子ども達との未来を考えたときに、母として自分は変わって行かなければならないと強く思いました。

2015年5月掲載

すずらん司法書士事務所 櫻井 美津子 先生

■Profile
2013年 2児の母として子育てと司法書士事務所補助者業務を両立しながら司法書士試験に合格
2014年 2月 特別研修中に司法書士登録をし、すずらん司法書士事務所を開設
      9月 簡易裁判所訴訟代理権取得

先生は、いつから「セカンドキャリア」についてお考えになられたのですか。

セカンドキャリアについて考え、行動に出たことは、今までの人生で大きくいうと2度あります。
一度目は、高校卒業後、小さな音楽関係の事務所にお世話になっていたときに、ここにいることは、自分の思いを実現する手段としては少し違う。もっと人の近くで誰かの役に立ちたいと思ったことがきっかけでした。
二度目は、まだ小さな二人の男の子を、女手ひとつで育てて行く。 子ども達との未来を考えたときに、母として自分は変わって行かなければならないと強く思いました。

「セカンドキャリア」として、司法書士を選択したのはどうしてですか?

何より子ども達のことに対する心配が大きくありました 。「子ども達に寂しい思いは絶対にさせたくない。」「せめて、『おかえり』くらいは、言ってあげられる。」そんな環境を子ども達に用意してあげたいと思い、自宅や、自宅近くで開業することができる仕事を選択することにしました。
税理士、心理カウンセラーなどなど、とても迷いましたが、学歴や年齢を問わず受験することができ、また、助けを必要とする方の役に立つことができるというところに大きな魅力を感じ、司法書士を目指すことにしました。

これまでのキャリアから司法書士試験受験へとキャリアをチェンジさせるにあたり、気持ちの面でどのような切り替えをされたのですか?

若い頃、司法書士という職業に興味を持った時期があり、音楽関係の事務所を離れ、司法書士事務所に数年勤務したことがあります。しかし、その頃は司法書士の資格の必要性を、自らの中で強く感じられなかったのでしょう。殆ど受験のための勉強をせずに、再び歌う職業に戻ってしまいました。その後は、毎日の様にステージに立っていました。
そこまではよかったのですが、私の特性でしょうか。「ここにいる全ての方が求めている(聴きたい)歌=全ての方を幸せにできる歌」を歌いたい 、そんなステージングをしたいということを追い求め、知らず知らずの内に、歌いながら聴いている方の表情やしぐさを見て相手がどう感じているか、分析している自分がいました。一人一人聴きたい音楽も違うのに、全ての人に受け入れられようと無理難題を自らに押しつけ、至らない自分に日々烙印を押し続けていました。
ですから、 気持ちの切り替え・・・という前向きなものではなく、歌う職業に戻ることは、苦痛を伴うものという意識しかありませんでした。 けれども、次のステージである司法書士としての仕事に十分恵まれなかった時は、歌もうたおうという覚悟はありました。

これまでの自分の経験や専門能力が司法書士の業務に生かされていると感じるのはどのようなときですか?

専門能力という立派なものではないのですが、 依頼者の方の言葉として現れてきていない思いを感性で感じ取り、お客様が心を委ねて話し易い雰囲気を作ってあげる。場合によっては、丁寧に拾い上げてあげるということを知らず知らずのうちにしています。
歌を聴いてくれている方との心の対話を重ね、その曲や場所、お客様に合った歌をその時々感じ、作り出していく。そんな作業を繰り返してきたことが、生きているのではないかと思います。 
また、現実的な話になりますが、青色申告をするために複式簿記などを独学で学んだこともあるので、開業した今、役立っています。

10代~20代前半の自分には無くて、今の自分だからこそあると感じるものはございますか?

結婚をして子どもをもうけて、家庭や学校、地域社会での役割も自ずと増え、 妻そして嫁として、母として、また一家の主としてと、随分立場も変わりました。
それぞれの立場を経験した上での視点を持てる様になったことが、大きな違いとしてあげられるでしょう。
また、様々な現実を見て、経験してきた分、 物事に対する見方の幅が広がってきたと思えます。しかし、私はまだまだ未熟ですので、常に見識を高める努力を今後も怠らずにいきたいと思っています。

これまでの人脈とセカンドキャリア転身後の人脈に変化等はございましたか?

少し変わった道筋を歩んできた為、人脈の幅はやや広いのかも知れません。
しかし、司法書士として社会の中で歩み始めると、更に人脈は広がって行きます。
自分が進んで行きたい分野、切り拓いて行きたい分野を求めて歩んで行くと、それぞれの分野の専門家の方へのアクセスが以前よりも容易にできる様になりました。お互いの専門分野を求め合う為、そこでできた繋がりは一方通行ではなく、互いにアクセスし合えるということで、双方にとってプラスに働くというところもあるからでしょう。 
以前の自分では、決して出会うことの叶わなかった巡り会いもあります。

セカンドキャリアとして選択した「司法書士の道」。
現実には、どんなことを感じる毎日を過ごしていらっしゃいますか?

駆け出しの私が言うのも憚られる言葉なのかも知れませんが、司法書士という職業は、私にとって天職だと感じています。
自分の持っている知識や経験を求めて、街の皆さんが来て下さる。そしてご相談に来られた方が、先の見えない不安から解放され、まだ取りかかる前段であるにも関わらず安心して事務所を後にされる。
責任は重く、簡単にできる仕事ではありませんが、地域の皆さんの安心や幸福に微力ながら貢献することができ、たくさんの「ありがとう」の声を頂くことができる。私自身も、そのことで日々生かされていると感じます。
歌をうたうことには声域や声質など、「限界」というものが存在しました。しかし、知識や経験は生きている限り無限に増やすことができます。
そのことから、司法書士という職業には、無限の可能性を感じます。ひとりひとりの個性や、生きてきた道筋を全て生かすことができる『司法書士』は、皆さんにとっての天職になり得る職業だと思っています。

セカンドキャリアとして司法書士を目指そうかどうしようかと悩んでいる方に何かアドバイスをいただけますか?

どんな司法書士を目指しているかによっても異なるかも知れませんが、 少子高齢化社会を迎えた現代、司法書士の活躍する場や業務を行う為に必要な知識も明らかに広がってきていると言えるでしょう。
成年後見業務を例にとってみても、社会保障制度や消費者トラブルに対するクーリングオフ制度などの知識が必要になる場面もあります。その様な案件のひとつひとつに対応して行くには、自己研鑽が欠かせません。
司法書士となった後も、司法書士連合会や司法書士会等主宰の研修により、様々な知識を得る機会が多く用意されています。時代と共に変わりゆく社会で、法律家としての役割を十分に発揮して行くためには、その時代時代に求められる知識を学び、吸収して行く、そんな姿勢が必要になってくると思います。

最後に、セカンドキャリアを見据えた場合に「今からすべきこと」としてどんなことがあるでしょうか。

司法書士の試験勉強は大変ですから、中々思う様に人付き合いや社会的役割などをこなすことが出来ない場合もあるかも知れません。
けれど、時間の取れない中でも、周囲の人との時間やお付き合いは、是非大切にされて下さい。司法書士となった後、きっと助けられることもあるでしょう。
私ごとになりますが、子ども達の為に、司法書士試験に合格したらすぐに開業をしようと思い、受験時代に司法書士事務所の補助者をしていました。
フルタイムでの仕事と子育てをしながらの受験勉強は思う様には進まず、結果、合格までに長い年月を要してしまいました。
しかし今思うと、補助者経験をある程度の長い期間してきたからこそ、合格後すぐに開業をしても依頼者の様々な相談に何とか対応できているのだと思います。
遠回りに見えることが、近道になることもあるのです。ひとつひとつの経験や人間関係が、その後に生きてきます。
是非今を大切に過ごされて下さい。


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事務所プロフィール

すずらん司法書士事務所
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