法科大学院に合格できたのは、やはり基礎段階の学習がすべてであったと思います。

R.Sさん(22歳)
 

中央大学法学部卒業
【合格校】
・中央大学法科大学院(既修・半額免除学生)
【受講講座】
入門講座本科生+リーガルトレーニング、コンプリート論文答練、論文直前答練
  
※プロフィールは、2010年合格時点のものです。


はじめに

 私は、大学2年次に街の身近な法律家になりたいと考え、司法書士の講座を受講し始めました。その中で、会社法の勉強を進めていくうちに登記だけでなく、さらに法的に会社関係の実務にたずさわりたいと考えるようになりました。そして、大学4年の7月に司法書士の受験が終わり、9月の発表後、両親とも相談し10月から法科大学院受験の講座を受講し始めました。このとき、両親に金銭的に大きな負担をかけてはならないと伊藤塾の最大15万円が受講料から割り引かれる制度(サポート制度)を利用しました。この制度は、金銭的な負担を減らすことができ大変助かり、また、支援してもらっているのだからがんばろうというモチベーションにもつながりました。さらに、受講にあたっては、法科大学院情報センター室で、受講の相談などもさせていただき、短期間で合格できるのかという不安をなくすことができました。 
 私はもともと司法書士の勉強をしていたため、民法・会社法・民訴の択一式試験についてはある程度の知識がありました。しかし、憲法・刑法は司法書士の受験科目でしたが理解しているとはとてもいいがたいレベルであり、刑訴・行政については、知識はゼロでした。また、論述についても「論証って何?」というくらいのまったくの初学者レベルからのスタートでした。長くしっかりと法科大学院や旧司法試験の勉強をしている方々のように深く理解し勉強したとは言えませんが、これから短い期間で法科大学院に合格したいと考えている方に少しでも有益な情報になれば幸いです。
 

私がとった勉強方法 

適性試験対策について

私が適性試験の過去問に初めて触れたのは、適性試験8ヶ月前の10月でした。これは法科大学院情報センター室で相談した際に、問題を解いてみて平均点を下回るなら早めに対策をしたほうがいいといわれたからでした。私は、時間を計って一年度分の問題を解いたわけではなかったのですが、数問見て推論・分析分野の問題にかなりの苦手意識を持ったため、10月に問題集を買い勉強し始めました。この時点で時間を気にせず解いていたため、ほとんどの問題が解けて「まぁ大丈夫かな」と余裕でいて、また法律科目の講座も始まり適性試験に時間を割けなくなってしまったため、この10月の勉強から翌年4~5月の適性試験模試まで勉強は滞りました。そのため、模試では、まったくいい点数が取れず、大学入試センター適性試験の点数が合計10点台や20点台しかとれず、かなりあせることになりました(推論・分析の分野は4点しか取れないことも…)。そこで、模試が終わった5月頃からは、1日1時間適性試験の勉強時間をとるようにしていました。このとき、過去問だけではなく模試も活用していました。伊藤塾の模試は、本番と似たような問題も多くあり、本番ではとても助かりました。模試は受けることをおすすめします。  本番では、大学入試センター・日弁連ともに、推論・分析分野で自信を持って答えが出せた問いがひとつもなく、なんとなくこれ!という感じで選んでいたため、点数が悪いことを覚悟していましたが、平均点を上回っていたため自分でもびっくりしました。
 適性試験は、まず時間との戦いがあるため、早い時期に時間を計って解き慣れることをすすめます。時間配分などは模試を実際に受けて調整していくのが一番いいと思います。また、点数を上げるにはコツコツ勉強するしかない試験でもあると思うので、短い時間でもコンスタントに勉強するといいと思います。

法律科目試験対策について

(1) 基礎的な法知識・法理論の修得について
 私は、基礎段階の勉強がいかに大事かを、過去の司法書士試験勉強からも、強く感じていました。「基礎が大事」であることは、どの講師の方々もおっしゃることですが、先に早く進みたいと考えるあまり、疎かになりがちなところでもあることを私は実感していたため、基礎マスターは特にしっかり覚えることを意識していました。 
 基礎段階での勉強は、伊藤塾長の言われた勉強方法を実践しました。つまり、ラインマーカーでの色分け・暗記の時間を必ずとる・暗記はとりあえずAとB+ランクのみというものです。当たり前だと思われるかもしれませんが、これだけで基礎の最低限の知識の定着としては十分であると思います。
 私は、通常春か夏に始まるカリキュラムを秋から始めたため、スタートの段階で100時間くらい遅れてのスタートでした。インターネット受講だったため、すべての講義を2倍速で聴いていました。基礎マスターの勉強はすべて、講義前にマーカーで色分け、1日8~12時間受講(2倍速のため4時間から6時間)、その後、伊藤塾長がAまたはB+とランクづけした箇所のみをひたすら暗記(大体3~4時間)という流れでやっていました。
 講義では、伊藤塾長が難しい箇所もわかりやすく解説してくださり、ランクづけもしてくださるため、非常に効率的に勉強できました。私は時間的に余裕もなかったため、A、B+ランク以外のBランク以下の項目はすべて暗記対象から外し、読み流していました。この方法は、確かに「Bランクが試験に出るかも…」と不安を抱きますが、基本重要論点を曖昧にしてしまうと論文の勉強でつまずくことになりますし、AとB+ランクの論点だけでも膨大なものになるので、時間がない場合や効率的に勉強するなら、十分であると思います。基礎マスターは10月憲法、11月民法、12月会社法、1月刑訴、2月民訴、3月刑法、6月行政法という感じで予定を立てて進めていきました。

(2) 論文対策の勉強について
 論文の勉強はすべて「問題研究」を使っていました。「問題研究」は、大体11月くらいから手をつけ始めました。これは、基礎マスターが終わった科目から順番にやりはじめました。つまり、11月憲法、12月民法…という感じです。このころは、基礎マスターの暗記と並行してやっていたため、結構つらかったです。ただ「問題研究」は、一巡目だったので、書き方や言い回し、論証の書き方の勉強に重点を置き、問題文を読んでなんとなく書くことを考えて、すぐ答案を見て、丸写しという感じでした。大体1日3~4問で計画を立てていました。

(3) 実践段階での学習について
 実践段階において、択一については、時間もなかったため憲法・民法・刑法について5月の旧司法試験択一試験に向けて、「伊藤真NEWセレクション 司法試験短答式過去問」(法学書院)を利用しました。この問題集は、似たような問題で重複がないように厳選された問題ばかりでしたので、択一の勉強としては十分だったのかなと思います。また、法学既修者試験に向けて7月には「法学既修者試験過去問集」(法学検定試験委員会編)と商法・訴訟法と行政法について、上記と同じ「セレクション問題集」(法学書院)を買いました。論文の勉強が危うくて、択一にはなかなか時間を割けませんでしたが、1日3時間くらいは時間を割いて勉強していました。
 論文については、4月頭に六法の「問題研究」の1巡目が終わり、その後は2巡目に入りました。「とりあえず憲法・民法・憲法は早めに仕上げないと」と考え、1日8~10問くらいのペースで、記憶を蘇らせるため「問題研究」の解説講義(論文マスター)を先に聴き、問題を読み、論点を思い出し、答案構成をし、解答をマーカーで塗り、基礎マスターのテキストを見返すということをしていました。
 このような状態で、実際に答案を書いて添削してもらいたいと考え、5月か6月からコンプリート論文答練を受講しました。また、友達が論文直前答練も受けると聞いたのと上位の法科大学院を受けるなら論文直前答練を是非受けてみてくださいと伊藤塾の方もおしゃっていたので、論文直前答練も受講しました。
 これらの答練は、私にとって大きなプラスと自信になりました。コンプリート論文答練は基礎マスターや「問題研究」を勉強していればわかる基礎的な問題が出題され、自分の習熟度を確認できる有益なものでした。また、答案構成と書く時間との配分も会得できました。論文直前答練は、さすがに旧司法試験論文試験を意識したもののため、基礎+応用で難しかったです。これは何を書くのだろう…と悩むことも多かったのですが、何とか自分で粘って条文を引いて答案を書いていました。このような訓練は、実際の法科大学院の試験でも要求されることだと思うので、とても役に立ちました。また、採点も弁護士の方がやってくださることもあり、とても質が高かったです。点数は刑法がたまに25点を越えて自信がつきました。他の法律は、22~23点くらいが多かったですが、「自分でも23点取れるんだ」と逆に自信になりました。
 まだ答練を受けられるほどの知識がないと言って答練を避ける方もいらっしゃいますが、客観的に自分の書いた答案を見てもらえる機会は少ないと思うのでぜひ受講をすすめます。点数がよければ自信にもなりますし、悪ければ弱点の穴を埋めるいい機会にもなります。
 商法・訴訟法と行政法の「問題研究」の2巡目は大体、6月後半から7月くらいにはじめました。やり方は憲民刑と同じです。会社法や刑訴は好きになり、早い段階で一通り書けるようになりましたが、民訴には苦労しました。行政法は、試験でも中央大学法科大学院だけであり、みんなあんまり書けないだろうと考え、あまり力を入れずやっていました。
 私は時間がなかったため、「問題研究」は解くといっても、答案全部を書いたのは1巡目のみで後はすべて答案構成のみしかできませんでした。「問題研究」は、中央大学法科大学院の試験までに10回ほどは繰り返し復習したと思います(行政法は3回程度)。
 

学部成績について

 私はもともと、司法書士の勉強を主にしていたため、学部成績については気にしていませんでした。そのため、良くもなく悪くもなくという成績でした。法科大学院専願でしたら良い成績を取っておくに越したことはありませんが、重要なのは、実際の法律試験の出来だと思います。

志望校の選択について

 志望校を選ぶうえで重要視したことは、新司法試験の合格実績と施設の充実度でした。この点、中央大学法科大学院は、合格率もよく、一人ひとり自習席が与えられるというのが大きな決め手でした。
 私は環境などを考慮して考えましたが、教授の質やカリキュラム、将来の法曹像などを考え、自分に一番合った法科大学院を学校案内などで確かめてみてください。

直前期と試験当日

 直前期は、ひたすら「問題研究」を繰り返していました。特に、自分が何回も落としている論点を含む問題を重点的にチェックしていました。
 また、中央大学法科大学院は試験が2日間のため、1日目と2日目の科目で分けて復習をしていました。当日は、普段早寝早起きをしないため、完全な寝不足の状態で、頭痛にも襲われ散々でした…。早目から生活習慣を改めてみてください。また、試験と試験の休憩時間も長いので、私は「問題研究」を持っていって見直していました。周りにも「問題研究」を見ている人も多かったですが、全部持っていくと重たいので移動で体力を使います…。

伊藤塾の学習と大学生活との両立、学習フォローについて

 私は、4月で大学も卒業していたため、勉強に専念できる環境にありました。そのため比較的恵まれていたと思います。
 また、勉強を始めるにあたっては、法科大学院情報センター室の方々に相談に乗っていただき大変助かりました。さらに、法科大学院進学相談会では願書なども伊藤塾で無料配布されていたので大変助かりました。その際には伊藤塾長による法科大学院の受験での気合い入れオープンスクールもあり、とても役に立ちました。

入学前準備として

 私は、勉強する期間も短かったため、これから、より基礎を固め、定着させていきたいと考えています。そこで、まず、択一知識を中心に入学まで勉強していきたいと思います。

合格後に必要なこと

 法科大学院においてはより応用的に法律を深く学んでいくことになります。私は、企業法務の弁護士になりたいと考えていますが、法科大学院で他の分野に興味を持って違う分野にいくかもしれません。しかし、どのような法曹になるにしろ、常に目標を持ちそれに向かって邁進する気持ちを常に持てば、困難や苦労も乗り越えられると思います。弁護士も就職難といわれていますが、大きな目標や信念を見失わずに努力すれば結果はついてくると思います。

最後に

 私が、法科大学院に合格できたのは、やはり基礎段階の学習がすべてであったと思います。これから勉強していく方々も、ぜひ基礎段階の学習を怠らずに勉強すればいい結果につながると思います。法科大学院の試験は、基礎知識が理解できているかを試すものです。磐石な基礎を固めることこそが合格への近道です。がんばってください。
(2010年10月・記)