Vol.01 弁護士 國松 崇先生
伊藤塾で挫折を乗り越え、テレビ局のインハウスロイヤーからエンタメ法務弁護士へ
所属: 池田・國松法律事務所 共同代表パートナー
弁護士歴: 14年(64期司法修習生)
専門分野: メディア・エンターテインメント法務、コンテンツ監修、契約法務、リスク管理
現在の活動:
エンターテインメント法務への志と形成過程
Q: 自己紹介と、現在の法務活動について教えてください。
國松崇です。メディア・エンターテインメントの分野を中心に、リスク管理であるとか、コンテンツの法律監修や考査、あるいは契約、芸能関係、そうしたことを中心に仕事をしております。
弁護士になって今14年目になりますが、赤坂にある池田・國松法律事務所の共同代表パートナーを務めています。
Q: どのような志をお持ちなのでしょうか?
「メディアとかエンターテインメントの世界をもっともっといいものにしていきたい。日本のコンテンツを世界に広げる、そうした大きな流れの助けになりたい」というのが私の志です。
エンタメといった興行ものに対する憧れが、自分の法律家になるという夢ともちょうどクロスオーバーして、その結果、自分が一番働きたいところ、自分が興味を持って楽しく働ける場所はどこかなと考えたときに、法律家として、このエンターテインメントの世界で働くことが、最も自分のモチベーションも上がるし、あとは支えたい人がたくさんいるという答えにたどり着きました。
Q: どうしてエンターテインメント業界に興味を持たれたのですか?
私が小さい頃は、両親共働きで、基本的に私と姉の二人で家にいることが多くて、両親が帰ってくるまでの間に、何をしたかというと基本的にはテレビを見る、あるいはビデオで昔撮ったテレビの番組を見るといったことが中心でした。
なので、とにかくテレビというのは本当に身近な存在で、いろんなことをテレビから勉強したし、子守りをしてもらっていたという感じになります。このような幼いころの生活が、映像の世界や、エンターテインメントの業界に興味を持った原体験になったように思います。
司法試験での挫折と復活:
仲間と共に掴んだ合格
Q: 司法試験ではどのような経験をされたのでしょうか?
司法試験は一度落ちました。そのときは結構自信があったんですよね。ところが落ちてしまったのでショックでした。いろんなことやり尽くして、もうこれで大丈夫だろうと思っていたので、これ以上何すればいいのというふうになっちゃったんですよね。路頭に迷ったというわけじゃないんですけど、何から手を付けていいのかわからなくなってしまってしまいました。
Q: 伊藤塾に通われた理由はどこにありましたか?
私の場合は、弁護士など法曹を目指す人は伊藤塾に通うという人が周りに結構多かったので、改めて、司法試験合格という目的を持って伊藤塾に通いました。そこで得た知識、先生方の素晴らしい講義やテキストといったものはとても参考になりましたし、司法試験の受験まで繰り返し使わせていただきました。
Q: 司法試験受験指導校としての伊藤塾の魅力をどう評価しますか?
自分にとって伊藤塾で得られた一番財産は何かというと、ここで出会った仲間です。一緒に司法試験を勉強していた仲間がいたので、司法試験に一度落ちたときも、その仲間たちと一緒にもう一度、一から一生懸命やっていこうと誓い合うことで、メンタルを復活させることができました。
毎日毎日、渋谷にある伊藤塾に(当時あった)自習室に通って、とにかく仲間と励まし合いながら勉強を続けていくことで、最終的に司法試験合格に結び付いたと考えています。一緒の目的に向かって切磋琢磨していける仲間が集まる「器」のような場所、それが伊藤塾の最大の魅力です。
司法修習64期は就職難時代:
テレビ局のインハウスロイヤーとしてのスタート
Q: テレビ局でインハウスロイヤーとして働くことになった経緯を教えてください。
実は最初からエンターテインメント法務一筋というわけではなく、私の場合は当時の時代背景が大きく影響しました。私は64期という司法修習期なんですが、当時は大変な就職難で、法律事務所に関していえば、少し募集が出れば応募者が殺到してしまうような時代だったんですよね。
一方、ちょうどその頃はまだ数は少数ながら、会社の法務部で働く、いわゆるインハウスロイヤーという働き方もあるらしいぞ、という情報に触れました。そこで、もし自分がインハウスローヤーになるとしたら、どこで働きたいだろう?と考えたときに、真っ先に思いついたのが、子どもの頃から大好きだった、テレビ局だったんですよね。
とはいえ、ツテもないし、特にコネもないので、とにかくなんとかアポが取れないかと思ってテレビ局に直接電話をしてみました。
そうしたら、運が良かったのか、たまたま手の空いていた人事の方とお話する機会がもらえて、そこから紆余曲折あったものの、最終的には在京テレビ局に採用していただくことになりました。これがエンターテインメント業界の法務に携わる最初のきっかけでしたね。
Q: テレビ局ではどのような法務業務を担当されていたのでしょうか?
テレビ局でやったことは入社前に想定していたこともありましたし、想定していなかったこともありましたね。
テレビ局なので、番組などのコンテンツを制作するために稼働してもらう制作会社との契約、あるいは、出演者のタレントさんやスタッフさんの契約など、本当にさまざまな契約があるので、こういった契約書のチェックとか作成を担当するということがベーシックな仕事としてあります。
ほかには、番組コンテンツをどんどん海外に持っていくことが新しい潮流になっていたので、例えばコンテンツをリメイクして、それをアメリカで放送するとか、ヨーロッパや韓国での昔のドラマを再展開するとか、そういった二次利用に関する法務にも携わっていましたね。
番組をもとに、二次創作的に舞台化する、専用の劇場を作る、みたいな仕事もありました。こんな風に、本当にたくさんの法務業務に関わらせていただくということが、すごく私の中では経験になりましたね。
裏方として働いて印象的な実務:
契約書の向こうにあった感動
Q: 法律の仕事を通じてどのようなやりがいを感じていますか?
印象的な経験があります。とある劇場を作ることになったんです。劇場といっても小さな劇場ではなく日本初のいろんな仕掛けがある劇場で、とにかくそこでやるのは一流の日本の劇団さんとか海外から招聘した劇団の公演なんです。
それこそ更地から土地を借りるところから始めてですね、土地を借りて建物を建てて、その建物のいろんな仕掛けのライセンスも取って、さらに劇団と契約するとか、さまざまな契約がそこには紐付いていたんですね。
その契約を一つ一つ確認する、あるいはどういう契約を誰とするか、というデザインまで含めて、リーガルとして担当させてもらったという経験があります。
それで、ようやくまとまった契約が少しずつ形になっていって、現地でも、更地から少しずつ土台ができて、劇場ができて、装飾がされて、少しずつ劇場が完成していって、最後にこけら落とし。超一流の劇団がこけら落としでバーンと舞台をやったわけです。
それを私は端っこの席で見させてもらって、そこで、いろんな人が劇を見て楽しんでいる姿とか、感動している姿とか、そういうものを間近で体感させてもらったんですよね。
そのときに、自分がやっている仕事はこれだけ多くの人を動かしている、人の心を動かしたり感動させるということがあるんだな、ということをすごく実感したエピソードでした。法務の仕事って、普段は契約書を書いたり、誰かと契約や法律のことを話したりということばかりなんですけど、そういう現場での体感を通じて、自分が普段からやっていることが、実際は皆さんの笑顔とか感動につながっているということを感じることができて、それが自分の一つの大きなやりがいに繋がりました。
法律を学ぶ意義:
社会との接点を広げるツール
Q: 法律を学ぶことの社会的意義をどのように考えますか?
とにかく法律って社会全体に関わってるんですよね。カメラマンさんも映像を撮って、それを世の中に届けるのが仕事ですけど、そこにも一つ一つ契約や、あるいは規制する法律がたくさんある。社会を取り巻く法律というのは無数に存在するわけですね。
法律を学ぶことは、そういう社会の仕組みを知るということだと考えています。また、そういう社会との接点ごとに、法律家には多様な選択肢があるということも知って欲しいです。
私みたいにテレビの世界がいいなとか、エンタメの世界がいいなと思えば、エンタメの世界で法律を必要としている人は必ずいますから、じゃあ、そこで仕事をしてみようかなということもできます。
Q: 法律を勉強する魅力とは何ですか?
例えば、建築が好きだなとかいう人がいれば、その建築に関わる法律もたくさんありますから、建築に関する法律を勉強すれば自分の好きな建築の世界で働くことができる。
そうしたいろんな社会との接点があるので、その接点の延長にある仕事に法律という資格というが、武器を持って挑戦することができます。それが自分の世界を広げることにもつながると思います。
法律を勉強することで自分の世界を広げることができるんですね。なので、法律の勉強をすることは、自分の人生にとってもすごく必要なことだったし、人生の幅を広げる有効なツールだと常に思っています。
「志は実力を得て、世界を変えていく」への見解
Q: 「志は実力を得て、世界を変えていく」というメッセージについて、どうお考えですか?
やっぱり志はとにかく大事だと思います。いかに実力があったり、力があっても、志がなければその実力というのはいろんなところに悪用されたり、良くない使い方をされたりすることがあるのかなと思います。なので、志というものを、まずは原点として心の中に持っておかないといけないと思っています。
Q: 志と実力の関係をどのように捉えていますか?
志があるからこそ、どういう人間関係を築こうか、どういう法律を勉強しようかという指針にすることができるようになると思います。また、志と実力というのは、やっぱり、伴っているもの、一緒に育てていくものだと思います。それらが両方うまく嚙み合うことで、最終的にその志の到達点をグッと手繰り寄せる原動力になるんだと思っています。
司法試験受験生・法律家志望者へのメッセージ
Q: 伊藤塾を検討している受験生に向けて、最後にメッセージをお願いします。
伊藤塾には志を持った人が集まります。単に実力をつけたい、と思って選ぶ人もいると思いますが、それでも、やっぱり何か志を持ってる人が多いと思います。私の仲間たちもそうでした。
だからこそ、伊藤塾に身を置くことでそうした人たちとの関係もできるし、刺激ももらえる。それが、ひいては自分の実力アップにつながっていくということです。こうゆうところが、伊藤塾の本当にいいところだなというふうに、今でも思ってますね。
まとめ:
挫折を力に変える学習環境の重要性
國松崇弁護士の体験談は、司法試験合格において「環境」と「仲間」の要素がいかに重要かを示しています。また、司法修習64期という就職難の時代背景の中で、積極的な行動力でテレビ局のインハウスロイヤーとしてキャリアをスタートし豊富な実務経験を経て、現在はエンターテインメント法務の第一線で活躍する國松弁護士の言葉は、法律家を目指すすべての人にとって貴重な指針となるでしょう。
