カテゴリー:2019年
第292回 感謝と責任
先月末、秋田弁護士会主催で「イージス・アショアからみた憲法問題」という講演をしてきました。イージス・アショアとは、イージス艦のレーダー、指揮通信システム、迎撃ミサイル発射機などで構成されるミサイル防衛システム(イージス・システム)を、陸上に配備した兵器で、大気圏外の宇宙空間を飛翔する弾道ミサイルを地上から迎撃する能力を有しているとされています。これが、山口県萩市のむつみ演習場と秋田県秋田市の新屋演習場に配備されそうなのです。
講演の後、「対中国や北朝鮮との関係で日本防衛のために必要なものなのだか...
2019.12.05
第291回 裁判官への期待
先月末に立て続けにいくつかの裁判と判決がありました。裁判の1つは、全国で25の裁判を展開している安保法制違憲訴訟において、東京で集団的自衛権の行使や後方支援活動の差止めを求める訴訟の最終弁論です。翌31日は、同じく横浜で行われた安保訴訟において証人尋問を行いました。そして一人一票実現訴訟のいくつかの判決です。7月に提訴された参議院選挙無効訴訟ですが、2つの違憲状態判決が続いた後、合憲判決ばかりで残念です。たった0・34票分の投票価値しか保障されていなくても許されてしまう国が民主主義国家といえるのか本当に疑問です。
この問題についてはこれまでも何度か書いていますので、今回は安保法制違...
2019.11.05
第290回 権力分立
皆さんは国会は何をするところだと思いますか。立法するところだという答えはもちろん正しいのですが、それだけではありません。政府を監視する機能があります。立法権限だけではないので、憲法第4章のタイトルは国会となっていて立法ではありません。同じく、内閣も行政権だけでなく様々な権限を有しますので、第5章は内閣です。それに対して、裁判所はほぼ司法権を行使する機関です。もちろん司法行政権や客観訴訟も行いますが、その本質的な権限は司法権ですから、第6章だけは裁判所ではなく、司法となっています。
さて、国会による内閣の監視・監督権限について、興味深い判決が9月24日...
2019.10.01
第290回 権力分立
皆さんは国会は何をするところだと思いますか。立法するところだという答えはもちろん正しいのですが、それだけではありません。政府を監視する機能があります。立法権限だけではないので、憲法第4章のタイトルは国会となっていて立法ではありません。同じく、内閣も行政権だけでなく様々な権限を有しますので、第5章は内閣です。それに対して、裁判所はほぼ司法権を行使する機関です。もちろん司法行政権や客観訴訟も行いますが、その本質的な権限は司法権ですから、第6章だけは裁判所ではなく、司法となっています。
さて、国会による内閣の監視・監督権限について、興味深い判決が9月24日...
2019.10.01
第289回 寛容
立憲主義が成り立つために私たち市民が身につけるべき特性として、寛容性があると考えています。「人はみな違う」ことを前提に、その共存を図ろうとする以上は、自分の価値観や感性、ときに正義感と異なる他者の言動を受容することが不可欠だと思うからです。唯一の例外はドイツの「闘う民主制」と呼ばれる憲法忠誠の強制でしょうか。自由で民主的な基本秩序に反するような言論はドイツでは憲法上保障されていません。例えば、ナチズムを擁護する言論が規制されていることは皆さんも承知のことかと思います。
しかし、日本ではそうした例外すら憲法は予定していません。つまり、自由の...
2019.09.02
第288回 プロの誇り
参議院議員通常選挙が終わりました。翌日の新聞一面の見出しは興味深いものでした。朝日、毎日、日経、産経、そして東京新聞は、皆「改憲勢力3分の2に届かず」という趣旨のものでした。それに対して読売新聞だけがそれには触れず「与党勝利 改選過半数」が一面トップの見出しでした。印象がまるで違います。安倍首相は、改憲を公約として掲げ、憲法改正を議論してほしいという国民意思が表明されたかのような発言をしていますが、各種世論調査では優先して取り組んでほしい課題について、改憲は数%にすぎず、国民の関心は社会保障、増税など日々の生活にあることは明らかに思えます。そもそも依然として一人一票が実現していない選挙ですから、その結果には何の民主的正統性もありません。
その上、投票率は48.8%だったそうです。戦後2番目に悪いのですが、若...
2019.08.01
第287回 無罪の推定
私たちは、裁判という制度を真実発見のためのものとして考えてしまいがちです。ですが、民事裁判は紛争解決が目的ですし、刑事裁判も国家による刑罰権の発動を許してよいかどうかを判断するための手続きです。どんな裁判であっても人間が行う以上は、真実に到達できないこともあります。ところが刑事事件において、有罪とするには証拠上疑問が残るときでも警察・検察などの捜査機関は被告人を処罰しようとやっきになることがあります。職務熱心のあまりの思い込みもあるでしょうし、組織としてのメンツもあるかもしれません。ときに証拠の隠蔽、ねつ造を行うこともあります。それは例外的な事象と思いたいですが、実際にいくつかの裁判で明らかになっています。
警察・検察や裁判所が社会の秩序を維持し、正義を実現するために重要な役割...
2019.07.01
第286回 公益
旧優生保護法の下で不妊手術を強制された原告らが国家賠償を求めた訴訟で、仙台地裁は5月28日に、この法律は幸福追求権などを規定した憲法13条に違反し無効と判断したのですが、国賠請求については20年の除斥期間経過を理由に請求棄却しました。全国で提訴されている同種事件の最初の判決です。
子どもを産み育てることを自己決定する権利(リプロダクティブ権)は憲法1...
2019.06.03
第285回 法曹養成制度
「口述復活、予備試験廃止を=司法試験改革で対案―国民など」という見出しで「国民民主党と衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」は17日、政府の法曹養成制度改革関連法案への対案を衆院に共同提出した。司法試験で口述試験を復活させるほか、受験資格を得るための予備試験を廃止することが柱。立憲民主党など他の野党に協力を呼び掛けている。」という記事が時事通信から配信されました。
これを見た人の中には、「大変だ予備試験が廃止されるかもしれない」と心配...
2019.05.01
第284回 憲法1条と99条
憲法1条と99条は実質的には日本国憲法の最初と最後の条文です。さて、この2つの共通点はなんでしょうか。それは、共に天皇が登場することです。
1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位...
2019.04.01
第283回 沖縄の民意
2月24日に行われた沖縄県民投票では辺野古の新基地建設のための埋め立てへの反対が多数となりました。投票率は52.48%でその7割を超える43万人が反対、賛成は11万票で反対が大きく上回りました。私は、ここに沖縄県民の民意が再度明確に現れたと考えるのですが、新聞各紙によってこの県民投票の評価は分かれました。
25日朝刊の見出しでは、「辺野古「反対」72%」(朝日新聞)、「辺野古...
2019.03.01
第282回 個性の多様性
昨年以降、『ボヘミアン・ラプソディー』という映画が大ヒットしているようです。私も若かりし頃、深夜放送から流れてきたこの曲を聴いたときの衝撃を今でも鮮明に覚えています。フレディ・マーキュリーの歌声と斬新な曲想が耳から離れませんでした。一人一票裁判では不当な判決を「ガリレオ判決!」と叫んでいますが奇抜さでは負けています。インド系両親、タンザニアにあるザンジバル島生まれ、イギリス式教育、大学で芸術とデザイン専攻、これだけでも多様性を地でいっているような生き様ですが、そこにバイセクシャルも加わります。それらすべてが彼の個性であり、彼の魅力の源泉であることを否定する人はいないでしょう。
人はさまざまな要素によってその個性を作ります。年齢、外観、容姿、人種、...
2019.02.01
第281回 謹賀新年
一昨年の雑感268号で自衛隊明記の改憲について、「一人でも多くの国民が、「災害救助で頑張っている自衛隊がかわいそう」などという感情論に流されないでほしい、ここに指摘したことが杞憂に終わることを心底願っている」と書きました。その気持ちは今でも変わりません。それどころかますます危機感を強く持っています。新年早々、物騒な話はやめてほしいという塾生もいることかと思います。政治と宗教の話は遠慮するという日本の風土が、自立した市民となることを遠ざけてきたと考えているものですから、不興を買うのを承知であえて、正月からこんな話題で書いています。
おさらいです。まず「自衛隊明記」の改憲によって何も変わらないというウソ...
2019.01.01
伊藤 真
伊藤塾 塾長
司法試験・公務員試験対策の「伊藤塾」塾長・伊藤真の連載コーナーです。
メールマガジン「伊藤塾通信」で発信しています。
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