地元の地域社会に貢献したいという初志に返って独立。開業当初からご相談をいただいています。

2009年7月掲載

【高知県】 おだに司法書士事務所 小谷 晃史 先生 (司法書士)

■Profile
2006年 司法書士試験合格
2007年 高知県高知市「ブリッジ司法書士事務所」入所
2008年 高知県香南市「おだに司法書士事務所」開設

開業・独立した動機ときっかけ

受験生の時はとにかく合格することだけを考えており、合格後の自分は全く想像していませんでした。正直、考えが非常に甘かったと思います。
高知県はほとんどの司法書士が自分の事務所をもっています。私も前事務所では、開業することを前提として雇っていただきました。司法書士になったばかりの頃は、右も左も分からずミスもたくさんしました。こんなことでは開業なんて到底できるわけがない、自分は司法書士にむいてないんじゃないかと思う毎日でした。
しかし、1年間勤めた頃には、どんなやったことのない仕事の依頼がきてもやれる自信がつきました。過去問は解けるのに模試では全然点数がとれない、しかし、なぜだか分からないけどある時を境に、ぐんと得点できるようになった受験時代のあの感覚と似ています。
先輩方の「自分でやらな成長せん。早く事務所開きや。大丈夫大丈夫。なんとかなる」という何の根拠もない有り難い後押しもあり、開業することができました。やはり自分の名前で仕事をするおもしろさ・責任感・やりがいは勤務の時とは比べものになりません。最初に抵当権抹消の依頼をいただいた時は、電話なのに思わず立ち上がって頭を下げ「有難うございます!」と何度も言ったものです。これは開業した人にしか分からない感動ではないでしょうか。
自分には、分からないことを質問しても嫌がらず自分のことのように丁寧に教えてくださる高知県の先輩方がいます。また、つまらないことでも相談できる研修で出会った仲間がいます。先輩方、同期の仲間がいるからこそ自分は開業できたのだと思います。

現在の主な業務

伊藤塾を選んだ一番の理由は受講料です。それと、伊藤塾に通って司法試験の勉強をしている友達が多かったこと、そして、所講師の講義の雰囲気です。説明会に参加し、「この人の講義なら最後まで続けられそうだな」と思いました。所講師の熱いエールには何度も励まされましたし、クラスマネージャーを担当してくださった関講師には、これでもかってくらい何度も質問し、これでもかってくらい丁寧かつ熱心に教えてくれました。
  所講師、関講師以外にも山村講師、蛭町講師、北谷講師、高城講師には大変お世話になりました。塾生のことを本当に心から応援してくださる温かく熱心な先生やスタッフの方ばかりの伊藤塾で、試験勉強だけではない大切なことをたくさん得られました。

地方での業務の魅力

業務の割合は不動産登記4割、債務整理4割、その他の事件2割といった具合です。
 
・不動産登記
 
田舎はオンライン申請は普及してないだろうと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、高知の若手司法書士はみんなオンライン申請をしています。田舎の田んぼの相続登記などは評価額が低くて登録免許税が1,000円、さらにオンライン申請で1割引きの900円ということもざらにあります。逆に、極度額が億単位の共同根抵当権設定登記の依頼をしていただいたこともあります。休眠担保権の抹消、取得時効を原因とする判決による登記などなど、意外と田舎の方が
色々な登記をしているんじゃないかと思う時があります。
 
・債務整理
 
いわゆるグレーゾーン金利、クレサラ問題に対して皆さんはどのようなイメージやお考えをお持ちでしょうか?「借りたお金を返さない方が悪い」と思う人もいるかもしれません。
ですが、高知のような全国でもトップクラスの低所得の県では、夫が病気になり働けなくなった、仕事をくびになった、不景気で仕事の量が激減した、このままでは生きていけない、とりあえず消費者金融に手をだすというケースも多いのです。しかし、消費者金融は借りてすぐ一括で返すとかすれば便利な金融機関かもしれませんが、生活に困って借りた人はすぐには返せません。そういう人は一度借りたら逃れられない仕組みになっています。
このような方々が高知にはたくさんいます。「死のうと思ってました」と涙を流しながら話していた依頼者の方が「本当に有り難うございます。これ、もうろうてください…」と自分の飼っているにわとりの卵を持ってきてくれる時に、こんな自分でもいくらか役に立てているのかなとやりがいを感じます。
 
・その他の事件
 
私のような、弁護士もいない認定司法書士も自分しかいないという地域で開業すると、本当に色々な相談があります。貸したお金を返してくれないので裁判がしたい、支払督促が届いたので訴訟代理人になってほしい、弁護士から裁判をしますという内容証明が届いたので助けてほしい、詐欺にあったので刑事告訴をしたい等々。裁判所からは成年後見人はもちろんのこと、相続財産管理人※・不在者財産管理人※への就任依頼があります。
高知県司法書士会は、市役所、消費生活センター、地域包括支援センター、社会福祉協議会等との関係も非常に濃厚です。講師として招かれることもしばしばありますし、110番や相談会を司法書士会と一緒に開催したりもします。
「何か困ったことがあったらとりあえずあそこに行ってみよう。何とかしてくれるかもしれん」と言ってもらえるような存在になりたいと思い、都会ではなく高知で、高知市ではなくて高知の中心部から少し離れた地域で事務所を開業しました。こんなことは他の司法書士はやらないだろうと思うような依頼もありますが、こんな若輩者を頼って相談しに来ていただけること自体が本当に有り難いことだと思って、日々一生懸命仕事をしています。
「相談しやすかって小谷さんでよかった。またなんかあったら頼むきね。うちで椎茸とれるき今度もっていくきね。」こんな言葉をいただいて、明日も頑張ろう、と田舎の司法書士をやっています。

これから合格を目指す方へ

現在、世の中の司法書士に対する認識はどのようなものでしょうか。せいぜい登記の専門家と思っている人がほとんどで、「司法書士って何?行政書士とは違うの?」という人も少なくありません。しかし、司法書士法1条には「この法律は、司法書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、登記、供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し、もつて国民の権利の保護に寄与することを目的とする」とあります。
司法書士法3条を見れば、登記・供託だけでなく、法務局・裁判所・検察庁への提出書類の作成を業務として行えると規定されています。そして、これらの業務は正当な事由がない限り依頼を拒むことができません(21条)。
つまり、司法書士は法律一般のことは大体何でもでき、そしてしなければならないとされてきたのです。司法書士は登記の専門家ではなく、第一条の通り、法律の専門家(とりわけ登記・供託・訴訟の専門家)であって、国民の権利保護という使命を果たすことが期待されているのです。
これは「司法書士」という名前からも感じることができます。登記だけやっていればよいというのであれば、「登記士」という名前にでもすればよかったはずです。
受験指導校のパンフレット等に「ますます期待される司法書士」「ますます業務が拡大する司法書士」という文句がありますが、上記のとおり司法書士がやれることはいくらでもあります。ますます業務を拡大していくかどうかは、各司法書士が司法書士法1条を実践するかどうかです。
今現在、この「国民の権利の保護」という司法書士の使命を胸にとめ業務を行っている司法書士は少ないでしょう。これから司法書士になられる皆さんには、司法書士法1条を実践していただくことを切にお願い申し上げます。
「町の法律家」という言葉は弁護士との差別化をはかるために司法書士自らが作り出した言葉です。真の意味で「町の法律家」になれるよう共に頑張りましょう!
 
(2009年2月・記)
 

※相続財産管理人
ある人が死亡した場合において、相続人がいることが明らかでない場合に、相続人が現れるまで、又はその財産を清算するまで、相続財産の管理を行う者のことをいう。利害関係人又は検察官の請求により、家庭裁判所が選任する。
※不在者財産管理人
ある財産を所有しているものが、従来の住所を去って帰ってくる見込みがない場合において、その不在者の財産を管理するために選任される者。


Information
■事務所プロフィール
おだに司法書士事務所
〒781-5232 高知県香南市野市町西野646-1
ホームページ:http://www.odanishihoushoshi.com/
 
■業務内容
不動産登記、商業登記、相続、遺言、成年後見、民事訴訟、債務整理、法律相談など
 
■現在の「ある一日のスケジュール」
08:00 事務所到着 裁判所提出書類作成
09:00 担保権設定登記申請
10:00 相談
12:00 昼食
13:30 裁判所にて口頭弁論期日
14:00 成年被後見人の病院を訪問
16:00 事務所にて農地売買の取引 登記申請
17:30 司法書士会にて会務
      飲みに行く☆(高知の人はお酒大好き)