沖縄スタディツアー参加者の声

当事者としての沖縄スタディツアー

                                 
司法試験受験生 T.S

 
今回の沖縄スタディツアーの参加は、とても意義のあるものでした。私は沖縄の出身で、多少なりとも沖縄が抱える様々な問題を見聞きし暮らして来たつもりでしたが、ただ生活するだけでは見えてこない過去から現在まで続く根深い問題を改めて認識し、時間をとって考える良い機会となりました。
 初日は、座喜味城の訪問から始まりました。私のルーツにも関係がある史跡であり何度も訪れた場所ではありますが、戦争とも深い関わりがあるとは知らず、戦中には高射砲陣地があり、戦後はレーダー基地があったという話に驚きました。読谷村役場では、読谷村という小さな、だからこそ地域住民の声をしっかりと掬い上げることが出来ている地方自治体のお話を伺い、真の民主主義が実践されている姿を目の当たりにした気がしました。チビチリガマでの小橋川清弘様のお話は、生々しく、80年近く前に起きた凄惨な出来事が今そこに生じているような感覚を覚えました。また、その後に開催された講演会では、戦後から現在も続く基地問題が、いかに我々の日常に直接関わるものであり、解決されねばならない問題かを再認識させるものでした。その解決に向けての読谷村の取り組みの話の中で、米国大統領宛に村長から直接手紙を送ったお話や読谷村の文化水準の高さを見せるために村のイベントに米軍高官らを招いたお話等は、本来は国が担うべき外交をさながら一地方自治体が行っているようにもみえる取り組みであり、統治の観点からも大変興味深いものでした。
 2日目の日中は、私の故郷とも言える首里地区を散策し小学生の時に学校まで通った見慣れた道にノスタルジーを感じ、琉球王朝の栄華を偲ばせる史跡、街並みから溢れ出る誇りを体感しました。本土からの参加者の方々にこの感覚を共有して頂きながら懐かしい故郷を紹介出来た事は大変嬉しく思いました。夕方、沖縄戦遺骨収集ボランティアに従事されている具志堅隆松様の講演を拝聴し、未だに遺骨が遺族の手に戻らないという状況に苦い思いをいたしました。具志堅様のお話は、口調こそ静かで丁寧であるものの、熱い思いを持って取り組まれていることがひしひしと伝わって来、感銘を受けました。
 最終日である3日目、戦後米軍統治下の沖縄で県民に希望を与え、活躍した瀬長亀次郎の資料館を訪れ、民衆を率いる真のリーダー像を目にしました。轟壕にも入らせて頂きましたが、幼い頃より話に聞いていた「ガマ」の内部は、一筋の光もなく、狭い中岩肌がゴツゴツと危険で歩くのもままならず、蒸し蒸しとしており、想像以上に劣悪な環境でした。これは知識では知っていたとしても、実際に体験してみないとわからないものでした。短時間滞在するだけでも辛く、この暗闇の中、多くの人々が明日の命もわからずに身を寄せ合って生活していたという事実に強い衝撃を受けました。平和祈念公園で厳粛な雰囲気の中、説明をお聞きし黙祷を捧げた後、ひめゆりの塔及び資料館を訪れました。あどけない笑顔の写真がずらっと並んでおり、まだ幼い中戦場で命を落とされた方々、その方々の戦争がなければ訪れたであろう輝かしい未来を思うと無念でならず、その後訪れた魂魄の塔では、黙祷を捧げると共に決して再び戦争の惨禍を引き起こしてはならないと固く誓いました。
 上記のプログラム以外でも様々な目標を持ち伊藤塾で学ぶ全国の仲間たちと交流できたことは、私にとって非常に大きな財産となりました。法律家となる決意を新たにしたきっかけを与えてくれ、法律家になった後にも生きる姿勢を学べたツアーに参加出来たことは、非常に幸運であったと思います。伊藤塾のスタッフの皆様、参加者の方々には、心より感謝しております。ありがとうございました。