カテゴリー:2014年
第232回 目に見えないもの
昨年の参議院選挙に関する判決がありました。予想されたような違憲状態判決でしたが、今回は5名の補足意見が「投票価値の不均衡の是正は、議会制民主主義の根幹に関わり、国権の最高機関としての国会の活動の正統性を支える基本的な条件に関わるきわめて重要な問題であるから……国民全体のために優先して取り組むべき喫緊の課題」と指摘しました。さらに4人の裁判官が違憲違法とし、中でも内閣法制局長官であった山本庸幸判事は違憲無効判決を書きました。これまでも反対意見で無効を主張した最高裁判事は何人もいますが、投票価値の平等が唯一かつ絶対の基準であり、1.0となるのが原則だと明言しつつ無効というのは初めてのことであり画期的なことです。
人口比例原則を認める判事はまだ少数派ですが、確実に山は動き続けています...
2014.12.01
第231回 不条理
世の中は多くの不条理に満ちています。閣議決定による憲法解釈の変更がなされ、国会承認もなしに日米防衛協力ガイドラインが策定されようとしています。これにより地球規模の日米軍事同盟関係が強固に構築されていく。憲法による弱者の保護など絵空事のような社会保障政策。個人の尊重とはほど遠いヘイトクライム、ネットによる名誉毀損やいやがらせ。しっかりした避難計画すらない中での原発再稼働。火山の噴火による突然の命の断絶。愛する人との一方的な別れ。そもそも私たち人間は、生まれ落ちた瞬間から死に向かって生き続けているという不条理が人生だと言ってしまえばそれまでですが、それにしても不条理が多い。
天災や個人に降りかかる不条理は受け入れるしかないとしても、人災ともいえ...
2014.11.03
第230回 一流
各種試験の合格発表が続きました。伊藤塾では新たな門出を祝って試験種ごとに趣向を凝らした合格祝賀会を行っています。来賓のお話を伺うのですが、一流の方のスピーチは心を打つものばかりです。私はこうして塾生の皆さんが一流の方々に接する場を設けることも本物の法律家、行政官を育成する伊藤塾の役割だと考えています。
さて何をもって一流というのでしょうか。ビッグネームの方もいらっしゃいま...
2014.10.03
第229回 歴史に学ぶ
先日、気が置けない友人たちと松本に一泊温泉旅行に行ってきました。少し時間に余裕があったので、松本市歴史の里という松本市立博物館の分館を皆で見学することができました。松本は夏の風物詩となっているサイトウキネンフェスティバルをはじめとして、様々なイベントが頻繁に実施される文化都市として有名ですが、一風変わった博物館がいくつもあります。今回は司法博物館を見学してきました。明治憲法時代の裁判所が城跡から移築されたものです。日本で唯一、完全な形で残っているものだそうです。裁判官と検察官が並んで高い法壇の上から被告人と弁護人を見下ろすその構造は、まさに糾問主義そのものです。組織としての司法権の独立などなかった当時の様子もよくわかります。他にも少年刑務所独居房や製糸工場なども移築されていて、多くのことを学ぶことができました。
そこに、木下尚江(きのしたなおえ)の生家も移築されていました。明治・大...
2014.09.03
第228回 主体的に生きる
安倍首相は最高裁が違憲状態だと断言した選挙によって選ばれた国会議員から選出されているのですから、なんら民主的正統性がありません。つまり首相としての法的な資格がありません。医師の国家試験に合格していない人が医者をやっているのと同じです。無資格者です。医者ならば偽医者といわれる立場なのですから、偽首相です。バカ首相とか暴走首相というような呼び方は失礼にあたるかもしれませんが、首相であることを認めた上での呼称であり単に能力を批判しているだけです。しかし、能力以前にそもそも、法的な資格がありません。正当な選挙による主権者の代表から選ばれたとはいえないただの人です。偽首相が組閣した内閣での閣議決定はその内容以前に違憲であり無効です。これが事の本質ですが、この本質を誰も真正面から見ようとしません。まるで私たちには主権者としての自覚がないかのようです。
憲法は国民を主権者としました。国民が主権者として行動するために憲法を作...
2014.08.04
第227回 再び集団的自衛権
とうとう安倍政権は、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をしてしまいそうです。この雑感が発表されるころには、首相の自信に満ちた記者会見も行われてしまっているのでしょう。また、公明党幹部の、解釈変更に何の問題もないかのような開き直ったコメントも発表されているのでしょう。はじめから結論ありきで、自公政権による茶番劇を見せられているかのようです。私たちは、自民党の憲法無視の体質、公明党の平和の党を名乗る欺瞞を決して忘れてはならないと思います。
2012年4月に自民党は憲法改正草案を発表しました。そこには国防軍の創...
2014.07.02
第226回 価値基準
経済的自由よりも精神的自由や人格的生存に不可欠な人権を優先する。国民の生命・健康に関する危険を防止するために加えられる消極目的規制については、社会・経済政策の一環としてとられる積極目的規制よりも、厳格に審査されなければならない。こうした考えは憲法を少しでも勉強したことのある人間なら当然の部類に属することです。憲法には価値の序列があり、個人の尊重に直結する人格権が経済的自由に優先することもまた、理解しやすいことです。
2014年5月22日福井地裁で、大飯原発運転差し止めが認められました。...
2014.06.04
第225回 集団的自衛権
憲法は国民から政治家への命令書のようなものです。よって、政治家はどのような思想信条を持っていようと、この憲法を尊重し擁護しなければなりません。それが憲法99条です。今、憲法を学んだ者として、また、一主権者としてどうしても言っておかなければならないことがあります。集団的自衛権の行使を認めるような憲法解釈の変更についてです。
集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が...
2014.05.03
第224回 試練の意味
この時期になると、新しく法律家、行政官を目指す皆さんで塾が賑わいます。多くの塾生を祝福するかのように渋谷の伊藤塾前の桜並木は満開です。桜の花言葉にあるように「気高い精神」をもった真のリーダーを「すばらしい教育」によって育成したいという思いで塾を創ってもう19年目になります。塾を立ち上げた頃に生まれた皆さんたちに利用していただけるなんて、本当に感謝の気持ちで一杯です。
人は、多くの人に助けられながら、自分の意思で生き続けています。きっと何...
2014.04.02
第223回 オリンピック
オリンピックに出場するレベルのアスリートを見ているとどうしても求道者を見ているような気になってしまいます。スポーツなのだからもっと楽しめばいいのでしょうが、つい受験生と重ねて見てしまうのです。私たちがこうした超一流の人たちから学べることは本当に多いことに改めて驚きます。今更いうようなことでもないのですが、思いつくままに書き出してみます。
続ける力、集中力、最後まで絶対に諦めない、セルフコントロール、感謝の気...
2014.03.03
第222回 諦めない
1月19日に行われた沖縄県名護市の市長選挙で、現職の稲嶺進氏が圧勝しました。稲嶺市長が4年前に初当選した後、政府は名護市に対する金融支援を減らしていましたし、今回も自民党は名護市に手厚い補助金を用意していました。しかし、名護市民には通じませんでした。
次の世代に負の遺産を残さないために反対するのか、それとも振興策、簡単に...
2014.02.03
第221回 謹賀新年
時間は絶え間なく流れていくにも関わらず、毎年、新年を迎えると新たな気持ちになります。昨日と今日は連続しているのですが、それでも年が改まると何かを変えなければと思ったりします。人為的に作った区切りだからこそ、自分の意識によってこの新年を迎える意味づけを自分自身で決めることができる、この機会を活かしたいものです。
昨年、政治の世界では96条改憲、日本版NSC、秘密保護法など国民を巻き...
2014.01.05
伊藤 真
伊藤塾 塾長
司法試験・公務員試験対策の「伊藤塾」塾長・伊藤真の連載コーナーです。
メールマガジン「伊藤塾通信」で発信しています。
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