依頼者の人生を左右する職業。身を削ってでも「人のために」と思えるかどうか

竹ノ谷健人先生

経歴 2008年 慶應義塾高等学校卒業
   2012年 慶應義塾大学法学部卒業
   2014年 早稲田大学大学院法務研究科卒業
   2015年 弁護士登録(第二東京弁護士会)
   2016年 弁護士法人匠総合法律事務所入所
   2016年 豊島総合法律事務所入所


※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

竹ノ谷健人弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~

 私が法律に興味を持ち始めたのは高校三年生のときです。中学校からエスカレーター式の高校に通っていたので大学受験がありませんでした。そして高校三年生のとき、授業の半数以上の科目を自分で選択できるようなカリキュラムになっていたので、色々と授業内容を見ていたところ、「法律学入門」という授業がありました。そのときは、「法律を少しでも学んでおいた方が、生きていく上で便利かな」という軽い気持ちで履修登録をしました。
 その授業では憲法や刑法を中心に取り扱っており、民法等の他の法律にはほとんど触れなかったのですが、「法律というのは、なかなか面白そうだな」と思い、法律に興味を持ちました。当初は理工学部を志望していたので、物理や化学などの授業も一緒に履修していたのですが、法律の方が面白そうだと思い、法学部法律学科に進学することにしました。

 現在の事務所では、企業法務一般を取り扱っており、その中で特に割合が多いのは、労働分野と行政分野となります。また、労働分野の一環として、従業員による不祥事を調査することも多いです。私個人としてはIT・インターネット・個人情報に関する案件が好きで、事務所の中でもそういった案件にはよくアサインしてもらっています。一般民事の案件は、企業の担当者からの紹介という形で受けることはありますが、割合的にはそれほど高くないと思います。

 当事務所の弁護士には、「この事務所にいる以上、どの分野においても、これくらいはできるようになろう。」という水準があります。そして、どのパートナーもその水準を満たしているということを前提に、「このパートナーは特にこの分野が強い」というものを持っています。各パートナーは、案件の内容に応じて、どのアソシエイトをアサインするかを決めます。そのため、アソシエイトは色々な分野の業務をバランス良く経験できるようになっています。

 企業法務と一般民事の違いとしては、やはりクライアントの規模(組織がある)が一番分かりやすいと思います。企業ですと、我々に直接ご連絡いただくのが担当者であるとして、その担当者の方は自分の上司に報告をしないといけない、その上司もさらに自分の上司に報告をしないといけない。そうすると、どうしても作業スケジュールがタイトになってしまうことがあります。その作業スケジュールは、担当者の方が一人でどうにかできるレベルではない場合があるからです。その他にも、一見無茶なお願いをされることはありますし、それがキツいと感じることはありますが、そういうことがあると分かった上でこの仕事を選んでいますので、そこはむしろやりがいかなとも感じています。

 受験生時代に学んだことについて、「まさにこのときに役立った!」と思うようなタイミングはあまり多くはないのですが、それはきっと、伊藤塾で学んだ「基礎」が当然のことのように自分の中で根付いていて、無意識にそこで学んだ内容を活かしているからなのではないかと思います。実際、自分は、伊藤塾で法律を学ぶことがなければロースクールには入学できなかったと思いますし、ロースクールに入学してからも伊藤塾の教材を使って勉強していたので、伊藤塾の教材がなければ司法試験には一回で合格しなかったかもしれません。こうやって考えると、伊藤塾で学んだことを活かして現在も仕事をしているのかなと思います。
 司法試験は、暗記だけではどうにもならない試験ではありますけど、何をするにしても最低限の暗記は必要なわけで、その中で必要最低限の知識を基礎マスターでしっかりと培っていれば、その後がそれだけ楽になるということは間違いないのではないかなと思います。
 私の苦い経験というところでお話をすると、伊藤真塾長は基礎マスターの際に「必ず六法を持ってきて講義を受けるように」と強調していたかと思うのですが、私は六法を持ち運ぶのが嫌で、六法を持って講義を受けていませんでした。それは基礎を疎かにしている以外の何ものでもありません。試験を受けるときは、手元には六法しかないわけで、日頃どれだけ六法を引いて条文を読んでいるかというのが、そこで分かってしまうんですね。ロースクールの受験のときは、「やはりもっと六法に慣れ親しんでおけば良かった」と試験中に後悔していました。幸い、ロースクールには入学することができましたが、現在講義を受けている方も、これから講義を受ける方も、六法は是非お手元に置いて講義を受けて頂ければなと思います。

 私は、法律家に求められる力というのは、二つあると思っています。
 一つ目は、「人のために頑張れるかどうか」ということです。弁護士に限らず、世の中の仕事というのは、働くことの対価としてお金をもらうわけなので、どんな仕事であってもそれは人のためであることが多いと思います。ただ、法律家のうち、弁護士の話をすれば、弁護士に相談に来られる方は、一般民事であれば、人生の岐路に立たされているような方が多いわけです。企業法務であっても、ご相談の内容によっては会社の将来を左右するようなものもあります。そのような場面に直面している方に対し、弁護士はできる限り力にならなければならないので、そのような場面で頑張れるかどうか、というのは大事だと思います。人の人生や会社の命運がかかっているときに「週末は仕事したくない」とか「16時間は寝たい」とか、そんな甘えたことを言っていられるような仕事ではないと思います。言葉通り、「身を削って」でも人のために頑張ることができるかどうか、というのはまず大事なところかなと思います。
 二つ目は、「勉強を生涯続ける覚悟があるかどうか」ということです。司法試験に合格したらもう勉強しなくていいのかというと、全くそういうわけではありません。法律は改正されますし、新しい法律も制定されますし、勉強することは一生避けられません。勉強が好きであればそれに越したことはないと思うのですが、勉強が嫌いであったとしても勉強を続ける覚悟があるかどうか、そういった覚悟がないのであれば、法律家になることは諦めた方が今後のためだと思います。民法改正を例にとると、メジャーな書籍は事務所でも買っていますが、当然個人用にも購入し、週末や空き時間に読んで勉強しています。当然、企業の担当者の方も民法改正のことはご存知で、ある程度勉強した上でご相談に来る方もいますので、そういった方に対して何かアドバイスできることはないかと考えると、「今から勉強します」というわけにはいかないです。


 裁判官、検察官、弁護士のいずれを目指すにしても、落ち着いて時間をとって、基礎をじっくり学ぶ機会というのは大切です。働いている間も、修習中も、そこまで時間が取れるわけではありません。やはり、伊藤塾で学ぶ期間というのが、一番腰を据えて勉強ができる時間だったと思います。「あの時にもっとちゃんと勉強しておけばよかった」と後悔する可能性は決して低くないと思いますので、限られた時間の中で最高の環境で基礎を学ぶことができることを自覚した上で、とにかく基礎を徹底して身につけるというのをまずは頑張って頂きたいと思います。

豊島総合法律事務所

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