一般企業、法律系事務所勤務等を経て合格・独立、多様な経験が活かせるのが司法書士業務の魅力

2008年10月掲載

山本&森 法務司法書士事務所  森 香苗 先生 (司法書士)

■Profile
2007年 司法書士試験合格
2008年 山本&森 法務司法書士事務所を他司法書士1名と開設

司法書士を目指した動機

学生時代、女性の私がずっと職業をもって働くということを 前提として将来を考えた時に、会社員という選択肢ではなく独立して何かをやりたいと思いました。そして自分の興味や性格などから考えて、法律に関係する仕事に就くのが向いているのではないかと思い、関連の職業から、なぜか司法書士を選びました。当時はその程度の動機付けでしたので、学生時代に他校の講座を受講したのですが民法しか消化できませんでした。大学卒業後、法律事務所、不動産鑑定士事務所等で働き、数多くの貴重な経験をする中で、司法書士となって社会や人の役に立てるようになりたいという思いが年々強くなりました。
特にきっかけとなったのは、不動産鑑定士事務所勤務時に競売の現場に立会い、住む家を追われるかもしれないという人生最大の部類に入る危機にまさに直面し、狼狽している方にたくさん会う機会があったからです。バブル崩壊の後遺症がまだ残る時期で、競売の件数も多く、こういったショッキングな状況を色々と目にしました。そういう方達は、どこに相談していいのかも分からずにいます。差し押えになる前にどうにかならなかったのか、当時の私はアドバイスを差し 上げたい気持ちはありましたが、具体的にお役には立てず歯がゆい思いをしました。
 これがきっかけとなって、試験勉強を続けていこうという大きなモチベーションになりました。もし不動産鑑定士事務所での経験がなければ、受験勉強を続けられなかったかもしれません。
重要なのは、困っている誰かのために頑張りたいという気持ちだと思います。決して自分のためだけでは頑張れません。

独立までの経緯

私はずっと司法書士事務所以外の事務所や会社で仕事をしてきました。どうせ司法書士になったらずっと司法書士業務をやるのだから、それまでは他の職業を見て視野を広げ、揉まれようと思ったのが動機です。実際、数多くの貴重な経験をすることができ、一人の人間としても成長できたと思います。経験はお金では買えません。とても感謝しています。
2007年11月に司法書士試験に合格した後も、一般企業のコン プライアンス部での勤務は続けました。そして、12月からのいくつかの司法書士研修をうけた後、2008年5月末に会社を退職しました。当初の予定では、他の合格者同様、6月、7月は、無報酬で司法書士事務所で働く配属研修を受ける予定でしたが、研修中に現在、独立開業のパートナーである山本司法書士と知り合いました。目指す将来像が共有でき、また仕事に対する考え方にお互い共感する部分が多く、既に独立していた山本司法書士の事務所で、6月に一緒に独立する形となりました。パートナーとは得意分野がかぶっておらず、補いあえることが良い点だと考えています。
例えば、パートナーは司法書士事務所での勤務経験があるので、登記全般の実務経験、会社法や商法の実践的な実務経験があります。
一方、私は法律事務所での勤務経験があるので、裁判業務の実務経験があります。また、契約書のドラフト(草稿)のチェックなど、今までの実務経験で共通してやってきたこともあり、相互チェックがそれぞれの視点でできるというメリットもあります。
現在の依頼者としては、山本司法書士のお客様や、私の知り合いの弁護士からのご紹介いただいた方などです。事務所の方向性としましては、従来からの司法書士業務である登記業務はもちろんのこととして、さらに法律家として、国民の幸せのために自分たちができることを積極的に模索しながら業務を行っていきたいと考えています。 今後どのような風が吹 くかというワクワクする部分もあります。

必要とされる「プロフェッショナリズム」

依頼された仕事をきちんとこなすことは、当たり前です。プ ロとして活躍するためには、そこにプラスアルファの付加価値をつけることが必要であると思います。それは新しい知識の提供であったり、何かの提案であったり、お客さまによって異なってくるでしょう。また、プロであるならば、何か相談された時に、即答できるものは依頼者の状況に沿った適切な回答を即答し、また慎重に調べることを要するものは持ち帰りますが可及的すみやかに答えを出すことが求められます。そのためには、知識プラス実務経験が必要となりますから、司法書士は日々勉強しながら、経験をいかに自分の糧にするかという視点が重要だと考えています。

これからのビジョン

独立開業すると事務所を維持してゆかなくてはなりませんから、採算を考える視点も必要となります。ですが、社会のために何ができるかという視点は常に同時に持ち大切にしていきたいです。伊藤塾では弱者の視点に立ち、権力側に歯止めをかける憲法の理念を大切にされていますが、社会には権利の使い方すら知らない方も多いと思います。自分にはどんな権利があり、世の中の不利益から自分を守る方法にはどんな方法があって、どこに相談すればいいかなどを、より多くの方々に知っていただきたいです。
例えば、悪質商法の被害者となった場合において「この契約や業者は何かおかしいのでは」と気づけるチカラ、気づいたら「できるだけ早めに消費者センターや私たち司法書士などの専門家に相談にいく」ということが分かるチカラ、もっといいのはそういった悪質商法の被害者とはならないための知識」を身に付けていただきたいと思っています。「知らない」というのは怖いことですから、「知らない」人には、こちらから積極的に働きかけをする必要があります。今は、そういった機会を提供する場を作ることに、少しでも携わりたいと考えています。また逆に、権利を間違った形でふりかざす人がいるのも実情です。
最近、話題のモンスターペアレントなどは、間違えた権利の使い方の例ではないでしょうか。そのような人達にも、話をきいてもらいたいと考えています。
 

これから合格を目指す方へ

自分が実際に司法書士になってみて、想像してた以上に法律家・ 資格業というものは責任が重たいものだと感じています。本当に依頼者のお役に立つためには、生半可な気持ちでは仕事は続かないと思います。きちんと理想をもって、それに向かって努力を続けていただきたいです。
また、社会人として常識も常に求められます。社会人の方は、現在どんな職業についておられていても、その社会経験はすべて司法書士業務に生かされると思います。司法書士もまた多くの職業のひとつであり、それぞれの職業があって世の中は成り立っているのですから、今のお仕事も自分の糧としてしっかり消化していれば社会の中での自分の力となります。働きながらの勉強は厳しいですが、その社会経験は合格後自信となり生かされますので、 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

(2008年7月・記)


Information
山本 & 森 法務司法書士事務所

 
■業務内容
不動産登記、商業登記、企業法務、法教育、裁判業務など
 
■住所
〒103-0014 
東京都中央区日本橋蛎殻町1-6-4 第3カネタツビル503
 
■ホームページ
http://www.ym-shiho.net/
 
■現在の「ある一日のスケジュール」
8:30 出勤、本日の予定確認等
9:30 外出(客先、登記所、都税事務所等)
15:30 事務所に戻り書類作成、データ作成等
21:30 翌日の予定を確認
帰宅