自分が被災地の役に立てるとすれば司法書士しかない!
この決意が私の中の“弱い自分”に打ち勝ちました

神谷 隆史さん(40代)

◆主な受講講座
入門講座入門講座本科生(山村クラス
中上級講座》中級コース

私はこうして司法書士を目指す決意をしました

 大学在学中に弁護士を目指すべく、司法試験にチャレンジしたのですが、全く畑違いの一般企業に就職した後、その情熱は徐々に薄らぎ、いろいろ自分に都合の良い理由を付け、結局断念しました。その企業に在籍中に、東日本大震災が起こり、テレビ画面で現地の惨状が伝えられるたびに、被災者の方々の役に立ちたいと強く思うようになりました。また、自分がかつて中途半端な形で放り投げた法職に、改めてなりたいという気持ちが、自分の中で沸々と再燃してきたのもこの頃でした。ちょうどその頃、被災地に司法書士が足りないという報道を耳にし、自分が被災地の役に立てるとすればこれしかないと思い、妻を説得し、思い切って伊藤塾の門を叩きました。

伊藤塾を活用した私の学習方法

 受験生活1年目は、山村拓也講師の「入門講座」をインターネットクラスで受講しました。山村講師の丁寧で優しい語り口での講義は、このマニアックな試験への入り口にすんなり入るには十分すぎるものでした。また、特に記述式試験に配慮した伊藤塾独特のカリキュラムは、受験生活後半の激闘の時に徐々にアドバンテージとして表れてきたように思います。
 私は、常に働きながらの環境でのチャレンジだったので、限られた時間の中で優先順位を決めて、日々「これだけはなにがあってもやる」というルールのもと、このルールに従い愚直にこなしました。まず、どんな状況でも必ず講義は予定通り聴くことを最低限守るべきルールとしました。これは一回目の試験後に受講した「択一合格エッセンス講座」でもしっかりと守りました。なぜなら、これを怠ると自分の怠惰な性格上、結果として決めたことを断念するという以前の弱い自分に戻ってしまうことを恐れたためです。また、職場の昼休みには、「入門講座」に付いていたひな型集を用い、一日一問必ず答案構成から申請書記載までを行いました。
 これを2年目以降は「速解記述式パターン60」、「記述式答案構成力養成答練」に品を変え、出張等がない限り昼休みには必ず行うようにしました。
 この隙間時間を利用した勉強は、面白いほど効果が出て、記述式試験は合格の時まで絶対的な自信をもって臨むことができました。
 ただ、その時自分に大きな誤解が生じていたことを、3年目まで本気で気づいていませんでした。それは、この試験は、択一式試験こそ重要であって、記述式試験は択一式試験の成績が安定してはじめて活きてくるということを理解せず、記述式試験こそこの試験のコアな部分であり、記述式試験のエッセンスが択一式試験に活きるのだと大真面目に信じ切っていたことです。
 記述式試験と択一式試験は、同じ科目名ではあるものの、あまり相関関係はないと言い切っていいと思います。その証拠に、記述式試験で問われる項目は、択一式試験において正面で問われることが少なくなっている傾向にあり、記述式試験をやれば択一式試験に通ずるなんていう生易しい考えで通る試験ではなくなってきているからです。
 あくまで択一式試験対策は択一過去問と答練で出た問題を愚直にこなすことが重要であり、記述式試験は全く違う科目であるという気持ちで臨むことが重要だということを早くに気づいていれば、もっと早く合格していたのではないかと思います。
 受験生活後半(3回目から5回目)は、今後の自分の人生のことも考え、大きく環境を変えて臨みました。特に、11年間勤務していた職場を辞め、司法書士法人の補助者として再就職をしたということは、今になって考えてみると痺れるような大勝負に出たと思います。
 新しい職場では、合格者の配属研修を受け入れていたり、新たに合格した者を新入社員として受け入れたりしていたため、自分の周りは華やかな空気でしたが、いつまでも受からない自分は、その華やかな周囲を見て、奥歯をかみ砕くくらいの悔しい思いをし、その気持ちがここまで引っ張ってくれました。
 また、4回目は択一成績の底上げのため、他校の中上級講座を受け、記述式対策だけは山村講師の「記述式答案構成力養成答練」を受講しました。年明けからは毎日、鳥のさえずりが聞こえる時間帯まで択一問題を解きまくりました。徐々にその効果は出て、択一式試験で問われていることが、実務で生きて来るようになり、またはその逆もしかりで、実務との相乗効果も出だしたのもこの頃からだったと思います。
 一方で記述式試験対策は、「記述式答案構成力養成答練」以外、まともな対策をしませんでした。その結果、4回目の試験は3点(択一1問分)足りずに不合格でした。しかもその択一1問は、試験後の解答速報会で発覚したマークミス1問分だったので、この道は向いていないのかなと真剣に悩んだのを今でもはっきり覚えています。
 とはいえ、ここで諦めたら以前投げ出した弱い自分と何ら変わらないじゃないかと自問自答を繰り返し、結局、5回目を泣きの一回と位置づけ、受験指導校も答練、模擬試験以外は近寄らず、年明けからひたすら択一過去問と、今まで受けた答練・模擬試験の問題を解きまくりました。解いてはテキストに戻りの繰り返しで、気持ちも萎えて、メンタル面でも本当にキツイ一年でした。
 記述式試験の対策は答練・模擬試験の問題にあたるだけで、特に対策をしませんでしたが、波こそあったものの、総合点で足を引っ張ることはありませんでした。これは受験前半期に記述式対策を徹底的に行った貯金があったからで、入門の際、伊藤塾の門を叩いたことは間違いではなかったとしみじみ思い返しています。
 5月ゴールデンウイーク辺りで調子を崩して、もう辞めてしまおうと思ったものの、折角ここまでやってきたのだから、最後まで戦いぬいてやろうと無理やり模擬試験会場に通ったものでした。その甲斐あって、
 6月に入って模擬試験がラスト2回となった頃に大きく点数が伸び、疑心暗鬼だった今年の合格を確信に変えました。

最後に

 合格発表の際、自分の番号を発見したときは、喜びというよりは安堵の気持ちが強く、「こんなものか」というような気持ちでした。しかし、自分のことを応援してくれた友人、ボスや先輩司法書士、同僚に報告し、「おめでとう」と言ってもらうたびに徐々に合格したことを実感していきました。特に妻や両親は、今まで記憶にないほどに喜んでもらい、ほんの少し、恩返しができたのかなと思います。
 それもこれも、常に自分の心の裏側にいた、「辞めてしまおう」という弱い自分と時には戦い、時には言い聞かせ、何とか封じ込めることができたから勝ち取れたことだと思います。
 最後になりましたが、この合格は、今まで身近なところで自分を支えてくれた妻、そして常に応援してくれた両親、経験も何もない自分を迎え入れてくれた司法書士法人のボス、試験前にお守りをくれた先輩司法書士、愚痴を聞いてくれた同僚や友人、挙げれば枚挙にいとまがないくらいのたくさんの人たちに支えられて、何とか獲らせてもらったものであり、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
 
 今度は私が、常に目標としている「本当に困っている人」に対して積極的に手を差し伸べられる司法書士となることで、みなさんに恩返しができるよう、一路邁進していきたいと強く心に刻んで、結びとさせていただきます。