40歳を過ぎて一念発起し、受験勉強開始、開業後、成年後見を中心に地域社会に貢献
【福岡県】 赤坂協同司法書士事務所
藤江 美保 (司法書士)
■Profile
1995年 司法書士試験合格
1996年 司法書士登録 弁護士との協同事務所で活動
2002年 司法書士4名による「赤坂協同司法書士事務所」開設
―― information ――
藤江先生は2006年度および2007年度の司法書士中央新人研修にて、成年後見をテーマにご講演されました。
司法書士を目指した動機
37歳から福岡市内の法律事務所で働き始めました。そこは、本当の市民法律事務所という感じで、家事事件から、医療過誤事件などの相談も多く受けており、事務局長をしていた私は、依頼者の方から、弁護士に相談しにくいことを尋ねられることもありました。また、法律事務所に勤める前は保育関係のボランティアを10年ほどやっていました。その時にかかわった保育者は、障がい児と健常児の統合保育等に取り組む先駆者的な人達だったと思います。この時、福祉の現場を知ったことが、現在やっている成年後見業務における私自身の姿勢に大きな影響を与えています。つまり、障がいがあろうと無かろうと、みんな同じように自分の幸せを求めることができるということであり、障がいを一つの個性としてとらえる考え方です。
法律事務所で働きだして5年経った頃、きちんと法律の勉強をしたことがなかった私は、法律の基本を体系的に勉強したいと思うようになりました。実際に、経験だけでやっている自分の仕事の限界を感じていました。その時、司法書士の受験科目が一番広くて、実践的で、今の自分の仕事に役立ちそうだと思い、受験指導校に通うようになりました。最初は、司法書士を目指していたわけではなかったのです。でも、所先生はとても熱心に講義をしてくださいますし、当時同じクラスで講義を受けていた若い仲間に、一緒に受験しようと薦められ、やってみようと思ったのです。
受験時代の工夫と得たもの
受験勉強を始めた時は、主婦であり、仕事もあり、時間的には大変でしたが、所先生の講義は分かりやすく、仕事でやっている事件の法律的な意味がだんだん分かるようになり、とても楽しく勉強できました。
受験するからには合格をしたいと思い、なんとか時間の工夫をしながら頑張りました。講義がある日は、仕事は5時で上がらせていただきましたが、講義が終わると9時半過ぎになります。まっすぐ家に帰っても11時頃になるので、電車の中でその日の復習をしていました。講義のない日は、夕食の用意をして、食事が終わり、後片づけをするともう9時過ぎです。それから少し眠って、夜中に2、3時間勉強します。この私の生活を見かねた夫が、毎日朝食を作ってくれるようになりました。これは、合格後もずっと続いており、予定していなかった、受験時代の大きな成果です。
講義が終わった後、時々は受験生同士でお茶を飲みながら雑談して気分転換もしました。カラオケにもはじめて連れて行ってもらいました。若い受験生仲間との時間は楽しく、年齢的に受験開始の遅い私が、不安な気持ちになった時の励みや刺激になっていました。今ではお互い司法書士として連絡を取り合ったりして良い関係が続いています。
司法書士を目指した動機
所講師とともに
成年後見をやるようになって、司法書士は質的に大きく変わったと思います。成年後見は人に直接、触れて行う仕事ですよね。だから後見っていうのは、その人がどのように生きていきたいのかという事を大切に進めていかないと出来ない仕事なのです。その人の人生に大きく関わっていく仕事の責任は重く、辛いと思うこともありますが、人間が好きですから、成年後見の仕事は自分には向いていると思っています。また、困っている人の役に立っているのだと実感できる場面が多く、司法書士になって良かったと改めて思います。
成年後見センター・リーガルサポート
私が司法書士になって2年目の時でしたが、福岡での成年後見センター・リーガルサポート※Qには、立ち上げ時から携わっています。司法書士会が全面的にバックアップした関係もあり、700名の会員枠に最初から200名の司法書士が参加しました。私があるシンポジウムでパネラーとして話すこととなり、「引き受けるのはいいですが、ただ条件があります」とお話しました。今思えば、2年目なのにずけずけ言う部分があったと思います(笑)。「成年後見が引き受けられる体制を司法書士会で固めてください。私がシンポジウムで話をしてて、相談に行ったら誰もそんなこと分かりませんなんて言われたのでは、私は福岡の街を歩けません。ですから、研修会などの体制を整えてください」と言いました。それから、至急、研修会があったりしました。そこから徐々に一丸となって作り上げた感じですね。研修委員会、研究委員会、組織委員会などを司法書士会が作ってくれて、本当にバックアップしてくれました。それは他県と比べても、非常に恵まれた状況だったと思います。
成年後見でやりがい・憲法の価値を感じる瞬間は
後見人って人権感覚が大切な仕事だと思います。
後見人等が選任される人って、自分の権利を主張することができないのです。親族も含めて、周りの人たちに本人の財産を勝手につかわれてしまうケースもあります。後見人になって本人の財産を守ったり、福祉や介護サービスを受けられるように手続きをしたりします。そんな時に、自分の気持ちを上手く表すことの出来ない人に「ありがとう」って照れたように言われたりすると、なんだかとても嬉しくなりますね。仕事をしていて喜びを感じるときです。
受験生の皆さんへ
私は40歳を過ぎてから司法書士を目指しました。勉強を始めた頃は、少しでも仕事に役立てば良いなというような気軽な気持ちでした。不動産も持たず、会社を経営したこともないため、当時私は、司法書士がどんな仕事をしているかもよく知りませんでした。現在、司法書士は、色々な分野でふつうの市民と直接繋がる仕事をしています。そして世の中の困っている人や弱い立場の人達のために、多くの司法書士が活躍しています。司法書士の仕事は幅広く、それまでの色々な経験を全て活かすことのできる職業ではないでしょうか。
皆さんも今まで歩んできた道はそれぞれ違うとは思いますが、人生は一度です。自分を信じて、憲法の価値を実現できる司法書士を目指して頑張ってください。
(2008年1月・記)
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Q 成年後見センター・リーガルサポートとは
「成年後見センター・リーガルサポート」とは、司法書士を会員とする社団法人です。専門家後見人の養成やシンポジウムの開催、市民後見人養成講座の開講、無料成年後見相談会等、成年後見にまつわる様々な活動を行なっております。一定の研修を履修した会員がリーガル・サポートの「後見人候補者名簿」に登録され、登録された会員は、リーガル・サポートから後見人の依頼を受けることになります。
赤坂協同司法書士事務所
〒810-0042
福岡県福岡市中央区赤坂1-12-2 赤坂高喜ビル3F
■業務内容
成年後見、家事事件関係、登記業務、裁判業務関係など