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2007年度 新司法試験 出題分析速報 Vol.4

Vol.1Vol.2Vol.32007年新司法試験特集

《論文式試験 刑事法編・全体》

2007/5/21(月)
【刑事系全般について】

刑事系は、全体に、06本試験に比べて問題文のボリュームが減少したこと(第1問(刑法):約4ページ→約2ページ半、第2問(刑事訴訟法):約3ページ半→約3ページ)が、特徴として挙げられます。また、06本試験が、「甲及び乙の罪責について、具体的な事実を示して論じなさい」(刑法)、「……記載の捜査の適法性について、問題点を挙げ、事実を摘示して論じなさい。」(刑事訴訟法)といった設問の仕方で、何をどのように論ずるかは解答者の判断に委ねられていたのに対し、07本試験では、いずれの科目においても、論ずべき点や議論の仕方が詳しく指示されているのが特徴です。
全般に、06本試験よりも易しくなったといえますが、しかし、自ら知っていることをそのまま答案に書くのではなく、設問の指示に忠実に、問題文の事実を拾ったり、参考資料を分析したりすることが求められています。

【第1問(刑法)について】

第1問では、交通事故の被害者Bが、加害者Aから支払いを受けられないでいる損害賠償金(120万円)があることをBから聞きつけ、その取立ての交渉を買って出た甲が、Aに対し、未払いの損害額が200万円であるという虚偽の事実を告げて、また、支払わなければ家族に危害を加えかねない旨を申し向けて、Aに、2回にわたって金銭を支払わせたという事案が素材になっています。
 また、この事案には、共同正犯と考えられる乙が登場します。甲乙間で、事前に詐欺と恐喝両方の共謀が成立していることは明白で、甲がBから1度目に金銭の支払いを受ける際には、乙も同席しています。しかし、その後、乙が甲に対し、「少しやりすぎたのではないか。やはりおれは手を引くから、お前もこの辺りでやめておけ。」と話し、甲も、「分りました。」と答えたという事情があります。それにもかかわらず、甲は単独でさらにAに金銭を要求し、2回目の金銭の交付を受けています。

問題文は、「甲及び乙の罪責について論じなさい。ただし、論述に当たっては、後記の小問1及び2に対する解答を必ず含めること。」となっています。新しい形式の問題といえます。
 小問1では、2回にわたって金銭の交付を受けた事実について、「甲に詐欺罪及び恐喝罪が成立するか否かを、Aが現金を交付しようと考えるに至った理由に留意しつつ、具体的事実を示して論じなさい。」と聞かれています。問題文に挙げられた具体的事実をていねいに拾って論ずることが求められる問題となっています。
 小問2では、参考として掲載された判例(最決平1.6.26)「を踏まえ、本事例において甲乙間の共犯関係の解消が認められるか否かを、具体的事実を示して論じなさい。」という出題がなされています。共犯関係からの離脱という典型論点ではありますが、与えられた参考判例を的確に分析した上で、問題文の事案について解答することが求められています。

【第2問(刑事訴訟法)について】

第2問は、同一の町内の3か所の駐車場で、約2週間の間に3回にわたり、連続して自動車に対する放火事件が発生し、放火の対象は、いずれもC社製高級外車であるという事案が素材となっています。これら事件の捜査によって、町内の別の3か所の駐車場にC社製高級外車が駐車されていることが判明し、有力な被疑者として甲が浮かび上がったものの、これらの駐車場や甲宅は、周りの状況から、警察官を張り込ませることは困難であることから、警察が、3か所の駐車場付近の各電柱と甲宅の隣家に、電力会社と隣家の承諾を得て、ビデオカメラを設置し、駐車場の状況と甲宅前の公道上の状況を撮影します。
その後、ビデオカメラを設置した駐車場のうち1か所で、C社製高級外車の放火事件が発生し、撮影したビデオテープが証拠の一つとなって、甲が逮捕されます。そして、甲については、C社日本法人に対する恨みから、かつて、本件各放火事件と同様の方法でC社製高級外車に火をつけて器物損壊罪(公共の危険が発生しなかったため)で有罪判決を受けたという前科が明らかになります。

設問1は、「この【事例】のビデオ撮影・録画の適法性について、【事例】中の……具体的事実を摘示しつつ論じなさい。」という問題です。犯罪捜査のためのカメラ撮影の適法性は、近年注目されている論点であり、「平成18年度版重要判例解説」では、この点が問題となっている裁判例(東京地判平17.6.2)が取り上げられていますし、昨年秋に実施された当塾の「新司法試験論文ペースメーカー講座 刑事系第6問」でも、犯罪捜査のためにビデオカメラが設置された事案について、「カメラの設置及び甲を撮影、録画したことは適法か。問題点を挙げ、事実を摘示して論じなさい。」という出題をしています。そういう意味では、論点としては十分な知識を有している受験生が多かったと思われますが、問題文で与えられた詳細な事実を、どれだけ具体的に拾って論ずることができるかが重要といえるでしょう。
設問2は、上記の甲の前科の事実を、「甲を被告人とする建造物等以外放火被告事件の公判において、……同被告事件の犯人は甲であるとの認定に用いることが許されるか否かについて論じなさい。」という問題です。同種前科を犯罪事実認定の証拠とすることができるかという典型論点であることは明らかですが、罪名が異なっていることを的確に評価しつつ、基本から論ずることが求められているといえるでしょう。

【論文式試験全般について】

全般に、06本試験と比べて、問題文のボリュームが減ったこと、論ずべき論点の数が少なくなったこと、論ずべき論点がより明確になったことなどから、全体として易しくなったという評価は可能でしょう。
何を論ずべきかという点に関しては、公法系1問の「B教団とC市との事前協議メモ」、同2問の「法律事務所の会議録」、民事系2問の「K弁護士とL修習生の会話」などの資料で、どのような論点をどのように考えるべきかについて、かなり誘導的なヒントが与えられています。刑事系の各問題では、「共犯関係の解消が認められるか否かを……論じなさい。」、「ビデオ撮影・録画の適法性について、……論じなさい。」などとして、論ずべき点を具体的に明示しています。
また、資料としては、事実関係の理解を補足するための資料や参照法令など以外に、弁護士どうしの会話で類似する裁判例について言及した部分(公法系2問)、弁護士や公認会計士の意見書・報告書(民事系1問)、参考判例(刑事系1問)などがあるのが特徴的です。これらの資料を、自らの論述の中に的確に活用することが求められています。

以上の全般的な特徴からいえることは、知識はごく基本的なもので十分ですが、現場で、問題文のヒントや与えられた資料を的確に読みこなして自分の頭で考え、問題文で求められていることに忠実に論文を作成するということが、よりはっきりと要求されるようになったということです。

※ 以上の内容は、伊藤塾 新司法試験科が5月20日(日)16時現在で出題内容を検討し、分析したものです。今後、新たな情報により内容を変更する場合があります。
  なお、問題内容の詳細な分析結果と、それを踏まえた学習方法につきましては、6月中旬実施のオープンスクール「2007年 新司法試験 出題分析速報」(東京校では、6月14日(木)14:00〜ライブ講義を実施します)の中でお知らせいたします。皆様のご参加をお待ちしています。

≪Vol.3 論文式試験 公法編

 
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