司法書士試験受験生のための夏の学習法
~民法改正の学習のコツ~
すべての受験生が関心を向ける民法改正。伊藤塾講師がこの夏の学習方法として民法改正の学習のノウハウをお伝えします。
みなさん,こんにちは。
伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏と申します。
民法改正(主に債権法改正・相続法改正)が出題範囲となることが想定される2020年の試験はやるべきことが多いため,この夏における民法改正の学習をいかに効率的にするかが,重要なポイントとなります。そこで,「民法改正学習のコツ」と題して,この夏の学習方法をお伝えします。
1.総論 ~この夏、民法改正に取り組む意味~
民法改正は,来年の受験を控えるすべての受験生にとっての課題であり,「民法改正の学習が来年の合否を分ける要素になる」といえるでしょう。
これには2つの意味があります。まずは当然ですが,①「改正項目の問題に対応して正解できるようにする」という意味です。
そして,②「改正学習を効率的にこなし,総合的な実力を向上させる」という意味です。
司法書士試験の最重要科目と言われる民法の改正ですから,当然その対策は重要なのですが,それに時間を掛けすぎてしまい,他の分野,他の科目,記述式といった改正項目以外の学習とのバランスを崩すおそれがあるといえます。すなわち,全科目につきバランス良く総合的な実力を身につけていくことが,今年は例年に比べて重要性が高いのです。
したがって,この夏に民法改正の学習をしておき,一通りのインプットを終わらせておくことが重要です。
2.各論 ~民法改正インプットのコツ~
それでは,この夏,効率的に民法改正のインプットを行う3つのコツをお伝えしていきます。
1 体系的なインプット
民法改正の学習では,改正項目のインプットだけでなく,どこに位置付けられていた項目が変わったかをインプットすることも重要です。改正に特化した教材でのインプットも有効ですが,改正に対応したテキストで全体を学習し,体系を掴む必要があることに注意が必要です。そのため,インプットの講義・教材を通して改正後の民法の全体を把握する,すなわち,体系的なインプットを行うとよいでしょう。
2 優先順位を付けたインプット
法務省の資料によると,今回の民法改正に関しては,債権法だけで合計200項目程度の改正が行われています。その中には,判例の考え方が明文化されたもの,判例と内容を変えて条文化されているもの,大きく仕組みを変更するものもあれば,試験対策上は重要度が低いと思われるものもあります。
改正項目となるとすべて重要に見えてしまうもので,例えば,これまで気にしなかったような細かい条文でも,文言の変更といった改正がされただけで,覚えなければならないと思ってしまいがちですが,改正項目の中でも基本的なもの,細かいものがあるので,講義における講師の指示に沿って分野のメリハリをつけ,また,最初から細部の細かい規定を覚えようとしないようにしましょう。あくまでこの夏に行うのは一度目のインプットなので,大枠をつかむよう意識することが大事です。
3 定着度に応じたインプット
旧法(改正前の条文)の規定を踏まえた上で新法(改正後の条文)をインプットすべきかは,現在の知識の定着度に応じて異なります。
①定着度が高いのであれば,従前の知識を活かして学習した方が効率的といえますが,②定着度がそこまで高くないのであれば,「以前は○○だったけど,□□になった」という説明でも旧法の「○○」の時点で躓いてしまいやすいでしょう。そのような場合には,旧法から新法へ改正あった経緯は気にせず,新たな規定を学ぶつもりで学習を進めた方が効率的といえるでしょう。
※定着度の程度は人それぞれですが,目安としては,「今年(2019年度)の本試験における民法の正答数が14問以上かどうか」を分かれ目として判断するとよいでしょう。
3.最後に
改正民法の学習は,実務でも来年の試験でも必須ですし,新しい考え方も出てきたりして,学習していると楽しいものです。
ぜひこの機会を前向きに捉え,改正民法をチャンスに変えていきましょう!
この記事がみなさんの改正民法の学習における指針となれば幸いです。