笹原健太氏

テクノロジーを用い、弁護士本来の業務に集中してもらう法曹界の実現に向かう!

笹原健太氏

笹原健太代表

経歴
2005年 中央大学法学部卒業
2008年 旧司法試験合格
2008年 慶應義塾大学法科大学院中退
2010年 弁護士登録(第2東京弁護士会 63期)
2017年 株式会社リグシー設立

※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

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大学時代は法学部に所属するも司法試験の勉強は全くしていなかった

大学時代は法学部でしたが、その時は司法試験の勉強とか全くやっていなくて、一般企業に就職をしました。ですが、すぐに退職してしまい、今後の身の振り方について迷っていたところ、法学部時代の友人からロースクールに合格したとの話を聞いて、これはそろそろ自分自身もチャレンジしてみるしかないと思い学習を始めました。
初期の動機として「こういうことをやりたい」みたいなものはお恥ずかしい話全くなくて、今の状態を続けるのは良くないと思い、起死回生を狙って始めました。従いまして、卒業した後に学習をスタートしたので専業受験生として集中して学習をしました。
ロースクールに合格した友人が伊藤塾に通っていて、その友人からすすめられて迷わず伊藤塾に決めました。

ITテクノロジーを活用しリーガルサービスを提供するまで

修習を終えたあとは西銀座法律事務所に入所しました。合格後に就職活動をしていく中で、将来独立したいという思いはその頃から持ちあわせていましたので、あまり分野を限定せずに、色々なことが経験できそうな事務所を選びました。
西銀座法律事務所には2年半ほど勤めていましたが、法人から一般民事、または刑事分野も担当しましたので幅広い業務の経験が積めました。自分自身で案件をとってくるというのが許されていた事務所でしたので、知人や異業種交流会のようなものを通じながら獲得していきました。
そして、2013年1月に赤坂で弁護士法人を立ち上げましたが、3年ほど経過した2016年に弁護士業務とは別に、ITやテクノロジーで人々にリーガルサービスを提供できれば、もっと良い社会になるのではないかと考え、開発というか、仲間探しというか、そのようなことをスタートしました。そのタイミングでは技術的な知識とかは全く持ち合わせていませんでした。技術的なところでいうと、プログラミングコードを書けないですし、そもそもそれが何なのか分からないですし、正直今でも技術的なことはあまりよく分かりません。ですが、専門的な知識を有している仲間を頼りにしながら進めていきました。
今はリグシーという会社を運営しているのですが、2016年ぐらいからプロダクトの開発に時間やコストを充てていまして、リグシーの立ち上げは2017年になります。
振り返ると、西銀座法律事務所時代に経験した営業のスキルや考え方みたいなものが身につき、本当の意味での顧客視点みたいなものが今に活きていると思っています。

笹原健太氏

修習を終えた後は皆横一線。自分の興味にしたがって経験をつんでいく

人間関係が最初の頃は大変でした。なりたての弁護士って、厳しい言い方をしてしまうと弁護士としての価値は何もありません。今まで何もやっていなかった人が、突然バッジをつけたからといって顧客の相談とか法律問題とか的確に解決できるはずはありません。私の場合は分からないなりに深く研究するとか、その研究に多くの時間を費やすとかあまりできていませんでしたので、顧客視点に立っている先生方からすると、もしかしたら不誠実に映っていたのかもしれません。そのあたりが大変でしたね。
修習を終えたあとは皆横一線ですので、その後の経験の積み方によって弁護士としての価値の差が発生するのではないかと思います。弁護士にも色々なタイプがいると思うのですが、法律的なことを追求している弁護士は美しい書面などを書きたがる人が多いのですが、自分はあまりそのようなことには興味がなくて、顧客対応のための組織化、仕組み化というほうにどちらかというと興味がありました。

専門性や寄り添う力、弁護士として必要とされるものはさまざま

弁護士といっても幅が広いので、どのような弁護士になりたいのかによると思いますが、ある程度名の売れた専門的なプロフェッショナルになりたいのであれば、一つの分野に特化して研究をするのが一つだと思います。
他方で今の社会が求めている顧客視点に立った弁護士というのは、法人であっても個人であっても寄り添える弁護士だと思います。必要とされるのは寄り添える能力と時間、特にその時間の捻出能力というのが大きいと考えます。寄り添うためには依頼者と話をするための時間も必要ですし、方針や戦略を練るための時間も必要です。その時間の確保が必要だと思っています。

新しい弁護士像を提供できるチャンスが多い

まだまだ未開な領域だなと思うことがとても多いです。ステレオタイプの弁護士になるのも一つだと思うのですが、自分らしさを出せる領域はたくさんあると感じています。古い業界で村社会的な部分があるので、新しい弁護士像を提供できるチャンスがあり、そのような業界は他に少ないのかなと感じています。とにかく未開拓な業界なので新しいことにチャレンジできるチャンスが山ほどある点は魅力だと思っています。
FBとかツイッターとか弁護士が発信する時代になり、メディアでも現代の弁護士、将来の弁護士、AIで士業はどう変わるか!など色々な特集がとりあげられています。そのようなものを目にする中で、「何故、画一的な弁護士像しか提供しないのだろう」と、いつもそのように感じています。画一的な弁護士像からすれば、それは淘汰される可能性が極めて高いと思うのですが、結局テクノロジーが押し寄せてきたり、新しい価値観が生まれたりすれば、もっと仕事の領域は拡がりをみせるはずです。ですが、訴訟数が増えますとか相談数が増えますとか、考え方やそれに基づく評価が古い形に囚われているケースが多々あります。そのような考え方というか価値観を取り除いてしまえば、もっともっと仕事の領域は拡がると思います。よく開示される情報として弁護士の収入の中央値が年度別でこうなっていますとか、裁判の件数が右肩下がりですとか、少し前までは食えない弁護士の特に地方の悲惨さみたいなものを密着してインタビューしていましたが、発想が旧態依然としているので、今後は開拓する余地が多々あるなと思っています。

インハウスロイヤーのニーズはなぜ高まるのか

また、これからはインハウスロイヤーが増えてくるとも思っています。なぜかというと、司法試験と聞くと世間一般からすると高尚なものに思えますが、少し蓋を開けてみれば、就活生という意味では、司法試験合格者も民間企業に就職する方もほとんど変わりません。つまりは、就活生と殆ど変わらない頭でいるので彼らにとって大企業にいくというのが一つのブランドになっています。法務をやれてブラック企業じゃないと深夜まで働くこともなければ残業代もしっかり出たり、弁護士ほどではないかもしれませんが、給料もそれなりに出たりとか、ワークライフバランスもきちんととれます。
企業側からしても弁護士を比較的安く採用できるという意味で欲しがるはずです。また、新米の弁護士だから経験がないことぐらい企業サイドも分かっています。だから訴訟にも立たせられないと。本当に法律相談が必要だったら弁護士や顧問に相談しようとするはずです。ですが、将来を見据えたときに法律業務、例えば契約書のチェックだとか、ある程度のルーティンワークをさせるのであれば法律的な素養があるほうが勿論良いので、そのような意味でインハウスのニーズが高まってくるのではないかと思います。今はようやく売り手市場になってきたので初任給がどんどん上がってきています。そうすると今度は中小の事務所が採れなくなるとか賑わいだしてくるのかなと感じています。
また、今はベンチャーやスタートアップが増えてきて、新領域にもの凄いスピードで突入するので法務的な領域のニーズがとても高いと思います。

紛争裁判を無くすために法曹界にテクノロジーを投入

笹原健太氏

まず一つとして、弁護士として活動していく中で、世の中から紛争裁判を無くしたいと思いながらやっていました。裁判を担当し、勝っても依頼者があまり嬉しそうじゃないなという感じがしていて、それは裁判するのにとても大きなお金、人間関係、時間、手間を使いますが、それらが戻るということは決してないですし、そうであるならば裁判は無いほうがいいのではないだろうかと、ある時から思うようになりました。今は予防法務というものがあるとは思うのですが、じゃあ予防法務をやりますといっても、純然たる事実だと思うのですが、依頼者はそれほど弁護士に相談したくはないですよね。仮にそれが顧問先であったとしても。ですので、全ての契約書のチェックとかを依頼しているわけでないことが大半だと思います。その原因はお金の問題もあるとは思いますし、そもそも相談しにくいということもあると思います。そうすると契約書さえしっかりあれば防げた裁判はたくさんあると思うのですが、それをまずは何とかしなければいけないなと感じた時、言葉で契約書って大事だから作りましょうね、きちんと適切な契約書にしましょうねとか言うのですが、それは顧客にあまり響かきません。であるならば契約書が大事云々の前に、作りたいと思ったら簡単に作れるシステムがあったら、そのような紛争裁判を無くす世界が実現できるのではと思いました。弁護士が作成できる範囲の契約書は1日に何通もないので、日本中、世界中の人に紛争裁判を無くすための仕組みを投入しようとしました。大手渉外事務所でも数百人の弁護士はいますが、顧客と向き合い日本中の悩みを聞いたとしても限界はあります。つまりは膨大な量に対して、弁護士にやらせるより何か新しい仕組みを投入して、それにやらせて問題解決をしていこうということです。

AIを導入より手前の課題

実際のところ今現在、AIは噛ませていません。というのも、法務部門や総務部門、会社の管理部門が抱えている課題はAIを導入するということより、もっともっと手前なんですよね。自動で契約書を作成したいとか、チェックしたいとか、ずっと手前に法務部の課題がありました。1年前に締結した紙の契約書を見て「何でこの条項はこうなっているんだ」「この内容を入れといてと言わなかったっけ」とかなるわけですよ。現状はそこの課題が一番大きいです。
契約の世界は相手が紙を求めていることが大半なので、締結は紙の契約書に判子を押さなければならないと駄目であることが多々あります。私たちはテクノロジーを多少は用いているのですが、紙の契約書を一元管理、契約書とそれに関する情報、例えば部長が決裁いつしましたかとか、変更履歴がどうなっているのかとか、そのようなものは、今はワードだったりメールだったりしていると思うのですが、一元化されていない状況の中で、紙の契約書とそれ以外の情報をどうやって一元化するか。そしてどうやって検索性を高めるか。「あの契約書ってどこにあるんだっけ」という時に、検索をかけてすぐに出てくる。関連情報とか誰が決裁したかとかも出てくる。そのようなものを実現できたら、今まで探し出すのに1時間2時間要していたものが一瞬で出てくるのかなと思います。

笹原健太先生の写真5

弁護士の本当の価値を出すために、減っていく仕事もある

契約書業務という意味ではもしかしたら減っていくかもしれません。AIとまでいかなくとも、正直雛形が提供されていて、それを変更するというのは簡単にできてしまうので、そういう意味では今まで依頼されていたような契約書業務というのは減っていく可能性は高いかなと思います。ただ、弁護士の価値って何だろうと考えたときに、専門家の追求か顧客の真のニーズに寄り添うことだと考えています。そうなった時にそれって両方とも時間が必要になってくることが必然です。契約書作成みたいに最低限考えはしますが、どちらかというと作業に位置づけられるところに時間がかかるよりも、もっと戦略を練ったりとか、その類のことのほうが弁護士の価値って出てくると思います。親身に顧客に寄り添える、企業法務系だったら戦略を考えたり、コンプライアンスの仕組みを一緒に考えたりだとか、テクノロジーを使ったコンサルティングみたいなことまで弁護士ができてくれば価値がもっと高まるのではないかなと思います。また、一般民事、例えば離婚とかだったら、どうやったら和解に近づけるか、離婚とか一般民事ってとにかく話を聞いて欲しいケースが多くて、法律論を聞きたいのではなくて、話を聞いて欲しい人が多々いるので、そういうニーズに対応するための時間を確保すれば、総体として弁護士の仕事や価値って上がっていくのではないかなと思います。

これから法律を学ぶ意味

法律を学ぶということはとても素晴らしいことだと思いますし、これからもっと必要になってくる分野だと思います。弁護士、裁判官、検察官、所謂法曹という職業はこれからチャンスだと思いますし、仮に司法試験に合格したとしてもしなかったとしても、例えばリーガルテクノロジーの分野って、アメリカも日本もこれからの分野なのでまだまだ大きく発展する余地があると思います。法律を学び始めるということの価値は十分あるのではないかなと思います。

笹原健太氏

株式会社 リグシー

■企業プロフィール

事務所名:株式会社 リグシー
郵便番号:100-0004
住所:東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル4階 Finolab内
電話番号:050-1746-9492
URL:https://www.holmes-cloud.com/index.html
事務所の特長:
契約書の作成から管理までを一貫して行うことのできるクラウドサービス「Holmes」(ホームズ)を開発・展開している。
従業員1名から1万名を超える企業に導入されている。
また、弁護士、司法書士、行政書士、社労士向けに、契約書業務を劇的に効率化するサービスや、Holmesユーザーと士業の方々を繋ぐ、「士業パートナー制度」など、多くの士業の方にも利用いただいている。