弁護士の業務と就業形態

一般的な「弁護士業務・就業形態」の一例をご紹介します。

一般的な弁護士業務

渉外/ビジネス法務

渉外とは「国内だけではなく、外国にも関係する」という意味で、外国企業との取引に関連した業務を行うのが渉外弁護士(国際弁護士)です。商品取引、合併・企業買収・企業提携、証券化・流動化、知的財産法関連、IT・システム、合弁会社設立などにおける契約書の作成、国際的訴訟での書面作成、独占禁止法や証券取引法など法律関係の調査など、様々な業務を担当します。業務は外国語で行うことが多く、渉外事務所に入所した後に、アメリカやイギリスなどの海外ロースクールに留学し、海外のローヤーの資格を取得し、事務所に戻るケースが多くあります。なお、日本の渉外事務所は日本企業のクライアントが多いのに対して、外資系法律事務所は、外資系企業のクライアントが多いという特徴があります。 また、同様の業務は日本企業同士でも必要となりますし、人事労務、コンプライアンス(法令遵守)など、弁護士が恒常的に企業に貢献できる分野も非常に多くあります。 企業の所在地・規模を問わず、弁護士は「ビジネス法務」関連のサポートを広く行っています。

人権活動

憲法の理念を実現し、市民のために貢献することが法律家の仕事です。公害・薬害被害者、ハンセン病患者、薬害エイズ(HIV)患者、残留孤児、難民、移民など、弱者を救済し、国家権力に歯止めをかけるという目的のもと、時として数百名に及ぶ弁護団を構成することもあります。活動内容としては、被害者に法的なアドバイス、情報提供を行うとともに、国や地方自治体に対して「行政訴訟」を行うことが挙げられます。行政訴訟とは、国や地方自治体の行った行為の適法性を争い、その取り消しや国家補償などを求める訴訟のことで、近年の一例としてはチチハル事件訴訟、外国人の強制退去処分の取消訴訟、薬害エイズ(HIV)訴訟、薬害肝炎訴訟、などがあります。 また、弁護団に加わる以外にも、青年法律家協会、自由法曹団など様々な法律家団体に所属し、広く人権活動を行っている弁護士も多くいます。

一般民事・一般刑事

私人間に起きた生活関係に関する紛争を裁判によって法律的、強制的に解決するための手続を「民事訴訟」、犯罪を行ったとされる被告人について、本当に犯罪行為があったのかを認定して刑罰を科すための訴訟手続を「刑事訴訟」といいます。弁護士ならばどちらの事件も取扱うことができます。 事件を依頼されるケースとしては、依頼者から直接依頼される「私選弁護」と、国の費用で裁判所が選任する「国選弁護」の2つのパターンがあります。民事訴訟は私選弁護のみですが、刑事訴訟では国選弁護と私選弁護があります。刑事訴訟の方が、数が少ないため、民事事件を中心としながら、時として刑事事件を扱うという弁護士が大半です。 民事訴訟とは、多重債務・不動産関係・離婚問題・労働問題・交通事故・医療過誤など、多岐に渡ります。 業務の流れは、事件を受任した弁護士が依頼者と弁護士報酬の取り決めをした後、裁判所に「訴状」を提出します。 その後、口頭弁論や弁論準備手続が数回行われます。その過程で和解に至ることもありますが、それ以外の場合は証人尋問、判決、そして不服な場合は控訴となり、第一審を地方裁判所からスタートした場合、高等裁判所で争うことになります。 高等裁判所でも決着がつかない場合は、最高裁判所での裁判となります。 刑事訴訟では、被疑者弁護と起訴後の弁護があります。被疑者弁護では警察から不当な自白誘導が行われないよう被疑者を見守り指導することや、被害者との和解交渉などを行い、被害弁償がなされ、軽微な事件であれば起訴猶予となるよう活動を行います。 起訴後の弁護では、裁判所への保釈請求や、裁判での無罪や刑の軽減を主張することになります。 また、被疑者として逮捕された人が相談できる弁護士がいない場合に、被疑者の相談を受けるために弁護士会では当番弁護士制度を設けています。これは当番となった弁護士が、各法律事務所に待機していて、弁護士会からの連絡で警察署に向い、被疑者の相談をうける制度です。これをきっかけとして、私選として刑事事件を受任することがあります。 また、以上に関連して、法律による紛争解決に必要な情報やサービスを、全国どこでも受けられる社会を目指して設立されたのが、独立行政法人「司法支援センター(法テラス)」です。民事法律扶助業務として弁護士の紹介や費用の立て替え、国選弁護人候補者との契約、裁判所への通知、報酬・費用の支払いなどを行っています。

弁護士の就業形態

まずは法律事務所に勤務弁護士(アソシエイト、イソ弁)として入所してキャリアを積んだ後に、共同経営者としての弁護士(パートナー、ボス弁)になったり、独立開業して自分の事務所を開設するケースが多く見受けられます。
また、最近は企業の従業員や役員、行政機関やNPO(民間非営利組織)の職員などとして勤務する弁護士(インハウスローヤー)も増えています。
また、弁護士過疎地対策として、日弁連や地元弁護士会、弁護士会連合会からの支援(日弁連ひまわり基金からの経済的支援や支援委員会による支援など)を受けて運営される「公設事務所(ひまわり基金法律事務所)」があります。
法律事務所に所属しながらにして、2~3年の任期期間中は弁護士過疎地に公設事務所を設立して、独立と同様の形態で弁護士業務を行うというものです。
さらに今後は、司法支援センター(法テラス)の常勤のスタッフ弁護士として法テラスの地方事務所や、法テラスが過疎地に設置する「4号事務所」と呼ばれる事務所で勤務する弁護士も増えていくでしょう。

Pick Up

弁護士出身の政治家の増加

古くはリンカーン、ガンジー、ケネディ、最近ではブレア、クリントン、シュレーダー、オバマなど、弁護士出身の政治家は非常に多くいます。 日本でも弁護士出身の議員は徐々に増えてきています。 また、議員にならない場合も、政策担当秘書として、立法に携わるケースも見受けられます。

行政の場で専門の知識を活かす

2001年に公務員の『任期付任用制度』がスタートするとともに、弁護士資格を保有しながら公務員として任期付きで働くことが多く行われています。 官公庁で働く弁護士が増えています。

専門知識+αの力を幅広く活かす

法律を学ぶことで、一つの事象を複数の視点から分析する力、複雑な事象を伝えるコミュニケーションスキルなどが修得でき、ビジネスの世界でも大いに活かすことができます。 また社会からの法律への関心が高まるなかで、テレビや新聞などで法律・法的事象に関するコメントや論評を求められることも多く、メディアで活躍する弁護士も増えてきています。