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2009年度 新司法試験 出題分析速報 Vol.2

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問題内容の詳細な分析結果と、学習方法をお伝えします!
<公開講座>2009年新司法試験 出題速報

《論文式試験 公法編》

2009/5/19(火)改訂

【第1問(憲法)】

1 問題の概要
 まず、本年度公法系第1問では、昨年までと同様に、考えられる弁護士の主張と、それに対する反論を求める形式が出題されています。ただ、昨年までは、設問1にて主張、設問2にて反論を述べることになっていましたが、本年度においては、設問ごとに、主張と反論を述べる形式に変更されました。設問1、2ともに問い方がほぼ同一であるため、答案を書く際には、設問1と設問2の比較を意識することが必要となっているといえるでしょう。
 問題文のテーマは、実在する、厚生労働省が制定した「遺伝子治療臨床研究に関する指針」を用いた先端技術の研究に関するものでした。
 Y県立大学医学部で研究を行っていたX教授が、Cを被験者として、遺伝子治療の研究を開始したが、予期せぬ問題が生じ、被験者Cは重体に陥ったため本研究を続けることができなくなったところ、同医学部長より、「審査委員会規則」(第8条「医学部長は、被験者の死亡その他遺伝子治療臨床研究により重大な事態が生じたときは、……遺伝子治療研究の中止又は変更その他必要な措置を命ずるものとする。」)に基づく研究の中止命令を受けた。さらに、Cが本研究の被験者となることを受諾する条件として、被験者Cの求めに応じて、被験者C及びその家族4人の遺伝子にかかわるすべての情報をCに伝えたというX教授の行為が、同医学部の定めた「遺伝子情報保護規則」(第6条第1項「本学部の教職員は、いかなる理由による場合であっても、遺伝子情報を開示しないものとする。」、同第2項「前項の規定にかかわらず、……遺伝子検査又は診断を受けた者からの求めがある場合には、遺伝子治療の対象である疾病の原因となる遺伝子情報に限り、本人に開示しなければならない。」)に違反したとして、1か月の停職処分を受けた。この2つの処分について、その取消しを求めようとするX教授から依頼を受けた弁護士が主張し得る憲法上の主張及び、大学側の主張(反論)を想定した上での自身の結論及び理由を述べさせるものとなっています。
 解答するに当たっては、あらゆる論点を全て検討するのではなく、問題の中で何が重要かを見極めて、書くべきところをどこにしぼっていくかを考えることが非常に重要になっているといえます。
 昨年までと比較して、問題文の分量自体はさほど変わりませんが、資料が2ページに減少し、その分、全体の分量は08年度の8ページから4ページに減少しました。問題本文については、遺伝子治療についての解説、上記「遺伝子治療臨床研究に関する指針」、「審査委員会規則」及び「遺伝子情報保護規則」の成立に至る過程の概略が大半を占め、X教授の事実に関する記述が約3割程度という構成になっています。

2 問題の特徴
 今年度は、昨年と比べ、(1)事例(問題文)及び(2)設問の双方に変化がみられました。
 まず、(1)事例(問題文)に関しては、参考資料を含めたページ数が昨年は8ページであったのに対し、今年度は4ページへと減りました。しかし、これを単に与えられる情報量が減ったとみることは危険です。与えられる情報が、質を確保しながら量を減らした、すなわち「圧縮された」とみるべきでしょう。現場では、この少ないながらも出題者からの強いメッセージが込められた一つ一つの情報について、自分の頭で考え、いかに法的な意味を与えることができるかが試されたのではないかと考えられます。具体的には、法令審査や適用審査における立法目的及び手段の両者の検討の際、事例に含まれている立法事実を発見・摘示し、問題文冒頭に記載された「遺伝子治療に関する知見」を踏まえ立法事実を法的に評価し、「あなた自身の結論」を出すことが要求されていると考えられます。
 次に、(2)設問に関しては、弁護士の憲法上の主張、これに対する相手方の主張の想定、そして最後に、両見解を踏まえあなた自身の考えを述べるという、いわゆる三者形式が、今年度も昨年と変わることなく採用されました。しかし、今年度は、昨年とは異なり、その三者形式が設問の一つの中に凝縮され、設問数は維持されたままです。つまり、限られた時間の中で、2つの憲法上問題となる行為を、それぞれ三者形式の形で論じることを要求されています。現場で、事例から多数の憲法上の問題点を発見することはそれほど困難ではないかもしれませんが、それをすべて挙げようとして、一つ一つの議論を掘り下げることなく終わってしまうと、高い評価は望めません。それらのうち、いずれの問題点について厚く展開することが望ましいのか、その判断を的確に行うことが、きわめて重要になっています。

3 設問1について
 設問1では、(1)そもそもY県立大学医学部長が行った本研究中止命令に対し司法審査を行うことは可能であるのか、(2)Y県立大学医学部長が本研究中止命令の根拠とした審査委員会規則第8条が違憲・無効ではないか、(3)仮に審査委員会規則第8条が合憲であるとしても、本研究中止命令は違憲ではないか、と主張することが考えられます。
 (1)について、大学側は、部分社会の法理を根拠に、大学の研究内容の選択に関し司法審査を及ぼすべきでないと主張することが考えられます。この点については、遺伝子治療臨床研究の性格や、研究の中止命令の及ぼす影響などを考慮して、「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題」(最判昭52.3.15)に当たるのかを検討することになるでしょう。
 (2)については、文部科学省及び厚生労働省が「罰則を伴った法律による規制」という方式を採らず、制裁規定を一切含まない「本指針」を制定し柔軟な規制にとどめたこととの関係で、大学が独自に教授個人の学問研究の自由に対する規則を定めることができるのか、できるとしても本指針より強力な規制である研究の中止又は変更等まで定めることが許されるのか。規制の目的及び手段の双方について、問題文冒頭に記載された「遺伝子治療に関する知見」及び本件規則の立法事実を踏まえ、検討していくことになるでしょう。これらの検討の中で、大学の自治(教育内容決定権)はどのように位置づけられるのかも問題になり得ます。
 (3)については、X教授自身に本指針で禁止されているような遺伝的改変の目的がなかったこと、本研究の事故は全く予想し得なかった問題で生じたこと、Cは重体に陥ったが回復する程度であったことなどの事実を考慮し、「重大な事態」の要件に該当するのか、該当するとしても中止まで命令することが許されるのかを検討していくことになると考えられます。

4 設問2について
 設問2では、(1)そもそもY県立大学医学部長が行った本件停職処分に対し、司法審査は可能であるか、(2)Y県立大学医学部長が本件停職処分の根拠とした遺伝子情報保護規則第6条が違憲・無効ではないのか、(3)仮に遺伝子情報保護規則第6条が合憲であるとしても、本件停職処分は違憲ではないか、と主張することが考えられます。
 (1)については、設問1と同様に、部分社会の法理の適用の有無を論じていくことになります。本件処分が1か月の停職処分という重い処分であることからすれば、本件が大学の内部的問題にとどまり司法審査が及ばないとの結論を導くことは適当でないでしょう。なお、設問1で論じたことをそのまま書き写すようなことをするのは、限られた時間で中身のある答案を仕上げるという観点で、非常にもったいないことです。「前述のとおり」などと要領よくまとめることが重要です。
 (2)については、被験者の自己決定に必要な情報を取得する利益を憲法上のどの人権に根拠付け侵害と主張していくのか、被験者の人権侵害を第三者であるX教授が主張していくことは許されるのか、許されるとして遺伝子情報保護規則第6条が「いかなる理由による場合であっても」開示を禁止し、開示するとしても、本人のみの情報で、かつ、遺伝子治療の対象である疾病の原因となる遺伝子情報に限り開示していることを、本指針第一章第七並びに第二章第三7号及び8号等の趣旨を踏まえ、どの点がどのように違憲又は合憲か検討していくことになると考えられます。
 (3)については、X教授は「被験者となることを受諾する条件」に応える理由でCに対し情報開示したにすぎないこと、開示したのは全くの第三者の遺伝子情報ではなく自己の難病の発見に必要な家族の遺伝子情報であったこと、被験者CにはC自身の全部の遺伝子情報を開示したことなどの事実を考慮し、本件1か月の停職処分としたことが違憲かを検討していくことになります。

【第2問(行政法)】

1 問題の概要
 事案は、大要「建設業者であるAが、B県内にある自己の所有地に大型マンション(本件建築物)を建設すべく、周辺住民らに対して説明会を開催し、協議が行われたものの、話合いはまとまらなかった。それにもかかわらず、Aが建築確認をB県建築主事に申請し、建築確認がなされたため、周辺住民のうちF、G、H、Iの4名が審査請求を経て、訴訟を提起しようとしている」という内容でした。
 設問は、「1.Fらが本件建築物の建築を阻止するために考えられる法的手段(訴訟とそれに伴う仮の救済措置)を挙げた上で、それを用いる場合の行政事件訴訟法上の問題点を中心に論じなさい。2.考え得る本件確認の違法事由について詳細に検討し、当該違法事由の主張が認められ得るかを論じなさい。また、原告Fがいかなる違法事由を主張できるかを論じなさい。」というものでした。両設問とも、建築基準法43条2項の委任するB県建築安全条例(以下「安全条例」)4条の定める接道義務が主要なテーマとなります。
 資料としては、法律事務所の会議録(資料1)、現場付近の説明図(資料2)、関連法令(建築基準法、安全条例、B県中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例(以下「紛争予防条例」)。いずれも抜粋。資料3)が付されていました。
 分量は、問題文と設問で1ページ弱(昨年より若干少ない)、資料1が2ページ(昨年よりかなり長い)、資料3が4ページ(昨年とほぼ同じ)でした。また、資料2は1ページでしたが、このようなビジュアル的な資料はここ2年見られなかったものでした。その結果、設問・資料合計で8ページとなり、昨年より2ページ増加しました。誘導がわかりやすく論点を発見しやすいので問題の難易度は低下しているといえますが、条文のページが全体の半分を占めていますので、個別行政法令を短時間に的確に読み解く力が必要となります。特に主要な法令については事前にある程度の理解をしておくべきと思われます。

2 問題の特徴
 設問1が法的手段(仮の救済含む)、設問2が違法事由についての検討を求めるものであるというのは、過去2年と同様であり、この形式は定着したといえるでしょう(行訴法上の手段を問う問題である限り)。
 ただ、設問1については、過去2年では、考え得る複数の法的手段の比較検討が要求されていたのに対し、今年は、ほぼ取消訴訟しか考えられない事案が設定されているので、その点では負担が軽減されています。また、重要論点ながら過去に出題されたことのない原告適格をかなり重点的に論じさせるものとなっていると考えられます。
 設問2についても、違法事由に関する誘導が、昨年と比較して具体的になっており、論点を落とす危険が軽減されています。行政法に関しては、論点抽出能力よりも、論点の存在を前提としてそこから法的議論を組み立てていく能力の方にウエイトが置かれる傾向が年々強まっているといえるでしょう。

3 設問1について
 用いるべき訴訟手段と仮の救済は何かがまず問われていますが、前述したように訴訟手段は取消訴訟しか考えられず、その結果、仮の救済も執行停止のみということになります。ただ、執行停止については類型(処分の効力の停止)にまで言及する必要があると考えられます。
 取消訴訟の検討では、要件を全て的確に指摘することは一般的には好ましいことですが、本問では、問題文の中で、論ずる必要のない要件が指摘されていますので、気を付けるべきでしょう。もちろん、メインは原告適格ですが、訴えの利益(マンションが完成していないこと)についても一言触れたほうがよいでしょう。原告適格については、4人の属性を個別に考慮して論述することが明示的に求められています。この論点では「法律上保護された利益説」に立つ方が多いでしょうが、本問ではF〜Iが処分の名あて人ではないため、行訴法9条2項が問題となります。ここでは、建築基準法と紛争予防条例の目的を比較し、同条例が同項にいう関連法令であるという結論を導くことが重要と考えられます。また、各人の原告適格を裏付ける材料としては、(1)近隣関係住民(紛争予防条例2条4号)であること(F、G)、(2)至近距離の施設の利用者であること(H)、(3)説明会の開催を求める権利が与えられていること(F〜I)が挙げられます。それぞれ本問のような事案との関係では直接に判示したといえる有名な判例はないので、個人ごとの事情や、考慮すべき条文が異なることを意識しながら丁寧に論述すべきでしょう。
 執行停止は、「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」ことと、「本案について理由がない」とはいえないこと、という2つの要件が中心となりますが、後者については、簡単に触れれば十分でしょう。前者については、行訴法25条3項を参考に考慮要素を挙げて、あてはめを充実させるべきでしょう。

4 設問2について
 考えられる違法事由は、弁護士間の会話で挙がっている、(1)道路幅との関係での違法、(2)児童室との関係での違法、(3)Aの紛争予防条例(説明会開催義務)違反、(4)公聴会開催義務違反であり、これらを検討することが求められていると思われます。
 (1)では、本件建築物が接すべき道路の幅員、道路に接すべき長さとも、形式的には安全条例4条1項、2項の要件を満たしていますが、Fが懸念するように、火災時などに消防車等が進入することが困難で、防災上問題があること等の理由で違法となりえないかが問題となります。遮断機の存在により公道に出入りする部分の幅が3mとなっている点や、緊急時に遮断機を上げられない可能性があるという点をどう評価するかがポイントと思われます。その際に、建築基準法21条や43条2項が何を意味するのかを検討することが必要になってくるでしょう。
 (2)では、児童室の出入口と駐車場出入口との間が10mしかないことから、安全条例27条4号に抵触し違法となります。加えて、同条ただし書の「交通の安全上支障がない」という要件を基礎付ける事情は見当たらないことに触れておけばよいでしょう。
 (3)では、紛争予防条例違反が本件確認の違法を基礎付けるかという点を検討することになりますが、紛争予防条例の手続を踏むことが本件確認の手続要件ではないため、違法ということは困難でしょう。
 (4)では、行政手続法10条の指摘が最大のポイントでしょう。

  以上で違法としたもののうち、Fがいずれを主張できるかについては、行訴法10条1項を挙げ、どれがFの「法律上の利益」にかかわるのか的確に指摘すれば足りるでしょう。

5 最後に、伊藤塾全国公開模試の問題との的中について
試験直前に行いました、伊藤塾の「新司法試験 全国公開模試」において、本問と類似の事案を用いた問題を出題していました。
本問では、設問1にて、建築確認処分に対する取消訴訟に関して、複数の当事者の原告適格を論ずることが重要となっています。上記伊藤塾模試でも同様に、建築確認処分に対する取消訴訟に関して、複数の当事者の原告適格を論ずることを求める問題を出題しました。(的中内容詳細>>>
 この点に関して、受講生のみなさまに、本番で実際に答案を書く際に上記模試での演習をお役に立てていただいたのであれば、幸いです。

 
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