教養学部で開発学を専攻し世の中を知り、視野を広げたことが今に活きる

笹原健太氏

俵公二郎先生

経歴  2004年 啓明学園高等学校卒業
    2008年 国際基督教大学教養学部社会科学科卒業
    2016年 中央大学法科大学院修了
    2020年 弁護士登録(73期)
         早稲田リーガルコモンズ法律事務所入所



※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

俵公二郎弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~

 私の友人にオーバーステイ、いわゆる超過在留の人がいました。観光ビザの期限を過ぎて長く日本に在留している方がいまして、その方と友達になりました。その友達の話を色々聞いていたのですが、オーバーステイをするのも色々理由があるということが分かりました。生活の実態としても非常に真面目にずっと仕事をなさって、母国のご家族に送金をされているという話を聞きまして、母国での状況を聞いたらとてもじゃないけれど生活をすることは厳しいとのことでした。それでやむを得ず観光ビザで入って日本で仕事を続けているとのことでした。その方は最終的に在留特別許可を得られまして、無事に日本に住んでいるのですが、その手続きをする仕事が弁護士にはできるということを知りました。その出来事がきっかけで弁護士を目指しました。

大学では教養学部に在籍していたのですが、大学では法律に関する勉強は全くしておらず無縁でしたね。開発学などの勉強をしていました。ざっくりいうと先進国と発展途上国の関係を勉強するという学問です。
 そのような中で先程お伝えした友人と知り合い、その出来事があって、一つのきっかけとして在留特別許可を得られるのが単純にかっこいいと思ったんですね。それとあと、僕は親の仕事で中南米に長く住んでいまして、それでスペイン語やポルトガル語を喋れるのですが、そういう能力も使うことができると。お客さんが例えばアルゼンチンやブラジルの人であれば、スペイン語とかを仕事に生かせると考えました。


 ロースクールは中央大学の既修コースに入ったのですが、大学卒業してからロースクールに入るまでフリーターでふらふらしていた時期があったのでストレートというわけではないんですけど、その間に勉強していました。伊藤塾に入塾したのは大学卒業してからですね。アルバイトをしながらロースクールの受験勉強をして、それで中大のロースクールに入学しました。
 いきなり未修で入るという選択肢も最初はありました。けれど、未修で入った人の方が司法試験合格率が低いということを踏まえ、きちんと法律の学習をしてから既修コースに入りました。とはいうものの既修で入りはしたのですが、もう少し情報を集めてから入ればよかったと思っています。例えば中大ですと学部が中大でロースクールも中大の人は情報をたくさん持っているのですが、おそらくロースクールが始まってから苦労することがあまりないと想います。他方であまり情報がない状態でロースクールに入ると、どうすればいいのかわからなくなってしまうんですよね。その点は苦労しました。

 弊所は弁護士が39名ほど現在在籍しておりまして、みんなそれぞれ好きなことをやっていて色々な専門性を持っている人がいます。どんなご相談であっても誰かしら対応できる人がいるというとても面白い事務所です。
 私は今現在、自己破産ですとか、借金を重ねてしまって困っていらっしゃる方のお手伝いなどをしています。これから生活保護申請の同行ですとか、弁護士さんがいた方が心強いという場面で立ち会えるような仕事をしていこうと考えています。気軽に声をかけられるような弁護士になりたいと思っています。
 自己破産や生活保護などの仕事は負からの回復ですが、やりがいはあるんですけども、責任も重くて大変ですね。借金の取り立てで気持ちが落ち着かないと言っている方がいらっしゃって、その方の相談を受けた後に債権者に対して弁護士がついたと連絡をしました。法律で決まっている制度なのですが、弁護士がついたので以後取り立てをやめてくださいという連絡をして取り立てが止まりました。その取り立てがとまって、「とても安心しました」とそう言ってくださった時に、弁護士になってよかったと思いました。
 中には強烈な取り立てもあったりはします。そういう状態になると結構大変ですね。法律で弁護士から連絡があったら取り立ては禁止されるのですが、それを無視しているということになりますからね。そういった事例専門の弁護士さんの話を聞いたことがあるのですが、すごく大変そうでした。

 私は不平等とか不公平が嫌いなんですね、なのでそれを解消することに注力する方向性で進みたいと考えております。例えば母国では生活が厳しいということで、日本に来てなんとか生活をしている方の在留特別許可を得る手続きですとか、或いは出稼ぎで来ていて色々労働で困っているブラジル人やアルゼンチンの人がたくさんいますけれども、そういった方のお手伝いをしたいと考えています。日本に住んでいるスペイン語を喋る人、ポルトガル語を喋る人のお手伝いをする、その方向でいきたいと考えていますね。
 例えばブラジル人ですとかの日系3世4世とかの方が日本でビジネスをするときにお手伝いをできたら、前向きな話で楽しいかなと思っています。

 受験生時代を思い返すと、伊藤真先生は憲法を強い熱意を持ってお話しなさっていました。そのことはいつも意識していました。わからなくなった時は憲法に遡って、そもそもこれはどういうものなのかとか、どういう理由でできたのかという発想をよくします。「そもそも」を考えますね。そこは伊藤塾で伊藤先生に教わったことが大きいと思います。

法律家に向いている方は、正直なところ、頭がいい人が向いていると思います。わからないことが多い難しい仕事ですからね。勉強ができて、難しいことも論理的に考えられる人はストレスも少なく長く続けられる仕事だと思います。もう一つとすると、優しい人です。頭がいいだけではお客さんがつきません。

先程申し上げましたとおり私は法学部ではありません。ですが、他学部で勉強をしたことはプラスだと思います。法律学は抽象的な法律がありまして、それの背景ですとか、適用する場面で世の中を色々と知らないといけません。僕も知らないことの方が多いです。例えば在日コリアンの方で、済州島出身の方がいらっしゃいます。その方が自宅を処分したしていないという争いがあったとします。例えばそれが朝鮮戦争の時期に重なったとします。その方の本籍が朝鮮だったとします、済州島は南にあって、南は北朝鮮にしてみたら敵国なわけですよね。元々の出身地は南で、本籍は朝鮮。そういう方が日本に住んでいるとしますね。そうなるともう済州島には帰れないわけですよ。帰るところは日本で、日本に不動産があったとしますと。朝鮮半島は儒教の国ですから、土地とか先祖に対する思い入れというのは強いんですよ。そういう人が簡単に土地とかを簡単に処分するかというとしないだろうと、そういう発想から僕は入ったりしています。視野を広げる必要のある仕事だと思います。背景を知っていることで考えられることが変わってくると思います。
 一方、他学部であることのマイナス面は、最初のうちは法律の勉強になれず面白くないところだと思います。面白いと思わないと続けられないと思うんですよね。ですが、できるようになると明らかに楽しいです。そのためにはできる人に教えてもらうのが一番早いと思います。最初、姿勢を低く頼むのはストレスだと思うのですが、それを我慢してできるようになってくると楽しくなってきます。
 総じて、他学部であったというのは間違いなくプラスだったと思います。今の仕事に活きています。依頼者の方とお話をするときもどういった背景があるのかというのを考える時間が多いです。そのかたの背景や個性に応じて接し方も変えています。

 開発学を勉強してわかったこととして、論理的に説明できるものと説明できないものがあるんですね。後者に関してはもう「どうしようもない」と言う話です。世の中「どうしようもない」で済むことがたくさんあるということで受け入れることができたんだと思います。

これから法律家を目指す方に向けては、まず早く受かることですね。できれば2年で合格するべきです。余計な時間をかけないのが重要だと思います。他学部出身で法律家になろうというのはたぶん面白い方だと思うんです。時間がかかるともったいないので、とにかく勉強をして2年で受かると決めて、早く受かるのが大事です。2年間我慢したあとやりたかったことはできますので、とにかく早く受かるのが大事です。

早稲田リーガルコモンズ法律事務所

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