明日の法律家講座 バックナンバー

明日の法律家講座 東京校第310回

2021年12月11日(土)実施

マルチに生きる〜より良い社会を創るために〜

 講師プロフィール

酒井 邦彦氏(弁護士、元広島高検検事長)

酒井 邦彦 氏
1977年 4月 最高裁判所司法研修所入所
1979年 4月 東京地方検察庁検事
1985年 7月 ミシガン大学客員研究員
1987年 8月 法務省刑事局付
1990年 7月 在アメリカ合衆国日本国大使館一等書記官
1998年 7月 法務大臣官房参事官
2000年 4月 東京地検副部長
2002年 4月 国際連合アジア極東犯罪防止研修所長
2005年 7月 東京高等検察庁公判部長
2006年 7月 最高検察庁検事
2007年 6月 奈良地方検察庁検事正
2008年 7月 最高検察庁総務部長
2010年 10月 名古屋地方検察庁検事正
2012年 6月 法務総合研究所長
2014年 7月 高松高等検察庁検事長
2016年 9月 広島高等検察庁検事長
2017年 3月 退官
2017年 4月 TMI総合法律事務所顧問弁護士

講師からのメッセージ 

法曹の魅力の一つは、なんでもできることだと思います。
子どもは社会の宝ですので、長く虐待の防止に取り組んでいます。また、検事時代は犯罪と戦っていましたが、今は、世間から冷い視線を送られている犯罪者の社会復帰を助けるために、司法と福祉の連携を図るNPOの立ち上げに関わっています。また、これら支援の基になるコミュニティが崩れつつあるので、それを再構築するために、子ども食堂をサポートしています。さらに、若い力を育てる教育は、日本にとって待ったなしの課題です。現在文部科学省の学校法人ガバナンス改革会議のメンバーとして、学校改革を進めています。
東京2020オリンピック・パラリンピックは、スポーツの力をあらためて感じさせてくれました。僕は、スポーツの価値を創り、伝えるために、JOC日本オリンピック委員会の常務理事を務め、スポーツを通じて、多様性のある社会を実現するために、パラスポーツにも力を入れています。今回のパラリンピックの銅メダリストの伴走をしていました。
国際分野も法曹の活躍の場です。僕は、外交官として、アメリカの日本大使館で、大統領選挙などをリポートし、その後、国連で世界における犯罪と戦いました。また、人間の尊厳が守られるためには、法の支配が不可欠です。僕は、アジアの国々の司法制度改革を進めてきました。アウンサンスーチーさんとも直接お会いして法整備支援を進めてきたミャンマーでクーデターが起きたことは、痛恨の極みです。
このまま気温が上昇して行けば人類は滅亡します。次の世代に美しい地球を残すのは僕たち世代の責任です。ホンダなどの会社の取締役として、CO2削減などESG、SDGsを進めています。
以上のような活動は、それぞれ何の脈絡もないように思われるかもしれませんが、実は、底に流れているものは全く同じです。僕たちが生業としている「法」が究極的に目指しているのは、人間の尊厳、平等、自由だからです。あとは、皆様の勇気と努力にかかっています。