カテゴリー:2009年
第172回 一人一票
皆さんは布施辰治(1880-1953年)という弁護士を知っていますか。その生涯を描く映画の撮影が、出身地の石巻で始まったのですが、そこで憲法の講演をしてきました。「生きべくんば民衆とともに、死すべくんば民衆のために」という言葉を残したように生涯を庶民や弱者とともに生きた弁護士です。思想、言論の自由が著しく制限されていた明治憲法の時代から、平和と人権のために最後まで闘い続け、弁護士資格の剥奪や2度の受刑生活などの困難にもかかわらず最後まで権力に屈することなく、信念を貫き通しました。
朝鮮人、日本人の別なく、男女の別なく、一人一人を人間として尊重するため...
2009.12.02
第171回 アジアの人権
先日、ベトナム、シンガポールそして韓国に行ってきました。ベトナムではベトナム戦争の激戦地であった中部地域で、韓国軍の若者が民間人多数を虐殺した村をいくつか訪問しました。たとえ国防のための軍隊であっても、大国に利用されて加害者になってしまう現実を思い知らされました。
シンガポールというと観光、貿易立国というイメージがあります。確かにその...
2009.11.03
第170回 プレッシャー
どんな試験でも受験は自分との闘いです。それは不安やプレッシャーとの闘いでもあります。日々の勉強の中で自分を鍛え上げ、実務家になったときに迎えるであろう「ここ一番という瞬間」に負けない心を作り上げていくのです。日々のプレッシャーへの立ち向かい方はプロのスポーツ選手の言動が参考になります。イチロー選手の言葉には詩人のような繊細さと実践の中から生み出された強さがあります。以下の引用はすべて、『未来をかえる イチロー262のNextメッセージ』(「未来をかえるイチロー262のNextメッセージ」編集委員会著、ぴあ、2008年)からです。
「いつも、恐怖と不安と重圧を、抱えています。たのしいだけでは、プロの世...
2009.10.02
第169回 弱点分析
今回の総選挙における70%近い投票率、劇的な結果は、国民の主体的な意思によって国も変わりうるという民主主義の原点を実感させてくれました。ただ、全国民の代表であるはずの候補者のほとんどが各自の選挙区において「皆さんの代表として、地域の代表として頑張ります」と声高に叫ぶ姿は、この国の憲法レベルがまだまだ発展途上にあることを示していました。
また、どんな勝負ごとでも徹底した敗因分析をしないと先がないこともよくわ...
2009.09.03
第168回 総選挙と国民審査
先月も旧司法試験受験生の応援で論文試験会場に早朝から立っていました。1984年から25年間ずっと立ち続けてきましたが、これもあと1回かと思うと感慨深いものがあります。新司法試験や司法書士試験でも同様に応援していますが、旧司法試験には格別の思いがあります。
受験資格に全く制限のないこの試験は、実に平等であり、誰もが夢を持ち実現...
2009.08.03
第167回 ABC兵器
原爆症訴訟で国は18連敗するまで、認定基準を厳しく制限してきました。自国民を核兵器の被害者として認定することすら、補償の範囲が広がりすぎて財政的負担が増すことを理由に躊躇していたのです。人の命や健康と金銭を比べて、後者を選択するという政治を自民党、公明党は続けてきたわけです。こうした政治の下で原子爆弾という兵器は、その瞬間だけでなく、現在まで被害者の方々を苦しめてきました。
日本は原爆という許されざる兵器の唯一の被爆国になりましたが、同じ戦争で...
2009.07.03
第166回 時間の過ごし方
5月から11月までさまざまな試験が続きます。試験は時間との闘いです。直前期には「もっと時間があれば」と誰もが思い、試験時間中は時間配分が勝負を決めます。そして終わった後は発表までの重苦しい時間が待っています。発表後の時間は人によって天と地ほどの差があることでしょう。同じ時間なのにどうしてこれほどまでに時期によってまた人によって感じ方が違うのでしょうか。
時間そのものは中立です。ニュートラルな時間にどのような意味づけを与える...
2009.06.03
第165回 裁判員制度
先月、裁判員制度に関するいくつかの催しに参加しました。13日には「裁判員制度を問い直す議員連盟」の勉強会で5月施行の前にできることはないかを国会議員に講義してきました。この議連は、裁判員制度の問題点を明らかにし、一時凍結などの政治的イニシアティブを取っていこうとするもので、国民新党から自民党までの超党派の国会議員が参加しています。問題点を知りながら何もしないのでは、不作為の政治責任が問われるという点から、少なくとも守秘義務の罰則を廃止する法案提出を強く訴えてきました。
26日にはNHKの朝9時からの「日曜討論」という番組に生出演しました。...
2009.05.03
第164回 憲法教育
先月、札幌弁護士会主催の「中高生のための憲法講座」で憲法の公開授業をしてきました。私は日本が真の立憲民主主義国家になるためには、子どもたちに対する法教育とくに憲法教育、主権者教育が決定的に重要だと考えています。
憲法改正国民投票法が成立し、2010年5月には憲法改正手続きを具体的に...
2009.04.02
第163回 求め、捨てる
毎週、一般市民向けの数多くの講演会で憲法の話をしています。まだまだこの国には、憲法と法律の違いすら理解していない人が多く、これまで主権者教育がなされてこなかったことを実感します。それと同時に講演を何のために聴くのかを意識していない人が多いことにも驚かされるのです。
憲法学習会と銘打った会合でありながら、メモも取らずにただ聴いているだけ...
2009.03.03
第162回 法律家
先日、あるインターネット会社の法務部長に招かれて、社員の皆さんに「インターネットと表現の自由」に関する講演をしてきました。渋谷の一等地のビルを何フロアーも使っている会社の法務部長はかつて伊藤塾の塾生でした。司法試験の勉強を何年かしていたのですが、転進して今では大きな会社の取締役法務部長です。
インターネットを扱っている会社では、警察からネット上の記述の削除依頼な...
2009.02.02
第161回 2009年 謹賀新年
今年は、貧困・格差の問題がより深刻化するのみならず、アフガニスタンでの国際貢献のあり方をめぐって憲法9条関連の議論が再燃するでしょう。裁判員制度が始まることによって、刑事裁判のあり方がよかれ悪しかれ、劇的に変わるはずです。そして、総選挙がありますから、政権交代、政界再編の可能性もあり激動の年となるでしょう。
塾生の皆さんの生活にもさまざまな変化があるかもしれません。弁護士増員時...
2009.01.03
伊藤 真
伊藤塾 塾長
司法試験・公務員試験対策の「伊藤塾」塾長・伊藤真の連載コーナーです。
メールマガジン「伊藤塾通信」で発信しています。
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