大先輩でも意見を対等に聞いてくれる業界。鍵は「言葉にして伝える力」。

西野優花先生

経歴  2008年 さいたま市立浦和高等学校卒業
    2012年 上智大学法学部卒業
    2014年 早稲田大学大学院法務研究科修了
    2016年 弁護士登録
    2016年 早稲田リーガルコモンズ法律事務所入所
          ※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

西野優花弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~

 私が法曹を目指そうと思ったきっかけは、高校に進学する前くらいのタイミングで、法科大学院制度ができたという報道を見て、挑戦してみたいと興味を持ったことでした。その後、私の知り合いが実際に裁判を起こすということがありまして、話を聞いているうちに法曹三者の中でも、特に弁護士になりたいという思いが強くなりました。
 子供が児童相談所に保護されてしまったという事案だったのですが、お子さんが重度のアレルギーを持っている乳児でした。食べられるものが分からない中、「これは絶対大丈夫だ」というものだけを与えていたら栄養が偏ってしまい、医師から通告をされたというものでした。弁護士を選任して、子どもが家に帰ってくるという話になっていた最中、一時保護先で食べたものが原因となりアレルギーで亡くなってしまったという事案でした。その親御さんたちが起こした裁判だったのですが、報道を見た人や、いろいろなところから「虐待親だ!」と言われご本人が大変傷ついていました。裁判官も「虐待通告が悪かった」という判断は出せないと思います。裁判官は全体を見なければいけないと思うのですが、弁護士はその依頼者のために直接活動することのできる職業だと思い、弁護士になりたいと思いました。

伊藤塾に入塾したのは大学2年生くらいのときで、1年生の時は大学の授業だけで法律の勉強をしていました。そこから本格的に司法試験の勉強に取り掛かろうと思い、2年生の時に入塾しました。1年生の頃からやった方がいいなというのは思っていたのですが、やはり生活スタイルが高校生の時とガラッと変わり、アルバイトをしてサークル行って授業やって…とすごく忙しかったので、(この生活で勉強に回す時間があるだろうか…?)と感じていました。1年生の頃から入っている友達がたくさんいたので、話を聞いて映像授業もありますし、なんとか回せるのであれば早いうちに始めようと思って入塾しました。
 2年生の段階では、アルバイトやサークル活動もしつつ伊藤塾に通っていました。大学4年まで全てやっていましたね。スケジュールはいっぱいでしたが、それでも自分の好きな時間に映像授業を見たり、勉強したりできるのが便利で続けることができました。
 大学の授業は研究者の先生から教わりますが、最初はそもそもの前提がわからず苦労しました。法律の勉強ってA説はこうで…B説はこう…C説は…というようにあると思うのですが、最初の期末試験の時に教授のところに質問に行って、「結局この説の中のどれが正解なんですか?」聞いたのを今でも覚えています。今思えばどれが正解ということはなく、それぞれ皆主張をしているということなのですが、そもそも法律の勉強ってどういうものなのかというのが最初はわからなかったので、伊藤塾に通うことで「色々な説が対立していて、これだけが正解というものではない」とわかり、理解が進みました。高校までの勉強は、大学受験のための勉強のような「教科書に書いてあることが正解でこの問題の答えはこれ」というような勉強ばかりしていたので、いきなりガラッと変わった時に「これは何なんだろう」というような印象を抱きました。


私が所属する早稲田リーガルコモンズ法律事務所は、弁護士が30人ほど所属しています。それぞれの弁護士が専門分野を持っていて、事務所としてはほぼ全ての事案、どんな案件が来ても対応できると言っても過言ではないかなと思います。私自身はいわゆる「町弁」的な業務が多く、中でも女性だということもあって離婚や相続、家事分野の案件を多く取り扱っています。特殊性のあるところとしては、先ほど申し上げたようなきっかけで弁護士になったこともあって、子供の権利委員会というところに所属し、子供の手続代理人、お子さんの直接の代理人や、未成年後見などもしています。 
 企業法務と一般民事の割合は、事務所全体だと半々くらいです。企業法務メインでやっている弁護士もいれば、両方を担当する弁護士もいますし、全く企業法務はやりませんという弁護士もいるので、一人一人の扱っている割合はまた違うかなと思います。

 弁護士の仕事としてやりがいを感じる瞬間ですが、裁判所に行くときなど「専門家がついている」ということで安心して来ていただける時がまず挙げられます。問題を抱え先の見えない状況のなか、法律事務所に来たときは塞ぎ込んでいたような依頼者の方が、事件が解決した暁には表情が一変し、ほっとしたような表情になって前向きに歩いていけるようになった瞬間に立ち会えるのも醍醐味かと思います。 ご相談に来る個人の方は、大きな悩みを持っていることが多いと感じます。というのも、企業からのご相談の場合ですと、少し不安をお持ち、という段階でご相談に来られることが多いのですが、個人ですと費用負担が大きいこともあり、「自分でなんとかできるのではないか」と思考過程した末にいらっしゃる方がほとんどですからね。

法的な知識というのは学部生の時から伊藤塾にお世話になっていてので、ほぼ伊藤塾で教えていただいたことが今のお仕事にずっと繋がっていると思っています。特に論文マスターで使用したテキストをよく使っていたのですが、自分でマーカーを引いて答案例を眺めるということをよくしていました。あのテキストは法科大学院の受験の時もよく見ていましたし、司法試験の直前もずっと使っていました。
 法的知識に関してもそうなのですが、法律家のマインドを知るという点でも、大変勉強になりました。伊藤塾は入塾してすぐ憲法から講義があって、憲法というのは何かというところで、「一般市民ではなく権力を縛るものだ」というところから入ります。伊藤塾長が担当されていた一票の格差の問題なども、塾長がリアルタイムで「今週はこういうことがあって…」ということを講義でお話しされ、「法律家のマインドってこうなんだな」と感じました。その他、明日の法律家講座というのがありまして、OBや、色々な社会問題に取り組んでいる実務家の方のお話を映像やライブで拝見したこともあります。そういったものに早いうちから触れたことで、弁護士としてのマインド、「易きに流れてはいけない」といいますか、そうあるべきだし、それが当たり前なんだなというところに触れられたのが今も活きています。

 法律家に向いている方についてですが、細かいところは一般民事をやるのか企業法務をやるのかといった業務内容によって全く異なってくるとは思うのですが、全体として言えるのは、「言葉にこだわる」ことができるかどうかというところが大きいのかなと思っています。書面を書いたり、話をしたり、一言一句細かいところに気を払えるかというのが大事だと思います。あとはこの業界全体を通してですが、若手とか経験のある大先生というのは全く関係なく、自分の意見を言語化して主張し、対等な立場で仕事をします。「若手だから」という言い訳は通用しませんが、逆にいうと大先輩でもこちらの意見を対等に聞いてくれる業界だなと思っています。
 自分で勉強していると、効率性を追求するようになります。1人で家に篭って勉強するのが一番効率的なのかなと最初は思っていたのですが、言葉にして伝えるという力を磨くためには、ある程度仲間やサークルの人と言葉を交わすことが大事だと思います。自分で勉強するときは、億劫がらずに論文や文章を書くと、書いているうちにおかしいと思う部分に気がつきます。書いた側ではない、読み手の方はもっとそう思いますから。繰り返していくことが重要だと思います。
 事務所が早稲田と提携している関係もあって、早稲田のロースクールで受験指導をすることもあるのですが、「人に見てもらうのを億劫がらずにやりなさい」というのはよく言いますね。

法律家の仕事はとても幅が広く、活躍のフィールドも企業や公共団体など、益々広がっていて色々なチャンスがあります。疲弊するということはあっても、飽きることはほぼない職業だと思います。いつも新しいことに触れて、吸収しなければいけません。そういうことが好きな方に、是非積極的に頑張ってもらいたいと思っています。今法科大学院の制度変更もあり、予備試験ルートだけでなく、法科大学院ルートも実務に出るまでの時間が大幅に短縮されることになります。このチャンスを活かして、是非頑張っていただきたいと思います。

早稲田リーガルコモンズ法律事務所

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