クロスボーダー案件で日本人弁護士が関与できる余地はかなりあります

河浪潤先生

弁護士 北浜法律事務所・外国法共同事業
2011年予備試験合格
2012年大阪大学法学部卒業
2013年弁護士登録
コーポレート全般、M&A、国際法務等幅広く案件を扱う。外資系民間企業(製薬)に出向経験もあり。

※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

大平光代弁護士の生き方に感動した

小学校5-6年生のときに、ベストセラーになった『だから、あなたも生きぬいて』(講談社)という大平光代弁護士が書かれた本を読み、大平さんの生き方に感動しました。その本では、大平さんが、中学生の時にいじめを受け自殺未遂を図ったが一命は取りとめたこと、その後極道の妻となり悪いことに手を染めたけれども、心機一転、司法試験に合格し弁護士となって活躍をする姿が描かれています。
子どもの頃にいじめに遭うなど辛い経験をしたからこそ、少年事件では子どもに与えるインパクトの大きさなどが全く違うのだろうと思います。自らのバックグラウンドや経験、生き様などを活かせるような仕事ってすごくいいものだなと思い、弁護士という仕事に憧れを抱きました。

企業法務にも興味を抱く

大学2-3年生の時には、大学対抗の模擬交渉と模擬仲裁のコンペティションに出場し、その中で企業の代表として行ったロールプレイなどを通じて、企業法務というのも面白いなと思い、弁護士になりたいという気持ちが固まりました。


勉強だけではなく、サークル活動もアルバイトも遊びも十分満喫した

勉強も勉強以外のことも、大学生のうちに全力で取り組もうと決めていました。アルバイトは1年生から3年生までやっていましたし、バスケットボールやネゴシエーションのサークルにも入っていました。授業も法律以外の科目についてもわりと熱心に出席していましたし、勉強だけでなく、サークル活動もアルバイトも遊びも十分満喫していたかなと思います。ちなみにアルバイトは、引越しの仕事、家庭教師、法律事務所での仕事、ホテルでのウェイターをしたりしていました。
サークル活動では、仲間との間で強い絆が生まれました。今でも頻繁に会ったり旅行をしたりする、かけがえのない友達を得ることができました。

幅広い経験ができることと風通しのよさから、現在の事務所を選ぶ

もともと自分がどのような分野でやっていきたかったかが明確にわからなかったので、様々な案件を経験できる弁護士事務所に入りたいと思いました。東京や地元の大阪でも就職活動をしました。その中でサマークラークに参加したり、いろいろな先生方とお話をしたりもしました。
今の事務所を選ぶ際は、幅広い分野の経験ができることを重視しました。この点、今の事務所は、企業法務だけでなく一般民事についてもやりたいという気持ちがあれば比較的自由に取り組むことができ、自分に合っているなと思いました。
また、1年目から積極的に目上の弁護士に対してでも意見を言うことがむしろ奨励されているようなところもありますし、机の大きさはパートナーとアソシエイトで変わることはなく、個室もなくフラットな環境です。このように風通しがすごくよかったこともあり、最終的に今の事務所を選びました。

周りの弁護士たちの手助けによりピンチを脱したことも

まだ1年目の時に、案件の進め方などもわからない上に、案件が複数重なってしまって、すごく忙しい時期がありました。その時は、依頼者に迷惑をかけるわけにもいかないので、体力的にも精神的にもピンチでした。ただそのような状態もずっと続くわけでなくて、周りの弁護士たちが私の状態を察してくれて手助けしてくれたので、それほど長い期間ピンチが続いたというわけではありませんでした。

ランニングをして気分転換を

気分転換の方法は色々ありますけど、例えばランニングをするのが趣味でして、ほぼ毎年フルマラソンにも出ているのですが、よく大阪城の周囲を平日の夜や週末に走って気分転換することが多いですね。

依頼人が安心し、喜んでいただけることにやりがいを感じる

私は今弁護士5年目になりますが、かなり幅広い事案を扱っています。企業法務が中心ですが、たまに一般民事にも携わっています。企業法務としては、例えば国内やクロスボーダーのM&Aとか、企業側で労働紛争を担当することが多いです。また、企業間の訴訟や外国企業との仲裁などにも携わっています。
弁護士に相談をしに来る人は、一般民事であれ企業法務であれ、何かしらの悩みを抱えています。その悩みを解消してあげられた際、依頼人がホッとした表情をされるのを見ることが私としては嬉しいですし、最終的に仕事をクロージングした時、私に依頼してくださった方が喜んでいただけることにやりがいを感じます。

朝勉強をしてから事務所に向かう

弁護士の仕事は、案件の重なり具合によってかなり違いますが、最近は7時前くらいに起きて、朝出社する前に英語の勉強を1時間ぐらいしています。出社は、特に打合わせなどがなければ9時から9時30分ぐらいです。その後、何件か打合わせをすることもありますし、裁判所に行くこともあります。夜は、事務所のメンバーやクライアントの方と食事に行ったりすることもあります。業務が恒常的に深夜に及んだり、まったく休みがとれない期間が長く続くということはなく、常に最高のパフォーマンスを発揮できるようにコンディションを整えています。

自ら手を挙げフィリピンに赴く

フィリピンに弁護士が150人ほどいる大きな法律事務所があるのですが、私の先輩が留学後にその法律事務所に行っておりまして、後任の日本人弁護士を誰か招いてもよいのではないかと事務所から声があがりました。もともと海外に興味がありましたので、これはチャンスだと思い、「是非行きたいです」と自ら手を挙げ、行くことができました。
フィリピンでの法律実務がどのように運用されているのかにつき色々な案件に関与し、実際に肌で感じるということが主目的でした。
日本人とフィリピン人の弁護士との間で、言語的な問題や習慣的な問題のために十分にコミュニケーションが図れないような場合に、私がお手伝いをしたことがあります。また、現地の日本企業の方たち向けに、日本語でのフィリピン法に関するセミナーをフィリピンの弁護士とジョイントで行ったりもしました。私が行った時に、フィリピンの競争法が新しく施行されるところでしたので、日本の独占禁止法との違いをフィリピンの弁護士にレクチャーしたり、フィリピンの経済新聞などに寄稿したりしたこともありました。

現地の事務所に溶け込むためにタガログ語で歌を歌ったりした

そのフィリピンの事務所には、基本的にフィリピン人の弁護士しかいませんでした。日本人の私が行っても「お前誰だ」という感じだったものですから、まず自分という存在を知ってもらうために、現地の事務所に溶け込む努力をしました。例えば、毎月催されるミーティングでは、新人弁護士が自己紹介をすることになっているのですが、新人弁護士は歌を歌うか、ダンスをすることが求められます。自分という存在をアピールするために、フィリピンの公用語であるタガログ語のメジャーな歌を暗記して歌いました。そうしたところ受けがよく、私のことをわかってもらうことができ、誕生日のときも盛大にお祝いしていただいたり、フィリピンの名物や伝統的な食べ物であるバロットを食べさせてもらったりしました。人間関係をうまく作るというのは、仕事をする上でとても大切ですね。

アメリカへ留学し英語力を磨き、世界にネットワークを築きたい

フィリピンに行って、自分の英語はまだまだだなと痛感しました。帰国後は日常生活の中に英語を勉強するという習慣を取り入れましたので、フィリピンから帰ってきて1年以上経つのですが、英語を使う案件が増えています。近い将来アメリカに留学し、その中で自分の英語力を磐石なものにしたいと思っています。また、日本と違う法体系について基礎からきちんと学びたいとも思っています。アメリカで学ぶということは勉強面だけでなくて、世界中から弁護士や様々な人が集まってくるので、世界にネットワークを築くということも興味深いなと思います。

またアジアで働いてみたい

アメリカへの留学後は、またアジアの法律事務所で研修したいと思っています。
帰国後は、特に大阪や地方の中小企業の海外進出や国際的な紛争解決をサポートできるような弁護士になりたいなと思います。
自分自身が日々成長していきたいと思いますし、自分に依頼してくれる依頼者の方にもっと喜んでもらいたいなと思います。

前人未踏の地で活躍する道もある

フィリピンの法律事務所で仕事をしていて、まだまだクロスボーダーな案件というのは、日本人弁護士が関与できる余地はかなりあるなと感じました。
また、南アフリカ共和国にビジネススタディツアーで行ったときに、現地の日本大使館やJETRO、コンサルティングファームなどを訪問して、今後日本企業がどのようにアフリカに進出すべきかを学びました。アフリカはまだまだ日本の弁護士が十分なサポートをできていないところですので、そのような未だ誰も足を踏み入れていないような国や地域に行って活躍する道も十分にあるなと思います。

伊藤塾長から教わったこと(1)「基礎から考える」「趣旨に遡って考える」

私が伊藤塾で勉強していた時、伊藤塾長が口を酸っぱくして「基礎から考える」「趣旨に遡って考える」ということを仰っていました。この考え方は、実務でも大事だと思います。実務では何か答えがある問題ばかりでなくて、答えのない問題にぶちあたることも多いです。その中で答えを探そうとすると正解に辿り着けないとき、もう一度原理原則に戻って考えることはとても大事だと思っています。伊藤塾で勉強をしたからこそ、今に活かせることかなと思います。

伊藤塾長から教わったこと(2)「合格後を考える」

また、伊藤塾長がよく「合格後を考えろ」と仰っていたのですが、それはとても大事なことです。受験生時代には、どのような弁護士になりたいかということもよく考えていましたし、5年後-10年後-20年後にどのような弁護士になりたいかについて考える習慣を今でも持っています。
学生の頃に描いていた弁護士像と今の自分の姿は、結構違いますね。ただ、その違いは決して悪いことではなくて、むしろ私の中では日々軌道修正するのが大事だと思っています。いろいろな選択肢を考えたうえで、その都度自分が一番良いと思える道を選んだ結果として今があると思っています。そういう意味では、昔思い描いていた弁護士像よりもむしろ今の方がよいかなと思っています。

自分で道を切り拓いていけるような人が弁護士に向いている

弁護士の仕事は、必ずしも「こういった人でないとできない」というわけではないと思いますし、いろいろな個性を持った人が弁護士になった方がよいと思います。ただ、私の個人的な意見としては、主体性を持った人に弁護士になってもらいたいなと思います。特に法律事務所で働くとなると、ゆくゆくは自分自身が事務所外の人から事件を依頼されるようにならないといけませんから、大きい法律事務所であっても自分で身を立てなければならないという意識を持つことが必要です。単に上から言われたことをやるというような人ではなく、自分で道を切り拓いていけるような人が弁護士に向いているのではないかと思います。

強さと優しさを兼ね備えた人に、弁護士になってほしい

また、強さと優しさを兼ね備えた人が弁護士になってほしいなと思います。高圧的な相手であったり、反社会的勢力の人と対峙したりする場面も想定されますので、強く交渉ができ、体力的にもハードワークができるということが大事だと思います。時には依頼者に対しても、強く自分の信念に合ったことを言えることができる、そういう強さも大事だと思います。一方で、強いだけでなく優しさも持ち合わせた人に弁護士になってもらいたいなと思います。

楽しく、ワクワクしながら勉強してほしい

勉強は辛いこととか結果が出ないこともあると思うのですが、勉強をしていく中で重ねた苦労とか努力したことは弁護士になってから必ず生きることだと思います。今どれだけ辛くても、結果が出ないなと思っても、効率的な勉強の進め方をしていれば必ず結果は出るようになります。弁護士になった後のことを日々思い浮かべて、できれば楽しく、またワクワクしながら勉強してほしいなと思います。