法科大学院をメインに考えていましたが、法科大学院入試のみを考えても、予備試験の受験は間違いなく正しい選択でした。

大学在学中

 Q さん(22歳)

慶應義塾大学法学部4年在学中
【受講講座】
司法試験入門講座本科生+リーガルトレーニング、コンプリート論文答練、予備試験論文直前答練、予備試験口述模試 など

※プロフィールは、2012年合格時点のものです。


法科大学院合格校

慶應義塾大学法科大学院(既修・全額免除学生)
早稲田大学法科大学院(既修・全額免除学生)
中央大学法科大学院(既修・全額免除学生)
明治大学法科大学院(既修・全額免除学生) 

はじめに

私は漠然と法曹という職業に魅力を感じ、法学部へと進学を決めました。そして学部で受ける法律の授業から、法曹という職業に改めて魅力を感じ、自分の将来像として具体的にイメージするようになりました。
 まず大学1年目の学部の授業で法律学の基礎を学び、1年の春休みに伊藤塾へ入塾しました。私の大学では法律の受験指導校としては大半が伊藤塾を選んでいたので、あまり迷うことなく私も伊藤塾を選びました。

私がとった勉強方法 

基礎的な法知識・法理論の修得について

1年早く伊藤塾へ通っている友人は皆、口を揃えて「基礎マスターが大事だ」と言っていたので、基礎マスターの講義は未受講分がたまらないように心がけました。具体的には、テキストをコピーして、コピーに講義で講師の方がおっしゃられたことを殴り書きし、家で復習としてテキストに清書する、という方法によって、テキストを作っていきました。
 法律は全体像をつかめぬまま勉強すると自分が今なにを勉強しているのかよくわからなくなってしまうことも多いと思うのですが、基礎マスターはランク付けとともにメリハリを付けた講義となっており、テキストもまとまっているので、今自分が法律全体のどのあたりを歩いているのかがはっきりとイメージでき、法律学へ足を踏み入れるには有益だったと思いいます。基本書や判例集などでより掘り下げた勉強ももちろん必要ですが、そのような深い高度な議論を考えるうえで必要不可欠な知識を獲得するためには、まず基礎マスターで全体像を把握することが本当に有効だった、と感じています。
 基礎マスターでインプットを終えた後は問題研究で旧司法試験の過去問を何度も解きなおしました。旧司法試験の問題は非常に奥が深く、自分の中で納得した解答を作っても、次に問題を検討するとまた新たな問題意識がでてくる、といった次第でした。生じた問題意識に対して、時には基礎マスターに戻り、時には基本書や判例集をあたり、徹底的に考え抜いたことは、未知の問題への対応力を養うとともに、全く考えたことのない問題意識を減らすという意味でも役に立ったと考えています。ただ、ひとつの問題に拘泥することもあったので、ある程度で割り切ることも必要だったのではないかと感じています。

短答式試験対策について

まず短答式試験対策については問題演習と条文の素読を中心としました。問われる知識はほとんどが基礎マスターテキストに記載されているもので、その他の知識は知らなくても肢を絞って答えにたどり着くことができるのがほとんどでした。また、特に商訴は条文の知識をストレートに聞いてくる問題が多いように感じたので、条文をマークして試験直前期に重要な条文のみを短時間で読めるようにしていました。

論文式試験対策について

論文式試験対策としては、問題研究の演習と自分の論証の確立を柱としていました。実際に答案に表現することを意識して、長さや言い回しまで突き詰めて論証を考えました。そしてただ暗記するのではなく、なぜその理由が必要なのか、問題意識は何なのか、を徹底して考え、より本質を捉えたものになるように繰り返し論証を作り変えていきました。試験本番では論証の長短を変えなければならないことや、典型的な論点をひねった問題に対応しなければならないこともありましたが、論証作成段階で暗記に頼らずしっかりと考え、悩みぬいたことが結局は近道だったと実感しています。

発展的な勉強について

 深く考え、悩み、自分なりの答えを出すには、手持ちの武器として最低限の知識が必要です。その最低限の知識こそが基礎マスターで修得する知識・理解であると思います。それをないがしろにした応用的な勉強は自己満足になってしまうでしょう。そして、高度かつ最先端な議論は面白く、かつ、のめりこみやすく、自己満足に陥りがちなので、そうした勉強をする際は、本当に自分はその基本をわかっているか、そもそもどのような問題意識に基づく議論なのか、といった点を自問するようにしていました。
 また、法律学には試験対策として必要でない議論もまた多く存在します(むしろそのような議論こそが魅力的であるとすら感じます)。そのような議論を学ぶことでより深い理解を得られることは間違いありませんし、時にはそれが必要なこともあると思いますが、それを答案に表現できるのか、試験に役立つのか、という視点をもつことも試験対策としては必要なのではないか、と感じました。呉講師が講義でしばしば「有効な無駄」とおっしゃっていましたが、そのような位置づけも大事だと思います。  

法科大学院入試との併願について 

私は当初、法科大学院をメインに考えていましたが、法科大学院入試のみを考えても予備試験の受験は間違いなく正しい選択でした。
 まず、予備試験の短答式試験を受験することで5月に短答用知識のインプットがほぼ完成します。結果、私も法学既修者試験は予備試験論文式試験後1週間弱しか勉強できませんでしたが、10番台の成績を修めることができ、既修者試験の成績提出を必須としている大学院について精神的に落ち着いて受験できました。また、7月末の予備試験論文式試験を受験することでその時点で7科目をある程度押さえることができます。特に中央大学や慶應義塾大学など商訴や行政法が試験科目とされている法科大学院の入試には大きなアドバンテージになるでしょう。
 もちろん、法科大学院進学のみを考えている方で、予備試験受験生と同じようなペースで勉強できるのであれば、併願は不要でしょう。しかし、4月5月から約4ヶ月先の試験に向けてモチベーションを維持してハイペースで勉強を続けることは容易ではないと思います。わたし自身、法科大学院入試の観点からみて、予備試験は極めて有効なペースメーカー・目標となりました。法科大学院入試が毎週続く8月は体力的にも精神的にも辛いですが、予備試験受験は「あの厳しい予備試験論文2日間を乗り越えた」という自信につながり、8月を乗り越えることができました。
 反対にデメリットとしては、短答式試験と適性試験が日程的に重なってしまうことが挙げられます。ただ、適性試験を重視する国公立の法科大学院を別として、私立の法科大学院についていえば、予備試験受験のメリットはそれを優に上回るのではないか、と感じています。

最後に 

私は予備試験論文式試験の発表当日まで、合格できるとは全く思っていませんでした。あまりにも基本的なことしか書くことができなかったからです。しかし、その答案が評価されたことからすると、少なくとも予備試験はやはり基礎で合否は決まるのだと思います。合格者の誰しもが言う「基礎が大事」とは、基礎を何度も繰り返すだけでなく、基礎を深く考えて勉強するということなのでしょう。ここまで私の体験記を読んでくださった予備試験合格を目指している方も、基礎を深く考え、自分のやっていることを信じて、頑張ってください。