国家公務員は「色んなことができる」職業です。

福井県庁

O.S さん
 

合格者イラスト
◆ 出身大学 : 東京大学法学部
◆ 受講講座 : 国家総合職(法律区分・教養区分)コース本科生
◆ 最終合格 : 国家総合職(法律区分)
◆ 内    定 : 国土交通省
◆ 予定進路先: 国土交通省

※プロフィールは、2018年合格時点のものです。

はじめに

私が公務員を目指したのは、「人のために働きたい」「色んなことがしたい」という単純な2つの思いがきっかけでした。中でも、国民全体のために幅広い分野で活躍できる国家公務員の仕事には大変魅力を感じており、夏の経産省と国交省のインターンに参加してからその思いはどんどん強くなっていきました。
自分は法律区分を受ける予定だったので、法律を基礎からしっかりと学べるところで公務員試験対策をしたいと考え伊藤塾を選びました。講師カウンセリングの制度がしっかり整っている点も選んだ理由のひとつです。
実際、伊藤塾の講義や解説・解答例は、法律構成の基本をしっかりと守っていて記憶に定着させやすく、自学が中心の私にとって大変助かりました。また、直前期には講師の方に電話でカウンセリングをしていただき、不安や疑問点を解消することができました
伊藤塾を選んで正解だったと思います。

私がとった勉強方法

専門試験(多肢選択式)について

講義によるインプットと「これ完」の繰り返しによるアウトプットが中心です。大半の塾生がこのやり方かもしれませんが、実際これで十分だと思いますし、これだけでもかなり大変です。
自分の場合、憲法・民法・行政法の講義を全て(と言っても何回分か飛ばしたところもあります 笑)聴き終えたのが1次試験本番の2ヶ月前だった(←相当遅いと思います)ので直前の2ヶ月間ほどはずっと「これ完」を繰り返し解いていました。加えて本番と同様の形式で過去問を解くことも同時並行でしました。選択科目では刑法・労働法・国際法を選びました。これらの科目については講義全部を聴く時間がなかったため、大学で学んだ知識だけで「これ完」を繰り返しました。
みんな「繰り返し」と言いますが、自分はいつもこうした文言を目にして、「じゃあどう繰り返してたんだよ」と内心ツッコむものの、詳しく書いていない場合が多かったので、私なりの「繰り返し方」をここに記しておきます。
基本的には、まず1周する→間違えた問題だけ2周目→それでもまた間違えた問題だけ3周目(→これを間違えなくなるまで繰り返す)によって、どんどん解くべき問題を「ろ過」していくイメージです。
しかしこれだと1周目や2周目で合ってしまった問題はもう解かないことになり、以後その問題の範囲・分野に触れられなくなります。そこで私の場合、1周目、2周目で正解した問題も定期的にもう一度解いていました。ここで間違えた場合はまた先ほどと同じ要領で繰り返して「ろ過」していきます。これが私なりの繰り返し方です。
問題1問1問を解くときにどうしていたかという点も参考までに。
「これ完」の問題の右上には「正誤チェック」という欄があるので自分はそこを活用していました。心の底から全部完璧に理解して正解できた!という場合には〇の記号、正解はできるけど個々の選択肢に関しては不安な点がある・たまたま正解できたという場合には△、不正解は×をチェック欄に記し、△と×を繰り返し解く対象としていました。先述の通り、〇の問題も後で定期的に解いていました。
また、問題を解いた後には必ず解説を参照し、時間があるときはテキストの関連ページをめくり、そこに気づいた点等を書き込みました。そうして自分なりのテキストを作り上げていきました。しかし、ただ書き込んで終わりというだけではなくて、必ず後で定期的にテキストを読み返すという作業もしていました。そうしなければすぐにやったことを忘れてしまうからです。
一度覚えたことは必ず忘れるように人間の脳はできているため、その後にまたインプットし直すという作業を不断に続けなければ本当の意味で知識は定着しません。公務員試験勉強では常にこのことを意識していました。
しかし、言うのは簡単ですが実際にやり続けるのは意外と大変です。方法は人それぞれだと思いますが、私は「テキストを流し読みする時間」を定期的に設け、大事な論点や書き込んだ知識を再度簡単に頭に入れ直すようにしました。

専門試験(記述式)について

2次の記述式の方は、1次(多肢選択式)が終わってから対策をはじめました。記述式の対策としては過去問解説講義による論点のインプットと過去問や答練を解くことによるアウトプットが中心でした。
大前提として、記述を解くために最低限知っておかなければならない知識は、1次の勉強を通じてまんべんなく身についていたと思います。そこで記述式のために特にインプットしなければいけなかったものは、個々の「論点」でした。
論点とは、例えば民法でいえば95条錯誤無効に必要な要件①②…といったものです。そこでこういった論点を洗い出し自分のいつでも使える武器にするために、過去問講義を利用しました。時間がなかったので過去問を一から解くようなことはせず、自分の頭の中で何となく法律構成を考えるだけにとどめ、そのあとすぐに解説講義を聴き論点を自分のノートにまとめていく、という作業を憲・民・行それぞれ10~15年分ほど行いました。過去問だけだと足りない気がしたため、伊藤塾が作っている予想問題演習(5回分ほど)も論点抽出に使いました。
こうして自分の専用ノートに論点をまとめていき、加えてスマホの録音機能を使って自分で論述ポイントを声に出して吹き込み通学中に聞くなどすることで、インプットした論点の定着を図っていきました。視覚だけでなく聴覚を利用することも記憶の定着には有効だと思います。
記述式の場合にはインプットのみならずアウトプットも非常に重要です。法律構成の論述には「型」があり、普段から書き慣れていないと本番で実力が出せません。私はすでに解説講義で触れた過去問や、まだ解いていない伊藤塾オリジナルの記述答練の問題をアウトプット用に使い、本番と同様の形式で解きました。直前で時間がなかったので「繰り返し」解くことはしませんでしたが、解説から得られた論点はまた繰り返しインプットしました。
実際に自分で書いて解いた問題は、講師の方に添削をお願いしていました。講師の方々は、私が書いた論述の良いところ・悪いところをはっきりとコメントしてくださるので、復習がしやすかったです。

基礎能力試験(多肢選択式)について

基礎能力は文章理解と数的処理・判断推理を安定して得点できることが重要で、特に文章理解は、みんなできるので満点もしくは1ミスくらいに抑える必要があります。私は数的処理が非常に苦手だったので、安定的にとれる点数配分として、数は半分以上、文章理解は満点を目標にしていました。
具体的な勉強方法について。基本的に伊藤塾から配られた教材と過去問しか使っていませんでした。文章理解については、英語がそこまで苦手ではなかったので、直前期から対策をはじめました。伊藤塾でも使われている「スーパー過去問ゼミ」で毎日英語の文章に触れる程度にして後は過去問を繰り返していました。数的処理については、「これ完」を繰り返して苦手意識を取り除くようにしました。
あまり長く考えすぎず、量をたくさん解くことを意識しました。毎年必ず2問出されるグラフを読み取る問題は、発想力が不要で、計算(これがちょっと煩雑ですが)さえすれば解ける問題なので得点源にすべきだと思います。
時事については、「浅くてもいいから広く」出来事を把握しておくことを意識しました。実際の基礎能力試験で時事は毎年2~3問出されており、勉強していれば意外と選択肢は切れるので得点源になりやすいと思います。

政策論文・総合論文試験(記述式)について

2次試験の政策論文試験について、これについても1次が終わった後から対策をはじめました。私が使っていたのは伊藤塾のテキスト(過去問とその解答例・解説を載せたもの)と予想問題です。政策論文に関しては、とにかく問題を実際に解いて添削してもらうことを繰り返すことで出題の形式に慣れることを意識していました。
論述ではロジックが通っていることが最も大事なので、政策の知識はあまり必要とはされないですが、もちろん時事レベルでも知っていれば「武器」として使えるので、日頃から積極的に政策シミュレーション(省庁開催のイベント)や白書等で吸収しておきましょう

面接・集団討論について

2次試験の人事院面接(人物試験)について、主に伊藤塾が実施している面接カードの添削・模擬面接(2回利用しました)で対策を行いました。加えて、親や友達を面接官に見立てて練習したりもしました。
面接対策では、志望動機や学生時代に頑張ったことをいつでもスラスラと自在に話せるようにしておくことが大事だと思います。自分はしゃべっている時によく噛んでしまったり勝手に詰まったりしてしまうので、人前で話す練習を何度も重ねました。

官庁訪問について

私は経産省・国交省・財務省本省の順番で回りました。官庁訪問の対策として私がやっていたことは、主に①志望動機のロジックを改めて詰め直すこと、②それをどんな角度から聞かれてもスラスラと言えるようにするための話す練習(面接対策と同様)、③白書(各省のホームページでダウンロード可能)やこれまで参加したイベント(インターン・政策シミュレーション・説明会等)で配られた資料を通じた政策の勉強、の3つです。
上述③政策の勉強に関して、実際に官庁訪問を経験して思ったことがあります。それは、この対策はあくまで自分のためにすべきものであり、決して職員に聞かれた時に答えられるようにしておくためにすべき対策ではないということです。官庁訪問の中で、政策の知識を職員の方から直接問われたことは一度もありませんでした。(年や省庁によるかもしれませんのであくまで参考程度に)だからといって自分が今までしてきた政策の勉強が無駄だったわけではなく、省庁に入ってどんなことがしたいかを考えるうえで参考になったし、職員の方に現在の政策に関する疑問点をぶつけるうえでも有意義な対策だったと思います。

普段の生活と試験対策

私は大学生活を通じて3つのサークル・団体に所属しました。3年生の夏からは民間企業・省庁のインターンシップや説明会等にも参加していました。こうした普段の生活と公務員試験勉強の両立で自分が意識していたのは、計画を作ってやるべきことを可視化しておくことです。
具体的には、サークルのイベントや省庁説明会などの強制的に入る行事を日程に組み込んだうえで、週ごとに自分が自由に使える時間を大まかに割り出し、その範囲内でやるべき勉強ノルマ(例えば憲法・民法・行政法のこれ完を30問ずつ、など)を各日ごとに割り振り、実際に計画表としていつでも見ることができるようにしました。これを毎週作り、その週にどんな行事があるか・何の勉強をしなければいけないかを把握するよう心がけました。ノルマが達成できていないと一目でわかるので焦りが生じ、モチベーションの維持にも役立ちました。
学業以外のサークルやバイト等の活動は、「学生時代に頑張ったこと」として面接や官庁訪問の場で話のネタにしやすいのでやっておくに越したことはないと思いますが、大事なのは、その経験によって得たことを相手にわかりやすく伝えることです。頭の中だけではなくちゃんと口に出して話す練習を積みましょう。
省庁のインターンや説明会は内容が面白いものが多く、自分の国家公務員・省庁への思いをブラッシュアップするうえでも有意義なものばかりでした。省庁によるかもしれませんが、就活の時期はかなり頻繁にイベントが開催されるので、興味のある省庁の採用ホームページはほぼ毎日チェックしていました。

民間企業の就職活動について

私は3年生の夏から民間企業を省庁と併行して見ており、インターンやワークショップにも参加していました。幅広く多様な業務を経験できる銀行や総合商社を中心に併願を検討していましたが、最終的に本選考まで受けたのは3社のみです。
就活当初は民間企業と国家公務員を同等のレベルで志望していたのですが、業務の幅広さ・できる経験の豊富さで比較していった結果、国家公務員の方がより志望度が増したため、民間企業の方はリスクヘッジとして考えるようになりました。
結局、本選考まで進んだ3社も、志望度や2次試験の勉強との折り合いを考えて選考を辞退しました。
民間企業を併願して就活をするメリットは、国家公務員との比較ができることだと思います。民間企業と公務員はできることの広さ・深さや働くうえでの意識等の点で大きく違いがあり、実際に就活の中で両方の職員の方にお話を伺うとその違いがよくわかります。自分は最終的には国家公務員一本になりましたが、民間就活をしたうえでの選択なので、面接や官庁訪問でもより説得力を持って志望動機や自分のやりたいことを説明できたのではないかと思います。

内定と進路決定の理由

私は国土交通省に内定をいただき、国土交通省で行政官として働くことを決めました。官庁訪問前は経済産業省と国土交通省で迷っていたのですが、いざ官庁訪問に臨み、財務省(本省)含め色んな職員の方のお話を聞いていくうちに3省とも同等に魅力的に感じられ、非常に悩みました。
最終的には、①所管分野の身近さ・広さ②政策づくりにおける現場への意識の強さ③職員の方々の人柄やキャリアの多様さの3点から国交省に決めたのですが、最後の最後は理屈よりも自分の感覚と最もマッチするところで働きたいと思い進路決定に至りました。

どのようにモチベーションを維持したか

省庁のイベントに参加することでモチベーションを保っていました。ただどうしても勉強のやる気が起きないときは、思い切って1日遊んだり、サークルの行事に参加してリフレッシュしたりしました。直前期は、「これを今やらなかったら試験に落ちる」などと言い聞かせて勉強に打ち込んだりもしていました。

最後に

私は、はじめのうちは国土交通省の行政官として幅広い分野の政策に携わり、国内外問わず様々な場所で様々な人と関わりながら、キャリアを積んでいきたいと考えています。その先のことは、今は考えていません。
最後に、これから公務員試験を受験される方、また受験しようかどうか迷われている方々へ。私はたった1年間の公務員就活を経験しただけなので、偉そうなことは言えませんが、国家公務員は確実に「色んなことができる」職業だと思います。2,3年という短期でキャリアが変わっていきますし、各省庁が所管している分野はどこも広いです。また、国・国民全体のために働くという非常に大きな責任を負っていることも、やりがいの点で魅力だと思います。こういった魅力に惹かれる方は、ぜひ一度公務員試験の問題を見てみてはいかがでしょうか(人事院のホームページで一部見ることができます)。そして今、公務員試験勉強を頑張っていらっしゃる方は、ぜひ勉強の合間に各省庁のイベントにも参加して、公務員への思いをより洗練させていってください。