「何か資格を取得し一生の仕事にしたい」 司法書士実務で実感した、感動とやりがい

2010年1月更新

【愛知県】 まさき司法書士事務所 正木浩司 先生 (司法書士)

■Profile
2005年 司法書士試験合格
2005年 名古屋市緑区「司法書士グリーンフォーラム」入社
2007年 愛知県碧南市「まさき司法書士事務所」開設
2008年 行政書士試験合格・登録

司法書士を目指した理由

司法書士を目指す前は法律とは無縁な仕事をしていましたが、このまま生涯の仕事として会社勤めをすることに、将来への不安を感じていました。そんな中、「何か資格を取得し一生の仕事にしたい」と考え るようになり、様々な資格を紹介する本や体験記を読んだところ、 司法書士の資格に興味がわきました。
業務内容を見て登記のみならず簡裁訴訟代理権など業務範囲 は広がりつつあるこの資格を「生涯の仕事にしてみたい」と思う気 持ちが込み上げてきて、司法書士を目指すことを決意しました。

現在の主な業務内容

現在、私の事務所は補助者と二人でやっております。
主な業務は、不動産登記、債務整理、成年後見業務ですが、その他にもさまざまな相談、案件の依頼があります。開業当初と比べて、紹介を受けることが多くなり、また定期的に依頼を受ける金融機関や不動産業者等が多くなりました。
そのため、最近では、なかなか仕事が終わらず日中は外で打合せ、不動産取引の立会等に追われ、毎日夜中まで仕事となることが日常となってきております。
以前勤めていた事務所は、どのような業務にも幅広く対応していたため、私の事務所へ来る案件も複雑な案件も多く見かけることが多くなりました。そのような案件でも一つ一つが勉強と経験の積み重ねとなり、ありがたいと思いながら楽しく仕事をしております。

大切な取引を支える存在

不動産売買の立会では、司法書士が当事者の意思を確認し、必要書類の不備がないか否かを確認の上、申請書を正しく作成し、法務局へ申請することで不動産取引の安全を担っているといっても過言ではありません。当事者の代金の授受など司法書士が内容を確認し、金融機関の担保設定等の内容を確実に登記事項に反映することで、大切な財産の権利保全をし、取引の場面に立ち会うことができます。それが司法書士ならではの仕事だと思います。

やりがいを感じる瞬間

ある依頼者がとても暗い顔をして相談に来られました。その依頼者は、消費者金融から多額の借入がありましたが、体調不良で仕事も思うようにできずに収入が減ってしまい、支払の延滞が長く続いたので自宅に債権者が取り立てに来るようになりました。
聞き取りによると債権者は10社、債務総額は400万円を超えていました。しかし、全ての債権者が利息制限法の制限利率を超える利率、いわゆるグレーゾーン金利で融資しており、取引の期間は最初の借入から10年を超えていました。
私は、その事件を受任し、債権者へ取引履歴の開示を求めました。その取引履歴を基に利息制限法の制限利率で計算し直すと債務総額400万円あったものが、約300万円の払いすぎの状態、いわゆる過払いになっていました。
私は各業者と和解交渉をし、和解がまとまらない業者とは 簡易裁判所に訴えを提起するなどをして、過払い金額を回収 し、その金額を依頼者にお返ししたところ、その依頼者は最 初に来所した頃の暗い顔から穏やかな顔つきに変わり、今ま で迷惑を掛け続けてきた家族と親族にしっかりと恩返しする ことができると本当に喜んでいました。
このような時に法律の手続きによって人の心にこれだけ余 裕を持たせてあげられる司法書士の仕事に感動とやりがいを 私は感じました。

ますます高まる司法書士への期待

高齢化社会の到来に伴い、今後ますます増加する傾向にあるのが、成年後見制度の活用です。成年後見制度は、判断能力が不十分なために、財産侵害や虐待などを被る可能性のある方を守るため、法律面や生活面で支援する制度です。
司法書士会連合会が社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」を立ち上げ、8年ほど経ちます。リーガルサポートに持ち込まれる案件も年々増加しており、確実に需要が伸びている分野です。

必要とされる「プロフェッショナリズム」

司法書士の業務内容は拡大しておりますが、中心となる業務はやはり登記です。不動産登記は金融機関から、商業登記は税理士から依頼を受けることが多々あります。簡易な案件から複雑な案件まで多種多様です。司法書士は登記のプロですから、いつも神経を細やか にして業務を行っております。
依頼者の望む登記を法律にのっとって確実に迅速に行う、これ は簡単なようで難しく感じますが、日々この気持ちを忘れずに業務 に取り組んでいます。

精神の支柱にある「憲法の理念」

司法書士は、不動産登記や商業登記だけでなく債務整理等を通して、国民の権利保護に役立っていると思います。登記は人々が生活していく上でとても重要な制度です。また、債務整理業務では依頼者に代わって和解交渉をし、和解がまとまらなければ裁判書類作成を通して依頼者を支援し、訴額が140万円を超えていれば、本人訴訟において国民の裁判を受ける権利を支えています。
憲法によって国民は誰でも、裁判を受ける権利を保障されてい ますが、裁判には費用がかかります。費用を理由に裁判を断念す る人を救済するため、法律扶助制度があります。私が受任した債 務整理の依頼者も、法律扶助制度を利用した方が何名かいらっしゃ いました。依頼者は、最初に相談に来られた時から費用を心配さ れていましたので、法律扶助手続きについて説明したところ、安堵 の表情を浮かべられてました。この時、憲法の大切さを実感いた しました。
このように、司法書士の役割は、国民一人ひとりの権利を守り、 人権を尊重し、憲法の理念を実現することだと思っています。

伊藤塾で得たもの

伊藤塾のテキストは、今でも実務で特殊な案件の依頼があるときに利用します。基本となる考え方やその根拠の参考文献の頁数まで載っているからです。実務では、その参考文献をもとに登記を構成していきますので、受験後もテキストはとても役立っています。

これからのビジョン

風邪をひいたら、かかりつけのお医者さんがあるように、法律の トラブルにも“かかりつけ法律家”が必要であると考えています。 しかし世間では、法律相談は敷居が高い、入りにくいとのイメージ が先行し、まだまだ病院のように気軽に入れるような環境は整って いません。そのため、かかりつけ法律家の役割が果たせるように、 なにかトラブルが生じそうな時に気軽に安心して相談できる、そん な司法書士を目指しています。

受験生へのメッセージ

司法書士は、今後も業務範囲が広がり、さまざまなところで活躍できる資格であると思いますし、将来司法書士は市民にとってもっと身近な法律家として確立をしていくことと思います。
受験中は、辛く苦しいことがたくさんあると思いますが、それらの気持ちは、自分との闘いです。この闘いに勝つためには、大きな志を持つことだと思います。
合格後の自分自身の活躍している姿を常にイメージして、気持ちに負けることなく頑張ってください。
 
(2010年1月・記)

Close Up ~成年後見~

Q1 成年後見を依頼される人はどのような方が多いのでしょうか?依頼者の悩みは?

成年後見の種類としまして、法定後見と任意後見の制度があります。
法定後見制度を依頼される方は、入所施設の契約を結ぶとき、不動産を売却したりする時に、契約をする判断能力が不十分な場合や、認知症などの身内の方が、通帳や財産を管理しているのが一般的ですが、それら財産を勝手に使い込んでしまっている場合など、様々な事情から申立をされます。申立人は、配偶者や親族の方が多いですが、申立人がいない場合、申立人となる方が協力してくれない場合について、老人福祉法に基づき市町村申立という方法もあります。
一般的には、成年後見人は、被後見人の配偶者やその身内の方がなる場合が多いのですが、後見人に就任すると、家庭裁判所にさまざまな後見事務報告書を提出する必要があります。これらの書類を作成するのは、事務負担が大きいため、司法書士が後見人になる場合こともあります。
任意後見制度は、現在は、契約などをするために必要な判断能力を十分に有しているが、将来契約をする判断能力がなくなってしまった場合に備えて、あらかじめ後見人となる人及び後見事務の内容をご自身で決めることができます。
判断能力が不十分になった場合は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見人が事務内容に従った事務をしていきます。

Q2 具体的な仕事の手順・流れは?

成年後見人に就任後、被後見人の健康状態の状況などを確認し、財産を引き継いだり、入所施設の契約を交わしたりします。
被後見人の年金などの収入、生活費を計算し、家庭裁判所に調査結果として後見事務報告書を提出します。
後見事務報告は、少なくとも年1回は提出します。領収書の控えを保存し、現金出納帳を作成します。また、不動産の売買や賃貸などの重要な法律行為をする場合には、あらかじめ裁判所と、これらの法律行為をする必要性について打ち合わせをして、許可をもらうのが一般的です。

Q3 仕事の内容は?

主な内容は、ご本人に代わって、法律行為や財産管理をします。例えば、高齢者施設への入所契約や年金の入金や出金の管理、ご本人と面会して体調の状況を確認したりします。法律行為全般をすることになります。
すなわち、被後見人の権利擁護のために家庭裁判所の監督の下、活動することとなります。

Q4 この仕事を進める上で大事なことは何でしょうか?

成年後見人は、被後見人の利益のために活動することが職責です。そのため、地域包括支援センターなどの関係機関と連携して被後見人にとって住みよい環境であることを配慮する必要があると思います。


Information
■事務所プロフィール
まさき司法書士事務所
〒477-0876 愛知県碧南市野田町27番地
http://masaki-office.blogdehp.ne.jp/
■業務内容
債務整理関係(任意整理・過払金返還請求・自己破産・個人再生手続)、不動産登記、相続登記、会社設立関係など
■現在の「ある一日のスケジュール」
7:00  起床、朝食
8:30  法務局(申請、謄本等取得)
9:10  事務所出勤、仕事の準備
9:30  金融機関・依頼者等電話連絡
10:00  依頼者と面談
12:00  昼食
13:00  金融機関へ 登記関係書類のお届け及び受領
14:00  事務所へ戻り 書類整理、書類作成
15:00  税理士宅へ 会社登記に関する打ち合わせ
16:00  事務所へ戻り 消費者金融等と和解交渉
17:00  申請書類など作成、明日申請する書類の再確認
19:00  雑務
19:30  退勤
20:00  帰宅