明日の法律家講座 バックナンバー

明日の法律家講座 東京校第314回

2022年4月9日(土)実施

支えているのは、私たち?~代用監獄・取調べ・死刑~

 講師プロフィール

田鎖 麻衣子 氏(特定非営利活動法人CrimeInfo代表、弁護士)

田鎖 麻衣子氏
1995年 弁護士登録(第二東京弁護士会)。以降、死刑再審事件や、刑事施設での処遇をめぐる国家賠償請求事件などに取り組みながら、日弁連の刑事拘禁制度改革実現本部・人権擁護委員会などの弁護士会活動や、死刑廃止や刑務所改革を目指す国内外のNGO活動に従事。
2016年 CrimeInfoの前身となるプロジェクトを英国・レディング大学と共同で開始。
2019年 死刑制度をはじめ、日本の刑事司法制度に関し、正確で信頼できる情報を提供し、市民による刑事司法への理解を促進することを目的に、特定非営利活動法人CrimeInfoを設立。
2021年 フランス共和国教育功労章シュヴァリエ受章。
 
主な共著に、『「被害者問題」からみた死刑』(日本評論社、2017)、『孤立する日本の死刑』(現代人文社、2012)、『刑務所のいま―受刑者の処遇と更生』(ぎょうせい、2011)、『人権読本』(岩波ジュニア新書、2001)。
訳書に、アンソニー・ルイス『ギデオンのトランペット』(現代人文社、2020)、アビー・スミス&モンロー・H・フリードマン『なんで、「あんな奴ら」の弁護ができるのか』(共訳、現代人文社、2017)など。
東京大学法学部卒業。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。一橋大学法学研究科非常勤講師。
 
 

講師からのメッセージ 

日本に住む私たちにとって、警察による逮捕に続き、勾留の決定がなされた後も、被疑者の身体拘束が警察の留置施設において続くこと、その身体拘束状況下で被疑者の取調べがなされることは、ごく当たり前です。重大事件の被疑者が逮捕されると、被疑者が取調べで「真実」を語り、「真相の解明」がなされることを求める声が相次ぎます。しかし、勾留後も警察での身体拘束を認めることは、世界的にみると大変珍しい制度で、100年以上前から「代用監獄」として運用され、現在に至っています(現在は「代用刑事施設」という名称です)。国連の条約機関等からは、条約が求める人権基準に合致しないとして、代用監獄制度自体の廃止や、運用の抜本的改革を、繰り返し勧告されてきました。日本政府はこうした勧告を拒否し続け、いまや日本の代用監獄は、daiyo kangoku(ダイヨーカンゴク)として、世界的に知られるようになっています。
他方、代用監獄ほどではありませんが、世界的にみると珍しくなりつつある制度として、死刑があります。ほぼ毎年、年に1回から2回程度の死刑を執行する日本は、死刑制度を維持し、かつ、現実に死刑の執行を行う、少数の国のうちの一つであり、国連をはじめとする国際社会から、死刑の廃止に向けた行動をとるよう求められてきました。しかし政府は、国内の犯罪情勢や世論を挙げて、死刑制度を維持する必要性を訴えています。
もちろん、日本の刑事司法制度は、国際社会の要請や潮流のみによって決められるべきものではありません。しかし、国際社会からの声が、日本も批准する国際人権条約の要請に基づくものであるなら、単に勧告を拒絶し続けるわけにはいかないはずです。国際人権基準との乖離は、なぜ生じているのでしょうか?対話を拒む政府の固い姿勢を支えているものは、いったい何なのでしょうか?
皆さんと一緒に、考えたいと思います。