司法国家」を目指すべきだと思います。法曹人口はもっともっと増やす必要があると思います。商法では議題に利害関係のある取締役は議決に参加できないことになっています。同じように、法曹人口の増加の問題に関しては、法曹関係者が意見を言うこと自体はよいと思いますが、どのくらいの数にするかの決議に参加するのは適当でないと思います。どうしても新規参入を拒むようになるからです。
升永氏には、2003年の1月25日(土)、当塾の「明日の法律家講座」でご講演いただきました。また、2002年9月4日(水)の「朝日新聞」・「私の視点」に升永氏のご意見が載っていますので、そちらの方もご参照ください。


2 江口氏……
法学部ということもあり、大学2年のときに司法試験を志しました。以前伊藤塾長の講義を受けたこともあります。集団訪問という形でいくつかの事務所を回りましたが、この事務所を選んだのは、升永代表にお会いし、準備書面や証拠関係等を見せられるとともにこの事務所の具体的なクライアント名を教えられ、この事務所で仕事をすることに大きな遣り甲斐を感じたからです。
法律選択科目として「破産法」を選択しましたが、このことが現在役に立っています。というのも、「破産法」には独特の言い回しがあったりするからです。以前は英文の契約書を見る業務もかなりありましたが、今はそれほどありません。訴訟業務の他に、日常の業務について会社から問い合わせがあったときに、それに対して口頭や文書で答えるといった業務も行っています。
現在受験勉強をしている方は、予め時間のあるときに、弁護士等の実務家に接したりしながら、自分はなんのために司法試験を受けるのかを改めて考えてほしいと思います。


3 上山氏……
大学の専攻は理学部で、一般企業等に勤務した後司法試験にチャレンジしました。最初はやや伸び悩みの感じでしたが、伊藤塾に行き伊藤塾長のお話をお聞きし、大変刺激を受けました。塾長からは方法論だけでなく、考え方、問題を解く視点というものも教えてもらいました。また司法試験には直接関係ないような塾長の体験談やこのような志をもった法律家になってほしいという塾長のお話が私にとって大変有意義でした。伊藤塾では「基礎マスター」「論文マスター」等を受講し、伊藤塾のお蔭で合格したと思っています。また、合格後は「ヨーロッパ司法制度視察旅行」「アメリカ司法制度視察旅行」等に参加しました。このような企画も非常に有益だと思います。
特許専門で活躍している弁護士の大半は理系出身ですが、もっと理系の方に法曹に進んできてほしいと思っています。弁護士になれば誰でも特許訴訟ができるというような今の前提は誤りだと思います。


4 荒井氏……
最初はベンチャー企業でも興そうかと考えていましたが、修習の途中で弁護士になろうと思いました。いくつかの事務所を回りましたが、この事務所で升永代表から準備書面を見せられ、修習中に見せていただいた他の弁護士の準備書面と明らかに違うなと感じたことがこの事務所を選んだ大きな理由です。これまで「青色LED特許権持分移転登録手続等請求事件」(青色発光ダイオード発明者の中村修二氏と日亜化学工業株式会社との間の訴訟)、「107億円法人税更正処分取消請求事件」(旺文社がオランダの子会社を使って日本の課税を免れたという事件。国税・地方税、加算税、遅延利息を合計すると約175億円にも達する税金訴訟)等に関与しました。この旺文社の事件は、周りのほとんどが負けるだろうと言っていたのに、100%勝った(完全勝訴)という点で印象に残っています。
現在勉強を続けている皆さんには、合格後どのような方向に進むのかの“野心”と“戦略”を持って頑張ってほしいと思います。

最後に

今年の3月、小泉首相が主宰する「知的財産戦略会議」が発足しました。また、このところ特許の権利者を強く保護する判決が出るとともに、島津製作所の田中耕一氏のノーベル賞受賞で、特許権をはじめとする知的財産権への関心が高まっているようです。今回の訪問で、改めて特許権等の重要性を教えていただきました。また、「『憲法』・『正義』にかなった新しい判例を創る」という升永氏のお言葉に大変感銘を受けました。1月におこなわれる升永氏の「明日の法律家講座」に多くの方に参加していただきたいと思います。

(文責 首藤敬勝)

今回の訪問は、2004年以前に行われました。
当事務所は、2008年6月末に解散しております。