会計検査院 事務総長官房 人事課 人事企画官
富澤 秀充(とみさわ ひであつ)さん

1996年 会計検査院入庁 入省後の略歴/携わった業務
検査では、道路事業、郵政事業、NHK、自衛隊、教育、スポーツ振興等を担当。「日本の今」を検査しました。出向では、国際協力機構(JICA)とニューヨーク総領事館へ。「世界の今」を体験しました。そして官房では、国際、研究、調査、監査連携を経て、現職。「会計検査の未来」を考えています。 

国家公務員を志した理由と、会計検査院を選択された理由をお聞かせください。

 人生に責任を持ちたいと思っていました。喜びも悲しみも、自分の責任で背負い受け容れたい。しかし、個人の生命や幸福が理不尽に奪われることもあります。その最たるものが、それを守ってきた国が滅ぶときです。その日が来ないように、そして来てしまったときでも誰かのせいにせず受け容れられるように、国家公務員を志しました。
 国が栄え、滅びる理由は様々です。だから、全て検査できる会計検査院を選びました。

会計検査院における現在の重要政策課題、職場としての会計検査院の魅力などをお聞かせください。

 政府でも企業でも、問題が表面化する度に、それを許した統治の在り方が問われます。しかし、問題はどこにでもあり、直すべき点がなくなることはありません。大切なのは、日々見直すこと、そして問題があれば隠さず原因を究明して再発しない仕組みにすること、明日は今日よりいい組織にすることです。
 問題は中央にあるとは限りません。全国から集められた税金は、血液のように全国の隅々まで行き渡って使われています。心臓だけが病の元ではないように、問題はどこでも起こり得ます。
 会計検査院では、国、政府出資法人、補助金の交付先等まで、税金の流れを追って一人一人の調査官が全国津々浦々、ときには世界中を回って検査します。そして問題があれば、不正行為の指摘から法令や制度の改善の提言まで行います。
 この国の重要政策課題が、会計検査院の重要検査課題。全て現場を見て、事実に基づいて指摘することが、会計検査院の魅力です。

これまで従事した業務の中で印象に残ったエピソードなどをお聞かせください。

 「この制度設計ならこんな落とし穴がありそうだ」と仮説を立てて検査していったらそのとおりだったり、「まさかそんな道理に合わないことはないだろう」と思ったけど検査していったら本当にあったり。ありそうなことやあるべき姿を現場で一つ一つ確認して検証していくのが検査なので、制度の下調べ、重点項目の抽出、仮説の立案は欠かせませんが、実態調査していくと目から鱗の新発見が続出するので、先入観は禁物です。
 また、検査する相手はその道何十年のベテラン揃い。個性的で魅力的な相手と丁々発止の検査をしていると、奇妙な連帯感が生まれてきたり、事業や制度のあるべき姿を語り合って最後に改善案を合意したりするのは、スポーツのようですらあります。ドラマのない試合がないように、一つ一つの検査がドラマです。

学生時代にやっておくべきこと、あるいは、ご自身がやっておけばよかったと思われることがあれば、お聞かせください。

 1年は5,256,000分。百年生きてもその百倍。あなたは何を積み上げますか?
 歳を重ねるほど背負うものは増え、自分だけのために使える時間は減っていきます。人生において、今は今しか来ません。今しかできないことをしましょう。
 ちょっとしたことは、社会人になってからでもできます。時間がかかることに打ち込めるのは、学生時代をおいてありません。ヒマラヤに登るのも、会社を興すのも、発明するのも、ギネスブックに載るのもいいでしょう。
 人が一生で知り得ることには限りがあります。世界は、おそらくあなたや私が知らないことで満ちています。多くの世界を見て、聞いて、体験して、他の誰でもない自分自身の人生を見つけてください。

会計検査院が求める人物像についてお聞かせください。

 会計検査院は、制度を調べて、実態を見て、事業者に訊いて、問題点を議論して、改善提案を報告するのが仕事です。このため、学ぶことが好きな人、旅が好きな人、人と話すことが好きな人、考えることが好きな人、そして何より言うべきことが言える人を求めています。
 そして会計検査院は、去年と同じ指摘を今年もするところではありません。新しい指摘、新しい視点、新しい発想が、毎年求められています。今年も、来年も、再来年も、常に新しい、一歩先の日本をイメージできるあなたでいてください。
 
(2015年10月・記)