逃げずに向き合えば、必ず壁は突破できます。乗り越えた壁の多さに比例して結果もついてきます。

大学在学中

 Kさん(22歳)

慶應義塾大学法学部4年在学中
【合格校】
東京大学法科大学院(既修)、早稲田大学法科大学院(既修・稲門法曹会奨学生)、慶應義塾大学法科大学院(既修)、中央大学法科大学院(既修・全額免除学生)
【受講講座】
司法試験入門講座本科生+リーガルトレーニング、コンプリート論文答練、論文直前答練、短答答練、憲民刑集中講義 など
 

※プロフィールは、2011年合格時点のものです。


はじめに

 私は、中学生の頃に見たドラマにて、弁護士が正義と向き合う姿に惹かれて漠然と弁護士になりたいという思いを以前から抱いていました。そして、高校3年の冬に友人に連れられ伊藤塾の説明会に行ったときに、短期合格するには旧司法試験を目指して早い段階から勉強を始めるのが良いということを聞きました。そこで、私は、本科生が始まる2月に入塾をしました。
 伊藤塾を選んだ理由は、伊藤塾長のお話がとてもわかりやすく、伊藤塾長の講義であれば、難解に見える法律の勉強もスムーズにできるのではないかと思ったからです。

私がとった勉強方法 

基礎的な法知識・法理論の修得について

 私は、基礎知識は、基礎マスターと呉講師の商訴完全マスターを利用しました。これらの講義は試験に必要でかつ十分な知識を修得でき、かつ膨大な量の法律知識をメリハリを付けて教えてくれるので、優先的に覚えるべきところとそうでないところの区別をすることができ、効率良く基礎知識の修得ができました。ある程度勉強が進んだ時点で基本書をベースにすることも考えましたが、後述するように、基礎マスターのテキストでさえ理解が不十分であったことに気付いたため、手を広げずに、基礎マスターテキストの正確な理解と暗記に努めました。

短答式試験対策について

 私は、前年度の旧司法試験の短答式試験を受験していたこともあり、憲法、民法、刑法については、5月に入るまでは、答練で問題を解く以外は何もしませんでした。他方、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法については、4月に入り、一問一答式の短答式問題集を使って、5月に入るまで短答式のみを学習していました。私は、前年の旧司法試験の経験から、短期間で膨大な量の短答式問題を解いて追い込むほうが力が伸びると考えていたので、3月までは、ほとんどの時間を論文式試験の勉強に割きました。そして、4月に入ってから、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法については一問一答式の短答式問題集を、4~5回繰り返して一気に仕上げました。ちなみに、使用教材については、基礎マスターをベースに、基礎マスターテキストに載っていない知識は「情報シート」で補うようにしました。よく言われる判例六法は知識確認としては有益ですが、規範や結論しか載っておらず、これなら条文の趣旨などが書いてある情報シートなどの短答式解説書の方が、論文式試験も意識して知識を学習できると思ったので、判例六法は使いませんでした。

論文式試験対策について

 論文式試験の対策については、六法については「問題研究」を、行政法については答練の問題を使っていました。旧司法試験の過去出題された問題は、何度解いても学ぶことが多く新しい発見が多いので、手は広げず、「問題研究」のみを使っていました。しかし、「問題研究」の使い方には注意したほうが良いです。答案構成をして論点を抽出して、答案を覚えるという短絡的なことをしても何も意味がありません。むしろ有害でさえあると思います。私は、以下の4点を意識しながらやっていました。
<1>「問題研究」を解く際には、必ず常に同じ手順を取るように(民法であれば生の主張から、刑法であれば主観と行為を確認する等)することです。こうすれば知らない問題でも慌てずに済みますし、出題意図を外しにくくなるからです。
<2>典型論点や判例との異同を常にチェックすることです。現場思考する際には典型との比較から展開することが多いからです。また、これを意識することで既存の論証をそのまま使ってよいかの判断もできるため、中身のない論点主義的な答案を防ぐことができます。私は、答案構成をした後、答案を見る復習段階で典型との異同を考えることで論点や判例の射程を意識するようにしていました。これを意識しないで結論だけ覚えても単なる使い物にならない暗記になってしまい意味がありません。
<3>アウトプットからインプットへ戻ることです。私は、前年の旧司法試験の論文式試験において、民法と刑法で最低のF評価を取ってしまい、合格まで3点足りずに論文式試験不合格となりました。自分はかなり勉強をして臨んだつもりだったのですが、論文式試験の会場で問題を見たときに、基礎知識が不正確な為に問題分析に失敗するという経験をさせられました。これは、私は、論文マスター段階で問題を解くだけに終始し基礎マスターテキストに戻ることを怠ったため典型的な論点を不正確なまま覚えていたり、重要知識でも「問題研究」に出てきていない部分について忘れてしまっていたからです。このような苦い経験をした私は、その後、「問題研究」を解くたびに基礎マスターに戻るようにし、その周辺知識等の確認を怠らずやるようにしました。
<4>「問題研究」をやりこむことです。「問題研究」の問題を出来るようになるのはもちろんですが、何回かやっているとなんとなく答案も自然と覚えてしまいます。そこで、頭を活性化させるために「問題研究」の構成ができる事はもちろん、その他に上述のように典型との違いを考えてみたり問題を少し自分でアレンジして様々な場面を想定して、どうなるか考えてみたりすると良いです。また、上述のように基礎マスターに戻って知識確認をした後に、再度問題を眺めてみると意外な新しい発見があり、その発見によってより深く理解することもできました。
 私は、これらのことを意識して1年間取り組んできた甲斐あって前年F評価の民法、刑法をはじめ憲法、民法、刑法については全てA評価を取ることができました。

法律実務基礎科目について

 私は、正直どんな教材を使ってどのように勉強すれば良いか全く分からなかったので、岡崎講師の基礎マスター法律実務基礎科目を受講することにし、テキストについても伊藤塾で指定された教材を主に使っていました(問題研究要件事実や紛争類型別要件事実、民事訴訟実務の基礎等)。この科目は、理論と同時に実務の運用といった理論以外のイメージも持つ必要があるところ、岡崎講師は実務家としてたくさんの経験を積まれている方なので、その経験を踏まえて講義を展開されており非常に有益でした。

一般教養科目対策について

短答、論文ともに本当に何もしていません。学生ならまだしも、社会人で改めて教養の知識の暗記に時間と労力を使うのは得策ではないと思います。一般教養の出来次第で合否が分かれるような勉強の仕方をするべきではありません。短答については法律科目で7割を目指すぐらいのほうが効率的だと考えます。

口述対策について

 私は、論文式試験は落ちていると思っていたので法科大学院入試が終わってから約1ヶ月全く勉強をしておりませんでした。私は、合格発表後からまずは短答式試験の知識のレベルまで知識を戻すことに注力しました。そのうえで、前述の民事実務訴訟の基礎という本及びその刑事版を頭から読み、時系列や場面ごとに沿って短答知識を再度整理し直しました。また、短答知識ではあまり出てこない規則の条文は出てきた分について逐一抑えるようにしました。私は、短答式試験のときに条文知識をかなり学習していたので直前期は記憶の喚起が中心で新たに覚えることは少なくて済みました。ですので、1ヶ月間無勉強でしたが2週間でも十分本番には間に合いました。また、直前期に覚えることは口述試験の会場では緊張で瞬時に出てこないことがほとんどです。ですので、短答式試験の段階から単に合格点を取るだけでなく口述試験も見据えて上位合格するつもりで本気で取り組むことをおすすめします。 

法科大学院入試との併願について 

 私は、今年併願しましたが、予備試験の勉強と共に法科大学院入試で必要なTOEICや適性試験の勉強等を同時並行でやらねばならず負担は大きかったです。
 ただ、法律面については法科大学院入試よりも予備試験のほうが要求されるレベルが格段に高いため、予備試験の勉強をしていれば法科大学院入試の特別の対策は不要でした。また、予備試験に向けてやっておくと7月の段階で全科目が仕上がり精神的に楽ですし、直前期は過去問分析等の時間に当てられるというメリットもありました。

伊藤塾の学習と仕事との両立、学習フォローについて 

 私は、1年次はサークル活動を中心にやっておりましたし、3~4年次にはゼミの活動を中心にやっていました。私は、勉強はもちろんこれらの活動や飲み会などの友人との付き合いも大事にしたいと思っていました。そこで電車の移動時間やお風呂に入っているときといったコマ切れの時間を利用して意図的に時間を作るようにしていました。また、講義に出られないときには、しばしば伊藤塾のインターネット受講やフォローを利用していました。インターネット受講では2倍速で聴くことができるので、時間がないときは敢えて通学せずインターネットで聴くことで時間を効率よく使うことができました。

司法試験の準備として 

 私は、司法試験では判例の重要性が増しており法科大学院でも判例をベースにした授業が多いと聴いていたので、以前より判例を意識した勉強をしていました。合格した現在でも判例の理解が甘い科目が多い(特に公法系)ので司法試験までに強化していきたいと思っています。  

合格後を見据えて 

 私は、エンターテイメント系の分野に興味を持っていますが、弁護士は他の職種に比べ様々な選択肢がある可能性に満ちた職種であると考えています。ですのでこれから勉強をしていく中で、あらゆる可能性を持って将来の法曹像を徐々に作り上げていきたいと思っています。

最後に 

 私は、まだ予備試験に合格して司法試験の受験資格を得ただけですが、それさえも決して順調な道のりではありませんでした。挫折を繰り返し、孤独を味わい、ときにはプライベートでの人間関係がうまくいかなくなったことも多々ありました。それにもかかわらず3年次に受けた旧司法試験に落ちたときは心身共にどん底に突き落とされた気分になりました。でも、あの時自分のふがいなさに悔しくて涙が止まらなかったと同時にもう二度とこんな思いはしたくないという気持ちが強くありました。私は、この思いを忘れないように不合格の論文の成績表を机に貼り、毎日それを見ながらこの1年間自分の弱いところと真摯に向き合い毎日こつこつ勉強に励んできました。
 私は、人より頭の回転が早いわけではないですし物事の吸収が早いわけでもありません。それでも、このように一つの結果を出すことができたのは、どんな辛いことがあっても自分を見失わず、自分を信じて地道に努力してきた結果であるからだと思います。この勉強をしていれば誰もが壁にぶちあたると思います。今、これを読んでくださっている方の中にも壁に直面している方がいらっしゃると思います。しかし、それを乗り越えられるか否かは自分次第です。逃げずに真正面から向き合えば必ず壁は突破できます。そして乗り越えた壁の多さに比例して結果もついてきます。だから、自分を信じて目の前のことを一つひとつこなしてがんばってください。 
 最後に、ここまで来れたのは自主ゼミを組んでいた友人、恩師加藤裕之ゼミ長のおかげです。彼らがいなければ合格することは出来なかったと思います。本当にありがとうございました。この感謝の気持ちを忘れずに司法試験に向けて再スタートしたいと思います。