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明日の法律家講座 東京校第237回

2015年9月19日(土)実施
 

非軍事で、持続的な平和を実現しよう!~現在進められている安保政策の問題点を抉る~

【講師】 
佐藤 安信 氏(弁護士、「長島・大野・常松法律事務所」顧問、東京大学大学院総合文化研究科教授、同持続的平和研究センター長、「人間の安全保障」プログラム担当)


講師プロフィール

佐藤 安信 氏(弁護士、「長島・大野・常松法律事務所」顧問、東京大学大学院総合文化研究科教授、同持続的平和研究センター長、「人間の安全保障」プログラム担当)

東京生まれ
1982年 早稲田大学政治経済学部政治学科卒業
1984年~1988年 佐藤法律事務所、高橋勉法律事務所
1989年 Harvard Law School卒業(LL.M.)
1988年~1991年 Cleary, Gottlieve, Steen & Hamilton LLP(New York、Washington, D.C.)勤務、 Loeff Claeys Verbeke(Amsterdam、Brussels)勤務
1991年~1993年 国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所法務官(キャンベラ)、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)人権担当官(カンボジア)
1993年~1999年 三井安田法律事務所(国際金融法務)勤務(うち1995年~1997年、欧州復興開発銀行(EBRD)法務部弁護士)
2000年 University of London卒業(PhD in Law)
1999年~2000年 名古屋大学大学院国際開発研究科助教授
2000年~2005年 同教授
2002年~2003年 「国家と法」研究所客員研究員(Viet Nam)
2004年~ 東京大学大学院総合文化研究科教授
2013年~2014年 オーストラリア国立大学 客員研究員
 

講師からのメッセージ 

現在国会では、安倍政権による新たな安全保障法制の参議院での審議が山場を迎えています。大多数の国民の理解も得られないままに、憲法違反の濃厚な法律の成立が見込まれています。安全保障上の環境の変化という立法事実の有無は別にして、憲法違反とされる法律を成立させることで、政府を縛る憲法のくびきをなし崩しにしようという意図が透けて見えます。既成事実を見せつけることによって、違憲状態を解消するためには憲法改正しかないという、倒錯した戦術に見えます。私は、「人間の安全保障」による持続的平和を研究し、実践せんとする者として大きな危機感を覚えます。
世界秩序の維持のためには軍事力が現状でも必要であることを否定はしません。しかし、軍事力では持続的な平和はもたらせないどころか、安全保障のジレンマによって、軍事衝突を惹起する危険があることも、日本はその歴史の教訓で学んだはずです。官民問わず戦後一貫して非軍事的な平和貢献をしてきた日本にとって、今その憲法上の理念を米国との同盟のために犠牲にすることは米国への追随を深め、米国を敵視する人びとを敵に回すことにもなるでしょう。むしろ、今こそ、開衿を開いて、隣人を招き、隣人を訪問し、相互依存関係にある越境的ビジネスによるソフトパワーをベースにした戦略によって、地域の安全保障を高めるべきです。難民を受入れて彼らから学ぶことが不可欠です。私は、国連カンボジア暫定統治機構という平和維持活動に人権担当官として参加しました。その経験から、法律家こそが非軍事的な平和貢献をできることを実感しました。紛争を非暴力的に解決し、人権と社会正義の実現を使命とする法律実務者こそ、積極的平和主義の担い手であり、リーダーに違いないと私は思います。皆さんと、特に世界の法律家としての活躍の舞台を語り合いたいと思っています。