総合法律事務所で求められるものと未知の分野の専門性を活かすこと

長田旬平先生

第一東京弁護士会
2004年 中央大学法学部卒業
2005年 旧司法試験合格
2007年 第一東京弁護士会登録
    TMI総合法律事務所勤務
2010年 海事補佐人登録
2011年 早稲田大学大学院法学研究科修士課程 修了 (研究課題:「国際海事問題の実務と法」)
2011年 早稲田大学海法研究所招聘研究員就任
2013年 サウサンプトン大学ロースクール(Maritime Law LL.M.)卒業
2016年 TMI総合法律事務所パートナー就任

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自由人にあこがれ弁護士を目指す!

法律には漠然と興味があったのですが、実は、司法試験への学習スタート時は、社会正義の実現を目指すという熱い思いよりは、自分の性格やライフスタイルを考えていました。決められた時間に出勤し、組織の中で仕事をしていく会社員や公務員よりも、自由な気風の士業に惹かれました。 だったら、一番難しいといわれる司法試験にチャレンジし弁護士を目指そうと思いました。もちろん弁護士も時間に追われたり、組織やチームで仕事をするものですが、色々な意味で自由な生活ができており、満足しています。

深夜まで働くイメージの総合法律事務所で、自分のコアタイムを大切にし、自由に勤務しています。

最近は朝型生活で朝7時には出勤し、秘書やアソシエイトの弁護士が出勤するまでの3時間は、自分にとって貴重な時間になっています。そのおかげで日中は、会議やクライアントへの連絡や部下との打合せに集中でき、案件が落ち着いているときは夜6時くらいに帰宅し家族と過ごせることもあります(それでも10時間以上は仕事をしていることになりますね)。 早く帰るので一緒に仕事をしているアソシエイト弁護士には喜ばれているようです。アソシエイトが夜に作成したドキュメントを朝早く来た私がレビューし、翌朝にはクライアントに提出することができるので、好循環になっています。良いパフォーマンスを出せる生活サイクルというのは人それぞれ違うと思うので、依頼者から連絡が来る時間帯に動いてさえいれば、あとは朝型でも夜型でも自分の働きやすい方法で仕事をするのが一番だと思います。TMIには、お子さんがいながら時短勤務をしたり、様々な生活スタイルで勤務している弁護士が数多くいます。


どんな案件でも対応する総合法律事務所で、未知の海事分野を専門に。

現在、TMI総合法律事務所(以下、TMI)では海事(法)といわれる分野をメインに仕事をしています。 海事とは、船・海に関する法律問題で、広くは国際貿易の分野も含まれますが、船に関する紛争(国際仲裁等)やファイナンスの案件が中心となります。TMIで海事を専門とすることになったのは、総合法律事務所ではどのような分野も漏れなく法的アドバイスができなければならないという考えから、入所2年目のときに早稲田大学院の海事コース(夜間)に通い始めたのがきっかけです。海事分野は当時TMIでも専門家がおらず、私にとっても海は縁遠い世界で、海事のことは何も知らない状況でしたが、グローバルかつダイナミックで男のロマンという感じに大きな興味を持ちました。最初は、チンプンカンプンでした。専門用語も海運ならではのものがあり、特殊なリテラシーが要求される世界なので、それがわかるようになるだけでも1年2年かかったように思います。

未知の分野のスタート

海事は、少し特殊な分野なので、当初は自分のキャリア形成にどのようにつながるかという不安・怖さがありました。同時期に事務所のビッグクライアントの法務部に駐在する話があり、そのときは若いうちに抜擢された感があったのですが、対照的に、一から海事の勉強をするという話は、暗闇に放り出されて、肝試しをして来いというような話に感じました。しかし、今となっては、海事の仕事は実に楽しく、この分野の専門家になってよかったと思います。最近、若手の弁護士から、専門性を高めたい、専門分野が見つからない、という相談をよく受けますが、色々考えすぎてはじめの一歩を踏み出すことに躊躇する人が多いように思います。弁護士というのは所詮、他人から求められ、認められてナンボ。専門性も、自分で「探さなくてはならない」と気負うと見つからないもので、上司・先輩や他人の意見も大切にし、まずはやってみるという気持ちも大切と思います。やってみて興味が持てなかったり、おもしろいと思えなかったら変えてみれば良いのです。

海事分野とは、「海賊とよばれた男」の世界?

海事の分野は、景気や世界経済の流れ、そして海運マーケットに影響されるのが特徴で、トラブルや係争が絶えません。石油・石炭などのエネルギーや、保険の業界とも密接に関連しています。最近で言えば、小説や映画で話題の「海賊とよばれた男」も、海事の世界です。それに、内容が常にグローバルであるという点も特徴ですね。船会社、その船の船籍、航行先、契約書・約款の準拠国などをめぐって、イギリスをはじめ世界中の色々な国が錯綜し、複雑化する案件も多いです。 地図好き、世界史好きの方には、楽しい分野だと思います。

海事の分野を極めるために、イギリスへ留学。

早稲田大学院のコースを修了後は、さらに専門性を高めるため、イギリスのサウサンプトンロースクールに留学しました。大手法律事務所から留学に行く人はアメリカのロースクールに行く人が多いですが、イギリスのロースクールに決めたのは、海事の世界は、アメリカよりもむしろイギリスが主流で、特にサウサンプトン大学が最も有名だからです。海事の世界は、アメリカが覇権を握る前の18世紀で時間が止まっているようなところがあります。契約書や保険約款も英国法準拠の古文書のようなものがベースになっていたり、判例も1800年代のものがいまだに参照されていて、その積み重ねがあることから、イギリスがトップであり続けているのです。もう1点、イギリスが海運の中心である理由は、保険や金融マーケットの世界との関連です。イギリスの保険といえばロイズが有名ですね。損害保険のルーツは、船からきており、海上保険の歴史の深さをみることができます。

海事法の世界トップのサウサンプトンロースクール

サウサンプトンはタイタニック号の出航地でも有名な海運都市なのですが、ロースクールも海事(Maritime law)に特化していて世界中から学生が集まっています。自分の興味にダイレクト、ピンポイントだったので面白かったですね。授業は、海上運送、海上保険とか、「海上」がつくような科目が中心でしたが、海運に密接に関連する航空法(air law)なども履修しました。ロースクールでの生活は、1年目は、海外生活に慣れることや英語のスキルを上げることで精一杯だった部分もありますが、時間は豊富にあったので、旅行にも行きましたし、フットボールもたくさん見に行きました。2年目は、ロンドンの海事専門の法律事務所で研修勤務し、イギリスの海事実務に触れることができました。彼らとは今でもロンドン仲裁の案件等で一緒に仕事をし、頻繁に会っています。

海外留学は、方向性が見つかる5年目頃がおススメ

留学に行くタイミングは個々の事情によってそれぞれ適切な時期が違いますが、一般論としておススメなのは、5年目、6年目ですね。自分の専門性やキャリアを考え、方向性が見えてきた頃です。また、国内でのキャリアを前提に留学先の生活を充実させることができるので、実務を全く知らずに行くより、得られるものが大きいと思います。そして、海外のロースクールでは、日本に比べ、レジュメや推薦状の評価が重視されますが、TMIで一定期間勤務していれば、世界中どこのロースクールに出しても恥ずかしくない出願書類を揃えることができると思います。また、留学費用も結構な金額となりますが、TMIでは、生活費も含め留学費用のサポートが非常に充実しています。

総合法律事務所で求められる英語力を身につける。

海事の世界は、ほぼ英語ですね。契約書はすべて英語ですし、コミニュケーションも英語です。仕事で使う英語は、仕事でしか磨きようがないと思っておりましたので、留学前も、なるべく英語案件に触れたり、機会があれば、外国人と直接に話すようにしていました。いわゆる大手総合法律事務所であれば、自ら敬遠しない限り、英語の案件は数多くありますので、積極的に手をあげてそうした案件に関与することが何よりの英語の勉強になると思います。本来であればemailで済んでしまうような海外弁護士とのやり取りでも、自分のための練習と思い、可能な限り電話で直接話すようにしていました(先方はいちいち電話をしてくるので鬱陶しく思っていたかもしれませんが・・・)。今も、努力を怠ると英語の感覚(特に会話)はすぐに落ちてしまいます。春や秋には海外から海事弁護士による表敬訪問が数多くあるので、これも良い英会話のチャンスととらえ、スケジュールが合う限り、会うようにしています。

総合法律事務所の弁護士のやりがいと、これから求められる能力

今の仕事のやりがいは、月並みですが、クライアントに喜んでいただいたときですね。特に、新しい依頼者から2件目のご相談をいただけたときは、1件目の仕事が評価されたものと感じ、大きな喜びを感じるとともに、2件目のやる気にもつながります。これから弁護士に求められる分野については、良く訊かれるのですが、新分野ということであれば、宇宙法、ロボット・AI、などでしょうか。TMIでもこうした新たな領域でも法的アドバイスを行うことができるよう取り組んでいる弁護士が多数おります。これからは人工知能の発達により弁護士の仕事も機会に脅かされるのではないか、ということが言われており、部分的にはこれも非常に的を射た話であると思います。しかし、定型的な契約書をドラフトしたり、大量のデータの海から証拠を見つけるような仕事は機械にとって代わられることがあるとしても、依頼者に寄り添う「コンサルタント」としての役割は、人間にしか担えないものと信じています。依頼者とより密接にコミュニケーションし、依頼者の意を汲んだ法的アドバイスを行う、という能力は、今後一層求められていくのではないかと思っています。

総合法律事務所の良いところ

まず、若手弁護士の立場からすると、弁護士として必要な素養を適切な時期に習得できることだと思います。TMIでは自分が好きなもの、興味があるもの、専門性を見出せるものに出会うまで、様々な経験ができるようになっていると思います。TMIではセクション制をとらず、仕事が量・内容ともに偏らない制度設計をしており、少なくとも2年目までは、企業法務の基礎的素養を身につけられるような案件を全員に経験させます。そのような基礎があってこそ、その後のキャリアで専門性を見つけていくことができるのだと思います。
次に、お客様の立場からですと、どんな案件でもワンストップで相談できることだと思います。例えば、自分が担当している海運関係のお客様のご相談であっても、自分の専門分野である海事の知識に加え、M&A・労務・刑事その他色々な専門知識を必要とすることがありますが、そのようなときも事務所内で他の担当弁護士と協働し案件に取り組むことができます。逆に、他の弁護士が依頼者から海運関係のトラブルや契約マターを相談されたときは、私のところに持ち込まれるケースが多くあります。
それぞれ専門分野を持つ自分たちが独立しないのは、このような場面でサポートし合える仲間、チームがあるからに他なりません。このように、相乗効果があり、誰からみてもメリットがあると思います。

伊藤塾でのエピソード

大学の近くの伊藤塾の校舎に通学していました。憲法・民法・刑法は、山本有司先生に教わりました。論文対策は伊藤塾長ですね。山本先生には、合格後に旅行に連れていったいただいた事もありました。とても、懐かしいですね。法律家としての法的思考力、ものの考え方は、間違いなく伊藤塾で身につけ、現在に活かされています。それは、呼吸をすることや、ご飯の食べ方と同じように、「感覚」であって、日々思い出して実感するものではないのですが、現在あるのは、確実にそのころ伊藤塾での勉強の結果だと思っています。暗記や知識に頼るのではなく、自ら「考える」ことに重点を置く伊藤塾のアプローチは、今でも未知のタイプの案件に遭遇したときなど、非常に役立っています。

今後のビジョンをお聞かせください。

自分としては、まずは、海事の仕事をさらに極めることしか考えていません。弁護士の仕事は、何をやるかを自分で決めるというよりも、誰に何を求められるか?だと思っていますので、海運の業界で求められ、多忙を極めているうちは、海事の世界を極めようと思います。

これから弁護士を目指す方へメッセージをお願いします。

弁護士の仕事は、無限なんですね。裁判官、検察官と違うところで、どこに何が転がっているかわからない、何が仕事になるか分からないという面白さがありますね。 いろいろなところにチャンス、ニーズが広がっています。弁護士の人数が増えて、マイナスのイメージが少しあるかも知れませんが、我々弁護士側の努力が足りないだけで、本来はもっといろいろな仕事があるはずではないかと思います。人工知能に取って代わられる仕事がある一方で、これまで弁護士の仕事でなかったことに弁護士が関与していくチャンスだってあるはずです。そして、弁護士はライフスタイルとしてすごく自由なので、人に何を言われようと、自分が思ったことを全うできるという意味ではとても良い職業だと思います。自分は、会社員が向いていないとところから始まったのですが、弁護士という立場にあることで自由がきく場面は多いと思います。そのかわり責任が重く、また仕事が集中するとかかりきりになる時期も当然ありますが、それも自分が選んだ道であり、しかも他人から求められてそのようになるので、むしろうれしい悲鳴であり、楽しく充実感をもって仕事をしています。
是非、皆さんも法曹を目指し頑張っていただきたいと思います。

TMI総合法律事務所

■事務所プロフィール

新しい時代が要請する総合的なプロフェッショナルサービスへの需要に応えることを目的として、1990年に設立。
東京、名古屋、神戸の国内オフィスをはじめホーチミン、ハノイ、ヤンゴン、シンガポール、北京などアジア各国にオフィスを開設し、世界各地の現地法律事務所とのネットワークの強化も図っている。

■事務所住所

東京オフィス:
〒106-6123

東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー23階