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平成22年 新司法試験 出題分析速報 Vol.4 〜 論文式試験 公法系

Vol.1 短答式試験編Vol2. 論文式試験 民事系Vol3. 論文式試験 刑事系|Vol4. 論文式試験 公法系

2010/5/18(火)

論文式試験 - 公法系

【公法系第1問】

1 全体の概要

今年度の公法系第1問(憲法)は,問題文が5頁(資料含む),設問が2問という構成になっています。全体を通した特徴として,これまでの本試験(憲法)では,問題文中に多くの事実が挙げられ,その中から,問題解決に必要なものを抽出し,適切に評価することができるかについて重点が置かれていましたが,今年度は,問題文の事実から憲法的な議論の枠組みを設定し,法律構成を適切に考えることができるかに重点が置かれているものと考えられます。

2 設問の概要

〔事例〕
NPOの団体Aは,ホームレス支援活動を行う団体であり,支援活動の一環としてY市内に2つのシェルターを所有している。その2つのシェルターに居住している人は,シェルターを住所として住民登録し,生活保護受給申請や国民健康保険等の手続をしている。
Xは,20年勤めていた会社が倒産し,失職した後,派遣会社に登録し,派遣社員として勤め始めたものの,いわゆる「派遣切り」され,入居していた寮からも退去させられた。そこで,職も住む所も失ったXは,Aに支援を求め,Aのシェルターに入居し,そこを住所として住民登録を行った。
その後,厳しい経済状況の中,Aに支援を求める人が急増し,シェルターが飽和状態になって息苦しさを感じたXは,シェルターに帰らなくなり,Y市内のインターネットカフェを泊まり歩いたり,Y市内のビルの軒先で寝ていたりしていた。
201*年4月にY市が行った居住実態調査により,シェルターを住所として住民登録している人のうち,Xを含む60名には居住実態がないとして,住民登録が抹消された。
住民登録が抹消されたことを知ったXは,それにより生活にどのような影響を受けるか質問しに市役所に行ったところ,国民健康保険者証も失効するなどの説明を受けた。Xには持病があったが,医療費が全額負担になることから,病院に行けなくなった。
住民登録の抹消により,貧困のみならず,生命や健康をも脅かされる状況に追い詰められたXは,生活保護制度に医療扶助もあることを知り,インターネットカフェを「居住地」として,Y市長から委任を受けている福祉事務所に生活保護の認定申請を行ったが,Y市は,財政上の問題やホームレスが増えることにより市のイメージが悪くなることを嫌い,インターネットカフェやビルの軒先を「居住地」とは認めない運用を行っており,Y市福祉事務所長により申請は却下された。
インターネットカフェやビルの軒先を「居住地」あるいは「現在地」と認め生活保護を認める自治体もあることを知ったXは,上記却下処分に対して,不服申立てを行ったが,棄却された。
Xは,住民登録が抹消されたため,選挙人名簿から登録を抹消され,その年に行われた衆議院議員総選挙の際に投票することができなかった。また,このような事態は,従来からホームレス支援を行うNPOから指摘されており,これらのNPOは,7年前の200*年に行われた衆議院議員総選挙の際に,国政選挙における「住所」要件の改正を求める請願書を総務省に提出していた。
Xは,無料法律相談に行き,生活保護と選挙権について弁護士に相談した。

*資料として,【参考資料 1】に住民基本台帳法の抜粋,【参考資料 2】に生活保護法の抜粋,【参考資料 3】にホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の抜粋が添付されています。

〔設問〕
上記事実関係の下,設問1では,Xの訴訟代理人として訴訟を提起するとした場合に,どのような憲法上の主張を行うか,憲法上の問題ごとにその主張内容を論ずるものとなっており,設問2では,設問1で論じた憲法上の主張について,自身の見解を,被告側の反論を想定しながら論じさせるものとなっています。

@生活保護について
Y市に対して,Y市福祉事務所長がXの生活保護受給申請を認めず却下した行為について,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法【参考資料 3】が成立している今日において,住民登録の抹消により国民健康保険が失効している人に対しても受給の申立てを却下したことが憲法25条2項に反するとの主張,また,自治体により生活保護の制度運用が異なることについて,憲法14条1項に反するとの主張が考えられます。

A選挙権について
まず,Y市に対しては,住民登録の抹消により,選挙権が侵害されたことについて,憲法15条1項に反するとの主張を,そして,国に対しては,7年前の200*年に行われた衆議院議員総選挙の際に,NPOから公職選挙法の「住所」要件の改正を求める請願書が提出されていたにもかかわらず,201*年になってもこれが改正されずに,選挙権を行使することができなかったことについて,その立法不作為が,憲法15条1項に反するとの主張をすることが考えられます。

【公法系第2問】

1 全体の概要

公法系第2問は,住民訴訟を中心とした問題です。行政法の論文式問題としては,初めて,行政事件訴訟法,行政手続法が正面から問われていない問題であるところに大きな特徴があります。
本問題全体を通して,地方自治法の法解釈が求められているといえます。また,設問2や設問3は,行政法についての理解があることを前提に,法令から裁量の有無を読み解く能力や判決の趣旨を読み解く能力が問われています。

2 設問の概要

〔事例〕
A村は,人口が年々落ち込み,過疎地域の指定も受け,村の財政は極めて厳しい状況にある。こうした状況下で,A村は,人口減少対策・過疎対策として,Aの保有する土地(10区画)(以下「本件土地」という。)を,希望者を募って平成21年4月20日に売却した。本件土地は,近隣市の中心部まで自動車で30分程度の通勤圏に位置している。A村は,前年にも売却を試みたが,契約締結には至らなかった。そこで,今回は,下限の価格を定めずにチラシ等により広報を行い,10区画すべてを売却した(最も高い区画で560万円,最も安い区画で400万円,売却価格の総額は4800万円)。購入者の中には,支払を一部免除された者のほか,A村の部長の弟や売却担当部局職員の妻,村内の利便性を欠く地域に住む者による買換えをした者が含まれていた。
これに対し,村民B及びCは,平成22年3月19日に地方自治法第242条による住民監査請求を行った。B及びCは,本件土地が慎重に時間をかければより高価で売却できる物件であったにもかかわらず,性急に安価で売却した村長Eの措置は,村の財政を悪化させ,村の財産を無駄遣いするものであり,また,必要な議会の議決を欠くことのほか,本件土地の売買は村関係者の身内の便宜を図るものであり,売却の方式や相手方の選定に関して公正を欠くことを主張した。しかし,監査委員は,Bらの請求に理由がないとした。そこで,Bらは,Eによる本件土地の売買契約の締結によって,A村が損害を被ったとして,住民訴訟を提起しようとしている。Cは,同年5月にA村から転出しており,現在は他の市に住んでいる。また,村民Dは,住民監査請求を行っていないが,Bらの住民訴訟に原告として加わろうとしている。
他方,A村議会の議員の一部は,Bらの請求を認容する一審判決が出された場合には,控訴した上で,Eに対する村の損害賠償権を放棄する議会の議決を行うことを検討し始めている。
Eは,同村の総務課職員G,H及びIと,顧問弁護士Fとで,対応策を検討する会議を平成22年5月6日に開催することとした。

※ 資料として【資料1 検討会議の会議録】,【資料2 関係法令】,【資料3 議会による請求権放棄に関する裁判例】が付されている。
※ 資料1には,Bらから地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号の請求を受けると予想されること,本件土地の売却の違法の有無について法96条1項6号や同237条2項,また同234条2項や地方自治法施行令167条の2第2号等について検討を要すること,住民訴訟の制度趣旨と議会による請求権放棄との関係を問う発言,等が記載されている。
※ 資料2には,地方自治法施行令167条,同167条の2,同167条の3,別表第5(第167条の2関係)が掲載されている。
※ 資料3には,東京高等裁判所平成18年7月20日判決,大阪高等裁判所平成21年11月27日判決の抜粋が掲載されている。

 【設問1】
設問1では,住民訴訟の訴訟要件が問われています。法242条の2を中心に,住民訴訟の訴訟要件にかかわる各条文を丁寧に拾って各訴訟要件に当てはめていく必要があります。
本問では,B,C及びDそれぞれについて訴訟要件を満たすかどうかの検討が求められています。ここでは,Bが,住民監査請求をしたA村の住民であること,Cが「(平成22年)5月1日にA村から転出」していること及びDが住民監査請求を行っていないがA村の住民であること,という事情の違いに注意する必要があります。その上で,Bらが法242条の2第1項にいう「住民」に当たるかについて,論じることが求められると考えられます。

 【設問2】
設問2では,設問1でBらによる住民訴訟が適法とされることを前提に,村長Eが本件土地の売買契約を締結したことの適法性について問われています。
本問では,法96条1項6号や237条2項,また234条2項や地方自治法施行令167条の2第2号等の法解釈をした上で,Eが本件土地にかかる売買契約を締結したことに裁量の逸脱・濫用がなかったかどうか等の点を中心に,具体的事情を挙げて論じることが求められていると考えられます。

 【設問3】
設問3では,資料3で挙げられた2つの判決の違いに注意しつつ,住民訴訟の制度趣旨と議会による請求権放棄との関連性について問われています。
小問(1)では,資料に挙げられた2つの判決を読んだ上,両判決の違いについて論じることが求められています。また,小問(2)では,小問(1)で論じたことを前提に,本件においてBらが提起した住民訴訟が認められた場合に,A村議会が,当該訴訟で認められた請求権を放棄する議決の適法性について,住民訴訟の制度趣旨等に立ち返った検討をすることが求められると考えられます。

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