司法書士試験受験という経験がなかったら、私は今でも、プライドばっかり高く、目的を見出せない中途半端な人生だったかもしれません。20代の私を、精神的にも、社会的にも成長させてくれた司法書士というすばらしい資格に、本当に感謝しています。

平凡な生活から逃げ出すためだけの、
司法書士試験受験だった…

 私は高校までを福岡で過ごし、なんとなく東京での生活や華やかな職業にあこがれ、都内の大学に進学しました。マスコミ志望者が多い学部でしたが、リーマンショックで就職への不安もあり、いままで何の苦労もなく、何不自由なく過ごしてきた“何もしていない自分”に嫌気がさしていた時期でもありました。
 そんな時、逆境にもかかわらず、自分の目標を追い続け、それに向かって黙々と努力している方をみかけ、「自分も何か勉強をしたい」と思い、司法書士受験を決め、大学3年生の秋から伊藤塾の入門講座を受講しました。
 しかしそのころの私は行政書士と司法書士の区別もつかず、試験に合格するためというよりは、“勉強するために受験を決めた”というのが正直なところでした。“モラトリアムな生活”からの逃げ道にしていたのかもしれません。そんな状況ですから、入門講座も講義を聴いただけで勉強した気になっていました。

2年目以降も繰り返してしまった、
不毛な受験生活

 とにかく膨大な学習量に圧倒され、毎回の講義を受けることだけで精一杯だった私を、司法書士試験が受け入れてくれるはずもなく、漫然と受験2年目を迎えました。2年目なのだからという理由だけで、中上級レベルの「演習コース」を受講しましたが「入門講座」で習った幹となるはずの知識が理解できておらず、土台は穴だらけ、軟弱な幹に、どんどん枝葉を継ぎ足している様な状態でした。全体のバランスはどんどん悪くなり、結果的に、知っているような知識ばかりが増え、問題は全く解けません。
 生活も、ちょうど司法書士事務所の補助者の仕事を始めて、いつしか勉強できない理由を仕事のせいに、仕事ができない理由を勉強のせいにするという、最悪のスパイラルにはまっていきました。今思うと「なんて無駄な時間をすごしてしまったのだろう」という思いの数年間でした。

千載一遇のチャンス、人生の転機が、
盆と正月が一気に訪れた!

 漫然と過ごしていた受験勉強でしたが、「今年もそろそろ択一の講座でも受講しよう」と伊藤塾に行った日のことです。忘れもしない3月10日、この日は私の人生を変える一日になりました。
 スタッフの方からすすめられた、“高城講師への受講相談”を「せっかくだから、相談してみよう」と素直に受け入れました。そこで、中途半端にすごしていた受験生活、今まで誰にも話せなかった自分の本当の気持ちなど、なぜだか、初めて本音で相談することができました。受験回数とともに膨らんだプライドを捨てることで、本当は絶対にあきらめたくなかった、という思いをすべて吐き出すことができました。このカミングアウトを親身に聞いていた高城講師に「また、今日から始めなさい」の一言をいただきました。今までの中途半端な過去は捨てていい、やり直してもいいのだ、と、思った瞬間、私の目の前には明るい光が見えていました。今までの、愛想を尽かすほどの中途半端な自分を見つめなおすとともに、あらためて司法書士試験の合格を固く誓いました。その日は思いっきり、思いっきり号泣しました。今までにないくらいに泣きました。
 これをきっかけに、私は、高城講師の入門講座を再受講することで再び勉強を始めましたが、このときが本当の意味での受験勉強スタートだったと思います。

もう迷いは吹っ切れた、
合格に向けたファイナルステージ!

 2回目に受講する入門講座は、全体像がわかっているのでとても理解が深まり、講師を信じて、やらなくていいと言うところはバッサリきることができました。本気になって受講した入門講座で、合格を真剣に考えている2人の友人ができました。不思議なもので、最初の入門講座のときには見えなかった、オーラが見えて、自分と同じ思いの友人と知り合いになれました。何も隠さず、本音で語れるライバルは、受験勉強の励みになりました。幸運なことに3人そろって今年合格ができました。
 また、本気で取り組んでいると、働いていた事務所の皆さんは次々と激励の声をかけてくれました。これも中途半端だった時期にはなかったことです。
 初めて真剣に取り組んだ今年の試験は、実は午前の部は基準点ぎりぎりで、来年の受験を覚悟しました。このことを高城講師に報告したところ、「私はまだあきらめていないよ」と、私以上に私のことを信じてくれました。この言葉にもとても感動しました。
 合格発表は発表会場まで掲示板を見に行きました。1年間勉強をやりぬいた“けじめ”として、合格でも不合格でもこの目で見ておこうと思ったのです。結果は合格でした。この情景を私は一生忘れません。今までの受験勉強を思い出し、何度も何度も泣きました。受験から逃げながら勉強していたときは、好きなことをしていても、心はどこか曇っていました。しかし絶対に合格すると、がむしゃらに勉強した最後の一年は、一番輝いていたように思えます。勉強はただただ苦しく、孤独を感じます。しかし本気でやれば、周りも助けてくれます。声をかけてくれます。本当の仲間もできます。あきらめずに本気でがんばる、何より大切なのは迷わずに可能性を信じ続ける強さでした。