Vol.05 裁判官(弁護士職務経験) 吉川 この実先生
裁判官と弁護士。
問い続ける「正しさ」。
所属:池田・染谷法律事務所
(2024年「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき弁護士登録)
専門分野:独占禁止法・競争法・消費者法
Q:自己紹介をお願いいたします。
吉川この実です。裁判官をしています。
今は判事補の弁護士職務経験制度を利用して、2年間限定で弁護士をしています。
法律家が実現できる、「正しさ」
Q:法律家を志した理由を教えてください。
私が法律家に魅力を感じたのは、正しいことを実現できるところ、そして時には「正しさとは何か」について問いかけることができるところです。
学生時代は、いつか私も法律家の一員となって、正しさについて考え、正しさを実現していきたいと考えていました。
今も初心を忘れず、過去の自分に恥じぬよう、常に「正しさとは何か」について考え続けたいと思っています。
中立公正、法律のみに従って判断できる裁判官
Q:裁判官への道を進んだ背景を教えてください。
裁判官になろうと決めたのは、司法修習生のときでした。
初めて裁判官の仕事を間近で見て、当事者双方の意見を聞いて、中立公正の立場から、法律のみに従って判断できるところに魅力を感じて裁判官になろうと決めました
(特定の事件については)1年目の裁判官でも、1人で裁判ができるとされています。そして1年目でも、1人の裁判官として責任のある判断が求められています。
裁判官と弁護士、双方から感じた弁護士像の違い
Q:どのような経緯で弁護士登録されたのですか?
3年目の最後に、弁護士職務経験の内示をいただきました。一生、裁判官をやるぞって決めてなりましたが、まさかこんなに早く自分が弁護士を経験できると思っておらず、ありがたい内示だったと思っています。
Q:弁護士としての経験はいかがですか?
裁判官の頃は、生の事実を的確な法的主張に落とし込んで、適切な証拠を収集できる弁護士が優秀な代理人だと思っていました。弁護士になり、実際に依頼者から直接声を聞いたときに、紛争というのは人と人の間で起きていて、何一つ同じ事件は無いのだと実感しました。単に法律家の手で紛争を法的整理するだけでなく、奥にある当事者の声というものを裁判官へ適切に伝えらえることが大事だと思いました。
判決書という「紙」と向き合う、重責や悩み、やりがい
Q:裁判官としての苦悩・やりがいを教えてください。
裁判には、重責が伴います。正しさには正解がなく、自分の中で結論を出すことにとても迷った経験もあります。また自分の中で結論が出たとしても、その判断をすることが怖いと感じたこともあります。判決書というものは言ってしまえば、ただの文字が書かれた紙です。ですが、その判決書は、時に人の命すら奪うものです。たった数文字打ち込むことに、手が震えたこともあります。それでも、悩み考え抜いて、納得のいく結論が出たときは、とても大きなやりがいを感じています。
真実と、正しくあろうとする人が救われる裁判所へ
Q:どのような社会像が理想ですか?
私は、真実と、正しくあろうとする人が、救われる社会であってほしいと思います。そして裁判所は、そのような社会を実現するための一つの機関であってほしいと思っています。時には正しさと正しさが衝突して、難しい判断を迫られるときもあるかもしれません。私にできることも限られているかもしれませんが、裁判所は、いつまでも真実と正しくあろうとする人が救われる、そんな場所であってほしいと思っています。
司法試験受験の支え、伊藤塾の「仲間」と「言葉」
Q:司法試験受験生時代について教えてください。
私の司法試験合格までの道のりは、決して順風満帆ではありませんでした。特に2回目の予備試験論文式試験に落ちたときは、私には無理なのかなと思ったこともありました。その時にもう一度頑張ろうと思えたのは、伊藤塾で出会った、たくさんの友人達のおかげでした。そして心が折れそうになったときは、伊藤塾長の「やればできる、必ずできる。」という言葉が心を奮い立たせてくれていました。予備試験に合格した後も、目前に迫る司法試験に向けて伊藤塾が講座を用意してくださったことも、短期で司法試験に合格するためにとても役に立ったと思っています。
人々へ影響を与える志、世界を変えていく原動力の実力
Q:「志は、実力を得て、世界を変えていく。」という言葉を、どのように考えますか?
一人で世界を変えることはできません。ですが志は周囲の人々に大きな影響を与え、実力は人々の心を動かし、いつか世界を変えていく原動力になるものだと思っています。私自身も裁判を通して、人々に語りかけ続けたいと思っています。来年の4月から、また裁判官に戻ります。どこへ行って何をするのか、まだ全然わかりませんが、新しいことに出会えると思うと、とてもわくわくしています。
まとめ
人を裁き、人を弁護するという重圧ある実務に臨む吉川先生。
その芯の強さは、様々な試練を受験生時代から乗り越えた実力ゆえです。
法曹を目指す方々の模範ともいえる「逞しさ」がありました。
