タグ:10月

2026年

第375回 教育の政治的中立性

2026年9月13日に沖縄県知事選挙が行われ、古謝玄太氏が当選しました。敗れた玉城デニー氏は記者会見で「私の努力不足はもちろんだが、SNSのおぞましさはどうにかしないといけない」と述べ、法的な規制の必要性に言及しています。SNSでは「同志社国際高校の生徒は辺野古の抗議活動に参加していた」「生徒を船に乗せたのは沖縄県の事業で、県の予算が使われていた」といったデマが多数飛び交っていました。「この平和学習は政治的に偏っている」という批判もありました。今回は、教育の政治的中立性について考えてみます。

2026年3月、同志社国際高校の沖縄研修旅行中、辺野古沖で生徒らを乗せ...

2026.10.05

2025年

第363回 国際標準と独自性

メディアでは連日、自民党総裁選挙の様子が報じられています。この結果が日本の総理大臣という行政のトップを決めることになるのですから、メディアが強い関心を寄せるのは当然です。しかし、先の参議院選挙における自民党の得票率は21%にすぎません。有権者の21%が支持した政党の内部の議論だけで、日本の総理大臣が事実上決められてしまうのです。

国会において総理大臣を指名するとき、すべての国会議員は同じ1票を持って...

2025.10.01

2024年

第351回 袴田事件

 9月26日、静岡地裁で袴田巌さんへの再審裁判で無罪判決が出ました。今回の無罪判決は、逮捕されてから58年間に渡る、ご本人と姉の秀子さん、弁護団、そして支援者の皆さんたちの努力の賜物です。ですがこの事件そのものが日本の刑事司法の大きな汚点であると同時に敗北であると思っています。これだけの人権侵害の救済に58年もの歳月を要した日本の刑事司法の現状は直ちに改めなければなりません。

 1966年、静岡県の味噌製造会社専務宅が全焼、焼跡から4人の死体が発...

2024.10.01

2023年

第339回 大法廷弁論

 9月20日に最高裁大法廷で、昨年7月の参議院議員通常選挙に関する一人一票実現訴訟(人口比例選挙実現訴訟・議員定数不均衡訴訟)の弁論をしてきました。最高裁大法廷での弁論も今回で10回目になります。国を相手に裁判をやっていると、行政訴訟や国賠訴訟を提起するだけで左翼だと決めつける人が昔からいました。いろいろな考えがあることは承知していますが、権力を信頼しきってしまうのでは憲法も立憲主義も不要となります。そうした権力への無邪気な信頼が持つ危険性を理解した上で、「理のある」批判をしてもらいたいものです。

 伊藤塾司法試験課のX(Twitter)にも投稿したのですが、14年続...

2023.10.01

2022年

第327回 裁判官のススメ

人の評価などあてにならないものですから、自分で生きたいように生きるのが一番です。安倍元首相の評価も評価する人の立ち位置によってまったく異なります。評価の物差しが違うのですから当然のことです。私は立憲主義や憲法価値の実現という観点から政治家としては全く評価しませんが、戦前の日本のような軍事的に強い国を目指そうという人や、抑止力を高めて軍事力によって自国の安全を守ろうという人たちには、人気があります。

彼は『この国を守る決意』という著書の中で、「軍事同盟というのは、“血の...

2022.10.01

2021年

第315回 講義と雑談

人は様々な失敗をする。前回はその事実に向き合う方法、受け止め方について書きました。失敗そのものは、私たちが人間である以上は避けることができません。別の言い方をすれば、失敗があるからこそ個人は人として成長し、人類全体も進歩してきました。殺し合い、戦争を経て、殺人はいけない、戦争は違法だという規範を共有するようになってきたのです。そこに至るまで膨大な血と涙が流されてきたことは、仮に犯罪や戦争の被害者でなくとも容易に想像できます。

一人ひとりの個人だけでなく、個人の集合体である国家もまた失敗をします。...

2021.10.04

2020年

第303回 エリートの矜持

菅義偉首相が、日本学術会議が推薦した会員候補者105名のうち6名の任命を拒否していたことが、10月1日の報道で明らかになりました。日本学術会議の推薦者を首相が会員に任命しなかったのは、現行制度では初めてです。

任命されなかった宇野重規教授、芦名定道教授、岡田正則教授、小沢隆一教授...

2020.10.06

2019年

第290回 権力分立

皆さんは国会は何をするところだと思いますか。立法するところだという答えはもちろん正しいのですが、それだけではありません。政府を監視する機能があります。立法権限だけではないので、憲法第4章のタイトルは国会となっていて立法ではありません。同じく、内閣も行政権だけでなく様々な権限を有しますので、第5章は内閣です。それに対して、裁判所はほぼ司法権を行使する機関です。もちろん司法行政権や客観訴訟も行いますが、その本質的な権限は司法権ですから、第6章だけは裁判所ではなく、司法となっています。

さて、国会による内閣の監視・監督権限について、興味深い判決が9月24日...

2019.10.01

2019年

第290回 権力分立

皆さんは国会は何をするところだと思いますか。立法するところだという答えはもちろん正しいのですが、それだけではありません。政府を監視する機能があります。立法権限だけではないので、憲法第4章のタイトルは国会となっていて立法ではありません。同じく、内閣も行政権だけでなく様々な権限を有しますので、第5章は内閣です。それに対して、裁判所はほぼ司法権を行使する機関です。もちろん司法行政権や客観訴訟も行いますが、その本質的な権限は司法権ですから、第6章だけは裁判所ではなく、司法となっています。

さて、国会による内閣の監視・監督権限について、興味深い判決が9月24日...

2019.10.01

2018年

第278回 沖縄と幸福追求権

正直、ほっとしました。沖縄県知事選挙です。8万票ほどの差をつけて玉城デニーさんが当選しました。辺野古新基地建設を強行している政府は自民、公明両党が幹部を送り込み、党を上げてなりふり構わず佐喜真候補を支援していました。組織票では圧倒的に不利でしたし、デマ情報も飛び交い、辺野古問題を争点にしないようにする相手の戦術も功を奏しているとも言われていたので本当に心配していました。しかし、結果は、復帰後の知事選では過去最多票を得ての勝利でした。無党派層の7割が玉城氏に投票しました。辺野古新基地反対、安倍政権にノーを突きつけた県民の誇りと意地を見せてくれました。

普天間基地が世界一危険な基地だから辺野古に移転するのだと政治家がよく正...

2018.10.02

2017年

第266回 ゆっくりいそげ

9月27日に参議院選挙無効裁判の最高裁判決がありました。合憲判決、完敗でした。最大較差が5倍だった2011年の参院選と、4.77倍だった2013年の参院選に対しては過去2回、違憲状態判決だったのですが、今回は2つの合区を含む3.08倍の選挙区割りを合憲としました。

これまで最高裁は、都道府県単位の選挙制度を見直すことを強く求めていたの...

2017.10.02

2016年

第254回 覚悟

先日、司法試験合格祝賀会がありました。伊藤塾開塾前の私の講義から勉強を始め、ずっと塾生でいてくれた人がいました。5年めの最後のチャンスで合格した人もいます。一度就職し働きながら合格した人も何人もいます。伊藤塾には短期合格者も多いですが、こうして「ゆっくりいそげ」を心に、自らの道を切り拓いてきた塾生が大勢います。皆さん、「やればできる必ずできる」「最後まで絶対に諦めない」を実証してくれました。

試験を問わず、不合格になったときに環境や制度のせいにする人がいます。で...

2016.10.04

2015年

第242回 個人と民主主義

安保法制が自民党・公明党による採決の強行によって成立しました。ほとんどの憲法学者のみならず、元法制局長官や元最高裁長官まで違憲といい、すべての弁護士会が立憲主義に反するという意見書や決議を出した安保法制です。地方公聴会の報告もなされず、議事手続き上も決議不存在としかいいようのない中での成立でした。私も参議院で参考人として意見を述べましたが、結論先にありきのセレモニーのような国会審議でした。米国との約束によって結論が決まっているものを消化試合のように淡々とこなしていく、そんな国会をみて、これがこの国の民主主義かと幻滅した人もいるかと思います。しかし、幻滅することばかりではありませんでした。国会の外と内とでは3点できわめて対照的だったように思います。

外では多くの人々が民主主義を訴えました。選挙はある一時点で自分たちの代...

2015.10.01

2014年

第230回 一流

各種試験の合格発表が続きました。伊藤塾では新たな門出を祝って試験種ごとに趣向を凝らした合格祝賀会を行っています。来賓のお話を伺うのですが、一流の方のスピーチは心を打つものばかりです。私はこうして塾生の皆さんが一流の方々に接する場を設けることも本物の法律家、行政官を育成する伊藤塾の役割だと考えています。

さて何をもって一流というのでしょうか。ビッグネームの方もいらっしゃいま...

2014.10.03

2013年

第218回 主人と従者

「人民が情報を持たず、情報を入手する手段を持たないような人民の政府というのは、喜劇への序章か悲劇への序章にすぎない。知識を持つ者が無知な者を永久に支配する。」これはアメリカ合衆国憲法の起草者の一人であるジェームス・マディソンの言葉です。

今、日本では喜劇か悲劇かわかりませんが、その幕が上がろうとしています。...

2013.10.02