New 第375回 教育の政治的中立性

2026/10/05

2026年9月13日に沖縄県知事選挙が行われ、古謝玄太氏が当選しました。敗れた玉城デニー氏は記者会見で「私の努力不足はもちろんだが、SNSのおぞましさはどうにかしないといけない」と述べ、法的な規制の必要性に言及しています。SNSでは「同志社国際高校の生徒は辺野古の抗議活動に参加していた」「生徒を船に乗せたのは沖縄県の事業で、県の予算が使われていた」といったデマが多数飛び交っていました。「この平和学習は政治的に偏っている」という批判もありました。今回は、教育の政治的中立性について考えてみます。

  2026年3月、同志社国際高校の沖縄研修旅行中、辺野古沖で生徒らを乗せたボートが転覆し、生徒と船長が亡くなるという痛ましい事故が起きました。若い命が失われたことは本当に残念であり、安全管理にどのような問題があったのかは徹底して検証されなければなりません。   しかし、この事故をきっかけに、もう一つ別の問題が浮かび上がりました。 ...
 
2026年 10月


第374回 東京裁判の光と影

2026/09/01

今年9月2日は、81年前日本が降伏文書に署名した日です。そして1946年5月3日は東京裁判(極東国際軍事裁判)開廷日で、今年開廷80年に当たります。

  毎年8月になると、日本のメディアでは、広島・長崎への原爆投下をはじめ戦争が多く取り上げられますが、その多くは日本の戦争被害を中心としたものです。現在も、日本社会が自らの加害の事実に向き合う姿勢は、なお十分とはいえません。その一因として、東京裁判のあり方を考える必要があります。   東京裁判は、日本の侵略と戦争犯罪を公的に記録し、...
 
2026年 9月


第373回 「悪法も法である」のか

2026/08/01

多くの法学者や法律実務家がその違憲性を指摘してきた国旗損壊罪が、7月17日、国会で成立してしまいました。その違憲性について、ここでは詳しく論じませんが、表現の自由(憲法21条)、思想・良心の自由(憲法19条)、罪刑法定主義(憲法31条)に違反し、立法事実を欠くにもかかわらず刑罰法規を設けることは、刑法の謙抑性にも反していると言わざるを得ません(「伊藤真の元気が出る憲法アップデート」第310弾、第340弾)。

  日弁連をはじめ、全国の弁護士会は、その違憲性を理由に法案の成立に反対しました。国会においても、衆議院、参議院の双方で、憲法学者がこぞってその違憲性を指摘しました。必要性を認める意見を述べた学者は、保守改憲派として著名な憲法学者と商法学者だけでした。   神戸大学の木下昌彦教授は、「本法案には二つの運命しかない。最高裁において違憲...
 
2026年 8月


第372回 皇位継承と個人の尊厳

2026/07/01

王政のイギリスから250年前に独立した共和制の米国では、トランプ大統領が、まるでマッチョな王のようにふるまっていると批判されています。他方、欧州では、かつて多くの王室で「男子優先」の継承法が採用されていましたが、現在では多くの国でこれが改められ、男女の区別なく長子が君主となる道が開かれています。これにより、スウェーデン、ベルギー、オランダ、スペイン、ノルウェーでは、女性が次代の君主として即位することが確実視されています。

  他方、日本では、国旗損壊罪や緊急事態条項については「外国と同じように認めるべきだ」と主張する保守派の議員が、皇位継承については、断じて女性天皇・女系天皇を認めたくないようです。天皇制そのものの是非については様々な議論がありますが、ここでは、憲法が規定する天皇制を存続させるという前提で、皇位継承問題を考えてみます。   憲法は、「...
 
2026年 7月


第371回 未完のプロジェクト

2026/06/01

2026年4月28日、イギリスのチャールズ3世国王はアメリカ連邦議会で歴史的な演説を行いました。トランプ政権下のアメリカで、「力による支配」がまかり通ろうとしている中、旧約聖書を引用しながら、「くわを剣に打ち直さないよう願う」と述べ、戦争の拡大に警鐘を鳴らしました。そして、民主主義と議会政治の価値を静かに、しかし力強く訴えたのです。

  国王がとりわけ力を込めたのは、1215年のマグナ・カルタ、大憲章への言及でした。「マグナ・カルタは1789年以降の米連邦最高裁判決で少なくとも160件引用されており、とりわけ『行政権力は抑制と均衡に服する』という原則の礎となっている」。国王がそう述べると、議場はスタンディングオベーションで応えました。さらに国王は、「ここ議会の場...
 
2026年 6月