カテゴリー:2018年
第280回 先例主義
裁判とは、原告、被告双方の言い分を聞いて、その食い違う争点に対して裁判所が憲法、法律に基づいて判断するものです。ところが、これまでの一人一票実現訴訟において、裁判所は私たちが提起した争点に対してまったく応答してきませんでした。
私たちの主張は、この問題について、憲法14条1項で規定されている法の下...
2018.12.03
第279回 裁判官の独立
憲法では司法権の独立に関して、外部からの独立だけでなく、司法内部における個々の裁判官の独立も重要なことを学びます。「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と規定する憲法76条3項が実効性を持つためには、裁判官が司法行政の統制からも自由であることが必要となります。報酬、任地、昇進などにより統制されるようでは、裁判官が自らの良心に従って独立して裁判などできないからです。もちろん、ここの統制には懲戒処分も含まれます。不当な処分を恐れて裁判官が萎縮するようでは、裁判官の独立、司法権の独立そして司法への国民の信頼は失われてしまうからです。司法権という権力の正統性の根拠は国民の信頼にあります。裁判結果が正しいかどうか誰にもわからないからこそ、公正な裁判がなされるはずだという信頼が裁判所の存立基盤なのです。
2018年10月17日、最高裁大法廷は東京高裁判事岡口基一裁判官に対す...
2018.11.01
第278回 沖縄と幸福追求権
正直、ほっとしました。沖縄県知事選挙です。8万票ほどの差をつけて玉城デニーさんが当選しました。辺野古新基地建設を強行している政府は自民、公明両党が幹部を送り込み、党を上げてなりふり構わず佐喜真候補を支援していました。組織票では圧倒的に不利でしたし、デマ情報も飛び交い、辺野古問題を争点にしないようにする相手の戦術も功を奏しているとも言われていたので本当に心配していました。しかし、結果は、復帰後の知事選では過去最多票を得ての勝利でした。無党派層の7割が玉城氏に投票しました。辺野古新基地反対、安倍政権にノーを突きつけた県民の誇りと意地を見せてくれました。
普天間基地が世界一危険な基地だから辺野古に移転するのだと政治家がよく正...
2018.10.02
第277回 変化
1995年に伊藤塾を立ち上げ、最初の雑感で私が期待する法律家について書きました。今でも、その考えは変わっていません。ですが、そこに最近はもう一つ付け加えるべきだと思っています。それは変化に対応する力を持った法律家です。何を今さらと思われるかもしれませんが、変わらぬ社会などないからです。
私が弁護士になったころ、法学部生ならどこの大学でも一度は司法試験を考え...
2018.09.03
第276回 存在価値
自民党の杉田水脈議員が月刊誌に寄稿した内容が話題になりました。「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか。」という部分が主に批判されたようです。この発言に対して、自民党の二階俊博幹事長は記者会見で「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」と述べ、問題視しない考えを示したそうです。本人も党のこうした考えを自民党の懐の深さとツイッターで評価しています。
杉田氏の発言の是非については、憲法を学んでいる塾生の皆さんにはあえて言...
2018.08.01
第275回 多様性その2
サッカーワールドカップの結果が気になって勉強が手につかなかったという人もいたと思います。結果はどうあれ、こうした本気の勝負は私たちに様々な話題を提供してくれます。日本チームの活躍に対して前評判との違いから手のひら返しという表現も使われました。他人の評価は本当にあてにならないものです。
プロフェッショナルとは、他人の評価などにふりまわされず、自分の仕事をす...
2018.07.01
第274回 手続的正義
国家公務員試験、司法試験は終わり、これから司法書士試験、予備試験論文、行政書士試験が行われていきます。各種試験において実力者が合格するのであれば、試験の公正な手続きなどどうでもいいと思う人はいないでしょう。誰が合格すべき実力者かわからないからこそ試験という適正な手続きが必要となるからです。
最近、いつまで「モリカケ」(森友・加計学園)問題で騒いでいるんだ、とい...
2018.06.01
第273回 民主主義と品性
朝日新聞のある論考で、品性と品行の違いを読み考えさせられました。「人間は少しぐらい品行は悪くてもいいが、品性は良くなければいけないよ」とは日本映画の名匠小津安二郎の言葉だそうです。刑法で学ぶ、「行為は客観と主観の統合体」という言葉が思い出されます。すべての人の行動は、どのような思いで何をするかが重要なのです。
昨今、品性が卑しいのではないかと思えるような、身びいきの蔓延、権力の私...
2018.05.01
第272回 散る桜
渋谷の伊藤塾の前の桜も華やかに咲きほこり見事に散っていきました。 「散る桜、残る桜も散る桜」これは良寛和尚によるものとされていますが、受け止め方は様々のようです。特攻隊員の遺書をイメージする人もいますし、命のはかなさを感じる人もいます。どうせ散ってしまうのだから頑張って咲き続けていても無駄だと考えるのか、同じように散るのであれば、美しく咲いていたいと考えるのか、とらえ方は人それぞれです。
誰もが生まれた瞬間から死に向かって歩み続けているのですから、命の意味や...
2018.04.02
第271回 北東アジア
平昌オリンピックが終わりました。国単位でメダルを競うことはオリンピック憲章の趣旨に反するのですが、メダルの数で盛り上がる報道もありました。北朝鮮に南北対話を持ち掛けられて応じるなんて日米韓の協調を壊すものだと批判する声も聞かれ、競技外の話題にも事欠かなかったオリンピックでした。
確かに北東アジアには、いくつもの緊張の種が存在します。①冷戦時代の分断...
2018.03.01
第270回 仮想通貨
先月は、興味深い事件がいくつか起こりました。成人式の晴れ着を待っていたのに届かなかったという事件、仮想通貨が盗まれたという事件などは、被害者に申し訳ないものの、考える訓練としては興味深いものでした。
成人式の日に届かなければ意味がないという点は、定期行為の典型的なもので...
2018.02.01
第269回 謹賀新年
昨年11月21日全国5000人の市民が不当な賠償金4556万円を完済しました。東京、国立駅前から続く大学通りの景観をめぐり、国立市がマンション業者に支払った3124万円を国立市から求償された上原公子元国立市長が訴訟で敗訴し、利息を含めて4556万円を個人として国立市に負担することになりました。景観保護のためにマンション建設規制を求めて上原氏を支持したのは市民であり、その政策を実現したことによって、市長が個人責任を負担するなどという不当な裁判に納得できない全国の市民がカンパを寄せて、第三者弁済により全額支払ったのです。
複数の訴訟の経緯は建築差し止めなどを含み複雑ですが、市民からの支持を得...
2018.01.01
伊藤 真
伊藤塾 塾長
司法試験・公務員試験対策の「伊藤塾」塾長・伊藤真の連載コーナーです。
メールマガジン「伊藤塾通信」で発信しています。
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