官庁訪問でリードするためにも教養区分は受けるべき

 
合格者イラスト

Bさん
◆所属大学: 早稲田大学 国際教養学部
◆受講講座: 国家総合職コース

はじめに

国家公務員を志望した理由

21年間生きてきて、自分は環境的にとても恵まれているということを実感する瞬間がいくつもあった。衣食住がそろい、大学にも行けて、留学や趣味にもお金をかけてもらい、やりたいことは何でもやらせてもらってきた。一方で、周りを見てみると、環境に恵まれず、社会の負の部分の犠牲になってしまっている人がたくさんいるという現実がある。これまで社会から様々な恩恵を受けてきたと自覚する自分にとって、その恩恵を還元していくことは義務であるように感じた。
「公務員は国民の幸せの総量を増やす仕事である」と伊藤塾でも言われたように、公務員となり、国民目線で様々な政策を実行していくことで、それが実現できると考えた。自分をこれまで育んでくれたこの社会、この国に恩返しし、「生きていてよかった」と感じられる人を一人でも増やすために、これからの人生をささげていきたいと思った。

 

伊藤塾を選んだ理由、伊藤塾のココが教養区分合格につながった!

公務員を考えはじめる前にも名前を知っていたのが伊藤塾だったし、教養区分だけのコースだと経済的にも負担が少なかったから。全員が対象の教養区分対策に加え、自分も講師カウンセリングで企画提案試験の相談をしたり、模擬面接を複数回やってもらうように頼んだことが安心して試験に臨むうえでよかったと思う。
 

 

私がとった勉強方法

総合論文試験について

伊藤塾の講義を聴いて書き方のパターンを理解し、あとは添削対象の論文課題を実際に書いて添削してもらう、ということをやっていた。全部で6つの論文を添削していただいたが、評価はB+からC-の間に収まっていた。添削の中で指摘された点、留意しなければならないと思った点をいくつか挙げたいと思う。
 
・資料はあくまで参考程度にとどめるべきだが、資料であまり強調されていない視点にのみフォーカスして論文を書く際には、なぜそれだけなのか、説得力を持って説明できなければ高い評価は得られない。そういう意味で、ある程度資料の内容に沿った方が安全ではある。
 
・政治思想が論文に反映される場合は、どんな人が読んでも過激な表現だと思われないように気をつける(移民の話で保守的な主張をする場合など)。
 
・接続詞の前と後が正しくつながっているか、適切な接続詞が使われているか逐一確かめる。
 
・提案する施策がどのような効果を発揮しうるかについても分析する。
 
・抽象的な表現はなるべく具体的にする(強い、輝き、など)。
 
また、自分の論述のバックアップのために、既存の政策や時事問題への知識は持っていた方がいい。私は伊藤塾のアドバイスを元に、日経新聞を読んだり、興味がある分野の白書を読んだりして知識を入れていたが、基礎能力試験の対策に追われたため十分にはできなかった。
ただ、基礎能力試験対策として行う社会科学や時事問題の勉強も論文のための知識になると思うので、まずは基礎能力試験に向けての勉強を優先し、余裕があれば新聞を読むなどして引き出しを増やしていきたい。

 

基礎能力試験(知能分野)

文章理解について。ここはそこまで時間をかけなかった。伊藤塾の講義を聴いて問題の種類や傾向を掴んだ上で、伊藤塾のテキストとスー過去を使い、一日1問解いていた。大学受験で国語を勉強していればそこまで難しいものではないと思う。問題を解いて、間違えたものに関しては原因を確認することくらいにとどめていた。
数的処理について。中学受験をしておらず、大学受験でも数学で苦戦した私にとっては本当に苦手な分野だった。はじめに伊藤塾の講義を全て聴いたうえで、テキストの講義で扱わなかった問題→これ完の基礎編→これ完(演習)の順にそれぞれ一周した(資料解釈については伊藤塾でスー過去が配られたのでスー過去も追加でやった)。それでも正答率は50%を大きく下回り、過去問でも3~7点の間をさまよっていた。苦手な人は、その中でもまだましな分野(私は論理関係や表を埋めるタイプの問題だった)を重点的にやり、本番で落とさないようにする手段をとってもいいと思う。ただ、本番で解けない可能性もあるのでやはり全分野どんな問題が出るか、自分はどれくらいできるのかは把握したおいた方がいい。
また、伊藤塾の講師曰く、確率と図形はパターン化されていて比較的簡単な問題が多いのでやっておかないともったいないらしい(私はやったがあまりできなかった)。そんな私だったが本番ではまぐれが2問当たって8/16取ることができた。こういうこともあるので、苦手でも腐らず、より多くの問題に触れて頑張ってほしい。

 

基礎能力試験(知識分野)

全体としては、いきなりこれ完で問題をどんどん解いていき、解いた問題の単元を高校の教科書や伊藤塾のテキストで確認していく、という手段を取っていた。暗記が必要な科目については、直前期にノートにまとめるなどして覚えた(時間がかかるので、問題を解いていく中で暗記もしていくのが理想)。また、捨て科目を作るかどうかの判断もとても大事になる。個人的には、大学受験で使っておらず、覚える量が膨大な科目や苦手な理系科目は捨てるべきだと思った。
人文科学について。大学受験で使った世界史と地理に加え、興味があった思想を勉強した(日本史と文化・芸術は捨てた)。どんどん問題を解いていき、足りない知識を補っていった。受験で使った世界史と地理はそれで十分だった。思想は直前期に、学派、人物、その人物の中心思想、著作をまとめた表を作ったが、時間がかかったので、表を作らず伊藤塾のテキストの重要な部分に線を引いて覚えるのでもいいと思った。
社会科学について。大学受験で使った科目はなかったが、ゴリゴリの暗記でもないし、総合論文やその後の官庁訪問でも役立つ知識も多いと思ったので、捨て科目を作らず全てやった。これも、知識はなくとも先に問題を解き、問題の解説や高校の教科書、伊藤塾のテキストで後から知識を入れていく、という手法を取った。経済に関しては、春試験で経済を選択するつもりだったのでミクロ・マクロの参考書を買ってやった。問題を解く中で重要だと思った部分に線を引いていき、直前期には、テキストの線が引いてある部分だけを読んで最終確認をした。
自然科学について。大学受験で生物基礎と化学基礎を選択したので、生物と科学と数学を勉強した(物理と地学は捨てた)。まずはスー過去の知識まとめ欄で知識を確認し、スー過去の問題を解き、間違えた問題の解説や高校の教科書を使ってさらに知識を確認した。あらかた頭に入ったら、これ完の問題を解き、同じようにして知識を定着させた。ただ、基礎ではなく応用の内容も入っているので、ある程度までやったらそれ以上深追いはしないことも大事だと思った。これも暗記がものを言うので、できるだけ早くはじめて曖昧な知識を少しでも確実な知識にして試験に臨みたい(私は知識が曖昧だったので、せっかく覚えたところも本番で間違えてしまった)。
時事について。これは伊藤塾のテキストを読み、重要なところに線を引き、線が引かれた部分を直前期に読み返すことをやった。これで本番は時事問題満点を取れた。ただ、伊藤塾のテキストは細かく、全部覚える時間はないので、先に時事の講義を聴き、重要なポイントを把握したうえでテキストを読むといいと思う。

 

企画提案試験

まず白書を一通り読んだ上で伊藤塾の講義を聴き、問題で出されそうなトピック(今年の場合は4つ)を把握したうえで、インターネットでさらに細かく調べ、それぞれについて小論文を1つずつ用意して本番に臨んだ。
白書の読み込みは遅くとも10月中には終わらせておきたい。私は1次試験の合格通知からうまく2次試験対策に切り替えられず、白書を読み終わらないまま11月前半の伊藤塾の模擬企画提案に臨んで爆死した。その後の準備もかなり追い込まれたので、早めに取りかかることを強くおすすめする。
企画提案は、どれだけそのトピックについてリサーチしたかが評価を分けると言っていいと思う。私は協力的な母親の力も借り、どのような課題が現実にあるのか、すでにどのような政策が行われているのか、その政策の影響を受けている国民の声なども幅広く調べ、まだ取り組まれていない政策をなんとか見つけ出して小論文を構成した(取り組まれていない政策を取り上げなければいけないわけではない)。今年のテーマは障害者雇用ということで、障害者を雇用する企業の現状もわかっていた方が望ましい。そういう意味で、学生には限界があるので、実際に社会で働いている大人の助けを借りることが大事だと思った。来年も労働関係のテーマになる可能性もあるので、頼れる大人は積極的に頼っていきたい。
提案する施策の根拠は実際の試験でも確実に聞かれるので、答えられるようにしておく。また、参照するリソースも、まとめサイトのようなものではなく、できる限りしっかりとした機関が出しているものにしておいた方がいい。私はそこの部分で少し減点されてしまったかなと思う。もちろん、あらゆるリソースを使った方がいいと思うが、自分の提案の核となる部分については、しっかり信頼できるリソースに基づいて提案したことを主張することで、説得力はさらに増すと思う。
企画提案は、調べれば調べるほどすでに行われている政策が見つかったり、自分の提案のキズに気づくなど、かなり過酷な準備になる。まだ社会のことを知らない学生がその道のプロである官僚を前にして施策を提案すること自体かなりの無理難題なので、割り切りも大切だと思う。どんなにやっても完璧な施策など提案できないので、本番に試験官に詰め寄られたときも、仕方がないと考えて、学ぶ姿勢も大切に、そしてそのとき自分が言えることを精一杯言おうとすることを忘れないでほしい。自ずと評価はついてくると思う。

 

政策課題討議

伊藤塾の模擬を一回、そのときに同じ班のメンバーだった塾生の方が招待してくれたLINEグループでもう一度練習会に参加させてもらい、合計二回模擬をやって本番に臨んだ。
正直メンバーによってもかなり左右され、運要素も大きい。そんなに何回も練習できるわけではないので、得意ではない人は、高評価を狙おうとするより、悪い印象を与えないことに全力を尽くすべきだと思った。私はもともとディスカッションが大の苦手なので、とりあえず何もしゃべらないということがないようにしよう、くらいの心意気で臨んでいた。
話すのが苦手であまりたくさん発言できる自信がない人は、発言の内容が大切になる。そのためには、資料があるとは言っても、テーマについて何が議論の争点なのか、自分はどう考えるのか事前に知っておくに超したことはない。私は時間がなくてできなかったが、ネットでディベートのよくあるテーマを引っ張り出し、それについて自分はどう思うか考える、ということも、意見の引き出しを増やすための訓練としては意味があると思う。ただ、本番でそれが出る確証もないので、現実的には難しいだろう。また、政治的な思想(保守、リベラル)が討議のテーマへの立場に影響する場合もあるので、政治に関心を持ち、政治的なトピックについて自分の考えを持っておくことも大事だと思う。私はコロナ禍で政治に関心を持ち、ツイッターやヤフコメで政治的なトピックについて多くの意見に触れることで自ずと自分の思想の軸みたいなものができあがっていき、試験本番でもそのおかげで他の人にはない視点を言えたと思う。議論の技術以外にも、そういう準備もできるので、議論に自信がない人は特にやっていて損はないと思う。

 

加点対象の英語試験について

英検のスコア(1級)を提出した。もともと英語は得意で、4つ全ての試験において25点加点を満たしていたので、その中で一番インパクトが強そうな英検1級を提出した。
加点の対象となる点数はそこまで高くはないので、加点があるとアドバンテージになるというよりは、加点がないとディスアドバンテージになる、という感じだと思う。なので、スコアがない人は可能な限り試験勉強が本格化する前に何かしらの英語試験を受けて、スコアを取っておくことが望ましい。ただ加点もそこまで大きくはなく、他で挽回は十分可能なので、試験勉強の妨げにならない程度にやることが大切だと思う。

 

普段の生活と試験対策について

 私は公務員という進路が定まったのが大学3年の春と割と遅かった。2年の夏まではサークルとバイトに全力で取り組んでおり、2年の夏からは1年間の予定でドイツに留学した。コロナで帰国が半年早まり、3月下旬に帰国した際に公務員という選択肢ができあがっており、すぐに4月に伊藤塾に入会する、という感じだった。
留学経験が直接公務員の志望につながったわけではないが、留学中、日本にいるときより自由な時間が長かったことで、自分が何をやりたいのか考える時間が増え、その結果公務員に向かっていったように思う。日本では自粛生活だったので逆に勉強する時間が取れた。ただ大学のオンライン授業が始まってからは課題に追われ、真剣に教養1次の勉強ができたのは8、9月の2ヶ月だった。ただその2ヶ月はバイトもせず、サークルもほとんど活動していなかったのでほぼずっと試験勉強をしていた。

 

民間企業の就職活動について

やはり公務員一本に絞るとだめだったときの逃げ道がないというのと、面接の場数を踏めるというのと、本当に公務員が適しているのかは民間を見たうえでないとわからないというのがある。ある省庁の説明会で職員の方が言っていたが、公務員だけが社会貢献をしているわけではなく、民間もそれぞれの立場で人助け、社会貢献をしている。だから、社会に貢献したいからという理由で公務員に絞っているとしたら、それは少しずれている。余裕があるのであれば、自分の就職活動における軸を明確化する意味でも、民間就活はした方がいいと思う。
私はコンサル業界を軸に就活をしている。公務員対策で業界研究、企業研究に時間が割けないので、とりあえず直接人の役に立っている実感がつかめそうな感じがするコンサルに絞ってやることにした。

 

どのようにモチベーションを維持したか

公務員への志望を決めたのがコロナが始まった後だったので、変化はない。ただ、モチベーションが下がるときには、公務員を目指すと決めたときの気持ちを思い出していた。もし勉強を頑張って公務員になれたら、たくさんの人を救えるかもしれない、日本をさらによくできるかもしれない。そういう原点にある思いを思い出すことで、なんとかモチベーションを保っていたように思う

 

最後に

やはり官庁訪問に向けた対策がしっかりできるのは教養区分の強みだと思う。官庁訪問で堂々と志望動機ややりたい政策を語るには、その省庁のことを深く調べることが大切だと思うが、春試験の勉強に追われるとそっちになかなか時間が割けない。なので、官庁訪問で他の人よりリードするためにも、教養区分は受けるべきだと思う!
教養区分は、政策を提案するなど、もし公務員になれたとしたらやるようなことも一足先に経験でき、受けるだけでも知識や自分の思いを伝える力が育つと思う。失敗しても、民間への切り替えもできるので、少しでも公務員になりたいという迷いがあるのなら、ぜひ挑戦しよう!
官庁訪問では、省庁や政策について細かく情報収集していくなかで、採用されたらやりたいことを具体的に、そして熱意を持って伝えられるように頑張っていきたい。