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2009年度 新司法試験 出題分析速報 Vol.4

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問題内容の詳細な分析結果と、学習方法をお伝えします!
<公開講座>2009年新司法試験 出題速報

論文式試験 刑事系編》

2009/5/19(火)

問題文は、既に法務省のホームページで公表されています。それをご参照ください。
>>>平成21年 新司法試験試験問題(法務省ウェブサイト)
第1問(刑法)

1 問題の概要
 本年刑事系第1問では、昨年と同様に、甲及び乙の罪責について、具体的な事実を摘示しつつ論ずることが求められています。事案は、高利の貸金業を営むAに従業員として雇われている甲が、自己がAに信頼されAの銀行預金口座の通帳等の管理を任せられていることを利用して、遊興費を得る目的でAの口座から自己が代表者となっているB社の口座に銀行預金を振り込むことを計画し、部下である乙に事情を秘して振込み手続を命じたところ、乙は甲の計画に気付いた上で自己の借金返済のために便乗し、さらに、甲と乙が共同して犯行を隠蔽するために乙が強盗の被害に遭ったことを装い、偽計によって警察官を出動させたというものです。
 分量は、問題文と設問で2ページ強であり、昨年度とほぼ同じ量でした。なお、今年も、特に資料は添付されていません。

2 問題の特徴
 総論分野では共犯論を中心に、各論分野では財産犯を中心に出題されている点は例年とおりであり、この傾向は来年以降も続くものと思われます。今年度の特色としては、(1)預金による占有や身分犯の共犯といったやや処理が複雑な論点が絡んでいること、そして(2)各論において初めて個人法益以外の論点が正面から問われたことが挙げられます。その意味では、昨年度に比べてやや書きにくい問題であり、難問といえるのではないかと思います。もっとも、いずれの論点も重要論点であることには変わりはなく、受験生としては、あらためて刑法全体について幅広く理解を深めておく必要があるといえるでしょう。

3 甲の罪責について
 甲の罪責については、まず、業務上横領罪(刑法253条)の正犯又は共犯の成否が問題となります。そして、同罪の成否に関して問題となるのが「占有」の要件です。すなわち、本件では甲が預金相当額の(銀行にある)金銭を占有しているといえるかどうかが問題となります。この点については、そもそも預金による金銭の占有が認められるのかという点を理論的に説明すること及び事案における甲の業務内容やAの通帳等の保管態様等を当てはめに生かしつつ「占有」要件を満たしているか否かを検討することが必要となります(なお、以上の点について、甲には背任罪の成否が問題となると考えた方もいると思いますが、その場合であっても、業務上横領罪と背任罪は法条競合の関係にありますので、前提として業務上横領罪の成否を検討する必要があることに注意が必要です。)。さらに、甲は間接正犯として犯罪を遂行する予定であったにもかかわらず、乙が甲の計画に気付いた上で自己の借金返済のために便乗していますので、この点についての錯誤が甲の罪責にどのように影響するのかを検討することも必要です。間接正犯と教唆犯の錯誤の問題として処理するなど、この点についてはいろいろな考え方があると思います。最後に、甲がどの範囲(200万円か80万円か)で罪責を負うのかという点も問題となります。

 甲の罪責としては、次に、乙と共同して犯行を隠蔽するために乙が強盗の被害に遭ったことを装って警察官を出動させた点について、偽計によって警察官の「業務」を妨害したものとして偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立しないかが問題となります。この点については、「業務」と「公務」の関係から、どのような公務が「業務」に含まれ業務妨害罪によって保護されるかを検討することになります。この際には、警察官のような、典型的な「強制力を用いる権力的公務」であっても、偽計に対しては無力ではないか、といった問題意識を示せるとよいでしょう。

 甲の罪責については、その他、乙が銀行預金をBの口座に振り込んだ行為や引き出した行為に対する共犯の成立も問題となります。なお、財産犯については、Aに対する犯罪と銀行に対する犯罪をきちんと区別することが必要です。

4 乙の罪責について
 乙の罪責については、まず、甲の業務上横領行為に関与している行為についてどのような犯罪が成立するかが問題となります。この点は、業務上横領罪が身分犯であることから、刑法65条の解釈及び当てはめが必要となります。

 次に、ATM機を操作してB社の口座に入金した行為について、真正なカードや正確な暗証番号を用いていることから電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)の成否が、Aの口座から現金120万円を引き出した行為について窃盗罪(刑法235条)の成否が問題となります。また、120万円の引き出し行為については、甲の指示に反する行為であるため、甲との委託信任関係に反する行為として横領罪の成否も問題となります。

 乙の罪責については、以上の中から成立した各犯罪について、どのような罪数処理をするかも問題となります。

第2問(刑事訴訟法)

1 問題の概要
 事案は、以下のような内容です。
  平成21年1月17日、M埠頭の海中でVの死体が発見され、その死因が頸部圧迫による窒息死であることが判明したことから、Vに対する殺人罪及び死体遺棄罪の捜査が開始された。埠頭付近に設置された防犯カメラに甲が写っていたことから、甲を取り調べたところ、甲がVを殺害し死体を海に捨てた旨の供述をしたことから、警察は甲を逮捕した。
 甲が、Vの殺人はT社を経営する乙から依頼された旨供述したことから、司法警察員警部補Pらは、同年1月26日、捜索差押許可状の発付を受け、 T社に対する捜索をして、その捜索中に、コンクリートの壁にボールペンで書かれた文字を消した部分[写真(1)]、X銀行の預金通帳(T社の従業員Aの名義)の表紙及び印字されているすべてのページ[写真(2)]、Y銀行の預金通帳(Aの名義)の表紙及び印字されているすべてのページ[写真(3)]、乙名義のパスポートの名義の記載があるページ、乙の名刺10枚、はがき3枚のあて名(乙名)部分及び印鑑2個の刻印(A名義)部分[写真(4)]を写真撮影した。なお、Pらは、X銀行の預金通帳を差し押さえたものの、Y銀行の通帳、パスポート、名刺、はがき及び印鑑をいずれも差し押さえず、捜索差押えを終了している。
 その後、Pらは、M埠頭において、海中に転落した本件車両と同一形式の実験車両及びVと同じ重量の人形を用い、本件車両を海中に転落させた状況を再現する実験を行った。この実験結果については、実況見分調書が作成されている。
 その後、甲は、乙と共謀の上、Vを殺害してその死体を遺棄した旨の公訴事実で起訴された。

 設問は、「〔設問1〕[写真(1)]から[写真(4)]の写真撮影の適法性について、具体的事実を摘示しつつ論じなさい。〔設問2〕【事例】中の実況見分調書の証拠能力について論じなさい。」というものでした。

2 問題の特徴
 まず、形式面については、昨年と同様、捜査法の分野、証拠法の分野から各一題の出題でした。ただし、問題のページ数は、4ページから5ページ、資料は1つであったものが2つへと増えています。限られた時間の中でこれらをどのように読んで問題を処理できたかが重要であったと思われます。
 また、内容面については、設問1では[写真(1)]から[写真(4)]の違いを踏まえた上で、事実に対する評価・意味付けをして写真撮影の適法性を検討すること、設問2では実況見分調書の要証事実を踏まえた上で、実況見分調書の証拠能力を検討することが求められていたと思われます。その際には、重要と思われる問題については深く掘り下げて論じ、問題が少ないと思われる問題についてはあっさり処理することが必要となると思われます。

3 設問1
 設問1では、捜索差押えの執行時における写真撮影の適法性が問題となります。[写真(1)]から[写真(4)]までの違いを踏まえた論述が必要になると思われます。
 具体的には、まず「強制の処分」(197条1項ただし書き)につき、判例・学説の規範を論じたうえで、具体的に写真撮影がこれにあたることを指摘すべきと考えられます(本件写真撮影は、公道上等ではなく、捜索差押えの現場で行われているものですから、任意処分と解する余地はないでしょう。)。その上で、本件写真撮影に捜索差押許可状の効力が及ぶか、及ぶとしてもどこまで認められるのかを論じていくことが必要と思われます。あてはめに際しては、捜索差押えの対象物に含まれるか否かを明示し、含まれるとしても写真撮影の必要性があるかどうかを検討していくと良いでしょう。
 [写真(1)]については、壁の記述部分が、捜索差押許可状の対象となる場所の一部であり、差押えることのできない建造物であるという特殊性があるため、その点を踏まえた論述をすることが必要となるでしょう。
 [写真(2)]については、X銀行の預金通帳は本件捜索差押許可状の「差し押えるべき物」の対象になっており、実際に差し押える必要性が認められる物件であるという特殊性があると思われます。その上で、Bの抗議反してまで差し押える物をあえて写真撮影する必要性や相当性があるのかどうかが問題になると思われます。
 [写真(3)]については、Y銀行の預金通帳も本件捜索差押許可状の「差し押えるべき物」の対象となっているものの、差し押える必要性がない物件であるという特殊性があると思われますので、それを踏まえた論述が必要となるでしょう。
 「写真(4)]については、パスポート、名刺、はがき、Aという刻印のある印鑑は、本件捜索差押許可状の「差し押えるべき物」の対象に含まれていないものと思われるため、そのような特殊性を踏まえた上で、写真撮影が許されるのかを検討していくことになるでしょう。

4 設問2
 本件実況見分調書の証拠能力として問題となるのは、伝聞法則(刑事訴訟法320条1項)適用の有無となります。
 本件実況見分調書の特徴は、甲が本件車両を海中に転落させた状況を再現し、その再現経過として写真が添付され、その写真の下に被疑者甲の説明が記載されているという、いわゆる犯行再現実況見分調書であることです。
 設問2は、このような本件実況見分調書の特徴を踏まえつつ論じることが必要となると思われます。
 なお、参考になる判例として、平成17.9.27(平17重判刑訴7事件)があります。

 具体的には、(1)実況見分調書は原則として刑事訴訟法320条1項の伝聞法則の適用がなされるが、例外的に刑事訴訟法321条3項の適用がされることとその理由、(2)写真部分について、実況見分調書の一部として(1)に従えば足りると考えてよいのか、そうでない場合、要証事実との関係で、刑事訴訟法321条以下のいかなる条文を適用すべきか、(3)写真の下の甲の説明部分について、写真と一体として(2)に従えば足りると考えるべきか、そうでない場合、要証事実との関係で、321条以下のいかなる条文を適用すべきか、(4)(2)で刑事訴訟法322条1項の適用を問題として写真を供述録取書に当たるとした場合、本件では「被告人の署名若しくは押印のあるもの」という要件を満たしているといえるか、等が問題となると思われます。

 これらを論じる際のポイントとしては、以下が考えられます。
 (1)については、検証調書と実況見分調書の類似性を理由に、321条3項が適用されることを簡潔に示すべきでしょう。
 (2)については、検察官の示した立証趣旨を挙げつつ、これにとらわれず実質的に要証事実を考えるべきであることを示した上で、要証事実が写真で示されたとおりの犯罪事実の存在(内容の真実性)であるのか否かを自分なりに具体的に検討することであると思われます。その際、添付された7枚の写真をそれぞれについて、その要証事実を検討することが極めて重要です。
 (3)については、7つの説明記載の性質(一般に、現場指示と現場供述の2種類があるといわれる)とその要証事実を、(2)と同様、自分なりに具体的に検討することにあると思われます。
 (4)については、写真が被告人の供述録取書に当たるとしても、その機械的な正確性から署名・押印が不要となるか否かを、伝聞法則の趣旨から示すことが良いでしょう。

5 伊藤塾全国公開模試の問題が的中
 試験直前に行いました伊藤塾の「新司法試験 全国公開模試」において、本問と類似の事案を用いた問題を出題していました。
 刑事系第2問では、実況見分調書の記載・実況見分調書に添付された犯行再現写真について、立証趣旨・要証事実を踏まえ証拠能力について検討させるという内容の問題です。(的中内容詳細>>>
 この点に関して、受講生の皆さまに、本番で答案を書く際に上記模試での演習をお役に立てていただけたのであれば、幸いです。

 

 
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