明日の行政書士講座 バックナンバー
明日の行政書士講座 第90回
【タイトル】
『誰もが自分らしく生きるために~今、生活保護制度に何が起こっているのか!?』
【日時】
2017年9月16日(土)14:00~16:00
【講師】
稲葉 剛 氏
先生のプロフィール
一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事
1969年広島生まれ
東京大学教養学部卒業
1994年より東京新宿を中心に路上生活者支援活動に取り組む
2001年 自立生活サポートセンター・もやい設立
2014年 一般社団法人つくろい東京ファンドを設立
中野区に個室シェルターを開設
2015年 新宿区にシェルター、墨田区に若者向けシェアハウス兼子供食堂を開設
2016年 豊島区にシェルター開設
2017年 カフェ潮の路
ホームレスの方に、「居場所」と「仕事」を提供し、多様な人々が集う居場所作りを めざしている。
立教大学大学院特任准教授
生活保護問題対策全国会議幹事
住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人
生活困窮者の支援を続けるかたわら、各地で貧困問題の講演をおこなっている。
著書『生活保護から考える』岩波新書
『貧困の現場から社会を変える』 その他多数
【実施報告】
9月16日(土)東京校にて、明日の行政書士講座が行われました。
今回の講師は、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事の稲葉 剛氏です。
稲葉氏は、20年にわたり、3000人以上の路上生活者の生活保護申請の支援活動にとり組まれてこられました。
今回は、現在開催中の『秋桜会憲法研究会』の特別講師としてお招きしましたが、『明日の行政書士講座』として研究会会員以外にも公開することで、行政書士業務と深い関わりのある生活保護制度の正しい知識を知り、憲法25条の理念を学ぶ機会になると考え、実施しました。
連休の初日にも関わらず、40名近い方がご参加くださり、生活保護制度の問題への関心が高いことが感じられました。
銚子市で起きた母子心中事件、家賃滞納で住居を失うと追い詰められた困窮者による事件を説明なさり、行政の対応や問題点、住所喪失は何をもたらすか等、生活困窮者の実態を知りました。生活保護の不正受給よりも漏給が問題である等、お話されました。
結局、生活保護以外のセーフティ―ネットが機能していない、日本国憲法が施行されて旧生活保護法の欠格条項はすべて削除され、今の生活保護法は、『無差別平等の原理』を定めているにも関わらず、我々の人権に対する意識が憲法25条に追いついていないのではないかという、稲葉氏の言葉が深く印象に残りました。
行政の水際作戦をなくし、保護の捕捉率を向上させ、「権利としての生活保護」を確立するためには、名称変更を含めたイメージアップが必要ではないか。生活保護の手前のセーフティ―ネットを拡充し、生活困窮者自立支援制度に加えて空き家を活用した新たな住宅セーフティ―ネットを構築していくことも必要ではないか等、ご提案されました。
講演の最後に紹介された生活保護世帯の高校生からのメールは、当事者の方の切実な思いが伝わってきました。
質疑応答では、生活保護世帯の大学進学の問題や世帯分離について、自治体の人事が変わると対応も変わるという行政側の課題も浮き彫りとなりました。時間があれば、もっと色々なお話が聞きたかったです。
講演会の後、憲法研究会会員とのディスカッションが行われました。
講演会の内容をふまえた更に深い論点について意見交換をすることが出来ました。
稲葉氏との記念写真を撮りました。参加した会員も、とても有意義な時間を過ごすことができたのではないかと思います。
(報告:秋桜会・憲法研究会 関根泰子)
