Vol.12 弁護士 平田佳広先生
原点は空港の現場。JALから弁護士への転身。
所属:TKY法律事務所
専門分野:債務整理、破産管財人業務など
規定に縛られた現実と、芽生えた使命感
Q.自己紹介をお願いいたします。
平田佳広と申します。TKY法律事務所に所属しております。
弁護士になる前は、株式会社JALスカイに勤務し、成田国際空港で旅客系総合職として働いていました。
Q.法曹を志した理由は何でしょうか?
前職の頃、入国審査エリアの近くで業務をする機会がありました。
ある日、難民申請のために日本へ入国しようとした方々が、手首と腰を縄で縛られ、縦列になったまま入管の詰所から出発ゲートへと連行されていく光景を目の当たりにしました。
その場面は今でも鮮明に覚えています。
民間の航空会社員という立場では、規定に従って帰国便に搭乗させることしかできない。
「もし法律の専門家として関われたなら、あの人たちの力になれたかもしれない」
——その強烈な無力感と悔しさが、弁護士を志した直接のきっかけです。
守る志を結果に変える、交渉設計力
Q.企業での勤務、弁護士のいまへ、それぞれの時期で志はどのように変わりましたか?
「弱い立場に置かれた人を、法律の力で守りたい」という根本の志は、航空会社時代から今に至るまで一貫して変わっていません。
変化したとすれば、実務を重ねる中でその対象が具体的になっていったことです。
空港で見た難民申請者の方々も、弁護士として勤務する今日の依頼者の方々も、本質的には同じ「次の一歩を踏み出せずにいる人」です。
実際いま、多くの方々の再出発を後押しできるこの仕事の重要性は、実務を通じてより深く実感しています。
Q.これまでで最も記憶に残っている実務やプロジェクト、その理由を教えてください。
不動産の賃貸借をめぐる交渉案件が、特に印象に残っています。
賃借人の依頼者には、家族と共にどうしてもその家に住み続けたいという、強い思いがありました。
但し、状況は複雑で、相手方との交渉は最初からこちらに極めて不利な場面でした。
意識したことは、法律の条文や理屈だけで勝負するのではなく、相手がどう動くか先読みしながら、交渉の流れそのものを設計することでした。
いくつかの手を重ねた末に状況を立て直し、最終的に依頼者が希望通りの条件で居住を継続できる結果に持ち込むことができました。
この案件を通じて、弁護士の仕事は法的な正確さと同時に、状況を読む力や交渉を設計する力も問われると改めて実感しました。依頼者の方々から、法律の知識にとどまらず駆け引きを含めてきめ細かく動けた点を評価していただけたことも、大きな励みになっています。
ゼロから築いた、法的思考と合格フレーム
Q.伊藤塾で、どのような学びや気付きを得ましたか?
私は大学で西洋史学を専攻しており、法律の授業を受けたことが一度もありませんでした。
法律的な考え方そのものをゼロから身につける必要があったわけです。
伊藤塾は、「法律知識ゼロの人間でも、正しい方法で学べば合格できる」という道筋を示してくれました。体系的な学習のフレームワークがあったからこそ、実力を積み上げることが出来たと思っています。一般的な規範に具体的事実を当てはめて結論を導くという思考の型は、司法試験の答案作成はもちろん、今の実務での書面作成にまで直接活きています。
法律知識だけでなく、考え方の枠組みを身につけられたことが最大の収穫でした。
遅くない、社会経験が強みになる弁護士
Q.社会人受験生へメッセージをお願いいたします。
社会人として働いてきた経験は、法曹になってから必ず力になります。
私自身、航空会社での接客経験が、依頼者とのコミュニケーションや信頼関係の構築に直接役立っています。
「今さら遅いのでは」と感じている方もいるかもしれませんが、社会での経験がある分、依頼者の立場に寄り添える弁護士になれると、自信を持ってお伝えしたいです。
一歩踏み出す勇気さえあれば、道は必ず開けます。
Q.法律を学ぶ意義はどんな点にあると思いますか?
法律は、困っている人を守るための最も体系的なツールだと思います。
法律を知っているか知らないかで、人生の選択肢の広さが大きく変わります。
私が成田国際空港で目撃した方々も、大企業からの請求に直面した依頼者の方々も、法律の知識とサポートの有無が結果を大きく左右しました。
法律を学ぶことは、自分自身を守るためだけでなく、社会で困っている誰かの力になれる可能性を手に入れることだと思います。
志と実力、両輪で進める法曹としての道
Q.志と実力の関係を、どのように考えますか?
志は、フライトプランのようなものだと思います。
どこへ向かうのか、どの経路で飛ぶのかを定めるもの——それが志です。
実力は、そのプランを現実の飛行として成り立たせるための、操縦技術です。
どちらが欠けても、目的地には辿り着けません。
私は「法律で困っている人を救いたい」という志を持ち続けながら、伊藤塾での学習を通じて実力を積み重ねました。
志があるからこそ、試験勉強の辛い時期も「これは目的地に到達するためのプロセスだ」と思えました。
実力があるからこそ、志が現実の力として依頼者へ届きます。
この両輪が揃って初めて、社会に貢献できる法曹になれると感じています。
Q.今後の展望を教えてください。
先ず足元では、実務をさらに深めたいと思っています。
複雑であればあるほど、丁寧な事実の整理と戦略的な交渉力が問われる。そこにこそ遣り甲斐があると感じています。さらに長期的には、入管での法律相談の経験を活かし、難民申請者の支援にもプロボノ活動として関わっていきたいと思っています。
弁護士を志すきっかけとなった成田国際空港での経験に、いつかきちんと向き合いたいという気持ちがずっとあります。
まとめ
航空会社で培ったスキルと原体験が、いま弁護士としての実務に活かされている点が印象深い。
知識と経験を駆使し、依頼者に寄り添い続ける姿勢に、安定感と信頼性を感じます。

