憲法の理念は、真の法律家としての必須条件、その感覚を受験時に学ぶことは大変貴重です

2009年6月掲載

京都府】俣野・古田合同司法書士事務所 河野 紘 先生 (司法書士)

■Profile
2007年 司法書士試験合格
2008年 京都府京都市「俣野・古田合同司法書士事務所」入所

私の事務所訪問

京都の司法書士会館で行われた研修の最後に配付された求人の冊子を見て、現在働いている事務所を知りました。
その冊子には、事務所の各業務割合が示されており、各分野を満遍なく取り扱っている事務所を希望していた私には非常に魅力的でした。その後、面接を申し込み、無事採用となりました。
合格した後実務につくまで計3回の研修があるのですが、その最初の研修(土曜、日曜)が行われる時期に配属修習という形で、平日の業務時間帯にも実務を見せていただけたことが、非常に参考になりました。
自分が希望する事務所に入るには、まず自分がどのような司法書士になりたいのか、またそのために何を学ぶべきかをじっくりと考え、後はどの事務所がその希望に近いか情報を集め、判断することが大切だと思います。

現在の主な業務内容

私が主に担当しているのは、商業登記・不動産登記・債務整理・裁判業務ですが、以下に傾向・特徴を挙げたいと思います(あくまでも私の仕事としての傾向・特徴です)。
 
■商業登記
税理士からの依頼が多いです。税理士からの仕事ではその多くが役員変更登記★であり、おおよそ2年周期で役員変更時期を迎えます。また、事務所自体で管理している会社、法人もあります。今の事務所では一般的な株式会社のほかに、民法法人、医療法人、宗教法人など珍しい法人の依頼も多く、かなり勉強になっています。
 
【商業登記の流れ】
①税理士を介して、又は法人代表者自身から依頼が来ます。→ ②依頼された登記を申請するための方法を検討します (たまに依頼者の希望通りの登記は法律上不可能なことがあり、その場合の代替策などを検討することもあります。また、法務局の登記官に照会をかけたりします) 。→③書類を準備します。依頼者自身で用意してもらう書類、証明書などを告げ、揃えてもらいます。 →④申請書の作成。申請。→⑤申請後、申請通りに登記されているか確認→⑥登記完了後の謄本、預かり書類を依頼者に渡す。
 
■不動産登記
銀行、不動産業者からの依頼が多いです。売主、買主から直接依頼が来ることもあります。
 
【不動産登記の処理の流れ】
①依頼内容を伺います。→②必要書類を預かります。→③申請書作成。申請→④申請後、申請通りに登記されているか確認→⑤登記完了後の謄本、預かり書類を依頼者に渡す。
※依頼者個人から直接依頼を受ける場合、依頼通りの登記が法律上できない場合があるので、依頼内容をじっくりと伺い、説明する必要があります。
 
■債務整理
多重債務者を救済する京都の市民団体「平安の会」からの依頼が多いです。
 
【債務整理の流れ】
①金融業者に対して受任通知(業者から債務者に対する請求を止めさせ、取引履歴の開示を請求)を発送します。→②法定の利率内での貸付がなされていない場合に、過払い金の額を計算します。→③残債務の額と過払い金の額の関係から、どのような法的手段をとるか(任意整理、特定調停、自己破産、民事再生)を依頼者と協議の上選択します。→④各手続へと移行します。
 
■裁判業務
直接依頼者から相談を持ち込まれることがほとんどです。
 
【裁判業務の流れ】
①依頼者からの法律相談。→②簡易裁判所管轄の事件で、訴額金140万円以下の事件は司法書士に代理権があるので、代理するか本人訴訟で遂行するか決定します。→③訴えの提起、訴訟手続へ。

やりがいを感じる瞬間

やはり、依頼者の方から感謝の言葉をいただいた時に、やりがいを感じます。
債務整理で債権者と長いやり取りの末にその事案が解決し、依頼者から感謝されたことがありました。
私自身、日々の業務で自分の実力不足を感じることが多いのですが、こんな自分でも法律を使い、人のためになれると感じた時は本当に嬉しかったです。
登記業務でも、ややこしい案件、急を急ぐ案件を悪戦苦闘しながら完了させた時、その事自体もかなりの満足感を得られますし、その書類を届けた時、依頼者から感謝していただけるので二重にうれしいです。

必要とされる「プロフェッショナリズム」

依頼に対して、迅速、丁寧に処理するのは勿論のこと、依頼者が抱える問題に対して可能な限り複数の解決策を示し、依頼者と一緒に最善の策を選択し、解決に導くことだと思います。
より具体的にいえば、登記を代理申請するに止まらず、事案に関して法的アドバイスをするということです。
また、依頼者との連絡を密に取り、今、何のためにどの様な手続きをしているのかを分かり易く説明し、安心感を与えられる存在になりたいです。
まだ私は実力不足でなかなかその領域まで及ばないのですが、将来的には着実にこなせる様になりたいと思っています。

伊藤塾で得たもの

大学4回生の時、一般企業への就職活動に疑問を感じていました。
入学時からの法律に携わる職業に就きたいという漠然とした希望をずっと抱えていたので、その気持ちを入門講座説明会で所講師にぶつけました。その際、所講師は親身に私の話に耳を傾けてくださり、その上で司法書士の職域の広さやその職務の重要性など、この資格の魅力を話してくださいました。この時の先生の誠実さや、繰り返しに重点を置いた基本を重視する学習方法に魅かれ、入塾を決意しました。
そして私は、入門講座を受講しました。非常に良く練られたテキストは現在の実務でも役立っています。また、テキストはバインダー形式で、講義以外のゼミや答練で得た知識なども一元化できるので、受験時から現在において調べる時間の短縮につながっています。
また、伊藤塾の特長は、憲法に重きを置いていることだと思います。
司法書士試験で憲法が試験科目になったのは最近のことです。しかし、憲法は最高法規でありその理念を感覚として持っていることが真の法律家としての条件だと思います。そしてその感覚を身につける機会が受験時にあるということは、非常に素晴らしいことだと思います。

これからのビジョンと受験生へのメッセージ

先ずは今の事務所で3年は修行をし、その後30歳を目途に独立したいと思っています。
開業場所はまだ特に決めてませんが、都市部や地方に関わらず、開業しやすいのも司法書士という仕事の魅力の一つだと感じています。そして自分の仕事がある程度しっかりできる様になったら、人権問題に力を入れたいと思っています。
最後にこれから合格を目指す皆様へのメッセージですが、初学者の方は少しでも司法書士像が描けるように実務を知ることをお薦めします。この試験は決して簡単だとは思いませんが、自分で描いたイメージや憧れは、つらい時にわが身を助け良い方向に導いてくれると思います。後はカリキュラムに沿って勉強すれば合格に手が届くと思いますので、周りと自分を信じて頑張ってください!!

(2008年11月・記)


★CLOSE UP:役員変更登記とは?
商業登記制度は、企業に関する取引上重要な事項を公示することによって、①会社に関する信用の維持を図り、かつ②取引の安全と円滑に資することをその目的としています。そして、
役員に関する事項も登記が必要な事項の1つです。
会社法では、原則として取締役の任期は2年、監査役の任期は4年とされているため、その都度、役員変更登記が必要となります。この役員登記は、重任(同じ人が再任されること)の際
にも必要となり、変更登記を怠ると過料に処せられてしまうため、設立登記を携わった顧客などには、顧客サービスの一環として定期的に役員変更の案内を出すという事務所も多いよう
です。
なお、会社法の施行により、小規模な会社であれば、定款に記載することにより、取締役、監査役の任期を10年までに延長できるようになりました。その場合、メリットとして役員変更
登記がその間不要になるということもがありますが、業績が上げられない取締役に任期途中にやめてもらうためには解任の手続を取らなくてはならないというデメリットがあります。その
ため、顧客である会社の実体に合わせて適切な任期を設定するようアドバイスをしてあげる必要があります。

 

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■事務所プロフィール
俣野・古田合同司法書士事務所
〒600-8804 京都府京都市下京区中堂寺前田町25番地
http://www.matanofuruta.jp/
 
■業務内容
不動産登記、商業登記、裁判業務、債務整理、成年後見
 
■現在の「ある一日のスケジュール」
08:50  事務所到着
09:00  業務開始
10:00  銀行で取引
12:00~13:00  昼食
14:00  商業登記インターネット申請
15:00  裁判所関係書類作成
17:30  商業登記関係書類作成
19:00  商業登記関係書類チェック
20:30  帰宅