明日の法律家講座 バックナンバー

明日の法律家講座 東京校第264回

2017年10月7日(土)実施

大崎事件から見える刑事司法の問題点~憲法の理想と現実のギャップ~

【講師】 鴨志田祐美氏(弁護士、大崎事件弁護団事務局長、元伊藤塾塾生)
 


講師プロフィール

鴨志田祐美氏(弁護士、大崎事件弁護団事務局長、元伊藤塾塾生)

松尾 裕介 氏
鹿児島市生まれ。以後、大学1年まで神奈川県在住。 
1981年 神奈川県立湘南高校卒業 
1985年 早稲田大学法学部卒業(その後、会社員、結婚、出産、予備校講師を経て) 
2002年 司法試験合格 
2004年 鹿児島県弁護士会登録 
2010年 「弁護士法人えがりて法律事務所」設立 

【主な活動】  
《日弁連》 
2006年~ 人権擁護委員会 第一部会(再審、誤判救済)特別委嘱委員 
2013年~ 同 大崎事件委員会 委員長 
2014年~ 同 「再審における証拠開示に関する特別部会」部会長 
《鹿児島県弁護士会》 
2007年~2011年 子どもの権利委員会委員長 
2012年 副会長 
《その他》 
2007年~2015年   鹿児島家庭裁判所 家事調停委員/鹿児島地方・簡易裁判所 民事調停委員  
  
 主な著書・寄稿】 
『転落自白――「日本型えん罪」はなぜうまれるのか』(共編著 日本評論社   2012 年) 
「被疑者弁護から少年審判に至るまでの連携と協働」(岡田行雄編著『非行少年のためにつながろう!』現代人文社   2017 年) 
「再審制度の抱える諸問題」(木谷明ほか編著『シリーズ刑事司法を考える 第5巻 裁判所は何を判断するか』岩波書店   2017 年) 
『緊急提言!刑事再審法改正と国会の責任』(共編著 日本評論社   2017 年) 
「大崎事件―つづら折りの事件史あるいは奮闘記」(法学セミナー  686 号) 
「証拠開示は再審の扉を軽くしたのか?」(季刊刑事弁護  74 号) 
「大崎事件第2次再審請求から見た刑事司法の問題」(法学セミナー  719 号)  
「大崎事件第3次再審請求審の総括」(季刊刑事弁護90号)  
 
 

講師からのメッセージ 

 2017年6月28日、鹿児島地方裁判所は大崎事件第3次再審請求について、再審を開始する決定を出しました。請求人の原口アヤ子さんは、事件が発生したとされる1979年から38年間、一貫して無実を訴えてきました。実はこの事件では2002年の第1次再審請求でも再審開始決定が出ていたのですが、検察官の即時抗告により、開始決定が取り消された経緯がありました。同じ事件で2度の再審開始決定が出たのは免田事件以来2度目のことです。
 アヤ子さんはすでに90歳になり、これが存命中に再審無罪を勝ち取る最後のチャンスといえるでしょう。
 しかし、検察官は、2度目の再審開始決定の重みにも、冤罪を背負わされ続けたアヤ子さんの生涯にもまったく思いをいたすことなく、今回も開始決定を不服として即時抗告を行いました。現在、私たち弁護団は闘いの場を福岡高等裁判所宮崎支部に移し、一刻も早く再審開始を確定させ、アヤ子さんに法廷で「被告人は無罪」の判決主文を聞いてもらおうと全力で闘っています。
 
 そもそも大崎事件は、アヤ子さんの共犯とされた3人の男性の自白のみで、客観的証拠もほとんどないまま有罪が確定してしまった事件です。しかもこの3人の「共犯者」はいずれも知的障がいを抱えていました。取調べの録音・録画もされていない密室で、彼らはどのように自白に追い込まれたのでしょうか。
 
 また、大崎事件では、捜査機関が収集した無罪方向の証拠が、再審段階に至るまで隠されていたという事実も判明しており、「再審における証拠開示」のあり方も問題となりました。
 
 このように、大崎事件から垣間見えるわが国の刑事司法の問題点をあぶり出すとともに、憲法の理想とする人権保障・適正手続の観点から、あるべき再審制度を考えてみたいと思います。