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明日の法律家講座 東京校第309回

2020年11月13日(土)実施

民事介入暴力対策
~弁護士による暴力団事案被害者等の救済活動

 

講師プロフィール

大野 徹也 氏(弁護士)

大野 徹也 氏
1998年  明治大学政治経済学部経済学科卒業
1998年  司法試験合格
2000年  最高裁判所司法研修所入所(第54期)
2001年  同修了、弁護士登録(東京弁護士会)
2001年-2007年  名川・岡村法律事務所に勤務
2007年-2012年  アフラック副法律顧問(09年から法律顧問)職として勤務(社内弁護士)
2013年  プロアクト法律事務所入所
(伊藤塾 2期生)


<現在>
日本弁護士連合会 民事介入暴力対策委員会 副委員長兼事務局長
東京弁護士会 民事介入暴力対策特別委員会 副委員長兼委員長代行
公認AMLスペシャリスト

講師からのメッセージ 

 今、日本には24の指定暴力団があり、25,900人の暴力団員等がいるといわれています。これら暴力団は、繁華街でのみかじめ料徴収、ヤミ金融、覚せい剤等違法薬物取引、恐喝行為といった伝統的な資金獲得活動に加えて、最近では、振込め詐欺などの新手の資金獲得活動にも進出してきています。これらの活動の過程では、多くの一般市民や企業が身体的・経済的な被害を被り、報復を恐れて泣き寝入りを余儀なくされています。もちろん、それが明らかな犯罪行為にあたる場合には、警察・検察が検挙し、刑事司法の下で処罰されることになりますが、刑事司法によって被害者の被害回復(賠償等)が実現するわけではありません。また、暴力団の側も、自身の検挙を免れるため、犯罪にはならないよう、あるいは犯罪としての証拠が残りにくいよう、その活動を巧妙化させており、全ての行為が刑事司法の下での処罰対象となるわけでもありません。そこで、暴力団の不当要求等による被害を受けた被害者から相談を受け、警察や検察とも連携しつつ、加害者側である暴力団等に対して、不当要求行為の中止を求めたり、損害賠償請求訴訟を提起するなど、民事司法の領域で、暴力団等反社会的勢力による被害者の救済活動を行うという弁護士の活動領域があります。それが、「民事介入暴力対策」です。
 受験生や一般の方にはあまりなじみがなく、弁護士がそのような活動をしていることについて意外と思われる方もいるのではないかと思いますが、国家による違法な権力行使の被害者を法的手段で救済するのが弁護士の本来的な業務であるのと同様、社会的実体として存在する組織犯罪の被害者を法的手段で救済する活動も、人権擁護と社会正義の実現を旨とする弁護士の「本来的な業務」であると私たちは考えています。
 そこで、本講座では、弁護士の一つの活動領域である「民事介入暴力対策」について、事件の実例などを交えながら、解説したいと思います。