甲、乙それぞれについての、窃盗、強盗、強盗致傷又は強盗致死の罪責を、それぞれきちんと認定するとともに、共犯関係の基本的な理解をもとにして、甲・乙がそれぞれどの範囲で罪責を負うのかという点を的確に認定することが求められています。刑法の基本的な理解を試す問題といえます。特に、共犯関係についての基本から考え結論に至る筋道をきちんと示すこと、具体的事実を適切に評価して結論を導いていくことが、非常に重要と思われます。いわゆる論点についての知識ではなく、現場で基本から考えていくことが求められる問題ということができます。
以下、主な論点と考えられる点について、どのような点に留意した解答が求められると考えられるかを、若干ご説明します。
1 住居侵入・窃盗について、乙が共同正犯となるか幇助犯となるにすぎないか
この点に関しては、乙が甲に対し、「俺はそんな危ないことはしたくない。」と述べてはいるものの、甲が実行する住居侵入・窃盗行為について乙が果たした重要な役割が、問題文の中にはっきりと示されています。共犯論の基本から解き起こして、共同正犯と幇助の区別を明示するとともに、冗長にならないように気をつけながら、事実を的確に抽出して当てはめることが重要です。結論としては、共同正犯となると考えるのが素直でしょう。
2 甲の強盗致傷の成否
この点に関しては、甲が強盗の実行行為として行っている脅迫によって恐怖を感じたBが、甲から逃走しようとして転んで怪我をしている点について、刑法240条前段の、「強盗が、人を負傷させたとき」に該当するかを論ずべきことになります。強盗致傷が重い罪責を負わせている趣旨から解き起こして上記の要件を検討した上で、具体的な事実を当てはめて評価することが重要でしょう。
3 乙がBを殴って死亡させている点についての罪責(事後強盗致死の成否)
最終的には、乙の行為が、刑法240条後段の、「強盗が、人を」「死亡させたとき」に該当することになるかを認定することになると思われますが、その前提となるべきいくつかの点をきちんと認定し、論理を的確に積み重ねていくことが重要となります。すなわち、Bに対する傷害行為を行っている時点の乙が、事後強盗罪(刑法238条)における「窃盗」といえるのか、Bに警察に通報されることにより、共犯者の甲が逮捕されるのを防ぐために傷害行為を行った場合も、同条の「逮捕を免れ」「るため」に該当するのかといった点です。また、乙の殺意の有無についても、一言言及すべきでしょう。
「論点についての論証を行う」ということよりも、刑法の条文に忠実に、きちんとロジックを組み立てて当てはめを行っていくことが何より重要となるでしょう。
4 甲の強盗致傷行為について乙が、乙の強盗致死行為について甲が、それぞれ罪責を負うか
いずれについても、窃盗の共謀しか成立していないと考えられる甲・乙間では、否定することになるのが基本です。本問では、何らかの理屈を用いて(例えば承継的共犯の理論)、肯定の結論を取ることも不可能ではないとも思われますが、そのような議論を行うよりも、共犯が他人の行為の責任を負う理由から解き起こして、本問では、それぞれ責任が否定されることになることをきちんと明示することが、何より重要でしょう。
|