直前期は「問題研究」など、これまで自分が信じてやってきたものを繰り返して知識を定着させました。

勢〆 裕介 さん(22歳)
 

慶應義塾大学法学部4年在学中
【合格校】
・東京大学法科大学院(既修)
・慶應義塾大学法科大学院(既修)

【受講講座】
入門講座本科生+リーガルトレーニング、東大ロースクール突破小教室 など

※プロフィールは、2010年合格時点のものです。


はじめに

私は、高校生の時に、某ドラマを見て、漠然と検察官に憧れを抱いていたので、入学時には既に司法試験を目指すことを決めていました。性分が楽天家な私は、当初は大学2年生から始めればいいだろうと考えていました。しかし、大学の先輩から、大学2年生からでは遅い、始めるのは早ければ早い方がよいとのアドバイスを受け、あわてて大学1年生の5月から伊藤塾に通うことにしました。

私がとった勉強方法 

適性試験対策について

私は、特に適性試験対策を行いませんでした。なぜなら、適性試験は、パズル的な問題だから、対策などしなくてもどうにかなるだろうと考えてしまっていたからです。しかし、それは大きな間違いです。適性試験といえども、入試の際には合否を決定する考慮事項であるのです。TOEICが解禁され、受験者数が大幅に増加した東大の場合には、第一次試験においての適性試験の比重は、皆様が思っているより大きいものです。適性試験が悪ければ容赦なく一次で落とされます。
適性試験は、法律とは関係ないものであるので、なんでこんな対策しなくちゃいけないのだと疑問に感じるかもしれませんが、合格するには必要なことですので、やるしかないです。
したがって、皆様はきちんと伊藤塾の講座や模試を受けてしっかりと対策を取ってください。

法律科目試験対策について

(1) 基礎的な法知識・法理論の修得について
私が考える「基礎」とは、条文・趣旨・A、B+論点のことです。実務家登用試験において求められているのは、法律を適用して事案を解決することです。そして、法律を適用するためには、条文の文言を理解していなければなりません。その意味で条文は大事といえます。また、条文の文言が一義的ではない場合や、条文を形式的にあてはめるのでは妥当な結果が導けない場合には、解釈が必要となります。その問題となっている解釈の場面が論点であり、その際に必要となるのが、条文の趣旨です。ただ、試験は書面審査ですので書くことができる分量もある程度限定されます。さらに、時間も限られています。そこで、その問題においてメインで訊かれているものについて答える必要があります。それはつまり、A、B+論点です。これについてはしっかり書ける必要があります。
以上のような基礎を修得するために、私は一貫して基礎マスターのテキストを使って勉強していました。ここに載っていること以外については、そもそも、ロースクール入試レベルでは出ないし、仮に出たとしてもほかの人はできないだろうと考え、落としてもしょうがないと割り切って基礎マスターのテキストに絞って勉強しました。

(2) 実践段階の学習について 
基礎的な知識をインプットしたら、次はアウトプットが必要です。問題文から問題となっている条文や論点をいかに抽出すべきか、抽出したものを答案にいかに表現するかが新たに問題となってくるからです。論証は知っていたけど、答案に書けなかった、論点は抽出できたけど問いには答えられていない、ではいくらインプットが完璧でも評価にはつながりません。アウトプットの方法として、私は、ひたすら「問題研究」を何度も繰り返していました。

直前期と試験当日

直前期は本当に不安でした。毎晩のように、友人たちの中で自分だけ落ちている夢を見ていました。そんなときは、合格体験記を読んだり、オープンスクールや「明日の法律家講座」を聴いて、合格している自分や、その後働いている自分を想像して気持ちを切らさないようにしていました。試験当日には、音楽を聴いて自分を盛り上げていました。
勉強面に関しては、直前期は、あらゆる分野が出題されそうで怖くなります。しかし、手を広げたいのをぐっとこらえて、「問題研究」などこれまで自分が信じてやってきたものを繰り返して定着させるべきです。本番は、本当に緊張します。普段はわかっていることでも、いざ本番の問題用紙と解答用紙を前にすると、それが頭から吹っ飛びます。しかし、直前までずっと繰り返してきた最低限のことは、その場で何とか思い出すことができます。
あと、補足としまして、試験後について述べます。慶應義塾の試験後、合格発表後は、一応の進路が決まってホッとしてしまい、本当にだらけてしまいました。その間にも知識はどんどんこぼれ落ちていきます。そこで私がかろうじて最悪の事態を免れられたのは、友人のおかげです。私は、慶應義塾の合格発表の1週間後から、平日毎朝、友人と直近の旧司法試験2問(平成17年から21年、その内、統治・手形法関連の問題、民訴の一行問題を除く)を100分で書き、検討するということを行いました。友人と一緒にやることで勉強に強制力を持たせることが目的でした。題材として旧司法試験を選んだのは、問題が非常に練られており何度やっても考えさせられることや、ロースクール入試は、直近の旧司法試験と同じ論点を扱うことが多いからです。旧司法試験2問で100分という時間は短いですが、一回は見たことある問題であることやロースクール入試の時間の短さを考慮して、短い中でいかに論点を抽出し、表現し、問いに答える訓練としてあえてそのような時間に設定しました。検討は、お昼休憩がてら行い、どんなに遅くても2時には終えていました。長くやりすぎるとだれるし、無意味だからです。私は、上述したようにだらけてしまっていたので、これ以外にはほとんど勉強できませんでしたが、結果的には、これにより知識の脱落を最小の限度に抑えたのではないかと思っています。

最後に

法科大学院入試は本当に不安との闘いです。法科大学院入試が始まる頃には、周りの就職組は進路が決定し遊んでいます。その人たちを見て、自分は果たしてこの道でよかったのかと思うことが多々あります。また、皆が真剣に試験に臨んでいる中で自分は合格できるのか、落ちた場合にはどうしようなど様々なことが頭に浮かんでは消えを繰り返します。さらには新聞報道、制度改変等理不尽さを感じるとも思います。勉強を投げ出したくなります。
しかし、そこで負けないことが重要です。この道を選ぶと決めたからには、周りがいかにあろうとも、ひたすらに目標にのみ向かって進むべきです。必ず自分のことを見て評価してくれている人はいます。自分を信じて頑張ってください。
これまで、法科大学院入試に受かっただけで司法試験に受かっていない若輩者の私が偉そうに述べましたが、私は合格体験記を読んでモチベーションを挙げていたので、私の合格体験記も皆様の一助になれば幸いです。

(2010年12月・記)