藤田講師の苦手克服研究所 NIGALABO

「気になってはいるけれど、いまいち、よく分からない…」を解消します。

こちらでは、受験生の皆さんからよくいただく質問をもとに「気になってはいるけれど、いまいち、よく分からない…」という学習上のポイントについて、実際の過去問を題材に解説をしていきます。
*掲載の内容は、伊藤塾 行政書士試験科公式メルマガ 過去の冒頭コラムの中から抜粋してお届けします。

藤田 竜平講師

現在、伊藤塾行政書士試験科 講師として、パーソナルトレーナー講師、教材制作等にて活躍している。
根拠を明確に分かりやすく伝える講義は、受験生から高い評価を得ている。

第59回 5分でチェック!基礎法学「法令の適用範囲・効力」

2022.12.01

 
みなさん、こんにちは。
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回取り扱うテーマは、
 
基礎法学の「法令の適用範囲・効力」
 
です。
 
 
題材としては、
 
「平成20年度 問題1 肢1」
 
を扱っていきます。
 
 
 
では、早速、肢1を以下に示します。
 
 
 
肢1 わが国の法令は、原則としてわが国の領域内でのみ効力を有するが、わが国に属する船舶および航空機内では、外国の領域内や公海においても効力を有することがある。
 
 
 
……
 
 
少し、考えてみてください。
 
 
 
 
いかがでしょうか?
 
 
 
 
答えは出せましたか?
 
 
 
結論からいうと、
肢1は正しいです。
 
 
 
では、以下で、解説をしていきます。
 
 
わが国については、法令の適用について、
原則として属地主義が採用されています。
 
 
属地主義とは、法令の効力が及ぶ範囲が、
当該法令が施行されている地域に属しているものに
限定されるという考え方をいいます。
 
 
したがって、「わが国の法令は、原則として
わが国の領域内でのみ効力を有する」という部分は正しい、
ということになります。
 
 
 
また、わが国においては、旗国主義も採用されています。
 
 
旗国主義とは、他国の領域内や公海等自国の領域外にある
船舶や航空機は、その自国(旗国)の管轄に属するという
国際法上の原則をいいます。
 
 
したがって、「わが国に属する船舶および航空機内では、
外国の領域内や公海においても効力を有することがある」
という後段部分も正しいということになります。
 
 
よって、肢1は正しいです。
 
 
近年、基礎法学においては、
刑法に関する知識を問う問題が出題されることがあります
 
 
ガッツリ押さえる必要はないですが、
軽くイメージを持っておくとよいでしょう。
 
 
属地主義は刑法1条1項、
旗国主義は同条2項で採用されているので、
以下の条文を見て、イメージしていただければ、と思います。
 
 
刑法1条1項 「この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。」
 
 
刑法1条2項 「日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。」
 
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
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第58回 5分でチェック!基礎法学の「法の解釈」

2022.11.24

 
みなさん、こんにちは。
伊藤塾行政書士試験科 講師の藤田竜平です。
 
さて今回は、
基礎法学の「法の解釈」を学んでいきましょう。

法は、多数の人々に適用する一般的な取り決めであり、
抽象的・一般的なものとして構成せざるを得ません。

よって、法を適用するにあたっては、
法の持つ意味内容を解釈によって明らかにする必要があります。

この法解釈の方法については、
いくつかの基本的な対概念を理解しておく必要があるので、
以下、簡潔に紹介します。
 

まず、「文理解釈」とは、
法規の文字の持つ意味を明らかにする解釈の方法です。
 

これに対して、「論理解釈」とは、
2つ以上の法規や制度の間に表面上矛盾があるときなどに、
論理の操作によって整合的に解釈する方法です。
 
 

次に、「拡張解釈」とは、
法規の言葉に広義と狭義の意味がある場合に、
広義に解する解釈の方法を指し、


「縮小解釈」とは、この場合に
狭義に解する解釈の方法を指します。
 

例えば、「このマンションは、
『ネコ』を飼ってはいけない」という
規定があったとします。

その際に、「ネコ」がダメなのであれば、
同じネコ科の動物である「ライオン」も
飼ってはいけない、と考えるのが、
「拡張解釈」です。

逆に、「子ネコ」であれば飼ってもいいだろう、
と考えるのが、「縮小解釈」です。
 
 

さらに、「類推解釈」とは、
法規の言葉の意味に含まれないものに、
類似性を理由として当該法規を適用する解釈の方法です。

例えば、上記と同様の規定があった場合に、
同じ愛玩動物である「イヌ」も飼ってはいけない、
と考えるのが、「類推解釈」です。
 

これに対して、「反対解釈」とは、
法規の言葉の意味に含まれないものに、
当該法規の適用を否定する解釈の方法です。
 

例えば、上記と同様の規定があった場合に、
「イヌ」については規定がないのだから、
「イヌ」は飼ってもいいだろう、
と考えるのが、「反対解釈」です。
 

試験対策としては、特に「拡張解釈」と
「類推解釈」の区別をしっかりつけましょう。
 

ポイントとしては、
当該事項について、そもそも明文の規定があるかないか
の違いを問題文から読みとることが挙げられます。
 

そもそも明文の規定がなく、
類似する事項についての規定を借りてきて、
その事項にあてはまるように修正を加えながら
適用することが読み取れれば、「類推解釈」とわかります。
 

以上を前提として、題材としては、
平成25年度問題1の肢3を用いて解説していきます。
 
肢3を、以下に示します。

肢3 甲の事件につき規定がなく、類似の乙の事件に関しては明文の規定がある場合、甲にも乙の規定を準用しようとするのは、「類推解釈」である。
 

……
 

いかがでしょうか?
 

本肢においては、
「甲の事件につき規定がなく」とあり
「類似の乙の事件に関しては明文の規定がある」
となっているため

ポイントとして上記に挙げた「類推解釈」についての説明となります。
 
したがって、妥当なものといえます。
 

なお、刑法においては、「類推解釈」は禁止されています。
罪刑法定主義に反するからです。
 
近年、基礎法学においては、
刑法に関する知識も出題される傾向にあるので、
念のために押さえておきましょう。
 

今回扱ったような法律用語に関する問題は、
2022年の本試験でも出題されました。

2023年度においても出題される可能性はあるので、
早い段階で慣れておくと良いでしょう。
では。
 
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第57回 5分でチェック! 行政事件訴訟法 訴訟要件(記述式)

2022.11.10

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を使って具体的に解説します。
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、
行政法の
 
行政事件訴訟法 訴訟要件(記述式)
 
 
です。
 
 
題材としては、「平成25年度 問題44(完成問題集 問題216)」を
扱っていきます。
 
 
まず、「平成25年度 問題44(完成問題集 問題216)」を
以下に示します。
 
 
 
問題44
 
 
Aが建築基準法に基づく建築確認を得て自己の所有地に建物を建設し始めたところ、隣接地に居住するBは、当該建築確認の取消しを求めて取消訴訟を提起すると共に、執行停止を申し立てた。執行停止の申立てが却下されたことからAが建設を続けた結果、訴訟係属中に建物が完成し、検査済証が交付された。最高裁判所の判例によると、この場合、1建築確認の法的効果がどのようなものであるため、2工事完了がBの訴えの訴訟要件にどのような影響を与え、3どのような判決が下されることになるか。40字程度で記述しなさい。
 
 
 
……
 
 
 
 
さて、いかがでしょうか。
 
 
 
前回同様、今回も記述式の問題です。
 
 
一つひとつ確認していきましょう。
 
 
まず、前回もお伝えしましたが、
記述式の問題を解く上で大事なことは、
問題文が何を問うているのかをしっかりと把握すること
です。
 
 
本問でこれを確認すると、
 
 
「1建築確認の法的効果がどのようなものであるため、2工事完了がBの訴えの訴訟要件にどのような影響を与え、3どのような判決が下されることになるか。」
 
 
とあります。
 
 
 
つまり、
 
 
1建築確認の法的効果、
 
2訴訟要件への影響、
 
3下される判決
 
 
の3つを解答する必要がある
ことが分かります。
 
 
 
そして、解答を導く思考の順序としては、
原則として、1→2→3となります。
 
 
そのことを前提に、
問題文を見ていきましょう。
 
 
 
問題文を見ると、以下の事実が分かります。
 
 
(1)建築確認の取消しを求めて取消訴訟を提起
    ↓
(2)当該訴訟の係属中に建物が完成
 
 
このような場合に問題となる訴訟要件は、
「(狭義の)訴えの利益」です。
 
 
要するに、建物が完成してしまっている以上、
建築確認の取消訴訟における訴えの利益が失われてしまった、
ということです。
 
 
これは、建築確認の法的効果が、
適法に建築行為を行わせることのみにあり、
工事が完了した際には、建築確認の取消しを求める
訴えの利益は失われる、ということです。
 
 
これが、1と2です。
 
 
そして、訴訟要件が一つでも欠けると、
訴えは「却下」されます。
 
 
請求「棄却」ではありません。
 
 
これが3です。
 
 
したがって、解答例としては、
 
 
「適法に建築工事ができるという法的効果であるため、訴えの利益が失われ、却下判決が下される。」
 
 
となります。
 
 
 
本問においては、1の建築確認の法的効果は
少し難しかったかもしれません。
 
 
2と3のキーワード(特に3)が書けていれば、
十分合格レベルにあるといえます。
 
 
本問で押さえていただきたい知識は、
訴訟要件を欠いた場合の判決が、
「棄却」ではなく「却下」だということです。
 
 
択一式の問題においても
よく問われうる重要知識なので、
今一度確認しておきましょう。
 
 
前回もお伝えしましたが、
本試験における記述式では、
 
「おそらく解答に関係あるであろう
と思われるキーワード」、
 
これを一つでも多く記述する意識で
進めていきましょう。
 
 
合格者でも記述式の平均点は
2~30点程度です。
 
あまり細かく考えず、
わかる部分だけでも解答する
という意識で臨めるとよいですね。
 
 
では。
 
 
 
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第56回 5分でチェック! 行政事件訴訟法 訴訟選択(記述式)

2022.11.2

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を使って具体的に解説します。
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、
 
 
行政法の
「行政事件訴訟法 訴訟選択(記述式)」
 
です。
 
 
題材としては、
「平成30年度 問題44(完成問題集 問題218)」
を扱っていきます。
 
 
まず、「平成30年度 問題44(完成問題集 問題218)」
を以下に示します。
 
 
 
問題44 Xは、A県B市内において、農地を所有し、その土地において農業を営んできた。しかし、高齢のため農作業が困難となり、後継者もいないため、農地を太陽光発電施設として利用することを決めた。そのために必要な農地法4条1項所定のA県知事による農地転用許可を得るため、その経由機関とされているB市農業委員会の担当者と相談したところ、「B市内においては、太陽光発電のための農地転用は認められない。」として、申請用紙の交付を拒否された。そこで、Xは、インターネットから入手した申請用紙に必要事項を記入してA県知事宛ての農地転用許可の申請書を作成し、必要な添付書類とともにB市農業委員会に郵送した。ところが、これらの書類は、「この申請書は受理できません。」とするB市農業委員会の担当者名の通知を添えて返送されてきた。この場合、農地転用許可を得るため、Xは、いかなる被告に対し、どのような訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。
 
 
(参照条文)
農地法
(農地の転用の制限)
第4条 農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(中略)の許可を受けなければならない。(以下略)
 
2 前項の許可を受けようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、農林水産省令で定める事項を記載した申請書を、農業委員会を経由して、都道府県知事等に提出しなければならない。
 
3 農業委員会は、前項の規定により申請書の提出があったときは、農林水産省令で定める期間内に、当該申請書に意見を付して、都道府県知事等に送付しなければならない。
 
 
 
……
 
 
 
さて、いかがでしょうか。
 
 
今回は記述式の問題であり、かつ問題文も長いため、
答えを瞬時に導くことは難しいかもしれません。
 
 
一つひとつ確認していきましょう。
 
 
 
まず、以前もお伝えしましたが、
記述式の問題を解く上で大事なことは、
 
 
問題文が何を問うているのか?
しっかりと把握すること
 
 
です。
 
 
 
本問でこれを確認すると、
 
「農地転用許可を得るため、Xは、いかなる被告に対し、どのような訴訟を提起すべきか。」
 
とあります。
 
 
つまり、1被告、2提起すべき訴訟
の2つを解答する必要があることが分かります。
 
 
そして、解答を導く思考の順序としては、
原則として、2→1となります。
 
 
これは、まずは2の提起すべき訴訟を定めなければ、
1の被告について解答することができないことが理由です。
 
 
そのことを前提に、
問題文を見ていきましょう。
 
 
問題文を見ると、
本問は、「農地転用許可を得るため」に、
提起すべき訴訟が何か、ということが
問われていることが分かります。
 
 
行政側に農地転用許可をしてもらうことを
求めるということなので、
まずもって想起していただきたい訴訟は、
「義務付け訴訟」です。
 
 
そして、「義務付け訴訟」には、
 
「申請型義務付け訴訟」
 と
「非申請型(直接型)義務付け訴訟」
 
の2種類があります。
 
 
義務付け訴訟の検討をする際には、
どちらの訴訟を選択するかを判断
しなければなりません。
 
 
そのための判断の基準となるのは、
当該処分が申請を前提としているか否かです。
 
 
本問でこれをみると、
 
農地法4条2項に、
「前項の許可〔農地転用許可〕を受けようとする者は、…申請書を…提出しなければならない。」
 
とあります。
 
 
したがって、農地転用許可処分は、
申請を前提としているということが分かります。
 
 
とすれば、本問における義務付け訴訟は、
 
申請型義務付け訴訟
 
ということになります。
 
 
そして、申請型義務付け訴訟の場合、
一定の抗告訴訟を併合提起することが
要件とされています。
 
 
ここでいう一定の抗告訴訟とは、
不作為の違法確認訴訟、取消訴訟、無効等確認訴訟の3つです。
 
 
本問においては、A県知事は、
Xからの申請に対して何の処分もしておらず、
未だ不作為の状態が続いているといえます。
 
 
したがって、
Xが併合提起すべき訴訟は、
不作為の違法確認訴訟ということになります。
 
 
ここまでくればあとは簡単です。
 
 
農地転用許可処分の権限を持っている
のはA県知事であるため、
被告はA県ということになります。
 
 
よって、2の提起すべき訴訟は、
不作為の違法確認訴訟と
農地転用許可の義務付け訴訟、
 
1の被告は、A県ということになります。
 
 
以上より、解答としては、
 
 
「A県を被告として、不作為の違法確認訴訟と農地転用許可の義務付け訴訟を併合提起すべき。」
 
 
ということになります。
 
 
このように、記述式の問題を解くうえで必要な知識は、
5肢択一式対策の知識で足ります。
 
 
本試験においては、
完全解を目指すのではなく、
キーワードを拾う意識で解答する意識を持つことが重要です。
 
 
本問においては、
A県が被告であるということ、及び
2つの訴訟という計3つのキーワードのうち
2つをあげることができれば、十分合格レベルでしょう。
 
 
本試験では、
「おそらく解答に関係あるであろうキーワード」を、
1つでも多く記述する意識で進めていきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく
予定ですので、日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
ではまた!
 
 
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第55回 5分でチェック! 一般的法理論 国の行政組織

2022.10.26

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を使って具体的に解説します。
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、


行政法の
「一般的法理論 国の行政組織」



です。


題材としては、
「平成27年度 問題24 記述ア(完成問題集 問題6)」
を扱っていきます。
 
 
 
まず、「平成27年度 問題24 記述ア(完成問題集 問題6)」を
以下に示します。
 
 
 
ア 国家行政組織法によれば、行政組織のために置かれる国の行政機関には、省、庁および独立行政法人があり、その設置・廃止は別に法律の定めるところによる。
 
 
 
さて、記述アは正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 
 
結論から申しますと、
記述アは誤りです。
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
本問は、国の行政組織についての理解を問う問題です。
 
 
 
まずは、国家行政組織法3条2項を見ていきましょう。
 
 
 
「行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。」
 
 
 
このように、国の行政機関は、
「省」「委員会」「庁」の3つです。
 
 
「独立行政法人」は含まれません。
 
 
したがって、記述アは誤り。
ということになります。
 
 
 
国家行政組織法3条2項については、
「設置及び廃止」について、
「別に法律の定めるところによる」
という部分も、本試験で問われうる知識です。
 
 
「政令」や「省令」ではなく、
「法律」で定めるということも、
しっかりと押さえておきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
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ではまた!
 


第54回 地方自治法 条例と規則

2022.10.19

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を使って具体的に解説します。
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、
行政法の
 
 
「地方自治法 条例と規則」
 
 
です。
 
 
題材としては、
平成30年度 問題23 記述イ(完成問題集 問題166)」
を扱っていきます。
 
 
 
まず、「平成30年度 問題23 記述イ(完成問題集 問題166)」を
以下に示します。
 
 
 
イ 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務に関し、規則を制定し、それに違反した者について、罰金などの刑罰の規定を設けることができる。
 
 
 
 
さて、記述イは正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 
 
結論から申しますと、
記述イは誤りです。
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
本問は、地方自治法における条例と規則について
の理解を問う問題です。
 
 
まず、地方自治法15条1項を以下に示します。
 
 
「普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。」
 
 
次に、同条2項を以下に示します。
 
 
「普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」
 
 
 
上記の15条1項、2項で
押さえていただきたい知識は、
以下の2点です。
 
 
1 地方公共団体の長が制定できるのは、「規則」
 
 
2 地方公共団体の長が科する旨の規定を設けることができるのは、秩序罰たる「過料」
 
 
 
この2点の知識を前提に、
もう一度問題文を見てみると、
 
 
「普通地方公共団体の長は、……罰金などの刑罰の規定を設けることができる。」
 
 
と、あります。
 
 
上記の2を見れば明らかなように、
普通地方公共団体の長が規定を設ける
ことができるのは、
 
 
刑罰たる「罰金」ではなく、
秩序罰たる「過料」
 
 
です。
 
 
したがって、記述イは誤り。
ということになります。
 
 
 
前回前々回と、地方自治法について
扱ってきましたが、
今回扱った条例と規則も、
地方自治法の中で、非常に重要な分野です。
 
 
前々回までと同様に、過去問演習を通じて、
知識を定着させていきましょう。
 
 
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ではまた!
 


第53回 地方自治法 地方公共団体の事務

2022.10.12

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
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 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
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みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
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今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を使って具体的に解説します。
 
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、
 
 
行政法の
「地方自治法 地方公共団体の事務」

 
 
です。
 
 
題材としては、
「平成30年度 問題24 肢1(完成問題集 問題161)」
を扱っていきます。
 
 
 
まず、
「平成30年度 問題24 肢1(完成問題集 問題161)」を
以下に示します。
 
 
 
肢1 都道府県は、自治事務については条例を制定することができるが、法定受託事務については条例を制定することができない。
 
 
 
 
さて、肢1は正しいでしょうか。
 
 
 
 
……
 
 
 
 
結論から申しますと、肢1は誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
本問は、地方自治法の地方公共団体である、
都道府県の事務についての理解を問う問題です。
 
 
 
まず、地方自治法2条2項を以下に示します。
 
 
「普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。」
 
 
 
次に、14条1項を以下に示します。
 
 
「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。」
 
 
 
これら2つの条文を読み解いていくと、
 
 
「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて地域における事務に関し、条例を制定することができる。」
 
 
となります。
 
 
そして、「地域における事務」とは、
自治事務と法定受託事務の両方を含む
と解されています。
 
 
したがって、肢1は誤りということになります。
 
 
地方自治法における地方公共団体の事務は、
前回の住民訴訟と並んで、非常に重要な分野です。
 
 
住民訴訟と同様に、過去問演習を通じて、
知識を定着させていきましょう。
 
 
ではまた!
 

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いるものに準拠しています。
 


第52回 地方自治法 住民訴訟

2022.10.5

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を使って具体的に解説します。
 
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、
 
行政法の「地方自治法 住民訴訟」
 
です。
 
 
題材としては、
「平成27年度 問題21 記述ア(完成問題集 問題151)」
を扱っていきます。
 
 
まず、
「平成27年度 問題21 記述ア(完成問題集 問題151)」を
以下に示します。
 
 
 
ア 住民訴訟は、当該普通地方公共団体の住民ではない者であっても、住民監査請求をした者であれば、提起することが許される。
 
 
 
 
さて、記述アは正しいでしょうか。
 
 
 
 
……
 
 
 
結論から申しますと、
記述アは誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
本問は、
地方自治法の住民訴訟についての理解
を問う問題です。
 
 
まず、地方自治法242条の2第1項を以下に示します。
 
 
「普通地方公共団体の住民は、前条第1項の規定による請求〔住民監査請求〕をした場合において、……裁判所に対し、同条第1項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。」
 
 
したがって、当該普通地方公共団体の住民でない者は、
住民訴訟を提起することができません。
 
 
住民訴訟のポイントは、

1 当該普通地方公共団体の住民であり、
2 住民監査請求をした者に限り、
  提起することができるということです。
 
 
 
地方自治法における住民訴訟は、
非常に重要な分野です。
 
 
過去問演習を通じて、
知識を定着させていきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
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第51回 行政法 損失補償

2022.9.28

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を使って具体的に解説します。
 
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、
行政法の「損失補償」です。
 
 
題材としては、
平成26年度 問題20 肢3(完成問題集 問題138)」
を扱っていきます。
 
 
まず、「平成26年度 問題20 肢3(完成問題集 問題138)」
を以下に示します。
 
 
 
肢3 収用委員会の収用裁決によって決定された補償額に起業者が不服のある場合には、土地所有者を被告として、その減額を求める訴訟を提起すべきこととされている。
 
 
 
さて、肢3は正しいでしょうか。
 
 
 
 
……
 
 
 
 
結論から申しますと、
肢3は正しいです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
本問は、損失補償についての理解
を問う問題です。
 
 
基本的に、損失補償は、本問のような
土地収用の事案として出題されることが多いです。
 
 
そのため、土地収用の事案で、
知識を押さえてしまいましょう。
 
 
まず、土地収用の事案において、
補償金額を決定するのは、
収用委員会の収用裁決です。
 
 
したがって、かかる補償金額に不服がある場合、
収用委員会を被告として、訴え(形式的当事者訴訟)を
提起すべきとも思えます。
 
 
しかし、以前のコラムでもお伝えしたように、
土地収用法133条3項は、
 
 
「前項の規定による訴え〔注:収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴え〕は、これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない。」
 
 
と規定しています。
 
 
つまり、本問において
被告となるのは、土地所有者
となります。
 
 
よって、肢3は正しい。
ということになります。
 
 
いかがでしたか?
 
 
損失補償は、行政書士試験において、
出題頻度が高い分野とはいえません。
 
 
しかし、形式的当事者訴訟と知識が被る部分が多いため、
重要な部分に関しては、可能であれば押さえておくことが
望ましいです。
 
 
メリハリをつけて、勉強していきましょう。
 
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
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第50回 国家賠償法1条

2022.9.21

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
行政法の「国家賠償法1条」です。
 
 
題材としては、
「平成27年度 問題19 肢1(完成問題集 問題125)」
を扱っていきます。
 
 
まず、「平成27年度 問題19 肢1(完成問題集 問題125)」
を以下に示します。
 
 
 
肢1 非番の警察官が、もっぱら自己の利をはかる目的で、職務を装って通行人から金品を奪おうとし、ついには、同人を撃って死亡させるに至った場合、当該警察官は主観的に権限行使の意思をもってしたわけではないから、国家賠償法1条1項の適用は否定される。
 
 
 
さて、肢1は正しいでしょうか。
 
 
 
 
……
 
 


結論から申しますと、
肢1は誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
本問は、
国家賠償法1条1項についての理解を問う問題です。
 
 
まず、国家賠償法1条1項を以下に示します。
 
 
 
1条1項 「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」
 
 
 
本問は、同項の「職務を行うについて」という要件について
の知識を問う問題です。
 
 
 
「職務を行うについて」とは、
公務員が客観的に職務執行の外形を備えた行為を行っている場合
をいいます。
 
 
したがって、公務員の主観的意図は問いません。
 
 
その観点から肢1を見ると、
非番の警察官たる「公務員」が、
もっぱら自己の利をはかる目的ではあるものの、
「職務を装って」通行人から金品を奪おうとしており
客観的には職務執行の外形を備えているといえます。
 
 
よって、国家賠償法1条1項の適用が肯定されます。
 
 
以上から、肢1は誤りとなります。
 
 
国家賠償法1条については、
その成立要件が重要
です。
 
 
問題演習を通じて、
理解を深めていきましょう。
 
 
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝え
していく予定ですので、日々の勉強の
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第49回 行政事件訴訟法 形式的当事者訴訟

2022.9.14

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、行政法の
 
「行政事件訴訟法 形式的当事者訴訟」
 
です。
 
 
題材としては、

「平成24年度 問題44(完成問題集 問題219)」

を扱っていきます。
 
 
 
まず、「平成24年度 問題44(完成問題集 問題219)」を
以下に示します。
 
 
 
問題44 Xは、A県B市内に土地を所有していたが、B市による市道の拡張工事のために、当該土地の買収の打診を受けた。Xは、土地を手放すこと自体には異議がなかったものの、B市から提示された買収価格に不満があったため、買収に応じなかった。ところが、B市の申請を受けたA県収用委員会は、当該土地について土地収用法48条に基づく収用裁決(権利取得裁決)をした。しかし、Xは、この裁決において決定された損失補償の額についても、低額にすぎるとして、不服である。より高額な補償を求めるためには、Xは、だれを被告として、どのような訴訟を提起すべきか。また、このような訴訟を行政法学において何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。
 
 
 
 
……
 
 
 
さて、いかがでしょうか。
 
 
 
今回は記述式の問題なので、
答えを瞬時に導くことは難しいかもしれません。
 
 
 
一つひとつ確認していきましょう。
 
 
 
まず、記述式の問題を解く上で大事なことは、
問題文が何を問うているのかをしっかりと把握することです。
 
 
 
本問でこれを確認すると、
Xは、だれを被告として、どのような訴訟を提起すべきか。
 また、このような訴訟を行政法学において何と呼ぶか。
とあります。
 
 
 
要するに、

1 被告、
2 提起すべき訴訟、
3 訴訟名

の3つを解答する必要があることが分かります。
 
 
言い換えれば、これ以外のことは
解答する必要はないということです。
 
 
そして、解答を導く思考の順序としては、
原則として、2→3→1となります。
 
 
これは、決まりがあるわけではないですが、
まずは2の提起すべき訴訟を定めなければ、
1の被告について解答することができないことが理由です。
 
 
そのことを前提に、問題文を見ていきましょう。
 
 
 
問題文を見ると、本問は、

収用裁決において
決定された補償金額に不服(不満)がある場面

ということが分かります。
 
 
このような場面において、
まずもって想起していただきたい訴訟は、
形式的当事者訴訟(4条前段)です。
 
 
収用裁決」と「補償金額に不服」というキーワードを
見た時点で、形式的当事者訴訟を想起できるようになれば、
行政事件訴訟法における知識は、かなり合格に近づいている
といえるでしょう。
 
 
したがって、2、3は、形式的当事者訴訟となります。
 
 
 
そして、形式的当事者訴訟における1の被告については、
土地収用法133条3項にその規定があります。
 
土地収用法133条3項は、

「前項の規定による訴え〔注:収用委員会の裁決のうち損失の補償
に関する訴え〕は、これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない。」

と規定しています。
 
 
本問でこれをみると、
訴訟を提起しようとしているのは、土地所有者であるXです。
 
 
したがって、
起業者であるB社が1の被告となります。
 
 
よって、解答例としては、


「B市を被告として、補償の増額を求める訴訟を提起すべきであり、形式的当事者訴訟と呼ぶ。」


となります。
 
 
 
前回もお伝えしましたが、当事者訴訟は、
形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の区別が
難しいところが、苦手意識を持つ方の多い理由
の一つです。
 
 
両者については、前回や今回扱った具体例を
しっかりと押さえ、判別できるようにしておきましょう。
 
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えして
いく予定ですので、日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
 
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第48回 行政事件訴訟法 実質的当事者訴訟

2022.9.6

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、行政法の
行政事件訴訟法 実質的当事者訴訟
です。
 
 
題材としては、「平成23年度 問題18 肢3
(完成問題集 問題108)」を扱っていきます。
 
 
 
まず、「平成23年度 問題18 肢3(完成問題集 問題108)」を
以下に示します。
 
 
 
肢3 国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴えを提起する場合、この確認の訴えは実質的当事者訴訟に該当する。
 
 
 
さて、肢3は正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 
 
 
結論から申しますと、肢3は正しいです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
本問は、実質的当事者訴訟についての知識を問う問題です。
 
 
まず、当事者訴訟について定める、
4条を以下に示します。
 
 
4条 「この法律において『当事者訴訟』とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。」
 
 
 
この内の、「公法上の法律関係に関する確認の訴え
その他の公法上の法律関係に関する訴訟」という部分が、
実質的当事者訴訟にあたります。
 
 
典型例が、本問にもあるような、
国に対しての日本国籍を有することの確認を求める訴えです。
 
 
したがって、肢3は正しい、ということになります。
 
 
当事者訴訟は、
形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の区別が難しい
ところが、苦手意識を持つ方が多い理由の一つです。
 
 
両者については、具体例をしっかりと押さえ、
判別できるようにしておきましょう。
 
 
なお、実質的当事者訴訟については、
今回取り扱った「平成23年度 問題18(完成問題集 問題108)」で
問われている知識を押さえていただければ、試験対策としては十分です。
 
 
メリハリをつけて勉強を進めていきましょう。
 
 
 
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第47回 行政事件訴訟法 判決の効力

2022.8.31

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、行政法の
「行政事件訴訟法 判決の効力」です。
 
 
 
題材としては、
平成30年度 問題17 肢5(完成問題集 問題100)」
を扱っていきます。
 
 
 
まず、「平成30年度 問題17 肢5(完成問題集 問題100)」
を以下に示します。
 
 
 
肢5 申請を拒否する処分に対する審査請求の棄却裁決を取り消す判決は、裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
 
 
 
さて、肢5は正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 
 
結論から申しますと、肢5は正しいです。
 
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
本問は、取消訴訟の判決の効力の中でも、
より一層重要な効力である「拘束力」について
の知識を問う問題
です。
 
 
 
まず、33条1項を以下に示します。
 
 
 
1項 「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、
処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」
 
 
 
本問でこれをみると、
「申請を拒否する処分に対する審査請求の棄却裁決を取り消す判決」
について、「裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」
とあります。
 
 
上記の33条1項を見ていただければ、
正しいことは分かると思います。
 
 
 
ここでのポイントは、「処分」を取り消す判決だけでなく、
「裁決」を取り消す判決についても、当該行政庁その他の
関係行政庁に対しての拘束力を有するというところです。
 
 
判決の効力については、皆さん、
なかなか手が回りにくい部分です。
 
 
とはいえ、拘束力については、出題頻度の高い分野ですので、
問題演習を通じて復習をしていけるとよいでしょう。
 
 
 
「平成30年度 問題17(完成問題集 問題100)」については、
今回扱った肢5以外の選択肢についても、基礎的かつ重要なもの
が揃っています。
 
 
拘束力についての復習の際には、
是非演習することをお勧めいたします。
 
 
 
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第46回 行政事件訴訟法 執行不停止原則の例外

2022.8.24

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、行政法の
 
 
行政事件訴訟法 執行不停止原則の例外
 
 
です。
 
 
題材としては、
 
平成25年度 問題18  肢4(完成問題集 問題95)」
 
を扱っていきます。
 
 
 
まず、「平成25年度 問題18 肢4(完成問題集 問題95)」を
以下に示します。
 
 
 
肢4 裁判所は、処分の執行停止の必要があると認めるときは、職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止をすることができる。
 
 
 
 
さて、肢4は正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 
 
 
結論から申しますと、
肢4は誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
本問は、執行不停止原則(25条1項)の例外(同条2項~4項)
についての知識を問う問題です。
 
 
25条の1項と2項を以下に示します。
 
 
1項 「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。」
 
 
 
2項 「処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。」
 
 
 
 
本問でこれをみると、
「裁判所は、……職権で、……することができる。」とあります。
 
 
この、「職権で」というところがポイントです。
 
 
このことを踏まえた上で、
上記の25条2項を見てみると、
「申立てにより」とあります。
 
 
このように、行政事件訴訟法における執行停止は、
職権で行うことは認められていません。
 
 
したがって、肢4は誤り。
ということになります。
 
 
なお、行政不服審査法においては、
職権による執行停止も認められています
(行政不服審査法25条2項参照)。
 
 
このような複数の法律にまたがっている
類似の知識については、双方を比較しながら
押さえておくとよいでしょう。
 
 
 
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第45回 行政事件訴訟法 訴訟要件(被告適格)

2022.8.17

 
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伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、行政法の
行政事件訴訟法 訴訟要件(被告適格)」です。
 
 
題材としては、
令和3年度 問題18 肢1」を扱っていきます。
 
 
 
まず、「令和3年度 問題18 肢1」を以下に示します。
 
 
 
肢1 処分をした行政庁が国または公共団体に所属する場合における処分取消訴訟は、当該処分をした行政庁を被告として提起しなければならない。
 
 
 
さて、肢1は正しいでしょうか。
 
 
 
 
……
 
 
 
 
結論から申しますと、肢1は誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
本問は、取消訴訟における被告適格(行政事件訴訟法11条)の
知識を問う問題です。
 
 
 
11条の中でも、試験対策として重要な規定は1項と2項なので、
同項を以下に示します。
 
 
 
1項 「処分又は裁決をした行政庁……が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。」
 
 
1号 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
 
 
2号 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体
 
 
 
2項 「処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。」
 
 
 
本問でこれをみると、「処分をした行政庁が国または公共団体に所属する場合」とあるので、11条1項1号の場面ということが分かります。
 
 
したがって、本問における処分取消訴訟は、
「当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体」を
被告として提起する必要があります。
 
 
よって、肢1は誤りということになります。
 
 
 
被告適格については、記述式問題でもよく問われる部分なので、
11条の1項と2項を参照しつつ問題演習をすることで、
知識を押さえていただければと思います。
 
 
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第44回 行政事件訴訟法 訴訟要件(処分性)

2022.8.10

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
 
 
行政法の「行政事件訴訟法 訴訟要件(処分性)」
 
 
です。
 
 
 
「平成28年度 問題19 肢1(完成問題集 問題88)」を
以下に示します。
 
 
 
肢1 保育所の廃止のみを内容とする条例は、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童およびその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。
 
 
 
 
さて、肢1は正しいでしょうか。
 
 
 
 
……
 
 
 
 
結論から申しますと、肢1は正しいです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
まず、本問のキーワードは、
「保育所の廃止のみを内容とする条例……の制定行為」と
「行政庁の処分と実質的に同視し得るもの」という部分であり、
訴訟要件の「処分性」について問うています。
 
 
 
この点、条例の制定行為は、原則として、
限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、
直接国民の権利義務に変動を与えないため、
処分性は否定されています(判例・通説)。
 
 
 
しかし、保育所の廃止のみを内容とする条例の制定行為については、
「当該保育所で保育を受けていた児童又はその保護者という限られた
特定の者」を対象としており、また、条例の制定行為そのものから
(当該保育所に通えなくなるという意味で)直接国民の権利義務に
変動を与えるため、判例は処分性を肯定しました
(最判平21.11.26)。
 
 
 
したがって、保育所の廃止のみを内容とする条例の制定行為については、処分性が肯定されています。
 
 
よって、肢1は正しい、ということになります。
 
 
 
以上のように、行政法の「行政事件訴訟法訴訟要件(処分性)」に
ついては、判例知識がそのまま出題されることがよくあります
 
 
つまり、判例の結論さえ押さえておけば、得点源となりえます。
 
 
代表的な判例については、キーワードに反応して
結論を即答できるようにしておきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
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第43回 5分でチェック!『行政不服審査法 不服申立適格』

2022.8.3

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
 
 
行政法の「行政不服審査法 不服申立適格」
 
 
です。
 
 
 
「平成22年度 問題14 肢4」を以下に示します。
 
 
 
肢4 処分について不服申立適格を有するのは、処分の相手方に限られ、それ以外の第三者は、法律に特別の定めがない限り、不服申立適格を有しない。
 
 
 
 
さて、肢4は正しいでしょうか。
 
 
 
 
 
 
結論から申しますと、肢4は誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
 
まず、本問のキーワード
不服申立適格」です。
 
 
 
この点、行政不服審査法2条は、
「行政庁の処分に不服がある者」と規定しています。
 
 
 
そして、判例は、「処分に不服がある者」とは、
 
 
当該処分について 不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう、と解すべきである。
 
 
としています(最判昭53.3.14)。
 
 
 
したがって、不服申立適格は、処分の相手方に限られません。
 
 
 
よって、肢4は誤り。
ということになります。
 
 
 
以上のように、
行政法の「行政不服審査法 不服申立適格」については、
判例の解釈を正確に押さえておく必要があります。
 
 
 
まずは、処分の相手方に限られない、
という結論を押さえてしまいましょう。
 
 
また、行政事件訴訟法9条の原告適格とあわせて理解しておくと、
より理解が深まると思います。
 
 
周りのペースに惑わされず、
ご自身の可処分時間に合わせて計画を立て、勉強していきましょう。
 
 
こつこつ淡々と、勉強を進めていただければ、と思います。
 
 
 
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第42回 5分でチェック!『行政不服審査法 事情裁決』

2022.7.27

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
 
 
行政法の「行政不服審査法 事情裁決」
 
 
です。
 
 
 
 
平成20年度 問題18 肢4」を以下に示します。
 
 
 
肢4 事情判決は、行政事件訴訟に特有な制度であり、行政不服審査法には、類似の事情裁決といった制度はない。
 
 
 
さて、肢4は正しいでしょうか。
 
 
 
 
……
 
 
 
 
結論から申しますと、肢4は誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
まず、本問では、事情裁決という制度の存在を
知っているかどうかで、容易に正誤を導き出せます
(行政不服審査法45条3項、64条4項)。
 
 
しかし、一般的には、行政事件訴訟法の事情判決(31条)を
重点的に学習するため、「制度として存在するか」というところで、
受験生に一瞬の戸惑いを与える肢となりえます。
 
 
まさに、この点に出題意図があります。
 
 
 
よって、肢4は誤り。
 
ということになります。
 
 
 
以上のように、行政法の「行政不服審査法事情裁決」については、
条文に規定された制度がそのまま問われます。
 
 
対策としては、講義で扱った部分については、
その都度、(できる限り)六法を引くことです。
 
 
その際、講義で扱う頻度によって、
メリハリに気をつけるとよいでしょう。
 
 
 
連日の暑さにより、体調を崩しやすい時期に
なってきましたが、こまめに水分を補給しつつ
過ごしていただければ、と思います。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
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第41回 5分でチェック!『行政手続法 不利益処分』

2022.7.20

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科 講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
 
 
行政法の「行政手続法 不利益処分」
 
 
です。
 
 
 
「平成18年度 問題11 肢4改題」を以下に示します。
 
 
 
 
肢4 聴聞を経てなされた不利益処分については、行政不服審査法による審査請求をすることはできない。 
 
 
 
 
 
さて、肢4は正しいでしょうか。
 
 
 
 
 
 
結論から申しますと、肢4は誤りです。
 
 
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
 
まず、本問のキーワードは、
「聴聞を経てなされた不利益処分」です。
 
 
 
 
この点、行政手続法27条は、
 
 
「この節の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。」
 
 
と規定しています。
 
 
 
そして、「この節」とは、「第2節 聴聞」のことです。
 
 
 
つまり、27条は、
 
 
「『聴聞』の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。」
 
 
と読みかえることができます。
 
 
 
これは、「聴聞の過程で行われる付随的処分」については、
行政不服審査法による審査請求をすることができない、
ということを意味しています。
 
 
同条の趣旨は、聴聞の過程で行われる付随的処分にまで
不服申立てを認めると、行政活動の停滞を招いてしまうため、
それを防止することにあります。
 
 
ここで、本問の不利益処分についてみてみると
「聴聞を経てなされた不利益処分」というキーワードから、
すでに聴聞を終えて実際になされた処分であることがわかります。
 
 
したがって、27条の適用場面とはいえず、
審査請求の対象となる不利益処分といえます。
 
 
よって、肢4は誤り、ということになります。
 
 
 
以上のように、
行政法の「行政手続法 不利益処分」については、
条文に規定された制度がそのまま問われます。
 
 
対策としては、学習の都度、
丁寧に六法を引き、条文を押さえていくことに尽きます。
 
 
これは、日々の地道な努力が確実に
得点に結びつくということです。
 
 
ご自身の可処分時間に合わせて、
無理のないペースで勉強を続けていきましょう。
 
 
周りとは比較をせず、
一歩一歩進んでいただければ、と思います。
 
 
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第40回 5分でチェック!『行政法 ~行政手続法 申請に対する処分と不利益処分~ 』

2022.7.13

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、前回と同様に、
 
 
行政法の「行政手続法 申請に対する処分と不利益処分」
 
 
です。
 
 
 
題材としては、
「平成30年度 問題11 肢3(完成問題集 問題50)」
を扱っていきます。
 
 
 
では、早速、
「平成30年度 問題11 肢3(完成問題集問題50)」を以下に示します。
 
 
 
 
肢3 行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、弁明の機会の付与の手続を執らなければならないのに対し、不利益処分をする場合には、聴聞の手続を執らなければならない。
 
 
 
 
さて、肢3は正しいでしょうか。
 
 
 
 
 
結論から申します。
肢3は誤りです。
 
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
 
まず、問題文の前半について解説していきます。
 
 
 
この点、行政手続法上、申請を拒否する処分は
不利益処分から除外されており(2条4号ロ)、
この処分について、弁明の機会の付与の手続きを
執らなければならないとする旨の規定は置かれていません。
 
 
 
したがって、問題文の前半は誤り。
ということになります。
 
 
 
 
次に、問題文の後半について解説します。
 
 
 
この点、同法13条1項柱書は、
「行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、
 次の各号の区分に従い、この章の定めるところにより、
 当該不利益処分の名あて人となるべき者について、
 当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。」
と規定しています。
 
 
そして、同項1号柱書は「次のいずれかに該当するとき 聴聞」とし、
同項2号は「前号イからニまでのいずれにも該当しないとき 弁明の
機会の付与」としており、問題文のように全ての不利益処分に聴聞の
手続きを執らなければならない、とはしていません。
 
 
したがって、問題文の後半も誤り。
ということになります。
 
 
 
よって、肢3は誤り。
という答えを導くことができます。
 
 
 
前回からの繰り返しになりますが、
行政法の「行政手続法 申請に対する処分と不利益処分」については、
なんとなく聞いたような単語を混ぜてひっかけてくることがあります。
 
 
対策としては、基本的概念や制度趣旨を理解した上で、
丁寧に条文を押さえていくことが重要です。
 
 
焦らず、ご自身の可処分時間に合わせた勉強計画を立てた上で、
一歩ずつ進んでいきましょう。
 
 
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第39回 5分でチェック!『行政手続法 申請に対する処分と不利益処分』

2022.7.6

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
「気になってはいるけれどいまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
 
 
行政法の「行政手続法 申請に対する処分と不利益処分」
 
 
です。
 
 
 
 
題材としては、「平成30年度 問題11 肢2(完成問題集 問題50)」を
用いて解説をしていきます。
 
 
 
「平成30年度 問題11 肢2(完成問題集 問題50)」を以下に示します。
 
 
 
 
肢2 行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、申請者から求めがあったときに限り当該処分の理由を示すべきものとされているのに対し、不利益処分をする場合には、処分を行う際に名宛人に対して必ず当該処分の理由を示すべきものとされている。 
 
 
 
 
さて、肢2は正しいでしょうか。
 
 
 
 
 
 
結論から申しますと、肢2は誤りです。
 
 
 
 
まず、問題文の前半について解説します。
 
 
 
行政手続法8条1項は、
 
 
「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。」
 
 
 
と規定しています。
 
 
 
この点、理由を示すのは、
 
 
 
「申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合」
 
 
 
です。
 
 
 
 
したがって、問題文前半のように、
 
 
「申請者から求めがあったときに限り当該処分の理由を示すべきものとされている」
 
 
とは限定されていないので、問題文の前半は誤りとなります。
 
 
 
 
 
次に、問題文の後半について検討します。
 
 
 
同法14条1項は、
 
 
 
「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。」
 
 
 
と規定しています。
 
 
 
さらに、同条2項は、
 
 
 
「行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。」
 
 
 
と規定しています。
 
 
 
このように、不利益処分をする場合には、
原則として、処分を行う際に名宛人に対して
当該処分の理由を示さなければならない、
とされています。
 
しかし、例外的に、
理由を示さなくてよい場合も明示されています。
 
 
 
したがって、問題文後半のように、
必ず当該処分の理由を示すべきものとはされていないため、
問題文後半も誤りとなります。
 
 
 
よって、肢2は誤り。
という答えを導くことができます。
 
 
 
このように、行政法の「行政手続法申請に対する処分と不利益処分」は、
なんとなく聞いたような単語を混ぜてひっかけてくることがあります。
 
 
対策としては、基本的概念や制度趣旨を理解した上で、
丁寧に条文を押さえていくことが重要です。
 
 
 
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第38回 5分でチェック!『行政手続法 申請に対する処分(後編)』

2022.6.29

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
 
今回も、受講生の皆さんが
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、前回に引き続き、
行政法の「行政手続法 申請に対する処分」です。
 
 
 
題材としては、「平成23年度 問題11 肢1(完成問題集 問題61)」を
用いて解説をしていきます。
 
 
 
まず、「平成23年度 問題11 肢1(完成問題集 問題61)」を
以下に示します。
 
 
 
 
肢1 行政庁は、申請に対する拒否処分及び不利益処分のいずれの場合においても、これを書面でするときは、当該処分の理由を書面で示さなければならない。
 
 
 
 
 
 
さて、肢1は正しいでしょうか。
 
 
 
 
 
……
 
 
 
 
 
結論から申しますと、肢1は正しいです。
 
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
 
まず、本問のキーワードは、
 
 
「拒否処分及び不利益処分……を書面でするときは……理由を書面で示さなければならない」
 
 
です。
 
 
 
 
この点、行政手続法8条2項と14条3項は、
以下のように規定されています。
 
 
 
8条2項 「前項本文に規定する処分(申請により求められた許認可等を拒否する処分)を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。」
 
 
 
14条3項 「不利益処分を書面でするときは、前2項の理由は、書面により示さなければならない。」
 
 
 
したがって、当該処分を書面でするときは、
理由も書面で示さなければなりません。
 
 
 
よって、肢1は正しい。
ということになります。
 
 
 
前回今回と見てきたように、
行政法の「行政手続法 申請に対する処分」については、
条文知識が出題されるので、地道な学習が得点に直結します。
 
 
条文に沿った学習の成果が自然と出てくる分野なので、
日々、こつこつと条文を引いていけるとよいですね。
 
 
勉強は、あせらず、適度に負荷をかけて、
続けていくことが重要です。
 
 
ご自身の可処分時間に合った勉強時間を見つけた上で、
課題を一つひとつこなしていただければ、と思います。
 
 
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第37回 5分でチェック!『行政手続法 申請に対する処分(前編)』

2022.6.22

 
みなさん、こんにちは。
 

伊藤塾行政書士試験科講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
「気になってはいるけれどいまいち、よく分からない…」
 
という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 

今回取り扱うテーマは、

行政法の「行政手続法 申請に対する処分」
 
です。
 

題材としては、「平成24年度 問題24 肢3(完成問題集 問題185)」
を用いて解説をしていきます。
 
 
 

まず、「平成24年度 問題24 肢3(完成問題集 問題185)」を
以下に示します。
 
 
 
肢3 Xは、A川の河川敷においてゴルフ練習場を経営すべく、河川管理者であるY県知事に対して、河川法に基づく土地の占用許可を申請した。Y県知事は、占用を許可するに際して、行政手続法上、同時に理由を提示しなければならず、これが不十分な許可は、違法として取り消される。
 
 
 
さて、肢3は正しいでしょうか。
 
 
 
 

結論から申しますと、肢3は誤りです。
 
 
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
まず、本問のキーワードは、
「占用を許可するに際して」です。
 
 
 
この点、行政手続法8条1項本文は、
以下のように規定しています。
 
 
8条1項本文 「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。」
 
 
したがって、理由を示さなければならないのは、
申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合です。
 
 
本問のように、申請により求められた許認可等をする場合ではありません。
 
 
よって、肢3は誤り。
という答えを導くことができます。
 
 

次回も、行政法の「行政手続法申請に対する処分」について
お届けします。
 
 
日々の勉強に息が詰まってくる頃だと思いますが、
私のコラムが受験生の皆さんの一助になれば幸いです。
 

無理せず、自分のペースで勉強を続けていきましょう。
一緒に頑張りましょう。

応援しています。
 
 
 
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第36回 5分でチェック!『行政法「一般的法理論 行政上の義務の履行確保」

2022.6.15

 
みなさん、こんにちは。


伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。

 
今回も、受講生の皆さんが
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」

という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。


今回取り扱うテーマは、
行政法の「一般的法理論 行政上の義務の履行確保」についてです。
 
 
題材としては、「令和元年度 問題8 肢1・4(完成問題集 問題25)」を
用いて解説をしていきます。
 
 
まず、「令和元年度 問題8 肢1」を以下に示します。
 
 
 
肢1 即時強制とは、非常の場合または危険切迫の場合において、行政上の義務を速やかに履行させることが緊急に必要とされる場合に、個別の法律や条例の定めにより行われる簡易な義務履行確保手段をいう。
 
 
 
さて、肢1は正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 
 
結論から申しますと、肢1は誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
即時強制とは、義務の存在を前提としないで、
行政上の目的を達成するため、直接に身体若しくは財産に対して
有形力を行使することをいいます。
 

この、「義務の存在を前提としないで」という部分がポイントです。
 
 
 
即時強制は、義務の存在(義務の不履行)を前提としないところに
特徴があり、この点が強制執行との大きな違いです。
 
 
 
したがって、「行政上の義務を速やかに履行させることが
緊急に必要とされる場合」としている部分が誤りとなります。
 
 
 
 
次に、「令和元年度 問題8 肢4」を以下に示します。
 
 
 
肢4 行政上の秩序罰とは、行政上の秩序に障害を与える危険がある義務違反に対して科される罰であるが、刑法上の罰ではないので、国の法律違反に対する秩序罰については、非訟事件手続法の定めるところにより、所定の裁判所によって科される。
 
 
 
さて、肢4は正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 
結論から申しますと、肢4は正しいです。
 
 

行政上の秩序罰とは、まさに本肢に記載の通りの内容です。
 

したがって、肢4は正しい。
ということになります。
 
 
このように、行政法の「一般的法理論 行政上の義務の履行確保」については、
まずは、個々の定義をしっかりと把握しましょう。
 
 

そのうえで、それらの分類の分岐点となる視点を
しっかり
確認しておくとよいでしょう。
 

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第35回 5分でチェック!行政法「一般的法理論 行政上の法律関係(後編)

2022.6.8

 
みなさん、こんにちは。
 

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
「気になってはいるけれど
いまいち、よく分からない…」

という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 

今回取り扱うテーマは、前回と同様に、
行政法の「一般的法理論 行政上の法律関係」です。
 

前回は、「平成22年度 問題10 肢2」を用いて、
公営住宅の使用関係について民法及び借地借家法が適用されるか、
という論点を扱いました。
 
 
今回は、「平成18年度 問題8 肢1」を用いて、
行政上の法律関係について解説をしていきます。
 
 

まず、「平成18年度 問題8 肢1」を以下に示します。
 
 
 
肢1 防火地域に関する建築基準法の規定は、民法の相隣規定に関する特別法として適用されるとするのが最高裁の判例である。
 
 

さて、肢1は正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 

結論から申しますと
肢1は正しいです。
 
 

以下、理由を解説していきます。
 
 
 
まず、本問のキーワードは、
「防火地域」と「建築基準法」です。
 
 
 
判例は、建築基準法の規定については、
民法の特別法として、民法の相隣関係の規定を排除する
としています。
 
 
したがって、ここでは、防火地域に関する建築基準法の規定は、
民法の相隣規定に関する特別法として適用されます。
 

言い換えると、公法である建築基準法の規定が
私法である民法の規定に優先するということです。
 

よって、肢1は正しい、ということになります。
 
 
 
先週に引き続き、
行政法の「一般的法理論行政上の法律関係」について
解説しました。
 

先週もお伝えしましたが、
行政法の「一般的法理論 行政上の法律関係」については、
判例知識がそのまま出題されることが非常に多い分野です。
 
 
キーワードと結論をしっかりと押さえて、
是非得点源にしておきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
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第34回 5分でチェック!行政法「一般的法理論 行政上の法律関係(前編)

2022.6.1

 
みなさん、こんにちは。
 

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんが
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」

という学習上のポイントについて
過去問を用いて具体的に解説いたします。
 
 

今回取り扱うテーマは、
行政法の「一般的法理論 行政上の法律関係」です。
 
 
題材としては、「平成22年度 問題10 肢2」を用いて解説をしていきます。
 
 
 
まず、「平成22年度 問題10 肢2」を以下に示します。
 
 

肢2 公営住宅の使用関係については、公営住宅法およびこれに基づく条例が特別法として民法および借家法(事件当時)に優先して適用されるが、公営住宅法および条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法および借家法の適用があり、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用がある。
 
 

さて、肢2は正しいでしょうか。
 
 
 
……
 
 
 
結論から申しますと、肢2は正しいです。
 
 

以下、理由を解説していきます。
 
 
 
まず、本問のキーワードは、「公営住宅」です。
 
 
 
公営住宅の使用関係については、
公営住宅法及びこれに基づく条例が、特別法として
民法・借家法(現借地借家法)に優先して適用されますが、
 

法・条例に特別の定めのない限り、
原則として、一般法である民法・借家法(現借地借家法)の適用がある
とされています(判例)。


 
したがって、ここでは一般法の民法・借家法(現借地借家法)の適用があり、その中身である信頼関係の法理の適用もあります。

(※信頼関係の法理とは、主に賃貸借契約において、
  信頼関係が破壊された場合に限って解除が認められ、
  信頼関係がいまだ破壊されていない場合には解除は認められない、
  という考え方をいう。
  信頼関係破壊の法理とも呼ばれる。)
 
 
よって、肢2は正しい。
という答えを導くことができます。
 
 
 
このように、行政法の「一般的法理論行政上の法律関係」については、
判例知識が出題されるので、地道な学習が得点に直結します。
 
 
キーワードに反応して覚えさえすれば、
しっかりと得点につながる分野ですので、
ある程度割り切って記憶しておきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく
予定ですので、日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
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第33回 5分でチェック!行政法「地方自治法」

2022.5.25

 
みなさん、こんにちは。
 

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんがつまずきやすい
点について、具体的な過去問を題材にして
解説をしていきたいと思います。
 

今回取り扱うテーマは、
行政法の「地方自治法」です。
 

題材としては、「平成27年度 問題21  記述ア(完成問題集 問題151)」を
用いて解説をしていきます。
 
 
 
まず、「平成27年度 問題21 記述ア(完成問題集 問題151)」を
以下に示します。
 
 

記述ア 住民訴訟は、当該普通地方公共団体の住民ではない者であっても、住民監査請求をした者であれば、提起することが許される。
 
 
 

さて、記述アは正しいでしょうか。
 
 
 

……
 
 
 
 
結論から申しますと、
記述アは誤りです。
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
まず、地方自治法242条の2第1項を示します。
 

「普通地方公共団体の住民は、前条第1項の規定による請求〔住民監査請求〕をした場合において、……訴え〔住民訴訟〕をもつて次に掲げる請求をすることができる。」
 

このように、当該普通地方公共団体の住民でない者は、
(住民監査請求をした者であったとしても)
住民訴訟を提起することはできません。
 
 
言い換えると、住民訴訟を提起することができるのは、
当該普通地方公共団体の住民で住民監査請求をした者
ということになります。
 

したがって、「当該普通地方公共団体の住民ではない者であっても」
という部分が誤りとなります。
 
 
本問のような地方自治法に関する問題は、
行政法の中でも最後の方で学習するものであるため、
苦手意識を持つ方が多いです。
 

ですが、ご覧のように条文知識がそのまま問われるものが多いですし、
頻出の条文は限られているので、問題演習を通じて地方自治法の
条文知識を押さえていきましょう。

 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく予定ですので、
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第32回 5分でチェック! 行政法 「国家賠償法」

2022.5.18

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
 
今回も、受講生の皆さんがつまずきやすい点について、
具体的な過去問を題材にして解説をしていきたいと思います。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
行政法の「国家賠償法」です。
 
 
 
題材としては、
「平成26年度 問題19記述ア(完成問題集 問題135)」と
「平成24年度 問題20 肢1(完成問題集 問題123)」を用いて
解説をしていきます。
 
 
 
まず、「平成26年度 問題19 記述ア(完成問題集 問題135)」を以下に
示します。
 
 
 
 
記述ア 1条1項に基づく国家賠償請求については、国または公共団体が賠償の責に任ずるのであって、公務員が行政機関としての地位において賠償の責任を負うものではなく、また公務員個人もその責任を負うものではないから、行政機関を相手方とする訴えは不適法であり、公務員個人を相手方とする請求には理由がない。
 
 
 
 
さて、記述アは正しいでしょうか。
 
 
 
 
結論から申しますと、
記述アは正しいです。
 
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
本問は、国家賠償法の制度趣旨から考えていくと、
比較的素直に答えを導き出すことができます。
 
 
 
国家賠償法の制度趣旨は、ミスをした公務員に代わって
国又は公共団体が賠償責任を負うことにより、
被害者の救済を図るところにあります。
 
 
 
とすれば、公務員個人が賠償責任を負うというのは、
かかる趣旨に反するものということが分かると思います。
 
 
 
したがって、公務員個人が損害賠償を請求されることはありません。
 
 
 
よって、記述アは正しい、
という答えを導くことができます。
 
 
 
 
 
 
次に、「平成24年度 問題20 肢1(完成問題集 問題123)」を以下に示します。
 
 
 
肢1 国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、失火責任法の適用はない。
 
 
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 
 
 
結論から申しますと、
肢1は誤りです。
 
 
 
 
以下、理由を解説していきます。
 
 
 
本問を解くポイントは、
国家賠償法4条の「民法」に失火責任法が含まれるか?
というところです。
 
 
 
 
この点について判例は、失火責任法は
民法709条の特則を規定したものであるから、
4条の「民法」に含まれる、としています。
 
 

したがって、「失火責任法の適用はない」という部分が誤りとなります。
 
 
これは、消防署職員が消火活動の専門家であるか否かで結論は異なりません
 
 
 
よって、肢1は誤り、ということになります。
 
 
 
このように、国家賠償法については、
条文知識と判例知識が繰り返し出題される
ので、地道な学習が得点に直結します。
 

 
過去問演習を通じて、しっかりとものにしていきましょう。
 
 
 
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第31回 5分でチェック! 行政法 「原告適格」

2022.5.11

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
 
今回も、受講生の皆さんがつまずきやすい
点について、具体的な過去問を題材にして
解説をしていきたいと思います。
 
 
今回取り扱うテーマは、
行政法の「原告適格」です。
 
 
題材としては、「平成18年度 問題44」を用いて解説をしていきます。
 
 
 
まず、問題文を以下に示します。
 
 
 
問題
 
 
保健所長がした食品衛生法に基づく飲食店の営業許可について、近隣の飲食店営業者が営業上の利益を害されるとして取消訴訟を提起した場合、裁判所は、どのような理由で、どのような判決をすることとなるか。40字程度で記述しなさい。
 
 
 
……
 
 
 
 
 
いかがでしょうか。
 
 
 
 
 
 
 
以下、解説をしていきます。
 
 
 
 
本問では、処分の直接の相手方ではない近隣の飲食店営業者が、
営業上の利益を害されるとして取消訴訟を提起しようとしています。
 
 

この場合、当該取消訴訟において、
近隣の飲食店営業者に原告適格が認められるのかどうか
を、丁寧に検討する必要があります。
 
 
 
そして、行政事件訴訟法は、
「法律上の利益を有する者」に限り原告適格を認めています(9条1項)。
 
 
 
これは、国民の権利・利益の救済を法の趣旨とすることから、
救済されるべき利益を有しない者に訴訟提起の機会を与える必要はない
との発想です。
 
 
 
ここで、近隣の飲食店営業者が主張する利益は、
各々の売り上げなので、これが、食品衛生法上保護されるべき利益と
いえるのか
を、検討していくこととなります。
 
 
 
この点、行政事件訴訟法9条2項は、
「法律上の利益の有する者」について、
どのように解釈すべきかを規定しています。
 
 
つまり、この解釈にあたっては、
当該処分の根拠となる法令の趣旨・目的・考慮されるべき利益の内容や
性質を考慮していくこととなります。
 
 
 
本問について検討すると、


食品衛生法の目的は、
食品を口にいれる国民の健康という一般的公益を保護すること


です。
 
 

すると、近隣飲食店の営業者の売り上げは保護されていないといえます。
 
 
したがって、この場合の近隣の飲食店営業者は
法律上保護される利益を有する者とはいえず、
原告適格があるとはいえなくなります。
 
 
よって、解答は「原告は、法律上の利益を有せず、
原告適格を欠くという理由で、却下判決をすることとなる。」
となります。
 
 
 
このように、行政法の学習では、条文への理解が肝となります。
 
 
過去問演習を通じて、地道な条文の学習を続けていきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
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第30回 5分でチェック!『憲法 「信教の自由・政教分離の原則」』

2021.5.4

 
みなさん、こんにちは。

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
今回も、受講生の皆さんがつまずきやすい
点について、具体的な過去問を題材にして
解説をしていきたいと思います。
 

今回取り扱うテーマは、
憲法の「信教の自由・政教分離の原則」です。
 
 
題材としては、「平成21年度 問題5肢4・5(完成問題集 問題25)」を用いて解説をしていきます。
 

まず、肢4を以下に示します。
 
 
肢4 憲法20条3項は、国が宗教教育のように自ら特定宗教を宣伝する活動を行うことを禁止する趣旨であるため、宗教団体の行う宗教上の祭祀に際して国が公金を支出することが同項に違反することはない。
 
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 
 

結論からいうと、この肢は誤りです。
 
 
 
 
以下、理由を示します。
 
 
 
憲法20条3項は、国の宗教的活動を禁止しています(政教分離の原則)。
 

そして、宗教団体への補助金の支出等、
宗教のかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果に鑑み、
そのかかわり合いが相当とされる限度を超える場合には、
当該行為は同条項により禁止される宗教的活動にあたるとされます
(最大判昭52.7.13)。
 


したがって、肢4は誤りとなります。
 
 
 

次に、肢5を以下に示します。
 
 
 
肢5 憲法20条3項は、国と宗教とのかかわり合いが、その目的と効果に照らして相当な限度を超えた場合にこれを禁止する趣旨であるため、国公立学校で真摯な宗教的理由から体育実技を履修できない学生に対して代替措置を認めることを一切禁じるものではない。
 
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 
 

結論からいうと、この肢は正しいです。
 
 
 
 
以下、理由を示します。
 
 
判例は、剣道実技事件において、本肢のような内容を判示しています(最判平8.3.8)。
 

つまり、信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した
市立高等専門学校の学生に対して、代替措置について
何ら検討することなく行った原級留置処分及び退学処分が、
信教の自由を侵害する、としたのです。
 
 
したがって、肢5は正しいです。
 


このように、憲法の学習では、判例への理解が肝となります。
 
 

過去問演習を通じて、
判例知識をしっかりとものにしていきましょう。
 
 
 
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第29回 5分でチェック!『保証債務の法的性質』

2022.4.27

 
みなさん、こんにちは。

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんがつまずきやすい
点について、具体的な過去問を題材にして
解説をしていきたいと思います。
 

今回のテーマは、
「保証債務の法的性質」です。
 

保証債務とは、他人がその債務を履行しないときに、
その他人に代わってその債務を履行する責任を負う債務をいいます
(民法446条1項)。
 

この保証債務は、独立債務性、付従性、随伴性、補充性という
4つの法的性質を有しています。
 

特に4つ目の補充性は、保証債務の大きな特徴となります。
 

以上のことを踏まえて、題材としては、
「平成24年度 問題45(完成問題集問題148)」を用いて
解説をしていきます。
 

まず、以下に問題文を示します。
 
 
問題 AがBに金銭を貸し付けるにあたり、書面により、Cが保証人(Bと連帯して債務を負担する連帯保証人ではない。)となり、また、Dが物上保証人としてD所有の土地に抵当権を設定しその旨の登記がなされた。弁済期を徒過したので、Aは、Bに弁済を求めたところ、Bは、「CまたはDに対して請求して欲しい」と応えて弁済を渋った。そこで、Aは、Dに対しては何らの請求や担保権実行手続をとることなく、Cに対してのみ弁済を請求した。この場合において、Cは、Aの請求に対し、どのようなことを証明すれば弁済を拒むことができるか。40字程度で記述しなさい。
 
 
……
 
 
いかがでしょうか。
 
 

以下、解説をしていきます。
 

まず、Cは連帯保証人ではないため、
保証債務の補充性により、催告の抗弁と
検索の抗弁を主張できることがわかります
(452条、453条、454条参照)。
 

そして、問題文には、「弁済期を徒過したので、
Aは、Bに弁済を求めたところ、Bは、『Cまた
はDに対して請求して欲しい』と応えて弁済を渋った。」
とあるので、AはBに対してすでに催告をしていることが
わかり、Cの催告の抗弁は問題となりません。
 

すると、検索の抗弁が問題となることがわかります。
 

民法453条は、検索の抗弁について、
「債権者が前条の規定に従い主たる債務者に
催告をした後であっても、保証人が主たる
債務者に弁済をする資力があり、かつ、
執行が容易であることを証明したときは、
債権者は、まず主たる債務者の財産について
執行をしなければならない。」と規定しています。
 

したがって、解答は、「CがBに弁済の
資力があり、かつ、執行が容易であること
を証明すれば、弁済を拒むことができる。」
となります。
 

本問を解答する上でのポイントは、
 

1保証債務には補充性がある

2連帯保証人には補充性は認められない
 

という2点を押さえることです。
 

本問を通じて、講師の指示に沿って、
基本的なことを1つ1つ着実に理解し記憶していけば、
記述式問題も抵抗なく解ける。
ということを実感していただければ幸いです。
 

初学者の方も、民法の分量に臆することなく、
基礎に徹して日々の学習を積み重ねていきましょう。
 

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第28回 5分でチェック!民法「債権譲渡の対抗要件」

2022.4.20

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
 
今回も、受講生の皆さんがつまずきやすい点について
具体的な過去問を題材にして解説をしていきたいと思います。
 
 
債権譲渡の意義と機能については、
みなさん、学ばれたことでしょう。
 
 
 
その債権譲渡の対抗要件は、
 
 
1債務者に対する対抗要件(民法467条1項)
 
 
2債務者以外の第三者に対する対抗要件(同条2項)
 
 
に大別されます。
 
 
 
物権変動の対抗要件では、
第三者に対する対抗要件しか問題とならなかったのに対し
 
 
債権譲渡の対抗要件では
債務者に対する対抗要件も問題となる点に注意が必要です。
 
 
以下、題材としては、「平成20年度問題46改題(完成問題集 問題151)」
を用いて解説をしていきます。
 
 
 
問題 AはBに対して、自己がCに対して有していた300万円の貸金債権を譲渡した。この場合、債権譲渡の合意自体はA・B間で自由に行うことができるが、債権譲渡の合意に基づいて直ちに譲受人Bが債務者Cに対して支払いを求めることはできない。では、その理由について、「なぜならば、民法の規定によれば、債権の譲渡は、」に続けて、40字程度で記述しなさい。
 
 
 
まず、債務者に対する対抗要件は、
譲渡人から債務者への通知、または債務者の承諾とされています(467条1項)。
 
 
この趣旨は、

債務者を二重弁済の危険から保護する

ところにあります。
 
 
 
民法が、譲受人から債務者への通知ではなく
譲渡人から債務者への通知のみを対抗要件としていること
に注意しましょう。
 
 
これは、譲受人からの通知は、
譲渡人からの通知と異なり、自己に利益な内容の通知となるため
類型的に信頼性が高くないことがその理由としてあげられます。
 
 
これに対し、債務者以外の第三者に対する対抗要件は
確定日付のある証書による通知または承諾とされています(467条2項)。
 
 
 
本問にあてはめると、
「譲受人Bが債務者Cに対して支払いを求めることはできない。
では、その理由について、……」とあることから
債務者Cに対して債権譲渡を対抗する場面であることがわかります
 
 
したがって、解答としては、


「譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、
 債務者に対抗できないから。」


となります。
 
 
 
本問は、債権譲渡における債務者に対する対抗要件の問題だ
ということが分かれば、答えは導きやすい問題といえると思います。
 
 
 
本問を解答する上でのポイントは
 
 
1債務者に対する対抗要件(467条1項)と債務者以外の第三者に対する対抗要件(同条2項)の違い
 
 
2通知の場合、誰からの通知が必要か
 
 
という2点をしっかりと押さえることです。
 
 
 
初学者の方は、
「基本に忠実になれば、十分記述式問題に対応できるんだな」と感じ


既習者の方は、
「今一度、条文に沿った学習を進めていこう」と思うきっかけとなれば
幸いです。
 
 
民法の学習が進んでくると、ついつい細部の論点に飛びついてしまいます。
 
 
そのような時こそ、テキストの目次を開いて
「ご自身が今、どこをどのように学んでいるのか」
を俯瞰してみましょう。
 
 
 
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第27回 5分でチェック!『民法「法定地上権(388条)」』

2022.4.13

 
みなさん、こんにちは。

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんがつまずきやすい点について
具体的な過去問を題材にして解説をしていきたいと思います。
 
 
今回取り扱うテーマは
民法の「法定地上権(388条)」です。
 

題材としては、「平成23年度 問題30肢3(完成問題集 問題50)」を
扱っていきます。
 

それでは、「平成23年度 問題30肢3(完成問題集 問題50)」を以下に示します。
 
 
 
肢3 AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Aは、その建物上に甲抵当権を設定したが、Bから土地を取得した後に、さらにその建物に乙抵当権を設定した。その後、Aは、甲抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、甲抵当権が実行され、その建物は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。
 
 

さて、肢3は妥当でしょうか。
 

……
 
 
結論から申しますと
肢3は妥当ではありません。
 
 

以下、解説をしていきます。
 
 
 
本問でのポイントは、法定地上権の成立要件(合格テキストP271)の
 

「抵当権設定時に、土地と建物が同一の所有者に属すること」をどのように理解するか
 

というところにあります。
 
 
そして、本問のように、
2番抵当権設定時に土地と建物が同一人所有だった場合には、
 
 
それが土地に対する抵当権なのか?建物に対する抵当権なのか?
 
 
により結論が異なります。
 
 
建物に対する抵当権である場合には
「土地と建物が同一人所有」という要件は
2番抵当権(後順位抵当権)を基準に判断されます。
 

したがって、2番抵当権設定時に
土地と建物が同一人所有である本問においては
法定地上権が成立します。
 
 
 
他方、土地に対する抵当権の場合には
1番抵当権を基準に判断していくことになります。
 

ここは、非常に混乱しやすいところなので
合格テキストP271以下の成立要件を中心に
慌てず時間をかけて、しっかりと押さえていきましょう。
 

最終的には、
 
「土地は1番。建物2番。」
 
と覚えてしまえば対応できるはずです。
 
 

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第26回 5分でチェック!行政法の「認容裁決」

2022.4.6

 
みなさん、こんにちは。

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、受講生の皆さんがつまずきやすい点について
具体的な過去問を題材にして解説をしていきたいと思います。
 

今回取り扱うテーマは
行政法の「認容裁決」です。
 
 

「認容裁決」については、審査請求の流れとともに
確認しておきたいところです。
 

そこで、今週と来週の2週に渡って
「認容裁決」を扱っていきます。
 

基本的な条文知識をしっかりと整理しておきましょう。
 

今週は、題材として、「平成28年度 問題16肢4(完成問題集 問題80)」を
用いて解説をしていきます。
 
 

それでは、「平成28年度 問題16 肢4」を以下に示します。
 
 
 
肢4 法令に基づく申請を却下し、または棄却する処分の全部または一部を取り消す場合において、審査庁が処分庁の上級行政庁である場合、当該審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、自らその処分を行うことができる。
 
 
 

さて、この肢は正しいでしょうか。
 

……
 
 
 

結論から申しますと肢4は誤りです。
 
 
 
以下、解説をしていきます。
 
 
 
まず、行政不服審査法46条2項は、
 

「……法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分の全部又は一部を取り消す場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。」
 

と規定しています。
 

そのうえで、同項1号は、
 

「処分庁の上級行政庁である審査庁 当該処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。」
 

と規定しています。
 
 
 
つまり、審査庁が処分庁の上級行政庁である場合に、
審査庁が自ら一定の処分をすることはできない。
ということです。
 

したがって、肢4は誤りということになります。
 
 
 
本肢のポイントは、処分庁の上級行政庁である審査庁は、
自らその処分をすることはできず、当該処分庁に対し、
当該処分をすべき旨を命じなければならない、
ということです。
 
 

自らその処分をすることができないのは
もちろん、当該処分をすべき旨を命じることが
裁量ではなく義務であるということもしっかりと
押さえておきましょう。
 

今週はここまでです。
 
 
 
来週は、「令和元年度 問題14 肢オ(完成問題集 問題81)」を用いて、
引き続き「認容裁決」について解説をしていきます。
 

問題文だけ以下に示しておきますので
来週の予習も兼ねてご覧いただければと思います。
 
 
肢オ 事実上の行為のうち、処分庁である審査庁に審査請求をすべきとされているものについて、審査請求に理由がある場合には、審査庁は、事情裁決の場合を除き、裁決で、当該事実上の行為が違法または不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為の全部もしくは一部を撤廃し、またはこれを変更する。
 
 
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第25回 5分でチェック! 行政法「行政裁量」後編

2022.3.23

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回取り扱うテーマは
前回に引き続き
行政法の「行政裁量」です。
 
 
題材としては、
「平成24年度 問題26肢1(完成問題集 問題17)」を扱っていきます。
 
 
 
それでは、「平成24年度 問題26 肢1」を以下に示します。
 
 
 
 
肢1 建築主事は、一定の建築物に関する建築確認の申請について、周辺の土地利用や交通等の現状および将来の見通しを総合的に考慮した上で、建築主事に委ねられた都市計画上の合理的な裁量に基づいて、確認済証を交付するか否かを判断する。
 
 
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 

 
まず、建築確認は、裁量の余地のない行政行為とされています。
 
 
 
すると、「合理的な裁量に基づいて……判断する」という結論が
誤りということが、すぐにわかります。
 
 
 
よって、肢1は誤りです。
 
 
 
 
本肢を解答する上でのポイントは、
 
 
 
1 建築確認
  
 
   ↓
 
 
2 建築主事に裁量の余地なし
 
 
 
 
というところです。
 
 
 
こちらも、前回と同様に
キーワードで判断できるようにしておきましょう。
 
 
 
前回今回と見てきたように、
「行政裁量」についての判例の知識を問う問題については、
こつこつと知識を積み重ね、解法のコツにしたがって
正誤を判断していくと得点源となります
 
 
 
本来、行政活動の範囲については
法律による行政の原理を徹底して
きっちりと法律で定める必要が出てきます。
 
 
しかし、この原則を徹底しすぎると
臨機応変に進めるべき行政活動が滞ってしまいます。
 
 
そこで、行政機関にある程度の判断を任せて
スムースに行政活動を進めてもらうことにしました。
 
 
その判断の余地を「行政裁量」といいます。
 
 
 
この基本的な理論を
まずはしっかり把握しましょう
 
 
そして、この「行政裁量」には「幅」があります。
 
 
 
前回と今回では、この「幅」について争った判例知識を
問う問題を扱いました。
 
 
この機会に、事案を的確に把握した後に
判例の結論の妥当性や整合性を確認し
さらに判例の理由の適切さを検討する思考を
身につけていきましょう。
 
 
 
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第24回 行政法「行政裁量」

2022.3.16

 
みなさん、こんにちは。
 

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
複数科目の復習を同時並行することに慣れた頃でしょうか。
 
生活スタイルに変化の出る季節ですが、
引き続き、地道な反復学習に努めましょう。
 
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、
行政法の「行政裁量」です。
 

近年、「行政裁量」は頻出テーマとなってきました。
 
 

そこで、今週と来週の2週に渡って
「行政裁量」を扱っていきます。
 

基本的な理論を前提として、
代表的な判例の知識をしっかりと押さえておきましょう。
 

今週は、題材として「平成28年度 問題9 肢1(完成問題集 問題19)」
を用いて解説をしていきます。
 

それでは、「平成28年度 問題9 肢1」を以下に示します。 
 
 

肢1 外国人が在留期間中に日本で行った政治活動のなかに、わが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれていたとしても、それらは憲法の保障が及ぶ政治活動であり、このような活動の内容を慎重に吟味することなく、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断した法務大臣の判断は、考慮すべき事項を考慮しておらず、その結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものであり、裁量権の範囲を越える違法なものとなる。
 
 

さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 
 
まず、「外国人が在留期間中に日本で行った政治活動」という部分から、
当該事案が憲法でも学習するマクリーン事件ということがわかります。
 

次に、結論を探すと、「……法務大臣の判断は、
……裁量権の範囲を超える違法なものとなる」としています。
 

マクリーン事件では、法務大臣の判断は違法なものではない、
とされているので、この結論が誤りだということがすぐにわかります。
 

よって、肢1は誤りです。
 
 
 
本肢を回答する上でのポイントは、
 
 

1 外国人の在留期間中の政治活動(=マクリーン事件)
 
  ↓

2 法務大臣の判断は違法なものではない(≒適法)
 
 

というところです。
 
 
 
本試験では、キーワードで判断できるようになっているとよいでしょう。
 

今週はここまでです。
 

来週は、「平成24年度 問題26肢1(完成問題集 問題17)」を用いて
引き続き「行政裁量」についての解説をしていきます。
 

問題文だけ以下に示しておきますので
来週の予習も兼ねてご覧いただければと思います。
 
 
 
肢1 建築主事は、一定の建築物に関する建築確認の申請について、周辺の土地利用や交通等の現状および将来の見通しを総合的に考慮した上で、建築主事に委ねられた都市計画上の合理的な裁量に基づいて、確認済証を交付するか否かを判断する。
 
 

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第23回 5分でチェック!『行政法「審査基準と処分基準」』

2022.3.9

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、前回に引き続き
行政手続法について解説をしていきます。
 
 
 
今回、取りあげるテーマは
 
 
行政法の「審査基準と処分基準」
 
 
についてです。
 
 
 
 
題材としては、「平成30年度 問題11 肢1
(完成問題集 問題50)」を用いて解説をしていきます。
 
 
 
平成30年度問題11の肢1を以下に示します。
 
 
 
肢1 行政手続法は、申請に対する処分の審査基準については、行政庁がこれを定めるよう努めるべきものとしているのに対し、不利益処分の処分基準については、行政庁がこれを定めなければならないものとしている。
 
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 
 
 
結論からいうと、この肢は誤っています。
 
 
 
 
この肢のポイントは、
「審査基準……努めるべきもの」という部分と
「処分基準……定めなければならない」という部分です。
 
 
 
言い換えると、
両者の義務の違いを正確に理解しているか
否かが問われています。
 
 
 
まず、審査基準について定める
行政手続法5条1項を見てみましょう。
 
 
 
行政手続法5条1項
「行政庁は、審査基準を定めるものとする。」
 
 
 
 
次に、処分基準について定める
12条1項を見てみましょう。
 
 
 
行政手続法12条1項
「行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。」
 
 
 
このように、審査基準は、定めることが
(行政庁の)法的義務とされているのに対して、
 
 
処分基準は、定めることが
(行政庁の)努力義務とされています。
 
 
したがって、肢1は誤りとなります。
 
 
なお、12条1項から明らかなように、
処分基準については、これを定めることだけ
でなく、公にしておくことも努力義務と
されています。
 
 
他方、審査基準については、
公にしておくことについても法的義務と
されています(5条3項)。
 
 
これは、処分基準というものは、審査基準と異なり、
それを明らかにすることによって、不利益処分を
受けなくて済むギリギリの行為をよしとする者が現れ、
脱法行為を誘発するおそれがある、ということが
理由としてあげられます。
 
 
この違いについても、
この機会に押さえておくとよいでしょう。
 
 
 
いかがでしたか?
 
 
今回の「審査基準と処分基準」というテーマは
前回に引き続き、行政手続法の「申請に対する
処分」と「不利益処分」の比較の問題として
本試験でもよく出題される分野です。
 
 
前回同様、この機会に、ぜひ押さえておきましょう。
 
 
なお、審査基準と処分基準の典型例を
以下に示しておくので、ご参考ください。
 
 
 
審査基準:建築業許可申請の際の手引書(建築業を許可してもらうためには、どのような書類を提出すればよいかが書かれたもの)など
 
 
処分基準:行政庁が営業停止処分を行う際に、行政内部で使う規則(判断ルール)など
 
 
 
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では。


第22回 5分でチェック!行政法「不利益処分」

2022.3.3

 
みなさん、こんにちは。
 

伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 

今回も、受験生のみなさんが
つまづきやすい点について解説していきます。
 

今回取り扱うテーマは
行政法の「不利益処分」についてです。
 
 
以下、題材としては、
「令和2年度 問題11 肢1(完成問題集 問題38)」
を用いて解説をしていきます。
 
 
令和2年度問題11の肢1を以下に示します。
 
 
 
肢1 「不利益処分」とは、申請により求められた許認可等を拒否する処分など、申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分のほか、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、またはその権利を制限する処分をいう。
 
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 
 
ここでのポイントは、
「申請により求められた許認可等を拒否する処分」という部分です。
 
 
この「申請により求められた許認可等を拒否する処分」が、
不利益処分にあたるのか?
ということが判断出来れば、答えは簡単に導けます。
 
 
結論からいうと、
「申請により求められた許認可等を拒否する処分」は
不利益処分にはあたりません。
 
 
 
以下、解説していきます。
 
 

まず、行政手続法2条4号柱書を見てみましょう。
 
 
行政手続法2条4号柱書
「不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。」
 
 
 
そして、この柱書におけるポイントは
「ただし、次のいずれかに該当するものを除く。」
という
ただし書の部分です。
 

そこで、「次のいずれかに該当」するか否かを判断するため
行政手続法2条4号ロを見てみましょう。
 
 
行政手続法2条4号ロ
「申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分」
 
 
このように、「申請により求められた許認可等を拒否する処分」は、
不利益処分にあたらないことが分かります。
 
 
したがって、肢1は、誤りということになります。
 
 
では、「申請により求められた許認可等を拒否する処分」は、
行政手続法上いかなる処分にあたるのでしょうか。
 

これは、行政手続法の第2章に規定する
「申請に対する処分」にあたります。
 

「不利益処分」と「申請に対する処分」は
最初のうちは混乱する箇所なので、
本試験でも比較問題がよく出題されます。
 

この機会に、両者の違いについて
押さえておくとよいでしょう。
 
 
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では。
 
 


第21回 5分でチェック!行政法の「行政行為の分類」

2022.2.24

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
講義視聴と復習の連続で、
細かな部分を忘れてしまう不安に駆られる時期でしょうか。



日々、せっかく得た知識の流出を
いかに食い止めるかが課題といえるでしょう。



少し辛いかもしれませんが、
隙間時間を上手に活用して、
反復学習に努められるとよいですね。
 
 
 
 
さて、今回取り扱うテーマは、
行政法の「行政行為の分類」です。
 
 
 
題材としては、
「平成19年度 問題8記述オ(改題)」と
「平成19年度 問題10 肢1」を用いて解説をしていきます。
 
 
 
まず、「平成19年度 問題8 記述オ(改題)」を以下に示します。
 
 
 
記述オ 農地法に基づいて農業委員会が行う農地の所有権移転の「許可」は、行政行為の分類上、「認可」とされる。
 
 
 
……
 
 
いかがでしょうか。
答えは導き出せましたか?
 
 
 
結論からいうと、記述オの「許可」は、
行政行為の分類上、「認可」とされています。
 
 
 
以下、解説をしていきます。
 
 

まず、「認可」とは、

第三者の行為を補充して
その法律上の効果を完成させる行為

をいいます。
 

 
そして、農地法に基づいて農業委員会が行う
農地の所有権移転の「許可」は、
私人の農地売買等の法行為の効力を補充して
その効力を完成させる行為であることから
行政行為の分類上、「認可」にあたります。
 
 
 
次に、「平成19年度 問題10 肢1」を以下に示します。
 
 
肢1 自動車の運転免許は、免許を受けた者に対し、公道上で自動車を運転することができるという新たな法律上の地位を付与するものであるから、行政行為の分類理論でいうところの「特許」に該当する。
 
 
 
さて、この肢は妥当でしょうか。
 
 

この点、「特許」とは、

国民に対して特定の権利又は
法律関係を設定する行為


をいいます。
 
 

自動車運転免許は、
法令による相対的禁止を特定の場合に
解除することを法効果とする行為、
つまり「許可」にあたります。
 
 
よって、肢1は妥当ではありません。
 
 

なお、「特許」の例としては、
道路の占用許可、河川の流水の占用許可、
外国人の帰化の許可が挙げられます。
 
 

「認可」や「許可」と区別して、
しっかり押さえておきましょう。
 
 
 
行政行為の分類については、
定義と具体例をしっかり理解しておけばよい
平易な学習内容ですが、
 
 

日々の論点の学習に忙殺されると
うっかり記憶から消えている内容です。
 
 
模試や本試験では、こういった

「地道に押さえられる内容だが、
  うっかり記憶があいまいになりがちな部分」

についても出題されます。
 
 
もちろん、直前期に詰め込みなおすことも
できますが、この機会にあえて振り返って
みるのもよいかと思います。
 
 
以下に典型例をまとめておきますので、
ご活用いただければ幸いです。
 
 
「許可」…食品衛生法に基づく飲食店の営業許可、旅館業の営業許可、風俗業の営業許可
 
 
「特許」…道路の占用許可、河川の流水の占用許可、公有水面の埋め立ての知事の免許
 
 
「認可」…農地法上の許可
 
 
 
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第20回 5分でチェック!行政法の「行政機関」

2022.2.17

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
 
今回も、受験生の皆さんが
つまずきやすいところを中心に
解説していきたいと思います。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
行政法の「行政機関」です。
 
 
 
題材としては、「平成18年度 問題9」
を用いて解説をしていきます。
 
 
 
まず、「平成18年度 問題9」を
以下に示します。
 
 
 
問題9 行政庁などの行政機関の概念に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
 
 
 
1 行政庁は独任制でなければならず、委員会などの合議体が行政庁としての役割を果たすことはない。
 
 
 
2 行政庁、諮問機関、参与機関などの行政機関の定義は、国家行政組織法において定められている。
 
 
 
3 諮問機関が示した答申・意見について、行政庁はそれを尊重すべきではあるが、法的に拘束されることはない。
 
 
 
4 行政庁の権限を補助機関が専決する場合には、代決の場合とは異なり、処分権限は行政庁ではなく、補助機関に帰属することとなる。
 
 
 
5 補助機関とは行政主体の手足として実力を行使する機関であり、警察官、収税官などがこれに当たる。
 
 
 
 
さて、上記の肢の中で、妥当なものはどれでしょうか。
 
 
 
……
 
 
答えは、肢3です。
 
 
 
本問は、行政機関についての
基礎的な理解を問う問題でしたが、
理由とともに答えは導き出せましたか?
 
 
 
それぞれの肢のポイントは、以下の通りです。
 
 
 
肢1 行政庁は原則独任制→例外的に合議制(例:独立行政委員会や公正取引委員会)
 
 
 
肢2 行政機関の定義は講学上のものであり、法律で定められているものではない
 
 
 
肢3 諮問機関の答申は、行政庁を法的には拘束しない(cf:参与機関)
 
 
 
肢4 専決の際の処分権限は、補助機関には帰属しない→本来の行政庁に帰属
 
 
 
肢5 補助機関=日常的な事務を遂行する機関(例:各省庁の事務次官)
→警察官や収税官は執行機関(実力行使を行う機関)
 
 
 
したがって、肢3が妥当なものとなります。
 
 
 
上記のポイントを押さえておけば
行政機関についての基礎的な理解としては十分です。
 
 
 
押さえておくべきポイントをしっかり把握して
「得点につながる学習」を心がけていきましょう。
 
 
 
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第19回 5分でチェック!民法「177条の『第三者』の意義

2022.2.10

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回もいつもと同じように、
受講生のみなさんからよくいただくご質問をもとに
解説をしていきたいと思います。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
民法の「177条の『第三者』の意義」です。
 
 
177条は、不動産に関する物権の得喪および変更は、
その登記をしなければ「第三者」に対抗することができない
と規定しています。
 
 
そして、この177条の反対解釈により、
177条のいう「第三者」以外の者に対しては、
登記がなくても不動産に関する物権の得喪および変更を対抗できる
ということになります。
 
 
そこで、
177
条の「第三者」とはいかなる者をいうのか?
が問題となります。
 
 
 
以下、題材としては、「平成21年度問題46(完成問題集 問題139)」を
用いて解説をしていきます。
 
 
 
問題139を以下に示します。
 
 
 
次の【設問】を読み、【答え】の中の〔 〕に適切な文章を40字程度で記述して、設問に関する解答を完成させなさい。
 
 
 
【設問】
XはA所有の甲建物を購入したが未だ移転登記は行っていない。現在甲建物にはAからこの建物を借り受けたYが居住しているが、A・Y間の賃貸借契約は既に解除されている。XはYに対して建物の明け渡しを求めることができるか。
 
 
 
【答え】
XはYに対して登記なくして自らが所有者であることを主張し、明け渡しを求めることができる。民法177条の規定によれば「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」とあるところ、判例によれば、同規定中の〔 〕をいうものと解されている。ところが本件事案では、Yについて、これに該当するとは認められないからである。
 
 
 
 
本問は、日頃から条文に沿った学習を行い、
判例の定義を愚直に押さえている方は、
スムーズに解答できる問題です。
 
 
出題の意図も、まさにそこにあったはずです。
 
 
 
初学者の皆さんにとっては、
判例の定義をしっかりと押さえ、
具体的事例に沿った理解を進める
きっかけとなるでしょう。
 
 
 
解答としては、「第三者とは、当事者もしくは
包括承継人以外で、かつ登記の欠缺を主張する
正当な利益を有する者」です。
 
 
 
さらに進んで、試験対策としては、
上記解釈を踏まえた上で、
この「第三者」にあたらない者について
整理しておくとよいでしょう。
 
 
 
以下、簡単にまとめておきます。
 
 
177条の「第三者」にあたらない者のまとめ】
 
 
 
1 物権変動の当事者、その包括承継人
 
 
 
2 登記の欠缺を主張する正当の利益を有しない者
 
 
・不動産登記法5条の第三者(eg:詐欺または強迫により登記の申請を妨げた第三者)
 
 
・無権利の登記名義人
 
 
・不法行為者、不法占有者
 
 
・背信的悪意者
  Cf.単純悪意者→「第三者」にあたる
  Cf.背信的悪意者からの転得者→原則「第三者」にあたる
 
 
・承役地の譲受人
 
 
 
以上のように、特に記述式問題では
条文と判例についての愚直な学習がものをいいます。
 
 
これを機に、これからの学習に対する姿勢を
イメージできるとよいですね。
 
 
 
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第18回 5分でチェック!憲法「法の下の平等(憲法14条)」

2022.2.3

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
今回もいつもと同じように、
受講生のみなさんからよくいただく
ご質問をもとに、解説をしていきたいと思います。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
憲法の「法の下の平等(憲法14条)」です。
 
 
 
行政書士試験では、
比較的好まれて出題される範囲ですので、
条文の文言に沿って対概念を意識しながら
学習していきましょう。
 
 
 
この規定をめぐっては


1「法の下に」の意味


2「平等」の意味

3 14条後段列挙事由の意味



が、それぞれ問題となっています。

 
 
まず、1については、
法適用の平等のみならず、法内容の平等をも意味するもの
と解されています。
 
 
不平等な内容の法律を
平等に適用しても意味がないですからね。
 
 
 
次に、2については、
各人の差異を前提として、
同一の事情・条件の下では均等に取り扱うという相対的平等
(対概念としては絶対的平等)
と解しています。
 
 
これは、各人の事情の違いに応じた
合理的な差別(区別)は、
憲法上認められるということを意味します。
 
 
ここは非常に重要なところです。
しっかりと押さえておきましょう。
 
 
なお、その相対的平等を前提として、
形式的平等の立場を基本としつつも、
実質的平等の見地を一定程度加味することを
許容していると解されています。
 
 
最後に、3については、
後段列挙事由による差別以外の差別であっても
不合理な差別は14条1項前段によって禁止されていることからも
後段列挙事由は例示列挙(対概念は限定列挙)と
解されています。
 
 
ここも知識として押さえておきましょう。
 
 
 
以上のことを前提に、
「平成22年度 問題4(完成問題集 問題17)」
を題材として、以下解説をしていきます。
 

 
少し長いですが、以下に問題文を示します。
 
 
思うに、憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解されるから、高令(齢)であるということは右の社会的身分に当らないとの原審の判断は相当と思われるが、右各法条は、国民に対し、法の下の平等を保障したものであり、右各法条に列挙された事由は[ア]なものであって、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当であるから、原判決が、高令(齢)であることは社会的身分に当らないとの一事により、たやすく上告人の……主張を排斥したのは、必ずしも十分に意を尽したものとはいえない。しかし、右各法条は、国民に対し[イ]な平等を保障したものではなく、差別すべき[ウ]な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、[エ]に即応して[ウ]と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない。
(最大判昭和39527日民集184676頁以下)
 
 
 
   ア   イ   ウ    エ
1 具体的 形式的 客観的 事柄の性質
 
 
2 例示的 絶対的 合理的 公共の福祉
 
 
3 例示的 相対的 合理的 事柄の性質
 
 
4 具体的 一般的 実質的 公共の福祉
 
 
5 例示的 絶対的 合理的 事柄の性質
 
 
 
 
本問は、文言に沿った基本的な学習をして
いると迷うことなく解くことができます。
 
 
初学者の皆さんにとっては、
判例の言い回しや法的思考に慣れるために
参考となる問題です。
 
 
 
以下、検討していきます。
 
 
まず、本判決の一節を一読すると、
空欄アについて検討できることがわかります。
 
 
空欄アを含む一文は、
14条後段列挙事由について述べています。
 
 
これは、3の論点であることがわかります。
 
 
よって、空欄アには「例示的」が入ることがわかります。
 
 
これは、比較的簡単に答えが導き出せると思います。
 
 
 

次に、空欄イと空欄ウについて検討してみます。
 
 
 
両空欄を含む一文は、
「右各法条は……保障したものではなく……」
とあります。
 
 
これは、各人の差異を前提としているかどうかの
2の論点であることがわかります。
 
 
よって、空欄イには「絶対的」が入り、
空欄ウには「合理的」が入ることがわかります。
 
 
これも、比較的素直に答えを導き出せると思います。
 
 
 

最後に、空欄エについて検討します。
 
 
空欄エを含む一文は、「[エ]に即応して合理的と認められる
差別的取扱……」とあります。
 
 
これは、解釈にそれぞれの差異や事情を考慮するかどうかの
2の論点であることがわかります。
 
 
よって、空欄エには「事柄の性質」が入ります。
 
 
ここは、少し迷われたかもしれませんが、
14条についてしっかりと理解していれば、
「公共の福祉」ではないということに気づくことができたと思います。
 
 
以上より、正解は肢5ということになります。
 
 
 
本問題は、憲法14条の理解を深めるために非常に有益な問題です。
 
 
この機会にしっかりと押さえておきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 

※注
文中の完成問題集の問題番号については
新・行政書士合格講座で使用しているものに
準拠しています。
 
 
では。
 
 


第17回 5分でチェック!民法 通謀虚偽表示(94条)

2022.1.27

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
既習者の方は民法・行政法の演習を
こなすことによっておさらいを続け、
初学者の方は全体像をつかみながら、
民法の基礎知識の習得に励む頃と思います。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
民法の「通謀虚偽表示(94条)」です。

 
通謀虚偽表示とは、相手方と通じてした
虚偽の意思表示をいいます(94条1項)。
 
 
相手方と通じてした虚偽の意思表示は
無効(94条1項)です。
 
 
つまり、この当事者間では
物権が移転することはなく
債権債務も何ら発生しません。
 
 
しかし、この原則には
重大な制限があります。
 
 
虚偽表示の無効は、
善意の第三者には対抗(主張)することができない
のです(94条2項)。
 
 
この94条2項の趣旨は
権利外観法理にあります。
 
 
そして、この権利外観法理によって
保護される「第三者」について
 
 
判例は、虚偽表示の当事者または
その包括承継人以外の者で、
虚偽表示の外形を基礎として、
新たな独立の法律上の利害関係を有するに至った者
と解釈しています。
 
 
 
民法の法的思考としては
原則→不都合性→修正という流れを踏むこと
が鉄則]です。
 
 
 
94条についても、まずは1項の原則をしっかりと押さえ
そのうえで2項の修正について検討する必要があります。
 
 
この法的思考と判例の解釈の重要性を知る題材として
「平成20年度問題27(完成問題集 問題8)」を用いて
解説していきます。
 
 
 
まず、記述アと記述イを以下に示します。
 
 
 
記述ア 「Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCは、A・B間の売買の無効を主張して、B・C間の売買を解消することができる。」
 
 
 
記述イ 「Bが甲土地をAに無断でCに転売した場合に、善意のCに対して、AはA・B間の売買の無効を対抗することはできないが、Bはこれを対抗することができる。」
 
 
 
さて、以上の記述は妥当でしょうか。
 
 
 
この点、記述アについては、
上記解説の通り、AB間の売買は無効です
94条1項)。
 
 
また、かかる無効は、誰でも
主張することができます。
 
 
さらに、BC間が他人物売買(561条)となると
Cは契約の解除をすることができます
541条本文、542条)。
 
 
よって、記述アは妥当です。
 
 
 
また、記述イについては、上記解説の通り、
通謀虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗できません(94条2項)。
 
 
よって、記述イは妥当ではありません。
 
 
 
次に、記述ウを以下に示します。
 
 
 
記述ウ 「Aの一般債権者Dは、A・B間の売買の無効を主張して、Bに対して、甲土地のAへの返還を請求することができる。」
 
 
さて、以上の記述は妥当でしょうか。
 
 
 
この点、記述ウについては、
AB間の売買の無効は誰でも主張することができるので
DはAのBに対する返還請求権を代位行使することができます(423条1項)。
 
 
よって、記述ウは妥当です。
 
 
 
最後に、記述エと記述オを以下に示します。
 
 
 
記述エ 「Bが甲土地につきAに無断でEのために抵当権を設定した場合に、Aは、善意のEに対して、A・B間の売買の無効を対抗することができない。」
 
 
 
記述オ 「Bの一般債権者FがA・B間の仮装売買について善意のときは、Aは、Fに対して、Fの甲土地に対する差押えの前であっても、A・B間の売買の無効を対抗することができない。」
 
 
 
さて、以上の記述は妥当でしょうか。
 
 
 
この点、判例は、記述エのEは、
新たな独立の法律上の利害関係を有するに至った者といえ
94条2項の「第三者」にあたるとしています。
 
 
よって、記述エは妥当です。
 
 
 
また、判例は、記述オのFは、
上記解説の94条2項の「第三者」にあたらない
としています。
 
 
これは、「第三者」の定義中の、
「新たな」利害関係を有するに至った者といえないためです。
 
 
よって、記述オは妥当ではありません。
 
 
 
本問から考えると、
民法の解法のコツとしては
原則→不都合性→修正という流れで
法的思考を確立すること
及び判例の解釈を確実に定着させること
があげられます。
 
 
以上の点を意識して
日々勉強をしていただければ、と思います。
 
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく予定ですので
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
※注
文中の完成問題集の問題番号については
新・行政書士合格講座で使用しているものに
準拠しています。
 
 
では。


第16回 5分でチェック!憲法「私人間効力」

2022.1.20

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
既習者の方はご自身の課題を
克服しつつ演習をこなし、
 
 
初学者の方は憲法の学習の面白さに
目覚めた頃と思います。
 
 
さて。今回取り扱うテーマは、
憲法の「私人間効力」です。
 
 
憲法の人権規定は、公権力との関係で
国民の権利・自由を保護するものと
考えられてきました。
 
 
しかし、現代社会においては、私人の中に
人権を侵害するおそれのある社会的権力として
マスコミや企業等、巨大な資本と情報力を持つ
私的団体が登場しました。
 
 
そこで、憲法の人権規定を国家と私人の間のみならず、
私人間にも適用し、一般国民の人権を保障しなければならない
のではないかが問題となってきました。
 
 
これが、「私人間効力」とよばれる論点です。
 
 
 
この点、たしかに憲法は対国家的原理であり
また、私人間では私的自治の原則が妥当する以上
憲法の人権規定が私人間に直接適用されることはない
と解されています。 
 
 
しかし、現代社会においては、
強大な社会的権力を有する私人による人権侵害の危険があります。
 
 
そこで、私法の一般条項を憲法の趣旨を取り込んで
解釈・適用することにより、間接的に私人間の行為を規律すべき
と解する通説が妥当とされています。
 
 
なお、判例の評価については、
学説の間で激しい対立があります。
 
 
したがって、判例の学習については、
事案の概要と判例の要旨を把握するにとどめ、
学説からの評価や対立についての学習は
合格後のお楽しみとしておきましょう。
 
 
 
以上を前提として、題材としては
「平成18年度問題3(完成問題集 問題11)」
を用いて解説していきます。
 
 
 
まず、肢1と肢2を以下に示します。
 
 
 
肢1 「憲法の定める基本的人権のうち重要なものは、単に国家権力に対する自由権を保障するのみではなく、社会生活の秩序原理でもある。これは、一定の範囲において、国民相互の法律関係に対して直接の意味を有する。」
 
 
 
肢2 「人の思想、信条は身体と同様本来自由であるべきものであり、その自由は憲法19条の保障するところでもあるから、企業が労働者を雇傭する場合等、一方が他方より優越した地位にある場合に、その意に反してみだりにこれを侵してはならないことは明白である。」
 
 
 
さて、以上の肢は判例の述べるところでしょうか。
 
 
 
この点、肢1について、判例は、憲法19条、14条の規定は
専ら国又は公共団体と個人の関係を規律するものであり、
私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない、
としています。
 
 
したがって、記述内のような「国民相互の法律関係に対して
直接の意味を有する。」とは述べていません。
 
 
 
また、肢2については、判例は、企業は雇用の自由を有することから、
特定の思想・信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを
拒むことは当然違法とすることはできない、
としています。
 
 
したがって、肢2のようなことは述べていません。
 
 
 
よって、両肢とも、判例の述べるところではありません。
 
 
 
次に、肢3と肢4を以下に示します。
 
 
 
肢3 「日本国憲法は価値中立的な秩序ではなく、その基本的人権の章において客観的な価値秩序を定立している。この価値体系は、憲法上の基本決定として、法のすべての領域で通用する。いかなる民法上の規定もこの価値体系と矛盾してはならず、あらゆる規定はこの価値体系の精神において解釈されなければならない。」
 
 
 
肢4 「私人による差別的行為であっても、それが公権力との重要な関わり合いの下で生じた場合や、その私人が国の行為に準じるような高度に公的な機能を行使している場合には、法の下の平等を定める憲法14条が直接に適用される。」
 
 
 
さて、以上の肢は判例の述べるところでしょうか。
 
 
 
この点、肢3については、
判例は、私人間の対立の調整は、
原則として私的自治に委ねられるとしています。
 
 
したがって、記述内のような「あらゆる規定は
この価値体系の精神において解釈されなければならない。」
とは述べていません。
 
 
 
また、肢4については、判例は、私人間の関係に、
憲法の基本権保障規定を適用ないし類推適用を認める見解は
採用していません。
 
 
したがって、記述内のような
「……憲法14条が直接適用される。」とは述べていません。
 
 
よって、両肢とも、判例の述べるところではありません。
 
 
 
最後に、肢5を以下に示します。
 
 
肢5 「憲法19条、21条、23条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して、個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでない。」
 
 
 
さて、以上の肢は判例の述べるところでしょうか。
 
 
 
この点、肢1と肢4について解説した通り
判例は、肢5のように判示しています。
 
 
したがって、肢5は判例の述べるところです。
 
 
 
このように、全ての法律の上位規範である憲法の
存在意義と私的自治の原則との兼ね合いなど、
憲法学ではダイナミックな価値観の対立がその醍醐味となります。
 
 
 
合格後に、是非学習してみてください。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
では。
 
※注
文中の完成問題集の問題番号については
新・行政書士合格講座で使用しているものに
準拠しています。
 
 


第15回 5分でチェック!憲法の「外国人の人権」

2022.1.12

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 
 
既習者の方はご自身の課題に取り組み
初学者の方は法律の文章に慣れてくる頃
だと思います。
 
 
今回取り扱うテーマは
憲法の「外国人の人権」です。
 
 
外国人に憲法上の人権享有主体性が認められるか
については争いがあります。
 
 
 
この点、日本国憲法第3章の表題が「国民の」と
なっていることから
外国人には憲法上の人権規定は適用されない
という見解があります。
 
 
 
しかし、人権は原則として前国家的権利であること(11条、97条)、
および国際協調主義を採用していること(前文3項、98条2項)に
照らせば、外国人にも一定の範囲内で人権規定が適用されると解すべきです。
 
 
問題は、
いかなる人権規定が適用され
いかなる人権規定が適用されないのかの振り分け
です。
 
 
この点、人権の固有性・普遍性・不可侵性と
国民主権原理(前文1項、1条)や政治的判断、
さらには財政事情などとの兼ね合いで、
人権ごとの検討がなされてきています。
 
 
 
以上を前提として、題材としては、
平成27年度問題3を用いて
解説していきます。
 
 
まず、肢2と肢3を以下に示します。
 
 
肢2 「わが国に在留する外国人は、憲法上、外国に一時旅行する自由を保障されているものではない。」
 
 
 
肢3 「政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。」
 
 
 
この点、肢2については
皆さんのお宅を日本国に例えると
わかりやすいと思います。
 
 
 
例えば、親友といえども
皆さんの自宅に入る自由はありませんよね。
 
 
 
これと同じで、日本に入国する自由は
外国人には憲法上保障されない。
とするのが判例です。
 
 
 
また、肢3については、
政治活動の自由が表現の自由の一内容であり
前国家的権利であることを考えると
上記解説の通り、保障されうると解するのが妥当です。
 
 
ただし、政治活動の自由には、
国民主権原理に基づくという側面もあるので
学説は、外国人の政治活動の自由は、
日本の政治問題に対する不当な干渉にならない範囲で認められる
と解しています。
 
 
判例も、肢3のように述べました。
 
 
したがって、両肢とも妥当です。
 
 
 
次に、肢4と肢5を以下に示します。
 
 
 
肢4 「国の統治のあり方については国民が最終的な責任を負うべきものである以上、外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない。」
 
 
 
肢5 「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、その政治的判断によってこれを決定することができる。」
 
 
 
この点、肢4については、行政実務も判例も、
公務の性質ごとに国民主権原理に照らし、
公権力の行使または公の意思の形成に参画することによって
直接的に統治作用にかかわる管理職については
日本国民のみを対象とするもの
としています。
 
 
 
また、肢5については、判例・通説は、
社会権は各人の所属する国によって保障されるべき
権利であるから、外国人には憲法上保障されない
としています。
 
 
 
ただし、上記解説のように
財政事情との兼ね合いで法律で保障を及ぼすことは
憲法上許される
と解されています。
 
 
 
したがって、両肢とも妥当です。
 
 
最後に、肢1を以下に示します。
 
 
 
肢1 「国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反するが、この自由の保障はわが国に在留する外国人にまで及ぶものではない。」
 
 
 
この点、判例は、
指紋押捺を強制されない自由は
13条によって保障されるものの、
結論としては、
指紋押捺制度自体は合憲である
としました。
 
 
したがって、肢1は妥当ではありません。
 
 
 
このように、大局の原理原則と判例の結論を
しっかり押さえていると、
容易に正解を導けるようになります。
 
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
では。
 


第14回 基礎法学の「裁判員制度」

2022.1.05

 
伊藤塾行政書士試験科
講師の藤田竜平です。
 

大晦日と三が日は
少しお休みできたでしょうか?
 

お仕事だった方もいらっしゃるでしょうし
主婦の皆さんは年末年始も相変わらず
ご家族のために動いていたでしょうから
完全に休めたという方は少ないかもしれません。
 

本試験までは長丁場です。
年末年始がお忙しかった方も、適度にお休みをしながら
淡々と勉強を続けていけるとよいと思います
(なかなか理想通りというのは難しいですが…)。
 
 
さて、新講座も始まり、
既習者の方は本試験を踏まえながら心機一転、
初学者の方は法律の学習の面白さに目覚める
そんな頃でしょうか。
 

今回取り扱うテーマは、
基礎法学の「裁判員制度」です。
 

今年度の本試験でも、
憲法の多肢選択式問題として出題されましたが

過去にも、法律家の卵として
広く裁判制度の動きに関心をもっているかどうかを問う問題が
出題されています。


平成21年から実施されている裁判員制度では
一定の重罪事件について、
一般の有権者の中からくじで選ばれた6名の裁判員と
3名の職業裁判官とで裁判所を構成し、共同して有罪決定と量刑を行うこと
とされています。

 
この裁判員制度については、
職業裁判官の職権行使の独立(憲法76条3項)などに反し違憲とする
見解もありますが、最高裁はこれを合憲としています(最大判平成23.11.26)。
 

そこで、裁判制度を根本的に理解するのに適した題材として
令和3年度の問題41と同じ上記判決の一節を取り上げた
「平成28年度 問題1」を用いて解説をしていきます。

※多肢選択式は、問題文を示すことが難しいので
お手元にご用意いただくようお願いいたします。
以下のWebサイトでも一部公開されています。
>>過去の試験問題
⋆一般財団法人 行政書士試験研究センター Webサイト「過去の試験問題と正解」
 

なお、空欄補充や多肢選択式の解法としては
上から順番に埋めていけるはずと考えず
「わかるところから」埋めていくことを意識しましょう。
 
 
以上を前提として
本問を検討していきます。
 

本判決の一節を一読して
まずは、空欄イについて検討できることに
気づきたいところです。
 

空欄イを含む一文は、
憲法上の適正な刑事裁判を実現するための
諸原則の遵守について述べています。
 

とすれば、「政治性」は妥当しないことがわかります。
 

したがって、空欄イには
「法的専門性」が入ることがわかります。
 
 
 
次に、空欄ウについて検討します。
 

空欄ウを含む一文は、
「憲法は……裁判官の職権行使の独立と
 身分保障について周到な規定を設けている」
とあります。
 

これは、憲法における三権分立(権力分立)
についての記述ということがわかります。
 

したがって、空欄ウには
憲法上の原則である「三権分立」が入ります。
 
 
 
さらに、空欄エについて検討します。
 

第1段落では、「憲法は、刑事裁判の基本的な
担い手として裁判官を想定していると考える」と
結論づけながら

空欄エを含む第2段落では
「他方……直接司法に参加することにより……
陪審制か参審制が採用されていた」とあります。
 

したがって、空欄エには「国民」が入ります。
 
 
 
最後に、空欄アについて検討します。
 
 
前述のように、第2段落の最後で
「国民が直接司法に参加することにより……
陪審制か参審制が採用されていた」とあります。
 

したがって、空欄アには「民主主義」が入ります。
 
 
 
本判決の流れを読むことにより
裁判制度について歴史的な理解を深められるとよいですね。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 

また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 

では、また。
 


第13回 基礎法学 「法の解釈」とは

2021.12.30

 
みなさん、こんにちは。
伊藤塾行政書士試験科 講師の藤田です。

新講座も始まり、
既習者の方はご自身の課題を洗い出し
初学者の方は学習の波に乗ってきた頃だと思います。
 

今回取り扱うテーマは
基礎法学の「法の解釈」です。
 

さて、法は多数の人々に適用する一般的な取り決めであり
一般的・抽象的なものとして構成せざるを得ません。
 

そこで、法を適用する際には法の持つ意味内容を
解釈によって明らかにする必要があります。
 

この法解釈の方法については
いくつかの基本的な対概念を理解しておく必要があるので
以下、簡潔に紹介します。
 
 
 
まず、文理解釈とは、
法規の持つ意味を明らかにする解釈の方法です。
 

これに対して、論理解釈とは、
2つ以上の法規や制度の間に表面上矛盾があるときなどに
論理の操作によって整合的に解釈する方法です。
 
 
次に、拡張解釈とは、
法規の言葉に広義と狭義の意味がある場合に
広義に解する解釈の方法です。
 

これに対して、縮小解釈とは、
この場合に狭義に解する解釈の方法です。
 
 
さらに、類推解釈とは、
法規の言葉の意味に含まれないものに
類似性を理由として当該法規を適用する解釈の方法です。
 

これに対して、反対解釈とは、
法規の言葉の意味に含まれないものに
当該法規の適用を否定する解釈の方法です。
 
 
試験対策としては、
特に「拡張解釈」と「類推解釈」の区別をしっかりつけましょう。
 

ポイントとしては、当該事項について、
そもそも明文の規定があるかないかの違いを問題文から
読みとることが挙げられます。
 

そもそも明文の規定がなく、
類似する事項についての規定を借りてきて、
その事項にあてはまるように修正を加えながら
適用することが読み取れれば、「類推解釈」とわかります。
 

以上を前提として、題材としては
「平成25年度 問題1(完成問題集 問題26)」を用いて
解説していきます。
 

まず、肢1と肢2を以下に示します。
 

肢1 「甲の事件につき規定がなく、類似の乙の事件に関しては明文の規定がある場合、甲にも乙の規定を準用しようとするのは、『反対解釈』である。」
 
 
 
肢2 「乙についてのみ規定があり、甲に関する規定が欠けているのは、甲に対する乙の規定の準用を排除する立法者の意志である、という理由から、甲に対しては乙の場合と反対の解釈を下すのは、『勿論解釈』である。」
 
 
さて、以上の肢は妥当なものでしょうか。
 

この点、肢1については、
「甲の事件につき規定がなく」とあり
「類似の乙の事件に関しては明文の規定がある」
となっているため、
 
ポイントとして上記に挙げた「類推解釈」についての説明となります。
 
 
また、肢2については
「反対の解釈を下す」とあるので
「反対解釈」についての説明となります。

したがって、両肢とも妥当ではありません。
 
 
 
次に、肢4と肢5を以下に示します。
 

肢4 「乙についてのみ規定があり、甲に関する規定が欠けているのは、甲に対する乙の規定の準用を排除する立法者の意志である、という理由から、甲に対しては乙の場合と反対の解釈を下すのは、『拡大解釈』である。」
 
 
肢5 「甲の事件につき規定がなく、類似の乙の事件に関しては明文の規定がある場合、甲にも乙の規定を準用しようとするのは、『縮小解釈』である。」
 

さて、以上の肢は妥当なものでしょうか。
 
 
 
この点、肢4については
「反対の解釈を下す」とあるので
「反対解釈」についての説明となります。
 

また、「甲の事件につき規定がなく」とあり
「類似の乙の事件に関しては明文の規定がある」
となっているため、
ポイントとして上記に挙げた「類推解釈」についての説明となります。
 

したがって、両肢とも妥当ではありません。
 
 
 
最後に、肢3を以下に示します。
 

肢3 「甲の事件につき規定がなく、類似の乙の事件に関しては明文の規定がある場合、甲にも乙の規定を準用しようとするのは、『類推解釈』である。」
 

肢3については、上記解説通り、
妥当なものといえます。
 
 
このように、基礎的なことを日々丁寧に復習していると
容易に正解を導けるようになります。
 
 

今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 

また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。

※注
文中の完成問題集の問題番号については
新・行政書士合格講座、志水晋介の行政書士講座本科生が
使用しているものに準拠しています。
 
 


第12回 基礎法学「法に関する用語」

2021.12.22

 
みなさん、こんにちは。
伊藤塾講師の藤田です。
 

新年度の講座も開講し、
来年度の合格に向けて走り始めた方も
多い頃でしょうか。
 

今回は、新年度の各講座の最初に学ぶ基礎法学から、
初学者の方はもちろん
既習者の方ともご一緒に確認していきたいと思いました。
 

以下、実際の過去問を題材に解説をしていきます。
 

取り扱うテーマは、
 

基礎法学の「法に関する用語」
 

です。
 
 

法について、
内容による分類・効力による分類は
本試験のみならず模試等でも出題されることがありますので、
テキストに立ち返って復習しましょう。
 

題材としては、

「平成30年度 問題2(完成問題集 問題1)記述ア~オ」

を用いて解説していきます。
 
 
まず、平成30年度 問題2の記述アを以下に示します。
 

記述ア 「自然法に対して、国家機関による制定行為や、慣習などの経験的事実といった人為に基づいて成立した法を『実定法』という。」
 
 
まず、人間の本性を基礎として成立し、
普遍的、かつ不変な法を「自然法」といいます。
 

これに対し、人為の法、あるいは
特定の社会において実効的に行われている法を「実定法」といいます。
 

この2つは対概念です。

したがって、記述アは妥当です。
 
 
 
次に、記述イを以下に示します。
 

記述イ 「手続法に対して、権利の発生、変更および消滅の要件など法律関係について規律する法を『実質法』という。」
 

まず、法律関係(要件・効果)について定めた法を「実体法」といいます。
 

これに対し、実体法を具体的に実現するための手続や方法について
定めた法を「手続法」といいます。
 

この2つは対概念です。
 

したがって、記述イは妥当ではありません。
 
 
 
さらに、記述ウを以下に示します。
 
 
記述ウ 「ある特別法との関係において、当該特別法よりも適用領域が広い法を『基本法』という。」
 

まず、適用の対象が特定の事物・人などに限定されている法を「特別法」といいます。
 

これに対し、上記のような限定のない方を「一般法」といいます。
 

この2つは対概念です。

したがって、記述ウは妥当ではありません。
 
 
 
最後に、記述エを以下に示します。
 

記述エ 「社会の法的確信を伴うに至った慣習であって、法的効力が認められているものを『社会法』という。」
 

慣習に基づいて成立する法のことを、「慣習法」といいます。
 

民事法の分野では、慣習法は多く存在しますが
刑法では罪刑法定主義の観点から慣習刑法による処罰が禁止されています。
 

したがって、記述エは妥当ではありません。
 

なお、記述オの「準拠法」については
国際私法の法源となるものとして妥当です。
 
 
このように、
「法に関する用語」は対概念と共にしっかり押さえておく
とよいでしょう。
 

今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。

また、感想やご意見等もお寄せくださると
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 
では、また。
 


第11回 令和3年度問題44の行政法の記述式問題について

2021.12.08

 
みなさん、こんにちは。
伊藤塾講師の藤田です。
 
 
ひと息ついて、
合格発表までどう過ごすかを
お考えになる頃でしょうか。
 
 
自己採点を済ませた方も多いと思いますが
今回も、皆さんが気にされているであろう
今年度の記述式問題を題材として取り扱っていきます。
 
 
 
令和3年度問題44の行政法の記述式問題
お手元にご用意ください。
 
 
 
問題44 
「私立の大学であるA大学は、その設備、授業その他の事項について、法令の規定に違反しているとして、学校教育法15条1項に基づき、文部科学大臣から必要な措置をとるべき旨の書面による勧告を受けた。しかしA大学は、指摘のような法令違反はないとの立場で、勧告に不服をもっている。この文部科学大臣の勧告は、行政手続法の定義に照らして何に該当するか。また、それを前提に同法に基づき、誰に対して、どのような手段をとることができるか。40字程度で記述しなさい。なお、当該勧告に関しては、A大学について弁明その他意見陳述のための手続は規定されておらず、運用上もなされなかったものとする。」
 
 
(参照条文)
 学校教育法
第15条第1項 文部科学大臣は、公立又は私立の大学及び高等専門学校が、設備、授業その他の事項について、法令の規定に違反していると認めるときは、当該学校に対し、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。(以下略)
 
 
 
 
では、以下で解説していきます。
 
 
まず、「この文部科学大臣の勧告は、
行政手続法の定義に照らして何に該当するか」
と問われているため
この部分について解答する必要があります。
 
 
この点について、当該勧告はA大学に
一定の作為を求めるものであるので
行政手続法上の「行政指導」(同法2条6号)に該当します。
 
 
採点にご協力いただいた分析からは
正答率は9割となりました。
 
 
みなさん、よく書けていました。
 
 
 
もっとも、「不利益処分」と解答されている方もいました。
 
 
「勧告」という文言から
「行政指導」を連想できるかどうかが重要なポイントだった
かと思います。
 
 
 
次に、「誰に対して、どのような手段をとることができるか」
が問われています。
 
 
行政機関からの行政指導に対して
不服をもっている場合には
同法36条の2第1項本文において
当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができます。
 
 
 
この点、行政指導の相手方であるA大学は
当該勧告の中止その他の必要な措置を求めることができます。
 
 
採点にご協力いただいた分析からは
正答率は上記「行政指導」の解答と合わせて5割程でした。
 
 
さらに、本問で解答が分かれるのは
「誰に対し」の部分だったのではないでしょうか。
 
 
この点、36条の2第1項本文の
「行政機関」をどのように解するかが問題となります。
 
 
伊藤塾の解答としては「文部科学省」としましたが
「文部科学大臣」でも正解となりえると考えています
(詳細は、伊藤塾の本試験解説に譲ります)。
 
 
 
最後に、本問の真の狙いは
どこにあったのでしょうか。
 
 
「行政指導の中止等の措置の求め」は
行政訴訟の取消訴訟でいくのか
中止等の求めでいくのかの分岐点といえます。
 
 
そもそも、行政指導には処分性がありません。
 
 
 
したがって、
取消訴訟を提起できるものではないといえます。
 
 
 
しかし、指導に従わないと社名を公表されるなどの
社会的不利益を受け、特に企業にとって社会的信用度の低下に
つながるものとして、指導に従わざるを得ないという現実があります。
 
 
そこで、このような場合に、
処分性がなく訴訟提起はできないと断ずるのではなく
何らかの救済をすべき……
として規定されたのが、36条の2です。
 
 
本問は、このような制定過程への
真の理解が試された問題だったのでは
と感じます。
 
 
 
次の一歩を踏み出す時期ですが
本試験問題を通じて少しずつ前進できるよう
これからも解説していきたいと思います。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 
 
では、また。
 


第10回 令和3年行政書士試験 多肢選択式問題43について

2021.12.01

 
みなさん、こんにちは。
伊藤塾講師の藤田です。
 

本試験分析会に参加したり
休息をとられたりして
ひと息の頃でしょうか。
 

自己採点を済ませた方も
まだの方もいらっしゃると思いますが
 
今回は、皆さんが気にされているであろう
今年度の多肢選択式問題を題材として
取り扱っていきます。
 
 
令和3年度行政書士試験の問題43を
お手元にご用意いただけると
今回の内容をより良く理解いただけると思います。
※一般財団法人 行政書士試験研究センターのWebサイトでも一部公開されています。>>

 
 
 
さて本問は、一級建築士免許取消処分等
取消請求事件の判旨を題材としています。
 

日頃から重要判例の判旨に丁寧に目を通しているか

また、条文に沿って、制度趣旨や定義・要件・効果を
確認する姿勢を身につけているか

を問う問題です。
 
 
本問は、他の多肢選択式問題と異なり
難易度等から合否の分かれ目となる問題であったと
評価されています。
 

以下、空欄ごとに検討します。
 
 
 
まず、空欄アとイについてです。
 

採点にご協力いただいた分析からは
正答率は、
空欄アは2割、空欄イは6割でした。
 
 
行政手続法14条の趣旨は、
なぜその不利益処分をするかについての理由を提示させることにより
行政庁の判断を慎重にさせ、公正・合理性を担保して恣意を抑制し、
処分の相手方に争訟に関して便宜を与える点にあります。
 

よって、この趣旨を押さえた上で
条文の学習をしていれば、
 
空欄アには選択肢9の「慎重」、
 
空欄イには選択肢17の「不服の申立て」
 
が当てはまることがわかります。
 

「恣意を抑制」というフレーズを学習していた方が
多かったと思いますが
空欄イの部分については手薄になりがちで
結果、合否の分かれ目となる肢と評価されました。
 
 
次に、空欄ウとエについてです。
 

採点にご協力いただいた分析からは
正答率は、
空欄ウは8割、空欄エは7割でした。
 

空欄ウについては、
講義中でも、しっかり知識として理解していたものではないでしょうか。
 

ヒントとしては、2つ目の空欄ウの後ろの
「…が定められているところ、…定められて公にされており…」
が挙げられます。
 

このことから、不利益処分の処分基準(12条)に気づけます。
 

空欄エについては、その処分基準がどのような手続を経て定められたものか
行政手続法の基礎知識で考えていきます。
 

行政手続法39条「命令等」に
処分基準が含まれる(2条8号ハ)という
判例の知識から少し外した基礎知識を問う問題といえます。
 

よって、
 
空欄ウには選択肢13の「処分基準」
 
空欄エには選択肢6の「意見公募」
 
が当てはまることがわかります。
 
 
多肢選択式の解法テクニックとしては
「時間をかけすぎない」ことが大原則です。
 

しかし、本問のように、過去問の肢として出題されていて
講義でも触れられている論点の判例については
丁寧に取りに行く姿勢も大切です。
 

分析会後の想いも、様々だと思います。
 
どのような形であれ、
次へ踏み出すために
少しずつ自己分析をしていきましょう。
 

今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので
日々の勉強の息抜きにご活用ください。

また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 

では、また来週。
 


第9回 令和3年行政書士試験 問題46について

2021.11.24

 
みなさん、こんにちは。
伊藤塾講師の藤田です。
 
 
本試験が終わって
少し落ち着いた頃でしょうか。
 
 
自己採点を済ませた方も
まだの方もいらっしゃると思いますが
 
 
今回は、皆さんが気にされているであろう
今年度の記述式の問題を題材として
取り扱っていきます。
 
 
 
具体的には、問題46の民法の記述式の問題を
用いて解説をしていきます。
 
 
 
以下、問題文を示します。
 
 
 
問題46
「Aが所有する甲家屋につき、Bが賃借人として居住していたところ、甲家屋の2階部分の外壁が突然崩落して、付近を通行していたCが負傷した。甲家屋の外壁の設置または管理に瑕疵があった場合、民法の規定に照らし、誰がCに対して損害賠償責任を負うことになるか。必要に応じて場合分けをしながら、40字程度で記述しなさい。」
 
 
 
 
ここでは、土地工作物責任の意義・性質・趣旨を理解した上で
条文に沿った学習を心がけているか?
が問われています。
 
 
 
まず、工作物責任の意義について解説します。
 
 
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があり
これによって他人に損害が生じた場合は
土地の工作物の占有者は、
原則として、被害者に対して
その損害を賠償する責任を負います(717条1項本文)。
 
 
その例外として、占有者が損害の発生を
防止するのに必要な注意をした場合
すなわち占有者に過失がない場合には
占有者は責任を負いません。
 
 
その場合には、土地の工作物の所有者が
被害者に対してその損害を賠償する無過失責任を負います
(717条1項ただし書)。
 
 
この土地の工作物の占有者および所有者が負う責任を
土地工作物責任といいます。
 
 
 
次に、土地工作物責任の性質と趣旨について解説します。
 
 
土地工作物責任を負うのは、
第1次的には土地の工作物の占有者であり
第2次的には土地の工作物の所有者です。
 
 
占有者の土地工作物責任は、
占有者に過失がない場合は免責されます
(717条1項ただし書)。
 
 
これに対し
所有者の土地工作物責任については
無過失による免責が認められていません。
 
 
すなわち、所有者の土地工作物責任は
無過失責任です。
 
 
 
占有者や所有者に厳格な土地工作物責任を負わせている趣旨は
土地の工作物はもともと危険をはらんでいるため
その設置・保存に瑕疵がある以上は、
その占有者・所有者が責任を負うべきだ
という危険責任の原理にあります。
 
 
 
以上のことを踏まえて
本問について検討します。
 
 
まず、問題文において
「甲家屋の外壁の設置または管理に瑕疵があった場合」
とあるので、
717条1項の前提が存在することがわかります。
 
 
また、「民法の規定に照らし、」
とあるので、717条に照らすことがわかります。
 
 
さらに
「誰がCに対して損害賠償責任を負うことになるか」
「必要に応じて場合分けをしながら」
と問われているので
 
 
717条の占有者の第1次的責任と
所有者の第2次的責任について検討すべき
ことがわかります。
 
 
したがって、解答としては
 
 
まずはBが責任を負うが、
 Bが損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは
 Aが責任を負う。
 
 
となります。
 
 
本試験直後で、まだまだ
疲れの残る頃だと思います。
 
 
まずはご自身を労い、
心も体もしっかり休ませましょう。
 


第8回 5分でチェック!民法「物上保証人の時効の援用」

2021.8.23

 
みなさん、こんにちは。
 

伊藤塾 行政書士試験科講師の
藤田竜平です。
 
 
今回も、いつものように
受験生の皆さんから
よくいただく質問をもとに
 

「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 

という学習上のポイントについて
実際の過去問を題材に解説をしていきます。
 
 

今回取り扱うテーマは、
 
 
民法「物上保証人の時効の援用」
 
 
についてです。
 
 

題材としては、「完成問題集」の

「問題19(平成21年度 問題28改題)Aの相談」

を用いて解説をしていきます。
 
 

まず、以下にAの相談を示します。
 
 
「Aの相談:『私は13年前、知人の債務を物上保証するため、私の所有する土地・建物に抵当権を設定しました。知人のこの債務は弁済期から11年が経過していますが、債権者は、4年前に知人が債務を承認していることを理由に、時効は完成していないと主張しています。民法によれば、権利の承認による時効の更新は当事者及びその承継人の間においてのみその効力を有するとありますが、私は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できますか。』」
 
 

さて、このAさんの相談に対して
「できます」と回答しうるでしょうか。
 
 

結論からいうと
「できます」とは回答できません。
 
 

ではなぜ、
「できます」と回答できないのでしょうか。
 
 
まず、上記のAの知人が行った承認は
民法152条1項の「承認」にあたります。
 
 
そして、「承認」は、
時効の更新事由にあたるので
 

時効は、承認の時から
新たに進行を始めます。
 
 
もっとも、権利の承認による
時効の更新(152条1項)は

その更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ
その効力を有するのが原則です(153条3項)。
 
 
したがって、物上保証人たるAさんは
(更新の事由が生じた当事者及びその承継人にあたらないため)

時効の完成を主張して
抵当権の抹消を請求できるとも思えます
(145条かっこ書参照)。
 
 
もっとも、判例は、
物上保証人が債務者の承認により被担保債権に生じた
消滅時効の承認による時効の更新の効力を否定することは
担保権の付従性に抵触し許されない
としています
(最判平成7年3月10日)。
 
 

よって、物上保証人たるAさんは
 

時効の完成を主張して
抵当権の抹消を請求することはできない
 

ということになります。
 
 
 
物上保証人が時効の援用権者にあたるか否かと
本問のような場面で時効を援用できるか否かは
別問題なので
 

まずは原則論を意識しつつ
個別の事案ごとに結論を押さえていただくこと
理解への近道です。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 
 
※注
文中の完成問題集の問題番号については
合格講座本科生が使用しているものに
準拠しています。
 
 
では、また!
 
 


第7回 行政法 狭義の訴えの利益を5分でチェック!

2021.8.18

 
みなさん、こんにちは。
 
 
伊藤塾講師の藤田竜平です。
 
 
 
今回も、前回に引き続き、
受験生の皆さんから
よくいただく質問をもとに
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
という学習上のポイントについて
実際の過去問を題材に解説をしていきます。
 
 
 
今回取り扱うテーマは、
 
 
行政法の「狭義の訴えの利益」
 
 
です。
 
 
題材としては
「令和2年度 問題17 肢エ」を
用いて解説をしていきます。
 
 
 
まず、問題17の肢エを以下に示します。
 
 
「都市計画法に基づく開発許可のうち、市街化調整区域内にある土地を開発区域とするものの取消しが求められた場合において、当該許可に係る開発工事が完了し、検査済証の交付がされた後でも、当該許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。」
 
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 
 
結論からいうと
この肢は正しいです。
 
 
 
 
以下、解説いたします。
 
 
 
まず、本問を解くうえでは
 
 
「市街化区域」と「市街化調整区域」の違い
 
 
をしっかりと押さえることが重要です。
 
 
 
 
「市街化区域」というのは
読んで字の通り
これからどんどん建物が建って市街化していくことが
予定されている区域のことです。
 
 
 
他方、「市街化調整区域」というのは
市街化を抑制して自然環境等を守っていこうとされた区域のことで
基本的には建物が建てられる予定のない区域のことです。
 
 
 
そして、「開発工事」というのは
建物を建てるために土地をガタガタと
平らに直す工事のことです。
 
 
つまり、開発工事が完了し
(検査済証が交付され)たということは
さあこれから建物を建てましょう、
という段階だということです。
 
 
 
以上を前提に
市街化区域を扱った判例
(最判平成5年9月10日、最判平成111026日)



肢エの事例のモデルでもあり
市街化調整区域を扱った判例
(最判平成271214日)

の違いを解説します。
 
 
 
まず、市街化区域において開発工事が完了した場合
開発許可処分を取り消す意味がなくなります。
 
 
なぜなら、市街化区域は
元々建物が建っていくことが予定されている区域ですので

仮に開発許可処分を取り消したところで
問題なく建物を建てられるからです。
 
 
したがって
もはや狭義の訴えの利益はありません。
 
 

しかし、市街化調整区域においては
開発許可処分を取り消す意味が残っています。
 
 
なぜなら、市街化調整区域は
元々建物が建てられることが予定されていない区域であって

開発許可の効力を前提としてはじめて建物を建てられる
という関係にあるからです。
 
 
つまり、開発許可処分を取り消すと
その後建物が建つことを阻止できるということになるため
狭義の訴えの利益が認められるということです。
 
 
 
そのことを前提に、もう一度肢エを見てみましょう。
 
 
「都市計画法に基づく開発許可のうち、市街化調整区域内にある土地を開発区域とするものの取消しが求められた場合において、当該許可に係る開発工事が完了し、検査済証の交付がされた後でも、当該許可の取消しを求める訴えの利益は失われない。」
 
 
 
問題文から明らかなように
本肢は、市街化調整区域についての問いです。
 
 
そして、前述したように
市街化調整区域というのは
基本的には建物が建てられる予定のない区域を指します。
 
 
したがって
「当該許可に係る開発工事が完了し検査済証の交付がされた後」
であっても

許可の取消しを求める訴えの利益は失われない
ということになります。
 
 
「市街化区域」と「市街化調整区域」は
理解してしまえば難しくない部分なので
今回の解説を機に、復習しておきましょう。
 
 

今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく
予定ですので、日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 
 
では。
 
★最後の最後まで諦めない
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第6回 取消訴訟と無効確認訴訟を押さえられていますか?

2021.8.9

 
みなさん、こんにちは。
行政書士試験科講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、前回に引き続き、
受験生の皆さんから
よくいただく質問をもとに
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
という学習上のポイントについて
実際の過去問を題材に解説をしていきます。
 
 
 
今回のテーマは
 
 
取消訴訟と無効確認訴訟
 
 
です。
 
 
 
題材としては
 
 
「完成問題集」の
「問題144平成29年度 問題9)肢2」
 
 
を用いて解説をしていきます。
 
 
 
まず、問題144の肢2を
以下に示します。
 
 
 
無効の行政行為については、それを取り消すことはできないから、たとえ出訴期間内であっても、それに対して提起された取消訴訟は不適法とされる。
 
 
 
さて、この肢は妥当でしょうか。
 
 
 
 
結論からいうと
この肢は妥当ではありません。
 
 
 
この点を理解するにあたって
押さえていただきたいのは
 
 
 
 取消訴訟と無効確認訴訟との関係
 
 
 
です。
 
 
 
 
取消訴訟は
出訴期間が定められている
(行政事件訴訟法14条)
 
 
 
のに対し
 
 
 
無効確認訴訟には
出訴期間の定めがありません。
 
 
 
したがって、通常は
取消訴訟の出訴期間内であれば
取消訴訟を提起します。
 
 
 
これは、無効確認訴訟が
時機に後れた取消訴訟といわれている
所以でもあります。
 
 
 
よって、肢2は妥当でない。
 
 
 
という結論になります。
 
 
 
 
では、逆に、取消訴訟の出訴期間内に
無効確認訴訟を提起してはいけないのでしょうか。
 
 
 
結論から申しますと
取消訴訟の出訴期間内に
無効確認訴訟を提起すること自体はできます。
 
 
 
もっとも、取消訴訟と無効確認訴訟では
本案勝訴要件(原告が裁判に勝つための要件)
が異なります。
 
 
 
具体的には、取消訴訟は
当該処分に違法性が認められれば
原告は勝訴判決(請求認容判決)を得ることができます。
 
 
 
他方、無効確認訴訟においては
当該処分に重大かつ明白な違法が認められなければ
勝訴判決を得ることはできません。
 
 
 
要するに、取消訴訟よりも
無効確認訴訟の方が
原告の本案勝訴要件が厳しい
ということです。
 
 
 
したがって、通常は、
取消訴訟の出訴期間内であれば、
取消訴訟を提起します
(勝つのが難しい訴訟を
 あえて提起する原告はいないので)。
 
 
なお、取消訴訟と無効確認訴訟について
 
 
当該処分の違法性に着目して訴訟を選択する
(当該処分が無効であるから無効確認訴訟を選択する)
と考えている方がいらっしゃいますが
その考え方は妥当ではありません。
 
 
 
なぜなら、
 
 
当該処分に違法が認められるにとどまるのか
 
 
それとも重大かつ明白な違法が認められるのか
 
 
については
訴訟提起の段階では分からないからです。
 
 
 
これは、訴訟を提起して
裁判所が判断することにより
初めて明らかになるものです。
 
 
したがって、訴訟提起の段階では
出訴期間の範囲内か否かで判断するわけです。
 
 
 
昨年の本試験でも
無効確認訴訟に関する問題が出題されていますので
この機会にぜひ押さえておきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていきます。
 
 
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 
 
また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 
 
では。
 
 
※注
文中の完成問題集の問題番号については
合格講座本科生が使用しているものに
準拠しています。
 
 
【ご案内】
 最後の最後まで合格に向けて進み続けます。
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第5回 民法 転貸借契約を5分でチェック!

2021.8.2

 
みなさん、こんにちは。
行政書士試験科講師の藤田竜平です。
 
 
今回も、前回に引き続き、
受験生の皆さんからよくいただく
質問をもとに
 

「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 

という学習上のポイントについて
実際の過去問を題材に解説をしていきます。
 

今回は、民法の転貸借契約(612条以下)
について解説をしていきたいと思います。
 
 
題材とする問題は、「完成問題集」の
「問題77(平成18年度 問題33)肢ア・ウ」
です。
 
 

まず、問題77の問題文柱書の前半部分を
以下に示します。
 

「Aはその所有する建物をBに賃貸し、BはAの承諾を得てその建物をCに転貸している。この状況の下で、A・B間の賃貸借契約が終了したので、AはCに建物の明渡しを求めたいと考えている。」
 
 
 
次に、肢アの問題文を、以下に示します。
 

「A・Bが賃貸借契約を合意解除した場合には、AはそれをCに対抗することができる。」
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 

結論からいうと
この肢は正しくありません。
 
 

ここで、民法613条3項の条文を見ていきましょう。
 
 
「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。」
 
 
 
今回注目していただきたいのは
本文部分です。
 
 
肢アは、まさにこの本文部分の
条文知識を問うものといえます。
 
 
したがって、
肢アは誤った肢ということができます。
 
 
 
では次に、肢ウの問題文を
以下に示します。
 

「Bの債務不履行によってA・B間の賃貸借契約が解除された場合には、AはあらかじめCに催告をしなくてもCに対抗することができる。」
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか。
 
 

結論からいうと、肢アと異なり
この肢は正しいです。
 
 

肢アと肢ウの結論に違いが生じているのはなぜでしょうか。
 
 
 
これは、賃貸人と転借人の
どちらに負担を負わせるか?
 

という価値判断の問題です。
 
 
 
肢アは、AB間の賃貸借契約は
合意解除されています。
 

言い換えれば、
賃借人たるBに債務不履行があるわけではなく
 
AB間の都合により賃貸借契約を解除しているわけです。
 
 
このような場合に、
賃貸人が転借人に対して解除を対抗しうるとすると
転借人の保護に欠けることになります。
 

したがって、
賃貸人は転借人に対して解除を対抗できない。
 
 
とされているわけです。
 
 
 
これに対して、肢ウは、
AB間の賃貸借契約が
Bの債務不履行により解除されています。
 

この場合、債務不履行をしたのはBであり
Aからすれば何ら責任を問われるいわれはないわけです。
 

したがって、このような場合には
転借人に負担を負ってもらおう
という価値判断があるわけです。
 

よって、賃貸人は賃借人に対して
催告をすれば足り
転借人への催告は不要となります。
 
 
 
このように、
賃貸人を保護すべきか?
転借人を保護すべきか?
という利益考量により結論が異なるといえます。
 

以上の理解を前提として
もう一度613条3項の条文を見ていきましょう。
 

「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。」
 
 
今回注目していただきたいのは
ただし書部分です。
 
 
これは、仮に合意解除をしたとしても
その解除の当時、賃貸人が賃借人(転貸人)の債務不履行により
賃貸借契約を解除することができた場合には
 
賃貸人は転借人に解除を対抗することができる
ということを規定したものです。
 

前述の肢ア・ウの知識と共に押さえておくとよいでしょう。
 

なお、転貸借契約の知識を問う問題としては
「問題80(令和元年度 問題32)もあります。
 

問題80は、転貸借契約の理解を深めるために
非常に有益な問題であるので、
時間に余裕のある方は併せて復習していただければと思います。
 

今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えして
いく予定ですので、日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 

また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 
 
では。
 
 
※注
文中の完成問題集の問題番号については
合格講座本科生が使用しているものに
準拠しています。
 


第4回 行政手続法27条を理解する

2021.7.21

 
みなさん、こんにちは。
伊藤塾行政書士試験科 講師の藤田竜平です。
 

今回も、受験生の皆さんから
よくいただく質問をもとに

「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」

という学習上のポイントについて
実際の過去問を題材に解説をしていきます。
 
 
 
前回までは、「民法」について
お話をしてきました。
 

今回は、行政書士本試験において民法と同様に
重要な科目である「行政法」について
お話をしていきたいと思います。
 
 
 
さて、皆さんからよくいただく質問に
 

行政手続法(以下「行手法」)27条がよく分からない。
 

というご質問があります。
 
 
 
そこで、今回は、この行手法27条について
具体的な過去問を用いながらお話を進めていきたいと思います。
 
 
 
まず、行手法27条の条文を以下に示します。
 

「この節の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。」
 
 
続いて、具体的な問題として「完成問題集」の「問題65(平成18年度 問題11改題)肢4」を取り扱います。
 
 
 
肢4の問題文(改題)を、以下に示します。
 

「聴聞を経てなされた不利益処分については、審査請求をすることはできず、また、弁明の機会を付与したに過ぎない不利益処分についても、審査請求をすることができない。」
 
 
さて、この肢は妥当でしょうか。
 
 
 
結論からいうと
この肢は妥当ではありません。
 
 
 
一見、行手法27条の文言を見るだけでは
妥当なようにも思えます。
 
 
 
では、なぜ妥当ではないのでしょうか。
 
 
 
もう一度、
行手法27条の文言を見てみましょう。
 
 
「この節の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。」
 
 
 
着目点は
 
 
「この節の規定」という部分がどこを指しているのか?
 
 
ということです。
 
 
ここに、本問を解くための一つ目のポイントがあります。
 
 
 
結論からいうと、
「この節の規定」とは「第二節 聴聞」を指しています。
 

 
したがって、行手法27条は
 
 
「聴聞の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない」
 
 
と読み替えることができます。
 
 
 
では、
「聴聞の規定に基づく処分又はその不作為」
をどのように考えればよいのでしょうか。
 
 
 
ここが、本問を解く二つ目のポイントです。
 
 
 
要するに、
「聴聞の規定に基づく処分又は不作為」と
「聴聞を経てなされた処分(不利益処分)」は
異なるということです。
 
 
「聴聞の規定に基づく処分又は不作為」とは
 

行手法15条~26条までの聴聞の過程で行われる
中間的付随的な処分又は不作為(聴聞手続の中での処分又は不作為)
 
 
を指します。
 
 
たとえば、
文書等閲覧の許否および許可(18条1項)や聴聞調書
および報告書の閲覧の許否(24条4項)のようなものが
これにあたります。
 
 
要するに、文書閲覧の不許可処分や文書閲覧の閲覧請求に対して
何ら処分をしなかったような場合(不作為)です。
 
 
このような場合には、当該処分又は不作為に対して
審査請求をすることができません。
 

なぜなら、このような処分又は不作為に対して
審査請求が認められるとすると手続の遅延や
行政の事務負担が増大するからです。
 
 
 
他方、「聴聞を経てなされた処分(不利益処分)」とは
たとえば、聴聞を経てなされた営業許可の取消しや
建築物の除却命令のようなものを指します。
 

このような場合には、当該処分に対して
審査請求をすることができます。
 
 
上記の違いを押さえておけば、
行手法27条が出題されたとしても、
それほど悩まずに解答することができるはずです。
 
 
 
なお、肢4の問題文の後半部分に記載の
「弁明の機会を付与したに過ぎない不利益処分」
についても、審査請求をすることができます
(行手法31条が27条を準用していないため)。
 

したがって、いずれにしても
 

肢4は妥当でない
 
 
ということになります。
 
 

以上が、行手法27条についての解説です。
 
 
 
条文の文言を読むだけではなかなか理解しづらい
部分ではあると思うので
この機会に復習しておきましょう。
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 

また、感想やご意見等もお寄せくださると
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 

では。

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文中の完成問題集の問題番号については
合格講座本科生が使用しているものに
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第3回 利益相反行為(民法826条)を理解する!

2021.7.19

 
みなさん、こんにちは。
 

伊藤塾行政書士試験科 講師の
藤田竜平です。
 

まだ2回しかお届けできていませんが
はやくも応援の声をいただき嬉しく感じております。
 

これからもよりお役立てできる内容を届けていきます。
 
 
 
さて今回も、前回までに引き続き、
受験生の皆さんからよくいただく
質問をもとに
 

皆さんが
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 

という学習上のポイントについて
実際の過去問を題材に解説をして
いきます。
 
 
 
今回扱うテーマは…
 

「利益相反行為(民法826条)」
 

です。
 

利益相反行為も、
受験生の方からの質問が多い箇所です。
 
 
今回は、「完成問題集」の「問題114肢イ(平成26年度 問題35)」を
題材に解説をしていきたいと思います。
 
 

では、以下に、肢イの問題文を示します。
 
 
「親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。」
 
 
さて、この肢は妥当でしょうか。
 
 
 
結論からいうと
この肢は妥当ではありません。
 
 
 
一見すると、利益相反行為にあたる気がします。
 
 

では、なぜ利益相反行為にあたらないのでしょうか?
 
 
少し考えてみて下さい。
 
 
 
 
 
以下で解説をしていきます。
 
 
まず、利益相反行為の問題を解く
一つ目のポイントは、
 

利益相反行為該当性の判断基準
 

にあります。
 
 
 
利益相反行為とは、
「親権を行う父又は母とその子の利益が相反する行為」(826条)
を指します。
 

そして、かかる利益相反行為にあたるか否かは
行為の外形から客観的に決すべきとされています。
 

要するに
 

親権者の意図やその行為の実質的効果からは判断しない
 

ということです。
 
 
 
たとえば、
 
親権者が他人の債務について
子とともに連帯保証人になり、
かつ子との共有不動産の全部に抵当権を
設定することは利益相反行為にあたるが
 
 

親権者が子の名において金員を借り受け
子の不動産に抵当権を設定することは
たとえ借受金を親権者自身の用途に充当する意図であっても
利益相反行為にはあたらない

とされています。
 
 

もう一つのポイントは
 

「親権を行う父又は母」
 

というところです。
 
 
 
当該行為を行った父又は母に「親権」があるか
否かが重要なポイント
 

となります。
 
 

それを踏まえたうえで
本問を見ていきましょう。
 

まず、本問では、
親権者である母が子の所有の不動産に
抵当権を設定しているので

行為の外形から客観的に見て
利益相反行為にあたるようにも思えます。
 

しかし、かかる母の行為は
その子の継父が銀行から借り入れを行う
にあたりなされたものです。
 

そして、継父は、原則として
「親権者」にはあたりません。
 

したがって、たしかに、
親権者たる母は子所有の不動産に
抵当権を設定しているが

それはその子の継父の借り入れのために
行っていることであり
 
行為の外形から客観的に見て
親権者たる母と子の利益が相反する行為とはいえません。
 

また、前述のとおり、
継父は「親権者」ではないため
本問における継父は利益相反行為の当事者たり得ません。
 

よって、本問の母の行為は
利益相反行為にはあたらず
 
肢イは妥当でない。
ということになります。
 
 
問題114は、他の肢についても
利益相反行為を理解するうえで
有益な肢がそろっているので
復習をお勧めします。
 

また、利益相反行為については
完成問題集の問題12(平成21年度 問題27)の肢2にも
問題がありますので、
併せて見るとより理解が深まると思います。
 
 

前回もお伝えしましたが、
今後も、試験合格に役立つ知識を
お伝えしていく予定ですので、
日々の勉強の息抜きにご活用ください。
 

また、感想やご意見等もお寄せくださると、
今後のコラム作成の参考となります。
ご意見をお待ちしております。
 

では。
 

※注
文中の完成問題集の問題番号については
合格講座本科生が使用しているものに
準拠しています。
 
 


第2回 即時取得-「占有を始めた」とは?

2021.7.12

 
みなさん、こんにちは。
伊藤塾行政書士試験科 講師の藤田竜平です。
 

前回の内容はいかがでしたでしょうか?
 

今回も前回に引き続き、受験生の皆さん
からよくいただく質問をもとに
 

「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 

という学習上のポイントについて
実際の過去問を題材に
解説をしていきたいと思います。
 
 

さて、
前回は、民法の詐害行為取消権(424条以下)における
「無資力要件と支払不能要件の違い」についてお話しました。
 

少し難しかったかもしれませんね。

 
そこで、今回はもう少し過去問で頻出の分野に
ついて取り扱いたいと思います。
 


今回扱うテーマは…
 

「即時取得(民法192条)」です。
 
 

即時取得は、民法において頻出の分野です。
 

また、今後は記述式での出題も予想される
ところです。
 

そこで、今回は、即時取得について
少し理解を深めていただきたいと思います。
 
 
 
さて、即時取得を扱う上で今回題材とする
過去問は、平成23年 問題29です。
「完成問題集」でいうと「問題31肢ウ・エ」です。
 
 
まずは、問題31の問題文を以下に示します。
 

「A所有のカメラをBが処分権限なしに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なくBから同カメラを買い受けた。この場合に関する次のア~エの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものをすべて挙げた組合せはどれか。」
 
 

次に、肢ウを以下に示します。
 

「Bは、Cにカメラを売却し、以後Cのために占有する旨の意思表示をし、引き続きカメラを所持していた場合、Cは、一応即時取得によりカメラの所有権を取得するが、現実の引渡しを受けるまでは、その所有権の取得は確定的ではなく、後に現実の引渡しを受けることによって確定的に所有権を取得する。」
 
 
 
さて、この肢は正しいでしょうか?
 
 
答えは、誤りです。
 
 

その理由を今から考えていきましょう。
 
 
まず、本肢を解く際のポイントは
 
 
即時取得における「占有を始めた」という要件


です。
 
 
 
 
即時取得が成立するためには
取引行為に基づく引渡しが必要です。
 

これを、条文上は「占有を始めた」と表現しています。
 
 
本肢では、
 
 
この「占有を始めた」に
占有改定(183条)が含まれるのか?

 
というところの理解が問われています。
 
 
 
もちろん、現実の引渡し(182条1項)により
占有を開始した場合には、
「占有を始めた」にあたります。
 
 

また、簡易の引渡し(182条2項)により
占有を開始した場合にも
「占有を始めた」にあたります。
 
 

では、占有改定により占有を開始した場合も
「占有を始めた」にあたるのでしょうか。
 
 

この点について、
 

判例は、
占有改定は「占有を始めた」にはあたらない。
 

としています。
 
 

これは、占有改定は、
 

占有の外観に一切変化がないにもかかわらず
これによる即時取得を認めるとあまりに静的安全を害する
 

という価値判断からきています。
 
 

したがって、肢ウは誤り
ということになります。
 
 
では次に、肢エも見ていきましょう。
 

「Bは、Cにカメラを売却する前にカメラをDに寄託していたが、その後、BがCにカメラを売却するに際し、Dに対して以後Cのためにカメラを占有することを命じ、Cがこれを承諾したときは、たとえDがこれを承諾しなくても、Cは即時取得によりカメラの所有権を取得する。」
 

さて、この肢はどうでしょうか。
 

結論からいうと本肢は正しいです。
 
 

これは、肢ウとは異なり
 

指図による占有移転(184条)により
占有を開始した場合が「占有を始めた」にあたるか?
 

が問われています。
 
 

この点について


判例は
指図による占有移転は
「占有を始めた」にあたる。
 

としています。
 
 

これは、
 

指図による占有移転は占有改定と比べて
外部から占有移転を認識しやすい
 

といえるからです。
 

そして、指図による占有移転において
必要なのは、「第三者」の承諾であり
占有代理人たるDの承諾は必要ではありません(184条)。
 

本肢の場合の「第三者」はCなので
Cの承諾を得ている本肢の場合は即時取得が成立する。
ということです。
 

したがって、
本肢は妥当な肢。
ということになります。
 

指図による占有移転は、
「代理人」「本人」「第三者」が誰のことを指しているのか?
をしっかりと把握することが大事です。
 
 

本肢であれば、

「代理人」はD
「本人」はB
「第三者」はC

です。
 
 

このように、本問では、即時取得の事案において
 
 

現実の引渡しと簡易の引渡し、
および指図による占有移転により占有を開始した場合は
即時取得における「占有を始めた」にあたるが
 

占有改定により占有を開始した場合は
「占有を始めた」にあたらない。
 
 

ということを押さえていただきたいと思います。
 
 
うっかりすると忘れてしまう部分なので
この際に復習をしておきましょう。
 

今後も、試験の合格に役立つ内容を
お伝えしていきます。
 

では、また次回に!
 
 
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※注
文中の完成問題集の問題番号については
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準拠しています。
 


第1回 詐害行為取消権における無資力要件と支払不能要件の違い

2021.7.05

 
みなさん、初めまして。
 
 
今回より、新たに執筆陣に加わりました
伊藤塾講師の藤田竜平と申します。
 
どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 
さて、このコーナーでは
受験生の皆さんからよくいただく質問をもとに
 
 
 
「気になってはいるけれど
 いまいち、よく分からない…」
 
 
 
という学習上のポイントについて
解説をしていきます。
 
 
 
毎回、できる限り分かりやすい説明で
皆さんの合格をサポートしていきたいと思っております。
 
 
どうぞ、毎回を楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。
 
 
 
 
では早速、第1回目を
はじめていきたいと思います。
 
 
 
今回は、
 
 
「民法における詐害行為取消権(民法424条以下)」
 
 
についてお話をしていきます。
 
 
 
詐害行為取消権の規定は、
改正により新たに定められた部分もあることから
 
受験生の皆さんの中には苦手意識を持っている方も
多いかと思います。
 
 
 
そこで、具体的な問題を題材として
皆さんがつまずきやすい部分を
解説していきたいと思います。
 
 
 
今回、題材として用いるのは、
伊藤塾 行政書士合格講座等で使用している「完成問題集」のなかから
「問題55肢オ(平成20年度問題32改題)」です。
 
 
この問題は、
 
AがBに対して自己所有の家屋を売る契約をした場合
に関する問題です。
 
 
お持ちでない方もいらっしゃると思いますので
以下に、肢オの問題文を示します。
 
 
 
「Bが登記を備える前に、Aが、Bを害することを知っているFと通謀して当該家屋をFに対して代物弁済し、登記を移転してしまった場合、Aがその結果無資力となれば、Bは、A・F間の代物弁済を、詐害行為を理由に取り消すことができる。」
 
 
 
さて、いきなりとなりますが
この肢は正しいでしょうか。
 
 
 
本問は、詐害行為取消権における無資力要件と
支払不能要件の理解を問う問題です。
 
 
 
具体的には、
 
 
424条1項と424条の3 第1項の要件の違いを
しっかりと押さえているか?
 
 
ということが問われています。
 
 
 
そのことを頭に入れたうえで、
以下、検討していきますね。
 
 
 
まず、無資力とは、債務超過、
すなわち債務者がその債務につき
その財産をもって完済することができない状態のこと
をいいます。
 
 
 
要するに、無資力とは計算上の問題であり
単純にマイナスの資産(例:借金)と
プラスの資産(例:預金)を比較して
マイナスの資産の方が大きい場合をいいます。
 
 
 
これに対して、支払不能とは、
簡単に言うと、財産・信用・労務による収入
のいずれをとっても債務を支払う能力がない
ことをいいます。
 
 
 
要するに、財産があっても、その換価が困難
なら支払不能となりえますし
 
逆に財産がなくとも、信用や労務による収入に
基づく弁済能力があれば支払不能にはならない
ということです。
 
 
 
たとえば、今現在預金がなく借金しかない者であっても、
定期的に収入(例:給与)がある場合には
無資力ではあるけれども支払不能にはならない
ということです。
 
 
 
もちろん、実際は総合考慮で判断されるでしょうから、
上記の例でも支払不能にあたる場合もあるとは思いますが、
試験対策としては
そこまで考える必要はありません。
 
 
無資力であっても支払不能にはあたらない場合がある
ということを認識していただければ充分です。
 
 
 
以上を踏まえたうえで問題をみてみると
 
「Aが、……代物弁済し、登記を移転してしま
った場合、Aがその結果無資力となれば……」
とあるのみであり
 
支払不能となる事情は記載がありません。
 
 
 
したがって、肢オは誤り。
ということが分かります。
 
 
 
支払不能要件については、
平成29年改正により新たに定められた事項であるので
改正前の民法から勉強をしてきた方は
特に注意が必要です。
 
 
 
伊藤塾の「完成問題集」をお持ちの方は、
「完成問題集 問題57肢4(平成28年度問題32)」
等と対比させると、より理解が深まるかと思います。
 
 
 
いかがでしたでしょうか?
 
 
今後も、試験合格に役立つ知識をお伝えしていく予定です。
日々の勉強の息抜きにご活用いただければ幸いに思います。
 
 
 
では。
 
 
※注
文中の完成問題集の問題番号については
合格講座本科生が使用しているものに
準拠しています。
 
 


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