Vol.11 弁護士 西田千尋先生
ビジネスの最前線に寄り添い、法を武器に挑戦するインハウスロイヤー
所属:丸紅株式会社 法務部法務第三課
担当分野:エネルギー・化学品部門、金属部門(2026年4月現在)
インターンの衝撃が導いた、法曹資格という武器
Q.自己紹介をお願いいたします。
丸紅株式会社法務部法務第三課の西田千尋と申します。
Q.法曹を目指したきっかけを教えてください。
大学2年生の夏休みに参加した、ある民間企業のインターンシップがきっかけです。
法律とはまったく関係のない、いわゆるITベンチャー企業のインターンで、「1日1万円の報酬が出る」という点に惹かれ、正直なところやや不純な動機で参加しました。ところが、実際に参加してみると、主な参加者が就職活動を控えた大学3年生だったこともあり、100名弱の参加者はいずれも非常にレベルが高く、それまでのほほんと学生生活を送っていた私は大きなショックを受けました。周りの参加者は、ディスカッション力、企画力、発言力、プログラミング能力など、何かしら突出した力を持っていました。一方で、私は「これなら自信がある」と言える武器がないと感じました。「社会に出ると、このように得意分野や能力を持った人たちが沢山いるのだ。自分も何か一つ“これは自分の武器だ”と言えるものを身につけなければいけない」と初めて真剣に考えるようになりました。そのとき、誰が見ても分かりやすい武器として目を向けたのが法曹資格でした。
協働の魅力に触れ選んだ、インハウスという道
Q.インハウスロイヤーを目指したきっかけは何でしたか?
前述のインターンです。自分にとってはある種の挫折経験ではありましたが、それと同時に、1つのゴールに向かって色々な人たちと協力して、知恵を絞りながら案件を進めていくという、民間企業の楽しさを実感した経験でもありました。元々法曹資格を取って法廷に立ちたいと考えていたわけではなく、法曹資格はあくまでスキルの1つにすぎないと考えていたこともあり、私にとってはインハウスを選択することは自然な流れでした。
インハウスの中でも丸紅を選択した理由は、グローバルに働くことができ、幅広いビジネス領域に携われる点に魅力を感じたためです。幼い頃から両親が様々な海外に連れていってくれたこともあり、漠然と将来は日本だけでなく世界と繋がる仕事がしたいと考えていました。また、何か1つの事業領域に集中するよりも、幅広いビジネス領域に携われる方が自分の知的好奇心を満たせるのではないかと考えていました。そうした思いから、総合商社は自分にぴったりだと考えました。私が就職活動をしていた際にお会いした丸紅法務部員の皆さんがイキイキと働かれていたという点も、丸紅を希望した大きな理由の1つです。
現場で学んだ、契約の本質とインハウスの価値
Q.これまでで最も記憶に残っている実務やプロジェクト、また理由を教えてください。
入社1年目で行ったミャンマー出張です。私にとって初めて「現場の重み」を痛感した経験でした。
当時アジア最後のフロンティアと呼ばれていたミャンマーに工業団地を作るというインフラ案件があり、主担当者は私ではなく同じ課の先輩だったのですが、その先輩に急遽別件が入ってしまい出張に行けないということになり、代打で私が出張に行くことになりました。入社してまだ半年位な上に、初出張にして初のミャンマー、さらに初めての契約交渉と、まさに「右も左も分からない」状態でしたが、その分、初めて生の現場を目の当たりにする貴重な経験となりました。
実際にミャンマーに降り立って、まだ野原の状態の工業団地用地を見せてもらい、パートナーのミャンマー企業との契約交渉に同席して、日本とは文化も歴史も思想も言語も異なるミャンマー人を相手に、1つのプロジェクトを形作っていくことがいかに大変かを肌で痛感した瞬間でした。業務の性質上、最前線の営業部と全く同じ視線を持つことは難しいですが、現場を理解することなく法律論をふりかざすだけでは意味がなく、ビジネスの内容や相手方との関係性など、契約書の背後にある背景や事実を理解した上でサポートしなければ、インハウスロイヤーの価値は生まれないのだと気づかされた経験でした。それ以来、契約書をレビューするときは、その背後にあるビジネスや現場の状況をできる限り理解することを心がけています。
効率重視で学習ができた、伊藤塾での学び
Q.伊藤塾の最大の魅力や価値は何だと思いますか?
効率的に司法試験対策ができる点だと思います。
私の母校である中央大学法学部は、少なくとも私が在籍していた当時は、法曹を目指して入学してくるという学生も多く、法曹を目指す人は大学1年生から研究室に所属して司法試験の勉強をするというのが王道でした。
他方で、私は法曹になりたいと決意して入学したわけではなかったため、研究室の代わりにサークルに2つも入って大学生活を満喫していました。ところが、大学2年の夏に先ほどお話したインターンシップに参加し、このままではいけなと思い、周りよりもだいぶ遅れた大学2年生の冬から司法試験の勉強を開始しました。周りに比べて約2年間遅れを取っているという自覚があったので、とにかく最短でのキャッチアップが必要だと考え、伊藤塾に入塾しました。
伊藤塾は、約30年間司法試験のことを研究し続け、結果を出してきた塾ですので、司法試験で必要な思考回路、重要なポイント、間違えやすい点等を分かりやすく、効率的に教えてくれます。とにかく効率的に司法試験対策をしたいという人にはぴったりだと思います。
未領域に挑み続ける丸紅の、後押しし続けるキャリア像
Q.今後の展望を教えてください。
これまでの経験を土台にしつつ、さらに自己研鑽を続け、様々なことに挑戦し続けたいと思います。
丸紅に入社し今年で15年目になりましたが、日々の業務の多くが「一度経験したことがある」ものになってきたことを感じます。他方で、総合商社は新しいビジネスにも積極的に取り組んでおり、宇宙ビジネスやe-sports、well-beingなど、新しい未領域にも積極的に取り組んでいます。前例がないビジネスへの挑戦には、法的なグレーゾーンや法的解釈の不確実性など、多くのハードルがあります。ただ、だからこそ、営業部と一緒に悩み、議論し、ゼロから組み立てていくプロセスは総合商社法務部の醍醐味だと感じます。今後も、自ら学び続けながら、優秀な法務部員の仲間と協同し、丸紅の挑戦を後押しできる存在でありたいと考えています。
まとめ
法を扱う仕事でありながら、求められるのは人と現場への理解。
そのバランスこそが、プロフェッショナルとしての真価なのだと、西田先生の志から気づかされます。
