独立開業は司法書士の最大の魅力です!
合格後2年で開業し「親なきあと」問題に取り組む毎日

横山正美先生

1966年 神奈川県相模原市生まれ
1987年 外資系メーカー勤務
2016年 行政書士 資格試験合格(未登録)
      司法書士 資格試験合格
2018年 つなぐ司法書士事務所開業
      神奈川県司法書士会 第2192号 相模原支部所属
      簡裁訴訟代理関係業務認定 第1601127号
      公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員
      一般社団法人日本財産管理協会認定会員
      一般社団法人民事信託推進センター会員

司法書士を目指したきっかけと開業までのご苦労を教えてください

20年ほどの外資系メーカー勤務を経て、“法律を知っていれば生活にも役立つ”くらいの軽い気持ちで司法書士を目指しました。しかし実際に受験勉強を進めていくと、登記以外にも多岐にわたる業務があり、興味が持てる仕事がどんどん見つかるので勉強は苦ではありませんでした。そしてなにより“司法書士は独立できる、開業ができる”というのが大きな魅力で、学習当初から独立開業を目指し、雇われて働くことは考えていませんでした。
合格後は、それまで実務経験がまったくありませんでしたので、決済業務中心の事務所と、成年後見や財産管理業務中心の事務所で実務を学ばせていただきました。後進の指導も仕事だと考えている先生に恵まれ、しっかり勉強できました。この先生には今でも何かと気にかけていただき、開業のために多大なサポートもいただきました。今でもとても感謝しています。

とても素敵な事務所ですが事務所選びで重視した点はありますか

仕事とプライベートをきっちり分けるために、自宅とは別に事務所を探しました。業務の内容から頻繁な来客はないと考え路面店ではなくマンションで事務所利用OKの物件、また駅から近い利便性を重視しました。また内装は自分で本棚や机を組み立てたり、カーペットを敷いたり、大変でしたが楽しい開業準備でした。

開業してもすぐには仕事が受注できないと聞くのですがいかがでしたか

実はこれといって営業活動はしませんでした。もともと司法書士の仕事としてやりたい軸がありましたので、1年は種まき期間ととらえていました。しかし、まわりの司法書士の先輩方からの紹介や知人などから相談や依頼がありました。開業して6か月ですが、後見業務などは、現在5件受任しておりますし、他にも相続登記、遺産承継業務、遺贈登記、定款認証などお仕事いただきました。

営業活動をしないで、半年で5件ですか!

元勤務先の先生や、司法書士会や支部会への参加で知り合った先生からのご紹介が仕事につながってゆくことも多いので、営業ではないですが人との出会いやつながりに対して真摯に接することが大切だと思います。後見業務ひとつを見ても、司法書士のニーズは全体的に多いと感じます。依頼元の一つである高齢者支援センターでも、「独居老人が多くなっているので、これからもお願いします」といわれました。実際に法的サービスで困っている人はたくさんいらっしゃると実感しています。そういった意味で仕事はたくさんあると思います。

成年後見業務では具体的にどのようなことをされるのですか

成年後見業務は、(1)身上監護、(2)財産管理と(3)裁判所への報告が主な業務です。後見申立てから審判まで約2ヶ月、審判後公告期間2週間を経て確定します。そこでようやく業務に就き、銀行の名義書換、郵便物の転送手続、入院や入所の手続、病院の支払い、施設の費用の引き落とし等、そして本人の希望やQOLを考慮し、生活の場を整たり、介助者の手続等も進めます。一人として同じ状況の方はいないので、個別に対応が必要となります。日々勉強です。業務が起動にのれば、それほど負担は大きくありませんが、成年後見業務はご本人が成年後見を必要としないくらい回復するか、死亡するまで続く期間の長い仕事です。

成年後見業務でのご苦労はありますか

被後見人の親族との関係は慎重になります。親族の方に申立人をお願いしますが、ご自身の生活からそれ以上面倒は見ることはできない、とのことで第三者後見として司法書士が選ばれることも少なくありません。
例えば親が子供の後見申し立てをする場合、申立費用は申立人である母親の負担となりますが、「なぜ子供の預貯金から出せないのか。子供の成年後見人申立てなのに自分が出すのか」とおっしゃいます。「母親の負担を軽くするための申立てなので、その負担は母親がする必要がある」などと制度趣旨の説明は慎重にする必要があります。また、後見申立ての前に子供の預貯金を下ろしている場合もあります。「どうせこの子がもっていても使えない」「みんなそうしている」とおっしゃいますが、理由になっていませんし、家庭裁判所からも指摘されるので、家庭裁判所の面談の日まで戻してもらうよう説得したケースもありました。 

開業してよかったことは何ですか

やはり自分のペースで仕事ができることが最高の魅力です。遺産承継業務や成年後見業務はある程度自分の予定に合わせて仕事ができます。突発的な事も起きますが指示を仰ぐだけの事項も多いので、生死にかかわることでなければ比較的自由がききます。なので、平日でも旅行に行けたり、風邪をひいても電話さえ転送しておけば自宅で仕事もできたりします(笑)。
私は、司法書士の仕事は、半分は社会貢献のつもりでやっています。自分の理念に合った仕事を選択できることも開業の醍醐味だと思います。

それではつらかったことはありましたか

開業に際して、特につらいことはありませんでした。しかし、わからないことも多かったので、恩師に相談してサポートを受けながら、順調に開業が進みました。その後の業務でも、周りの皆様から教えていただくことが多く、よいご縁に恵まれたことに感謝しています。
よく開業後1年は赤字だといわれていますが、それなりの準備と覚悟をしているので、仕事や資金面で特に心配はしていません。
補足ですが、もし後見業務を柱に開業を考えているのであれば、成年後見の報酬は、業務を1年行った後に報告書を提出し、その後裁判所に報酬付与の申し立てを行い裁判所が1年の報酬を決定するまでは無報酬なので、その間1年は事務所を持ちこたえられる資金を準備しておく必要があります。交通費や印紙などの実費は都度もらいますが、報酬は後になります。

これからはどのようなお仕事を手がけていきたいですか

現在は成年後見業務がほとんどですが、もともとは知的障害者の「親なきあと」問題に取り組みたいと思い、勉強してきました。これまで障害を持つ子は短命と言われていましたが、医学の進歩と愛情により親より長生きする子どもが増えてきました。それ自体は喜ばしいことですが、親が高齢になって病気や認知症など、子どもの行く末を見届けることが難しくなるケースも増えています。私が参加している知的障害者の子を持つ“親の会”でも、みなさんどうすればいいかわからないというのが本音のようです。実はそこに司法書士業務としてのニーズがあります。お話を聞き勉強してみると、司法書士がお役に立てる方法や手段があります。例えば遺言書、信託、任意後見、死後事務委任契約など。今までは親の会で疑問が出てからそれに答えるスタンスでしたが、今後はこんなケースにはこんな方法、これを準備しておいた方が良いなど、積極的に事例紹介や説明会を行ったり、個別にお話をうかがい選択肢を提案のできるコンサルティング的な業務がしたいと思っています。各ご家庭によって課題や事情は様々なので、知的障害者の「親なきあと」問題を解決するために、今の成年後見業務はよい経験になっています。受任中の後見業務の1件がリーガルサポートからの案件ですが、知的障害者の案件を選びました。

どのような司法書士でありたいと思われますか

弁護士は訴訟で依頼人のために“戦う法律家”というイメージですが、司法書士は紛争にならないように登記しましょう、遺言書を作っておきましょう、など“予防法務”なので、たとえば半径100メートルの身近な人の相談にのれる法律家でありたいという気持ちが強くあります。 実際に、友人からは子供の自閉症について相談されたり、スポーツジムの友人からも「身内に何かあったときはお願いね」と言われたりしています。司法書士事務所を開業したと伝えると、今までの友人関係からは聞いたこともなかった悩みも相談されるので、そんな方の力になれるような司法書士になりたいと思います。問題が解決して帰られるクライアントの笑顔をみると、その人のためにも合格してよかったと思います。

「親なきあと」問題など人権問題についてどのように考えられていますか

司法書士の業務として、登記・供託・簡裁訴訟代理の他に司法書士法施行規則第三十一条業務というのがあります。成年後見や遺産承継業務などはこの業務に入ります。
受験では民法で少ししか触れませんから馴染みはないかもしれませんので、司法書士の生計を担う柱となり得ることは知らない受験生もいらっしゃるかもしれません。司法書士業務はAIに50%は変わるだろうといわれている昨今、この部分はAIに変われない業務だと思っています。
私がやろうとしている知的障害者の「親なきあと」問題などは後見のなかでもニッチな分野なので手掛けている司法書士は周りにいません。「親なきあと」どうしたらいいか実際に困っている親が目の前にいて、司法書士が一助になれそうで、そしてそれが仕事として成立するならば、結果モデルケースとなり横展開できるだろうと思います。
制度や方法があっても知らない方が本当に多いです。それもご高齢の親御さんにとっては仕方のないことですので、こちらから情報を“つなぐ”場を作っていきたいと思っています。自分がすべて引き受けるのではなく、他士業や行政、クライアントの地元の司法書士へ“つなぐ”仕事ができれば嬉しいです。

入門講座を受講している方にメッセージをお願いします

私は法律をまったく勉強したことがなかったのですが入門講座では楽しく勉強することができました。講師からは司法書士試験は“受かるか諦めるかの二者択一”だと言われましたが司法書士になると決めていたので、諦めるという選択肢はありませんでした。楽しいこと反面、苦しいこと反面、合格までいろいろなことがありましたが、すべてが良い経験で、今の実務に活かすことができています。また、今でも付き合いが続いている仲間ができたことにも、感謝しています。貴重な経験ができる受験時代ですから、ぜひ学習期間も大切に過ごしていただきたいと思います。

最後に受験生へのメッセージをお願いします

私は受験時代に“これがやりたい”という軸があったので、合格までがんばることができました。そして合格後もさまざまな経験を経てビジョンが固まり開業がかないました。
受験中も、いろいろなことを経験して自分の進むべき道、ビジョン、なりたい司法書士を目指してもらえればと思います。司法書士の仕事の最大の魅力は独立開業です。自分のペースで仕事ができ、定年もありません。働けるうちはいくらでも働けるので、受験勉強はたいへんですが取得する価値のある資格です。合格後の見返りも大きいので、がんばって合格を目指してください。

インタビュアー:伊藤美樹さん(2018年司法書士試験合格)

つなぐ司法書士事務所

■事務所プロフィール

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