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2008年度 新司法試験 出題分析速報 Vol.4

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問題内容の詳細な分析結果と、学習方法をお伝えします!
<公開講座>2008年新司法試験 出題速報

論文式試験 刑事系編》

2008/5/20(火)

問題文は、既に法務省のホームページで公表されています。それをご参照ください。
>>>平成20年 新司法試験試験問題(法務省ウェブサイト)
【全体について】

 刑法(第1問)に関して指摘させていただくと、07本試験では、設問において特に論ずべき点が指定され、その点との関連で具体的判例が引用されるなどしていたのに対し、今回の本試験では、そのような指定や判例の引用もなく、問題に挙げられた具体的事実関係をもとにして、甲及び乙の罪責を論ずるという、非常にシンプルな形式の問題となりました。また、検討が求められていると考えられる論点も、けっして複雑なものではなく、刑法の基本的な理解を元にして罪責を基礎づけるための要件を検討し、問題文の事実を忠実に当てはめていけばいい問題となっています。この点は、07本試験とほぼ共通であり、全体として、07本試験以上に旧試験に近く、刑法の基本的な理解が問われている問題だと考えられます。

  刑事訴訟法(第2問)に関して指摘させていただくと、与えられた具体的な事実関係をもとに、設問1・2で、捜査・公判における各論点を検討するという点は、07本試験と共通です。07本試験では、特に設問1(ビデオ撮影・録画の適法性についての検討)に関して、与えられている事実関係が、2つの撮影場所でそれぞれ異なる特徴を持っている点など、やや複雑であり、事実を的確に抽出して議論するのは相当困難であったと評価できるのに対し、今回の本試験は、刑事訴訟法の基本的な理解ができている人であれば、事実関係が07本試験に比べて単純明快であり、どの設問・どの論点に関してどの事実を利用して答案をまとめればいいかということに関して、特に迷うようなところは見当たりません。刑事訴訟法についても、今回の本試験は、07本試験以上に、刑事訴訟法の基本をきちんと理解しているかどうかが問われているということができます。

 以上のように、今回の本試験の刑事系論文問題は、ある程度詳細な事実関係が与えられてはいるものの、その事実関係の分析や拾うべき事実の取捨選択にはそれほどの手間はかからず、全体として、刑法・刑事訴訟法の基本的な理解と、法的思考力をベースに説得力ある論文を書く力が問われているといえます。そのような意味で、これまでの本試験に比べて、より旧試験に近づいているということができるでしょう。

第1問(刑法)

 甲、乙それぞれについての、窃盗、強盗、強盗致傷又は強盗致死の罪責を、それぞれきちんと認定するとともに、共犯関係の基本的な理解をもとにして、甲・乙がそれぞれどの範囲で罪責を負うのかという点を的確に認定することが求められています。刑法の基本的な理解を試す問題といえます。特に、共犯関係についての基本から考え結論に至る筋道をきちんと示すこと、具体的事実を適切に評価して結論を導いていくことが、非常に重要と思われます。いわゆる論点についての知識ではなく、現場で基本から考えていくことが求められる問題ということができます。
 以下、主な論点と考えられる点について、どのような点に留意した解答が求められると考えられるかを、若干ご説明します。

1 住居侵入・窃盗について、乙が共同正犯となるか幇助犯となるにすぎないか
 この点に関しては、乙が甲に対し、「俺はそんな危ないことはしたくない。」と述べてはいるものの、甲が実行する住居侵入・窃盗行為について乙が果たした重要な役割が、問題文の中にはっきりと示されています。共犯論の基本から解き起こして、共同正犯と幇助の区別を明示するとともに、冗長にならないように気をつけながら、事実を的確に抽出して当てはめることが重要です。結論としては、共同正犯となると考えるのが素直でしょう。

2 甲の強盗致傷の成否
 この点に関しては、甲が強盗の実行行為として行っている脅迫によって恐怖を感じたBが、甲から逃走しようとして転んで怪我をしている点について、刑法240条前段の、「強盗が、人を負傷させたとき」に該当するかを論ずべきことになります。強盗致傷が重い罪責を負わせている趣旨から解き起こして上記の要件を検討した上で、具体的な事実を当てはめて評価することが重要でしょう。

3 乙がBを殴って死亡させている点についての罪責(事後強盗致死の成否)
 最終的には、乙の行為が、刑法240条後段の、「強盗が、人を」「死亡させたとき」に該当することになるかを認定することになると思われますが、その前提となるべきいくつかの点をきちんと認定し、論理を的確に積み重ねていくことが重要となります。すなわち、Bに対する傷害行為を行っている時点の乙が、事後強盗罪(刑法238条)における「窃盗」といえるのか、Bに警察に通報されることにより、共犯者の甲が逮捕されるのを防ぐために傷害行為を行った場合も、同条の「逮捕を免れ」「るため」に該当するのかといった点です。また、乙の殺意の有無についても、一言言及すべきでしょう。
「論点についての論証を行う」ということよりも、刑法の条文に忠実に、きちんとロジックを組み立てて当てはめを行っていくことが何より重要となるでしょう。

4 甲の強盗致傷行為について乙が、乙の強盗致死行為について甲が、それぞれ罪責を負うか
 いずれについても、窃盗の共謀しか成立していないと考えられる甲・乙間では、否定することになるのが基本です。本問では、何らかの理屈を用いて(例えば承継的共犯の理論)、肯定の結論を取ることも不可能ではないとも思われますが、そのような議論を行うよりも、共犯が他人の行為の責任を負う理由から解き起こして、本問では、それぞれ責任が否定されることになることをきちんと明示することが、何より重要でしょう。

第2問(刑事訴訟法)

 1つの設問で捜査の適法性を、もう1つの設問で公判における証拠能力の問題を出題するという点では、06本試験、07本試験と共通であり、これが、新司法試験における典型的な出題パターンといえるようになったと思われます。ただ、今回の本試験は、捜査で捜索・差押えに関しての適法性が問われている点、伝聞法則が問われている点で、06本試験との共通性を強く指摘できるでしょう。
 設問1・設問2それぞれで、何を論ずべきかという点、また、論ずるに当たってどの事実を拾えばいいかという点は、ある程度刑事訴訟法を学習した方であれば、ほとんど迷うことがなかったのではないかと思われます。特に設問2は、「誰でも書けてしまう。どこで差がつくのだろう。」という印象を持たれた方も多いかもしれません。
 また、設問1で証拠能力の問題を問い、設問2で捜査の適法性を問うているという設問の順番も非常に特徴的です。設問1では、「その捜索差押手続の適法性については論じる必要はない。」という注釈があるわけですが、それでも、先に捜査の適法性を問うてしまうと、それが証拠能力に与える影響を考える受験生がいるのではないかと考えて、あえて順番を「逆」にしたものと思われます。論ずべき点を限定して、基本からていねいに議論してほしいという考査委員の考えの表れだと思われます。
 以上のように、論ずべき点を絞り、かつ、明示し、そして、拾うべき事実も比較的明確であるという、非常に「親切な」問題が、今回の刑事訴訟法の出題です。いわゆる論点や判例の知識がどれだけあるかということよりも、刑事訴訟法の基本の理解と、そこから論理的に答案を組み立てることのできる法的思考力が求められているといえるでしょう。

〔設問1〕について
 設問は、「本件ノートの証拠能力について、その立証趣旨を踏まえ、具体的事実を摘示しつつ論じなさい。」というものです。
 本件ノートは日記で、その作成者のWが既に死亡していることから、伝聞例外によって証拠とできるかが問題となります。日記が刑事訴訟法323条書面に該当するか(結論は否定するのが一般的でしょう。)について簡単に言及した上で、本件ノートの321条1項3号書面として証拠能力を持つかどうかを検討すべきことになります。同号の要件にかかわる事実であることが一見してよく分る事実が問題文に与えられており、それらを冗長にならないように注意しながら的確に拾って検討すべきことになります。
 ただ、その際に留意しなければならないのは、「立証趣旨を踏まえ」とされている点です。検察官の立証趣旨は、<1>Wが平成20年1月14日に甲方で本件覚せい剤を発見して甲と会話した状況、<2>本件覚せい剤を甲が乙から入手した状況、<3>X組が過去に覚せい剤を密売した際の売却価格とされています。この3つの立証趣旨それぞれについて、伝聞法則の的確な理解を踏まえた検討が求められます。求められているポイントは2つだと思われます。1つは、<1>の立証趣旨との関係ではWについての伝聞が問題になるのにすぎないのに対し、<2>、<3>の立証趣旨との関係では、甲についての伝聞も問題となりうること(したがって、再伝聞の問題となること。)です。もう1つは、<2>と異なって<3>の立証趣旨との関係では、事実の真実性ではなく甲の「営利目的」の立証のためであり、甲についての伝聞は問題とならないのではないかということです。
 <1>、<2>、<3>の立証趣旨ごとに的確な議論ができるかどうかによって、伝聞法則の基本についての正確な理解を試しているといえるでしょう。

〔設問2〕について
 設問2では、捜索に際して、<1>警察官が甲の住居にガラス窓を割って入った行為の適法性、<2>捜索差押令状を事後に提示したことの適法性を論ずべきは明らかですし、それについての事実関係も、非常に分りやすい形で与えられています。そういう意味では、「差がつきにくい」問題ともいえそうです。
 論ずべき際のポイントは、条文・基本からきちんと出発して論理的に答案が組み立てられているかでしょう。<1>の論点については、刑事訴訟法222条1項・111条1項による「必要な処分」の意義を明示し、それに該当するかどうかという形で当てはめを行っていること、<2>の論点については、同222条1項・110条による捜索差押令状の呈示が求められる趣旨から、本件における事後呈示をもって適法といえるかを適切に論じていることが重要と思われます。
 また、本設問が、「捜索の適法性」としていて、「捜索差押えの適法性」とはしていないことにも留意が必要でしょう。本件では、捜索差押令状によって捜索を行い、その結果覚せい剤を発見しているにもかかわらず、その差押えは、刑事訴訟法220条1項2号によって、すなわち逮捕に伴う差押えとして行っているとなっています。しかし、差押えの適法性については論述が求められていない以上、基本的に、捜索差押令状による捜索の適法性について論ずれば十分であるということになると思われます。設問の文章を正確に読み、それに忠実に答えることも重要でしょう。

 
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