国家公務員総合職試験とは

国家公務員総合職試験とは、総合職職員、いわゆる「官僚」を採用するための試験です。総合職の主な役割は、中長期の視点に立って国家レベルの政策を立案すること。採用試験では、「政策の企画立案に係る高い能力」の有無が試されます。

国家公務員総合職になるまでの流れ

総合職をはじめとする国家公務員の採用は、「試験に合格するだけではダメ」というのが大きな特徴です。「合格」=「採用」ではなく、次の2ステップをクリアしてはじめて国家公務員総合職になることができます。
 

  • STEP 1

    国家総合職試験に合格する

    第1次試験 合格
    第2次試験 合格 = 最終合格
  • STEP 2

    官庁訪問で内々定をもらう

    第1クール 突破
    第2クール 突破
    第3クール 突破
    第4クール 突破 = 内々定
  • 10月内定 ▶ 翌年4月入省

 
まずは、 STEP1として 「国家公務員総合職試験」に合格する必要があります。合格すれば『採用候補者名簿』に掲載され、 STEP2 「官庁訪問」へと進むことができます。そして訪問した省庁で内々定を獲得できれば、原則翌年 4月から総合職職員として働くことができる、という流れです。
 

春と秋の2回実施
国家総合職の試験区分

国家公務員総合職試験には、大きく分けて「大卒程度試験」と「院卒者試験」の2種類があります。このうち、大学生の皆さんが受験するのは大卒程度試験で、年に2回、秋と春に行われます。秋試験と春試験は、実施時期だけではなく、受験可能年齢試験形式・出題内容も大きく異なります。秋・春それぞれの試験について、内容をチェックしてみましょう。
 
 

19歳から受験できる秋試験「教養区分」

秋試験は、おおむね9月最後または10月最初の日曜日に第1次試験が行われます。1次試験結果の発表は10月中旬です。第2次試験は11月中旬に行われ、最終結果が12月中旬に発表される、というスケジュールです。
 
 

2024年教養区分の試験日程
第1次試験日 9月29日(日)
第1次試験発表 10月16日(水)
第2次試験日 企画提案試験
11月16日(土)または23日(土)
政策課題討議・人物試験
11月17日(日)または24日(日)
第2次試験発表 12月12日(木)

 
 
国家公務員総合職試験には12種類の試験区分があります。区分によって出題科目や出題数が異なり、受験生はいずれかの試験区分を選択して受験します。学習経験や専攻分野に応じて区分を選択することが多いですが、合格率や採用人数数、内定率が試験区分によって大きく異なる点にも注意が必要です。
 
秋試験で受験できる試験区分は「教養区分」のみです。
教養区分は、2023年より受験可能年齢が引き下げられ、19歳、主に大学2年生から受験できるようになりました。
 
教養区分試験の大きな特徴は、法律や経済、政治・行政といった専門科目の知識を問う専門科目試験が課されないこと。知識をひたすら暗記する、といった学習が必要ない分、準備負担は軽いといえます。
 
一方で、対策の方針を立てづらく、「どのような準備すべきかわからない」といった難しさがあります。試験内容およびその対策など、教養区分試験の詳細は以下のページでご紹介しています。
 
 


 

春試験は「試験区分」を選択して受験

秋の教養区分とは異なり、春試験では専門科目試験が課されます。出題される専門科目が異なる11種類の「試験区分から、いずれか一つを選択して受験します。春試験の試験区分は次のとおりです。
 
国家総合職(大卒程度)春試験の試験区分

試験区分  2023年試験結果
  
申込数 合格数 採用数
① 法律 7,834 352 100
② 政治・国際 ※ 1,308 211  70
③ 経済 1,071 142 45
④ 人間科学  350 33 11
 ⑤ デジタル 153 49 12
 ⑥ 工学 898 294 63
 ⑦ 数理科学・物理・地球科学 169 21 7
 ⑧ 化学・生物・薬学 311 32  10
 ⑨ 農業科学・水産 437 116 41
⑩ 農業農村工学 146 55 15
⑪ 森林・自然環境 209 55 14
合計 12,886 1,360 388
 

※政治・国際区分は2024年試験より「政治・国際・人文区分」(コースA/B)へと改編されました
 
11種類ある試験区分のうち、文系学生の皆さんが多く受験するのは法律②政治・国際・人文③経済のいずれかです。中でも、最も採用人数が多く、また採用する省庁の種類が多いのが法律区分です。

主に大学4年生が受験
国家総合職【春試験】

ここからは、法国家総合職春試験の試験制度・スケジュール・対策などについて法律区分を中心により詳しく確認していきましょう。
 

国家総合職春試験の受験資格

公務員試験の受験資格は、多くの場合、年齢と国籍です。国家総合職春試験の年齢要件は次のように定められています。
 
国家総合職春試験 受験資格(2024年試験)

1.1994(平成6)年4月2日~2003(平成15)年4月1日生まれの者
2.2003(平成15)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
 (1) 大学(短期大学を除く。以下同じ。)を卒業した者及び2025(令和7)年3月までに大学を卒業する見込みの者
 (2) 人事院が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者

秋に行われる教養区分が主に大学 23年生を対象とする試験であるのに対し、春試験は主に大学 4年生が受験する試験です。大学生の皆さんには 2年生秋の教養区分、 3年生秋の教養区分、 4年生の春試験と合計 3回の受験チャンスがあります。
 

国家総合職春試験のスケジュール

国家総合職春試験は例年4月下旬に行われてきましたが、民間就活の早期化傾向もあり、2024年からは約1ヶ月半前倒しされて3月中旬に第1次試験が実施される日程になりました。
 

2024 年国家総合職 春試験日程
●受付期間 2024年2月5日(月)~2月26日(月)
●第1次試験日 3月17日(日)
●第1次試験合格発表 4月1日(月)
●第2次試験日 [筆記試験]
4月14日(日)

[人物試験]
4月22日(日)~5月15日(水)の指定日時
●第2次試験合格発表 5月28日(火)

 
2次試験に合格すると『採用候補者名簿』に名前が掲載され、最後のハードルである官庁訪問に臨みます。官庁訪問は春試験合格者だけではなく、教養区分や院卒者試験など全ての合格者を対象に同一日程で行われます。
 
従来の日程では、春試験の最終合格発表後すぐに官庁訪問がはじまる日程が組まれていましたが、2024年はかなり余裕のあるスケジュールになりました。合格発表の約2週間後から官庁訪問がスタートします。
 

2024 年国家総合職 官庁訪問日程
●予約受付開始 6月3日(月)9:00
●第1クール 6月12日(水)~14日(金)
【3日間】
●第2クール 6月17日(月)~19日(水)
【3日間】
●第3クール 6月20日(木)~21日(金)
【2日間】
●第4クール 6月24日(月)
同日17:00以降 内々定解禁

4クール終了段階では採用の「内々定」ですが、101日に正式な採用内定となります。実際に総合職職員として働きはじめるのは翌年4月からです。
 

国家総合職春試験の内容

前述のとおり、国家総合職春試験(大卒程度)には11種類の試験区分があります。試験区分によって異なるのは専門試験の出題科目・出題数。その他は区分に関わらず共通の内容です。
 
 
国家総合職春試験 第1次試験

試験種目 解答題数・時間 配点比率
基礎能力試験
(多肢選択式)
30題
2時間20分
2/15
専門試験
(多肢選択式)
40題
3時間30分
 3/15

 
国家総合職春試験 第2次試験

試験種目 解答題数・時間 配点比率
専門試験
(記述式)
2題
3時間
5/15
政策論文試験
(記述式)
1題
2時間
 2/15
人物試験
(個別面接)
3/15

 
 
春試験においては、やはり 専門科目が対策の中心です。多肢選択式(マークシート試験)の 1次専門試験と、記述式(論文試験)の 2次専門試験で配点比率の合計は 8/15となり、 全体の半分以上を占めます。
 
専門試験の出題科目・出題数は試験区分により異なります。文系学生の多くが受験する①法律区分、②政治・国際・人文区分、③経済区分の試験内容詳細は次のとおりです。

試験 試験種目 試験内容 解答時間 配点
比率
1次試験 基礎能力試験
(多肢選択式)
30題解答
知能分野24題
文章理解⑩、判断・数的推理(資料解釈を含む。)⑭
知識分野6題
自然・人文・社会に関する時事、情報⑥
2時間
20分
2/15
専門試験
(多肢選択式)
49題出題 40題解答
必須問題
憲法⑦、行政法⑫、民法⑫の計31題
選択問題
商法③、刑法③、労働法③、国際法③、経済学・財政学⑥の18題から任意の計9題解答
3時間
30分
3/15
2次試験 専門試験
(記述式)
選択問題2題
次の5科目から2科目選択
憲法、行政法、民法、国際法、公共政策②
※公共政策からは1題のみ選択可。
3時間 5/15
政策論文試験
(記述式)
1題
政策の企画立案に必要な能力その他総合的な判断力及び思考力についての筆記試験(資料の中に英文によるものを含む。)
2時間 2/15
人物試験 人柄、対人的能力などについての個別面接
(参考として性格検査を実施)
3/15
英語試験 英語の能力の程度に応じて加算:TOEFL(iBT)、TOEIC等

試験 試験種目 試験内容 解答時間 配点
比率
1次試験 基礎能力試験
(多肢選択式)
30題解答
知能分野24題
文章理解⑩、判断・数的推理(資料解釈を含む。)⑭
知識分野6題
自然・人文・社会を含む時事、情報⑥
2時間
20分
2/15
専門試験
(多肢選択式)
【コースA 政治・国際系】
55題出題 40題解答
必須問題
政治学⑩、国際関係⑩、憲法⑤の計25題
選択問題
行政学⑤、国際事情③、国際法⑤、行政法⑤、民法(担保物権、親族及び相続を除く。)③、
経済学③、財政学③、経済政策③の30題から任意の計15題解答
3時間
30分
3/15
2次試験 専門試験
(記述式)
【コースA 政治・国際系】
選択問題2題
次の6科目から2科目選択
政治学、行政学、憲法、国際関係②、国際法、公共政策②
※国際関係又は公共政策を含む選択をする場合にあっては、1科目又は2科目
3時間 5/15
政策論文試験
(記述式)
1題
政策の企画立案に必要な能力その他総合的な判断力及び思考力についての筆記試験(資料の中に英文によるものを含む。)
2時間 2/15
人物試験 人柄、対人的能力などについての個別面接
(参考として性格検査を実施)
3/15
英語試験  英語の能力の程度に応じて加算:TOEFL(iBT)、TOEIC等  

政治・国際・人文区分には、「コースA:政治・国際系」と「コースB:人文系」があり、専門試験の出題内容が異なります。受験生はA・Bいずれかを試験当日に選択して解答します。

試験 試験種目 試験内容 解答時間 配点
比率
1次試験 基礎能力試験
(多肢選択式)
30題解答
知能分野24題
文章理解⑩、判断・数的推理(資料解釈を含む。)⑭
知識分野6題
自然・人文・社会に関する時事、情報⑥
2時間
20分
2/15
専門試験
(多肢選択式)
46題出題 40題解答
必須問題
経済理論⑯、財政学・経済政策⑤、経済事情⑤、統計学・計量経済学⑤の計31題
選択問題
経済史・経済事情③、国際経済学③、経営学③、
憲法③、民法(担保物権、親族及び相続を除く。)③の15題から任意の計9題解答
3時間
30分
3/15
2次試験 専門試験
(記述式)
必須問題1題
 経済理論
選択問題1題
 次の3科目から1科目選択
 財政学、経済政策、公共政策②
3時間 5/15
政策論文試験
(記述式)
1題
政策の企画立案に必要な能力その他総合的な判断力及び思考力についての筆記試験(資料の中に英文によるものを含む。)
2時間 2/15
人物試験 人柄、対人的能力などについての個別面接
(参考として性格検査を実施)
3/15
英語試験 英語の能力の程度に応じて加算:TOEFL(iBT)、TOEIC等  

英語スコアによる得点加算

国際化が進む今日、どのような分野であれ国際的な関わりの中で業務を進めることも多い国家公務員総合職。一定の英語能力を備えていることが求められます。英語能力を測る目的で、総合職試験では外部英語試験のスコア提出による得点加算が行われています。
 

国家総合職試験 英語試験
英語試験 15点加算 25点加算
TOEFL(iBT) 65以上 80以上
TOEIC  600以上  730以上
IELTS 5.5以上 6.5以上
英検  - 準1級以上 

 
最大25点も加算されるとあって、多くの受験生はいずれかの英語スコアを提出します。TOEICであれば民間就活でも使えますし、留学を考えている方であればTOEFLIELTSのスコアを取得が必要です。英語試験は「将来に役立つツール」の一つとして受験しておくことをおすすめします。
 
とはいえ、本番直前になって英語対策ばかりしているのでは本末転倒。早い段階、特に大学入試でつけた英語の力を最大限活用できる大学1年次にスコアを取得してしまうと良いでしょう。
 
提出できるスコアは、「試験年度の41日から遡って5年前の日以後に受験したもの」に限られます。タイミングを逃して受験できなかった、なんてことにならないように試験日程を確認することが必要です。
 

国家総合職<法律区分>の対策ポイント

国家総合職春試験において、最も多くの方が選択するのは法律区分です。採用人数・採用省庁ともに教養区分と並んで多く、また試験対策で学んだ内容が「法律案の作成」という官僚としての業務に直結することから、春試験は法律区分で受験するのがおすすめです。
 
法律区分の第1次試験対策
法律区分の第1次試験では、基礎能力試験と専門試験の2種目が行われます。いずれも多肢選択式試験です。基礎能力試験は2023年試験から内容が変更されました。出題数が削減されたほか、知識分野が時事中心の出題になっています。
 
 
基礎能力試験

配点比率 2/15
形式 多肢選択式
解答題数 ◎知能分野:24題出題
◎知識分野:6題出題
全問必須解答
解答時間 2時間20分
内容
○数字は出題数
◎知能分野:文章理解⑩、判断・数的
推理(資料解釈を含む)⑭
◎知識分野:自然・人文・社会に関する
時事、情報⑥

 
専門試験

配点比率 3/15
形式 多肢選択式
解答題数 ◎必須:31題出題
◎選択:18題出題
49題出題 40題解答
解答時間 3時間30分
内容
○数字は出題数
◎必須:憲法⑦、行政法⑫、民法⑫
◎選択:商法③、刑法③、労働法③、
国際法③、経済学・財政学⑥
任意の9題解答

1次試験を確実に突破するために目指すべき得点ラインは、 基礎能力6割・専門8です。全問正解を目指すような学習は必要ありません。しかし、何度試験を受けても必ずこのラインは超えられる、という力をつけなければなりません。
 
中でも重要なのが、 配点比率の高い専門試験です。 7割の得点でも合格は視野に入りますが、 8割正解できていれば基礎能力で多少失敗しても 1次不合格の心配はないでしょう。
 
専門、すなわち法律科目の多肢選択式試験は、きちんと対策すれば確実に得点できるタイプの試験。 学習効率が高く、得点源にできるはずです。特に、出題数が 12題と多い行政法と民法は得意科目にしておきましょう。
 
法律区分の第2次試験対策
法律区分の第 2次試験では、記述式の専門試験と政策論文試験、そして人物試験の 3種目が行われます。 2023年試験からは専門試験の解答題数が、従来の 3題から 2題へと削減され、準備負担の軽減が図られています。
 
専門試験
配点比率 5/15
形式 記述式
解答題数 5科目から2科目選択して2題解答
解答時間 3時間
内容
○数字は出題数
憲法、行政法、民法、国際法、
公共政策②から2科目選択
(公共政策からは1題のみ選択可)

 
 
政策論文試験

配点比率 2/15
形式 記述式
解答題数 1題
解答時間 2時間
内容
政策の企画立案に必要な能力その他総合的な判断力及び思考力についての筆記試験)

 
 
人物試験

配点比率 3/15
形式 個別面接
内容
人柄、対人的能力などについての個別面接

 
2次試験においても、対策の中心は専門試験です。
専門試験は5科目から2科目を選択します。科目は、1次で必須科目となっている、憲法・行政法・民法のいずれかで受験するのが一般的。得点ラインは7を目指しましょう。
 
政策論文試験は、教養区分の総合論文試験に似た出題内容です。教養区分合格を第1目標とし、リスクヘッジとして法律区分の準備も併行して進める、というのが近年のスタンダート。しっかりと教養区分対策を行っていれば、政策論文試験に特別の準備は不要です。

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