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第367回 法の支配
年始の雑感で「2026年の世界も日本社会も決して平穏なものにはならないでしょう」と書きました。ですが、まさか年明け早々に、米国が軍事力を用いてベネズエラ大統領を拘束する事態が起きるとは思ってもいませんでした。
報道によれば、米国は数か月前から反米左派のマドゥロ大統領排除を最終目標...
2026.02.01
第355回 ビジネスと人権
元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルを巡ってフジテレビが10時間以上にわたる記者会見を開きました。冒頭にフジテレビ会長が「人権に対する意識の不足から、十分なケアができなかった当事者の女性に対し、心からお詫びを申し上げたい」と謝罪し、今回の事件について「人権侵害が行われた可能性のある事案」と説明がなされました。
フジテレビを巡る一連の問題について経団連の十倉会長も、「日本のような世...
2025.02.03
第343回 選挙と議論の枠組み
アメリカ大統領選挙の共和党予備選でのトランプ元大統領の快進撃が報道されています。4つの刑事事件で起訴され、女性作家への性的暴行と名誉棄損が認められて約500万ドルの賠償を命じられたにもかかわらず、「頭がおかしい」「でっちあげ」などの誹謗中傷を重ねたため、さらに8330万ドル(約123億円)もの賠償を命じられました。日本にはない懲罰的損害賠償が認められているとはいえ、この天文学的数字に驚くとともに、こうした逆風をも自らを政治的迫害の被害者として演出して、有権者からのさらなる支持と共感を集める手法には舌を巻くばかりです。
本人の資質もさることながら、数々の不祥事をものともせず彼を支持し続け...
2024.02.01
第331回 へっぽこ判決
1月25日に一人一票実現訴訟の最高裁大法廷判決がありました。2021年10月31日の衆議院議員総選挙の選挙無効訴訟です。残念ながら是正義務付き合憲判決でした。余りの「へっぽこ判決」に正直いってかなりへこみました。もう少しマシな判決を期待していたのですが、最悪のタイミングで最悪の判決でした。
2021年選挙の投票価値が不均衡で違憲だと争っているのにもかかわらず...
2023.02.01
第319回 原点
写真は赤くライトアップされた1月31日の東京タワーです。中国の旧暦正月を前に一日限りのイベントでした。写真ではわかりませんが、展望台メインデッキの窓に「未来」の文字も点灯しています。コロナ禍、外交ボイコットなど様々な問題を抱えて始まる冬季北京オリンピックへのエールという意味もあるようです。今年は日中国交正常化50周年を迎えます。様々な課題のある日中関係ですが両国の未来が明るいものであることを願っています。
中華人民共和国いわゆる中国との国交は50年前から始まったのですが、それ...
2022.02.01
第307回 試練の意味
先月、司法試験、司法書士試験、行政書士試験、そして司法試験予備試験論文の合格発表がありました。行政書士試験以外はコロナ禍の影響で例年より3ヶ月遅れての試験実施そして発表となりました。受験生の皆さんは本当に大変な思いをされたことと思います。これまで誰も経験したことのない日々を過ごし、試験が実施されるかどうか、それすらわからない不安な日々を乗り越えてきました。1月末には予備試験の口述があり私も新浦安の試験会場で早朝から毎日応援をしてきました。応援といってもあまり大きな声は出せませんが、今年の試験はいろいろな意味で半端なく緊張するので、「最後まで頑張ってほしい」という気持ちだけは伝えたかったのです。コロナ禍の中、各試験を受験された皆さんの経験は実務家になった後も、仮に別の道に進んだ場合であっても、これから自分の身に降りかかるであろう大きな試練を乗り越えていくための大きな糧になるに違いありません。
毎年伊藤塾は圧倒的な合格実績を出し続けていますから、合格発表を受けてど...
2021.02.01
第294回 修習時代
司法試験に合格すると司法修習が待っています。現在は期間が1年間に短縮されてしまいましたが、私のころは2年間でした。湯島(東京台東区)にある司法研修所(旧岩崎邸の敷地内にありました。)での前期修習4か月、全国に散っての実務修習(民事裁判、刑事裁判、検察、弁護各4カ月ずつ)、そして湯島に戻っての後期修習4か月と、実に充実した2年間を送ることができました。私は東京での実務修習でしたが、地方での実務修習を経験し、そのまま修習地で弁護士になる人も多くいました。
修習中に検察官、裁判官の魅力に触れる機会も多く、当時の私は将来の進路に...
2020.02.01
第282回 個性の多様性
昨年以降、『ボヘミアン・ラプソディー』という映画が大ヒットしているようです。私も若かりし頃、深夜放送から流れてきたこの曲を聴いたときの衝撃を今でも鮮明に覚えています。フレディ・マーキュリーの歌声と斬新な曲想が耳から離れませんでした。一人一票裁判では不当な判決を「ガリレオ判決!」と叫んでいますが奇抜さでは負けています。インド系両親、タンザニアにあるザンジバル島生まれ、イギリス式教育、大学で芸術とデザイン専攻、これだけでも多様性を地でいっているような生き様ですが、そこにバイセクシャルも加わります。それらすべてが彼の個性であり、彼の魅力の源泉であることを否定する人はいないでしょう。
人はさまざまな要素によってその個性を作ります。年齢、外観、容姿、人種、...
2019.02.01
第270回 仮想通貨
先月は、興味深い事件がいくつか起こりました。成人式の晴れ着を待っていたのに届かなかったという事件、仮想通貨が盗まれたという事件などは、被害者に申し訳ないものの、考える訓練としては興味深いものでした。
成人式の日に届かなければ意味がないという点は、定期行為の典型的なもので...
2018.02.01
第258回 国境
今から45年ほど前、初めて飛行機に乗ってドイツに行ったときに、窓から下を見て驚いたことがありました。今はなきアンカレッジ経由の路線で、北海からオランダ上空を通ってドイツに入ったと思うのですが、窓から見えたヨーロッパが私の想像していたものとは違っていたのです。なんと飛行機の窓から下を見ても、国境線が見えないのです。もちろん海の中には線など引いてありませんし、陸地も森や畑が続いていているだけで、国境線は見えません。そして、何よりも国ごとに色分けがなされていないのです。
小学校のときに社会科の授業で白地図を色鉛筆で塗り分けたことがあります。...
2017.02.02
第246回 怒りの矛先
人はさまざまな怒りを持ちますが、その対象や解消の仕方は人それぞれです。芸能人のスキャンダルに怒る人もいれば政治家に怒る人もいます。その後始末の仕方に納得できず怒り続ける人もいます。その怒りも特定の個人や団体に向けられることもあれば、社会一般に対して漠然とした怒りを感じるという人もいるようです。
法律家はその職種を問わず、当事者の様々な怒りに付き合わなければならない...
2016.02.01
第234回 市民としての成熟
米国では奴隷解放のために闘ったリンカーンが暗殺された後に、人種・皮膚の色などを理由に選挙権を制約してはならないという人種差別禁止条項が合衆国憲法に追加されました(1870年・修正15条)。こうして憲法上の権利として規定されたにもかかわらず、南部諸州の抵抗から、人種差別禁止の実現は、キング牧師による公民権運動を待たなければなりませんでした。憲法で規定されてから100年近くたった1964年の公民権法によってやっと具体化することになるのです。黒人大統領が生まれた現在でも人種差別は暴動などの要因となっています。人権や平等の問題を理想に近づけるには多大な労力と時間が必要なようです。
人種差別とは別に、一票の価値においても米国はかつて驚くほどの住所差別が...
2015.02.02
第222回 諦めない
1月19日に行われた沖縄県名護市の市長選挙で、現職の稲嶺進氏が圧勝しました。稲嶺市長が4年前に初当選した後、政府は名護市に対する金融支援を減らしていましたし、今回も自民党は名護市に手厚い補助金を用意していました。しかし、名護市民には通じませんでした。
次の世代に負の遺産を残さないために反対するのか、それとも振興策、簡単に...
2014.02.03
第210回 立憲主義
法律家とは、憲法価値を実現する仕事です。日本国憲法の価値である個人の尊重を実現し、一人ひとりの人権が尊重される平和な社会を築き、そのための民主主義を発展させることを使命とした職業だと考えています。弁護士などの法曹三者のみならず、司法書士や行政書士、行政官も含めて、法律を使って仕事をする者はすべて、この国の最高法規に従って職務を全うしなければなりませんから、当然に憲法価値を実現することを職責とすることになるわけです。
司法書士においても簡裁代理権が認められ、法律家として明確に位置づけられ...
2013.02.04
第198回 伊藤塾で学ぶこと
伊藤塾の塾生になると何度も聞く言葉がいくつかあります。「やればできる、必ずできる。」「ゴールから考える。」「最後まで絶対に諦めない。」「合格後を考える。」等々。どれも私がこれまで30年にわたって、法律家・行政官の育成をしてきた中で、実感し、ぜひ塾生の皆さんの血肉になってほしいと願っているものばかりです。
昨年9月に出演し放映されたNHK Eテレ「仕事学のすすめ・“司法試験流...
2012.02.01
伊藤 真
伊藤塾 塾長
司法試験・公務員試験対策の「伊藤塾」塾長・伊藤真の連載コーナーです。
メールマガジン「伊藤塾通信」で発信しています。
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